「これまでのデータを元に作られたトライアルだ。
量産モデルだが、かなり性能が良くてね」
そう言いながら、橘は目の前で作られたトライアルを見つめる。
「それで、君はどう思うかね?
刀磨君については」
「確かに、偽名である可能性はあるかもしれません。
けど、それだって、何か理由があるはずです」
言葉と共に刀磨達と戦った日々を思い出すように、問い詰める。
「橘君。
君は一つ勘違いをしている」
「勘違いだって?」
「私は彼らの名前を偽名だとは言っていない。
むしろ、本名だと思っている。
問題は、どこから来たかだよ」
「どこからですか」
「トライアルを開発しても、不老不死はできない。
だが、彼らが持つ人造アンデットは、不老不死を完全に作られた。
ならば、その人造アンデットはどこから来たんだ?
私はそれが知りたい」
「その為に、彼らを」
「それに、今も戦いは始まっているよ」
「っ」
同時に画面を見つめる。
そこには未だに揃っていない仲間を待つように、剣崎、刀磨、そして手を組む事になったキングの戦いが行われていた。
それは、まさに異様な光景だろう。
本来ならば、敵対している相手だろう仮面ライダー剣とコーカサスビートルアンデッドの2人。
その2人と共に、俺もまた目の前にいる存在と戦っていた。
「フェンリル」
その名の通り、巨大な狼だった。
本来ならば人型であるはずのフェンリルアンデットは、ここまでの間に多くのトライアルを捕食した結果、規格外の巨体の狼へと変わっていた。
フェンリルアンデットの口から放たれる、高熱を帯びた光弾。
それを回避するために跳躍し、俺は上空からブレードラウザーを振るう。
空を切り裂くように振るわれた剣は、しかしフェンリルアンデットが纏う外骨格により防がれてしまう。
金属音が響き、俺は空中で体勢を立て直す。
着地と同時に再度フェンリルアンデットに向かって行こうとするも、それよりも早く光弾を放ってきた。
回避のために身を捻る。
だが、完全に避けきることは出来ず、わずかに掠ってしまった。
衝撃が全身を走り抜け、俺は苦悶の声を上げながら吹き飛ばされた。
地面を転がりながらもなんとか体勢を整えようとするも、その間にフェンリルアンデットはその光弾を再び放っていく。
「まったく、何をやっているんだか」
その言葉と共にコーカサスビートルアンデットは俺の前に立つと、その腕にあるソリッドシールドで防御する。
さすがにカテゴリーキングの持つ武器と言う事もあってか、その防御力は強固であり、なんとか光弾を反射する。
同時にジャックフォームへと変身していた剣崎さんはそのまま上空からフェンリルアンデットに斬りかかるも、やはり外骨」格によって防がれた。
「ぐっ
そのまま押し切ろうとするも、フェンリルアンデットは強引に押し返すことで剣崎さんの勢いを殺す。
そこに向かって、俺は蹴りを叩き込む。
「まだまだぁ!!」
腹部を狙った蹴りだったが、フェンリルアンデットは身を捩ることで回避した。
舌打ちをする暇もなく、フェンリルアンデットが追撃してくる。まるで獣のように鋭い爪による連撃を繰り出してくるフェンリルアンデット。
それを捌いていく中、再び光弾。
俺は回避を選択しようとした瞬間、目の前に立つコーカサスビートルアンデッドが前に出る。
盾となったコーカサスビートルアンデッドの体を貫く光弾。
それでも彼は倒れることなく耐えると、こちらに向けて言う。
「さっさと行け!」
「あぁ」
コーカサスビートルアンデットの言葉を聞くと共に、俺はその場から離れる。
そんな俺に対し、フェンリルアンデットは追撃を仕掛けてこない。
ただジッと、何かを見定めるかのようにこちらを見てくるだけだ。
その視線を受けつつ、俺は走りながら、同時にジャックフォームへと変身する。
「剣崎さん!」
「あぁ!!」
【WATER】【TWIN】【KICK】【スプラッシュデュアル】
【Thunder】【MACH】【KICK】【ライトニングブラスト】
鳴り響く音声と共に、俺は水流を、剣崎さんは電撃を身に纏う。
そして、そのままフェンリルアンデットに向けて、同時にライダーキックを叩き込む。
電気と水、そして俺達の相互作用によって、その威力は何倍も高まり、さらに加速していく。
このままフェンリルアンデットを押し切ることが出来た。
やがて、フェンリルアンデットは吹き飛ばされ、そのまま地面を転がる。
それと共に、バックルが開き、同時に俺はラウズカードを投げる。
それによって、その手にはフェンリルアンデットが封印された。
「これで、なんとか」
「っ」
同時に周りを見つめる。
そこには、このタイミングを見計らうように、トライアル達が迫っていた。
それは、まるで俺達がフェンリルアンデットを倒すのを見計らうように。
「こいつらっ」
「あぁ、やばいですね」
