「どうしたの、インプ、そんなに張り切って」
「ねぇねぇ、皆、皆!」
「なんだ?」
「この小説って、仮面ライダー刀だよね」
「いきなりメタ発言は止めろ!
どうしたんだ」
「いや、だって、この小説。
僕達のようなヒロインであるアンデットの出番はかなり少ないよ。
さらには、前回はほとんど橘さんが主役だったじゃないかっ」
「それは、まぁ、仕方ないというか、なんというか」
「僕は凄く不満だ!
もっと出番が欲しい!!」
「だっ大丈夫よ、きっと」
「マーメイドは良いよ!
君は剣で言う所の雷だから、刀の象徴となる水だから。
さらにはアバドンはライダーの目玉であるキック!シーサーペントは刀の武器である斬撃!!
けど、僕って、幻覚だよ!」
「だっ大丈夫だっ、多分。
今後出番があるはず、多分」
「そこの所、どうなんだ、ケルベロス!!」
「そんなの我は知らん!!」
「うがぁ!!!」
「・・・・・」
「どうした、刀磨」
「いや、なんでもない。
結構皆、不満が溜まっていたんだなぁ」
「ここはっ」
そう言いながら、橘はゆっくりと身体を起き上がった。
そこは、彼にとっては馴染む深い場所であり、ただ一つ心が休める事ができる場所だった。
「なぜ、ここに」
「俺が連れてきた」
「っ」
聞こえた声、それと共に橘が睨んだ先にいたのは、1人の青年だった。
顔は帽子を深く被っている事で、詳しく見る事ができなかったが、その声には橘は聞き覚えがあった。
「ギグスっ」
同時に橘はすぐに立ち上がろうとした。
だが、それと共に思い浮かんだのは、ギグスの戦いによって追い詰められた自身の姿だった。
今は、シュルトケスナー藻の効果を失っている事もあり、恐怖で支配された身体はその場を動かなくなった。
「……恐怖するのは良いけど、今の俺はあなたと戦う意志はない。
あの時は、俺は操られていた」
「そんな言葉を信じられるかっ!」
「信じなくても良い。
だけど、話をさせてくれ」
そう言いながら、ギグスは落ち着いた声で語りかける。
その言葉を聞くと共にゆっくりと息を吐きながら橘もまたゆっくりと座りながら、ギグスを見つめる。
「話って、なんだ」
「あなたの、戦いの目的を教えてくれ」
「目的だと?
言ったはずだ、俺は自分の強さを「それは手段じゃないのか」なに?」
「身体を治すために、強さを証明する事。
だけど、それらは戦う過程での目的だ」
「それは」
元々、ギャレンのシステムに選ばれたのは、ギャレンの最初の適合者であり先輩であった桐生豪から託される形で戦い始めた。
その事を思い出しながらも、橘の心は自然と、この病室だった。
「あなたには、守る人がいる。
だからこそ、じゃないのか」
「守る」
それだけ言うと、ギグスは立ち上がると共に、懐からとある物を橘に投げる。
「何を」
「それを、あなたに預ける」
その一言と共にギグスはその場から去っていた。
未だに戸惑いを隠せない橘。
だが、そんな時、ドアが開かれる。
「橘君」
「小夜子」
それは橘にとっては大切な人だった。
彼女が入ってきた事に驚いたが、小夜子はそのまま近づく。
「良かった、怪我はなくて。
あの人が突然橘君を連れてきた時にはびっくりしたのよ」
「すまない」
そう謝りながら、橘は再び彼女を見る。
自分にとって、守りたいものを守るという事は簡単な事ではなかった。
ただ戦うだけではだめなのだ。
しかし、今の小夜子を見ていると自分はどうなのかと思ってしまう。
確かに彼女は大切だし守りたいと思う気持ちはある。
だが、それ以上に、これまで自分が蝕む恐怖心が、彼を支配する。
「ふんっ、やはり戦いを忘れられないようだな」
「っ、伊坂っ」
それと共に窓の外を見る。
そこには伊坂が立っており、窓の外から笑みを浮かべる。
「ここにいるライダー共が今は去っている事が幸運だった。
私の元に戻ってこい、橘。
お前の力が必要だ」
それと共に伊坂は手を伸ばす。
それは悪魔の誘いと言うべき言葉なのは分かっていた。
しかし、橘はそれが分かっていながらも、手を伸ばそうとする。
だが
「駄目、橘君をこれ以上戦いに巻き込ませないっ」
「小夜子」
そんな橘を守るように、彼女が伊坂の前に立ちはだかる。
「やはり、邪魔だな。
警告だけにするつもりだったが、ここで始末する」
「っ」
伊坂の言葉の意味を理解すると共に、その手は小夜子に向けていた。
まるで時が止まったように橘の思考は恐怖に支配される。
だが、それは、自身が殺される事に対する恐怖ではなかった。
小夜子を失う。
その恐怖が、橘の身体を動かす。
「変身っ!!」
【TURNUP】
鳴り響く音と共に伊坂の攻撃に対して、橘はギャレンへと変身する為に走る。
小夜子を守るように現れた壁は伊坂の攻撃から彼女を守り、通り過ぎると共に伊坂をそのまま窓の外へと突き飛ばす。