どうやら、俺達のライダーシステムをコピーした存在みたいだ。
本格的にやばい。
「僕も結構限界だね」
そう言いながら、先程庇ってくれたせいなのか、キングのバックルも開いていた。
「本当だったら、さっさと逃げたいけど、こいつら相手では逃げられないね。
だったら、ブレイド」
「なんだ」
「僕を封印しなよ」
「なっ」
まさか、キング自身から封印をしろとは、予想外だった。
「僕はね、人間は気に入らないけど、こいつらに利用されるのはもっと嫌いだ。
だったら、共闘しても良かったお前に封印される方がマシだね」
「良いのか」
「けど、気をつけなよ。
レンゲルのようにならないようにね」
同時に、剣崎もまた頷くようにラウズカードをキングに投げる。
「キング、俺に力を貸せ」
「フェンリル、皆も、一緒に行くぞ」
背中合わせになりながら、俺達は互いにエボリューションキングをスキャンする。
【アブゾーブクイーン】【エボリューションキング!】
鳴り響くと共に、俺達はそのまま自身のキングフォームへと変わっていく。
剣崎さんの姿は、かつての資料で見た事のある黄金に輝く13体のアンデットが融合した姿。
そして、俺もまた、あの時は果たせなかった姿へと変わっていく。
右肩に金狼、左肩に銀狼の装飾が付き、背中に赤い仁王襷が装備された。
それと共に鎧の各部には、ラウズカードに封印された人造アンデット達の紋章が刻み込まれる。
同時に片手に持つブレードラウザーとはもう一つ、一回り巨大な刀、ジェネラルラウザーを手に持つ。
【FINALBENT】
鳴り響く無情な音。
同時に俺に襲い掛かる衝撃。
胴体を貫くような痛みと共に、俺はゆっくりと倒れる。
「負けたのかっ」
突き刺さるような痛みに負けないように、なんとか立ち上がる。
「おいっしっかりしろ」
そう言いながら、倒れた俺をなんとか起こすように、相変わらずお人好しな城戸さんが揺さぶる。
「ちょっと、痛いですよ」
「馬鹿を言っているんじゃないぞっ、なんで無茶を」
「無茶でも、なんでも、そうしないと戦えないですから」
既に俺自身が死ぬ賭けている事は分かっている。
こんな行動をしても、無駄だと分かっている。
それでも、城戸さんには生きて欲しい。
「駄目だったか」
「おい、しっかりしろおいっ!!」
そう、城戸さんの絶叫を聞きながら、俺の意識は、完全に途絶えた。
そして、それと共に
【THYMEBENT】
「っ!!」
浮き上がった。
目を覚まし、俺が始めに見たのは、見覚えのある時計だった。
時刻は見慣れている。
そして、日時もまた。
「これで100回目」
俺は、この奇妙な、何度も繰り返し行われている狂ったライダーバトルに参加されていた。
始めは偶然だった。
拾ったカードデッキと共に、襲い掛かってきた狼型のモンスターと契約した事が始まりだった。
だが、そのモンスターの強さがあまりにも弱かったのか、他のライダーと戦っても簡単に負けてしまった。
意識が途絶え、死を覚悟した。
だが、その度に
【THYMEBENT】
聞こえる音、それと共に俺は、初めてライダーバトルに参加した日に巻き戻される。
それから、何度も何度も、ライダーバトルに参加しない為に逃げたが、運命は俺を逃さないように、カードデッキは置かれた。
拒否すれば、モンスターの餌となって死ぬ運命が待ち受けていた。
だからこそ、俺はある意味賭けなければいけない。
「ライダーバトルを終わらせる。
それが、このループから抜け出す方法だ」
幾度も繰り返されるループの中で、なぜ巻き込まれるか分からない。
それでも、俺が持つのは何度もやり直した事で分かるモンスターの特徴、そして俺が必ず契約するモンスターの特徴。
何よりも、ループの中で、必ず信用できる人物。
その人物と関わる事が、ループを抜け出す事ができる鍵だった。
「お前は」
「俺も仮面ライダーです。
まぁ、戦うつもりはありません、城戸さん」
「なんで、俺の名前を」
「まぁ、戦うには情報ですから」
仮面ライダー龍騎に変身するお人好しである城戸さん。
彼が変身する龍騎は、どのループだろうと、必ず終盤まで生き抜く。
ライダーに対しては消極的だが、モンスターとの戦いを見る限りでも、その実力は高い事は簡単に分かる。
ライダーバトルを勝ち抜いて、優勝しても、ループから抜け出す方法ではないだろう。
ならば、見つけてやるよ、これを引き起こした張本人を。
「俺と手を組みませんか」
仮面ライダー龍騎は何度もループを繰り返しており、主催者である神崎以外は記憶がなくなっております。
なので、もしもそんなループを自覚している主人公が、そのループを抜け出す為に行動する設定は面白いと思ったので、思わず書いてしまいました。
ループを繰り返しても、誰が味方か敵か分からない状況はある意味、人狼ゲームとよく似ているので、思わず狼モチーフのライダーとさせて貰いました。