「貴様っ」
伊坂はそんな橘の様子を見て、怒りを隠せない様子のままピーコックアンデットへとその姿を変える。
それに気づいた橘も動き出しており、そのまま構えた。
ピーコックアンデットはその背中から無数の羽手裏剣と共に、橘に向けて放っていく。
その攻撃に対して、橘は瞬時に手に持ったギャレンラウザーで、次々と羽手裏剣を撃ち落としていく。
「なに?」
以前の橘とは違う事に驚きを隠せなかったが、すぐにピーコックアンデットは橘に向けて、接近戦を挑もうとする。
それに対して橘はすぐさまピーコックアンデットの動きに合わせるように距離を詰めると共に、ギャレンラウザーの引き金を引く。
しかし、ピーコックアンデットはすぐにその攻撃を察知して避けると、その腕を掴み、投げ飛ばそうとした。
だが
「まだだっ!」
「なっ」
橘がもう片方の手から取り出したソードガンラウザーでピーコックアンデットを切り裂く。
「なぜ、貴様がそれを」
「ある奴から借りた。
今は、それに感謝している」
橘はそう言いながら、ゆっくりと立ち上がり、ピーコックアンデットを見つめながら、走り出す。
手に持つギャレンラウザーの銃弾はピーコックアンデットを一切逃さず、接近すると共にソードガンラウザーで切り裂く。
それらの動きは、以前まで恐怖で身体を支配されていた橘からは考えられない程だった。
「馬鹿なっ、シュルトケスナー藻に浸かっていないギャレン如きではっ」
「俺はもぅ恐怖を手放さない。
この恐怖が、俺に、大切な人の重みを教えてくれる。俺に戦う勇気をくれる!
だから、俺はこの恐怖と共に戦う!!」
同時にソードガンラウザーを変形させ、ギャレンラウザーと連結させる。
それと共に5枚のカードを取り出し、スキャンする。
【FIRE】【BOMB】【DROP】【RUSH】【GEMINI】【ダブル・バーニングディバイド】
「ザヨゴオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォ!!!」
その叫び声と共に橘は走り出す。
それと共に、橘の姿は二つに分身すると共に、1人はピーコックアンデットに、もう1人はそのまま空中に跳ぶ。
そのまま接近した橘はそのまま足に爆炎を身に纏いながら、目にも止まらない蹴りをピーコックアンデットに放つ。
それによって、宙を舞い上がったピーコックアンデットに対して、もう1人の橘がそのまま大回転とひねりを加えながら放つ炎を纏ったオーバーヘッドキックを与える。
二つの必殺技を同時に食らった事で、ピーコックアンデットはそのまま吹き飛ばされる。
「馬鹿なっ、恐怖を抱えたままっ」
その光景を信じられない様子でピーコックアンデットは橘を見つめる。
そのまま橘は懐から取り出したラウズカードを投げ、ピーコックアンデットに向けて投げる。
「橘君」
封印されたピーコックアンデットを手に持つと、そのまま小夜子が駆け寄り、抱き締める。
それを受け止めながら、橘は、今度は手放さないように、強く抱き締める。
それはピーコックアンデットと橘が戦った場所から少し離れた所。
そこで始と虎堂は立っていた。
「・・・上級アンデットを倒したか」
「驚いているのか?」
「多少はな。
だが、一体何を、あそこまで」
「そんなの決まっているだろ、愛だよ」
「愛だと?」
「生き物だったら、誰だって備わっている。
自分よりも大切な奴がいれば、その身を犠牲にしてでも守る」
「それが人間の強さか?」
「言っただろ、生き物だったら、誰だって備わっている。
それは、てめぇも変わりないだろう。
あの家族の元に行ってやれ」
「・・・俺に愛」
「アンデットだろうと、なんだろうと関係ない。
何よりも、てめぇが責任を感じるなら、最後まで守りやがれ」
「ふん、変わった人間だな」
「お前のようなアンデットに言われなたくない」
そう言いながら、始はその言葉を最後に、そのまま去って行った。
ため息を吐いていると、後ろから歩いてくる音に振り返る。
「よっ、久し振り」
「お前、無事だったのか」
「無事、という訳じゃないけどな」
そう言いながら、青年はそのまま右手を見せた。
それは生身の人間ではなく、機械の腕だった。
「その腕は」
「あぁ、こっちに転移する時にちょっとな。
けど、思った以上に義手の技術があって良かったぜ。
ライダーシステムの応用で、なんとかな」
「たく、あとで来い。
幾ら義手だろうと、生身と接触している以上、診断は必要だ」
「お前は相変わらず硬いなぁ」
「てめぇは少し大雑把なんだよ、錬司」
同時にその少年、錬司の懐には1枚のカードが現れる。
そこに刻み込まれているのはAの文字が刻まれた鍵で閉じられた籠の中にいる、黄色い羽が特徴的な鳥が描かれていた。