おそらく、これから先、一生出会う事のない友の気配だった。
人間の中で暮らせと言った友が近くにいる。
本当ならば、飛び出したかった。
だが
「お前はっ」
そこに降り立ったのは最後のカテゴリーキングだった。
あの戦いで見せた人間を思わせる知性には既になく、まさに獣を思わせる存在だった。
今、禍木はダークローチに囲まれ、三輪はアルビノジョーカーの攻撃で上手く動く事ができない。
この場で、戦う手段を持つのは、俺1人だけだった。
だからこそ、今、目の前にいる脅威から、大切な存在を守る事が優先だった。
「だからこそ、あの子を頼むぞ、剣崎」
友の名を告げながら、その手に、戦う為のカードを手に取る。
これを使い、理性が残るかどうかは分からない。
それでも、友に恥じる戦いをしたくない。
「変身!!」
【CHANGE】
鳴り響く音と共に、俺は再び戦う。
仮面ライダーとして。
グレイブへと変身した刀磨はそのまま手に持ったグレイブラウザーを手にしながら、目の前にいるアルビノジョーカーに戦いを挑んでいた。
先程までは小学生であった彼の身長はグレイブに変身した事によって、大人と変わらない大きさへと変わっており、片手剣であるグレイブラウザーを軽々と持ち上げ、斬り上げていた。
「これはっ」
そんなグレイブラウザーの一撃を受け止めながら、アルビノジョーカーは驚きに目を見開いていた。
アルビノジョーカーの左腕に生えた鋭利な爪はグレイブラウザーの一撃を食らうと、簡単に切り裂かれており、その威力に驚きを隠せなかった。
そうしている間にもグレイブはその本能に身を任せるような動きでアルビノジョーカーに攻撃を仕掛けていく。
その攻撃を受け止めながら、アルビノジョーカーは冷静にグレイブを見つめる。
(目の前にいるグレイブは俺が変身していた時と比べても明らかに強い。
それは、奴のアンデットとの異常な融合係数に関係している。
それを考えれば、子供だが、この強さは納得できる)
そうしながら、グレイブの攻撃を受け止めながらも、アルビノジョーカーは考えていた。
しかし、それとは別に目の前のグレイブに対して違和感を覚えてもいた。
その理由として、先程のグレイブの動きにはどこか迷いがあったからだ。
その迷いの正体がなんなのか、アルビノジョーカーは考える。
「ぐっ」
そうしていると共にアルビノジョーカーの身体は傷つく。
身体からはアンデットの特徴である緑色の血が流れており、地面に垂れ落ちていく。
その様子からアルビノジョーカーは舌打ちをするが、それと共にグレイブの動きが止まったのが分かった。
(あぁ、そういう事か)
その迷いの正体が分かると共にアルビノジョーカーはその外道に満ちた笑みを浮かべる。
「刀磨っ、酷いじゃないかっ」
「っ!?」
アルビノジョーカーはそう、志村純一の声と共にその姿を人間の姿に戻す。
「お前っ、何をふざけた事をっ」
「巫山戯てなんかないさ。
俺は痛いんだ、あの火事の時からずっと」
そう、身体を人間の姿に戻すと共に、まるで火事を思わせるような格好でゆっくりとグレイブに近づく。
「あの時、炎から、アンデットから守った俺を、お前はまた殺すのか。
俺を犠牲にして、またお前は生きるのかっ」
「違うっ、お前はっ兄さんじゃないっ!!」
そう否定しようとする。
だが、その動きは先程までアルビノジョーカーを追い詰めていた動きではなかった。
「あぁ、そうだ。
けど、この姿で、この言葉は、志村純一で間違いない。
お前は、俺を犠牲に生きたんだ。
仇討ちなんて、お前の自己満足で、俺の恨みなんて、晴らしていない!!」
アルビノジョーカーはそのまま志村純一の姿のまま追い詰める。
それに対して、グレイブは否定するように首を横に振りながら、後ろへと下がる。
そして、そのままグレイブラウザーを手に持つと、そのまま構えていた。
その行動を見て、アルビノジョーカーは笑みを深めながら、言う。
「それで、俺の身体を真っ二つするんだな。
あの時の俺の身体のように」
「あっあぁ」
そのアルビノジョーカーの言葉に、グレイブは再び動きを止めてしまう。
先程までの勢いは完全に消え失せてしまっていた。
それは、目の前にいる存在が確かに自分にとっての兄であり、大切な存在であった事を再確認してしまったからである。
その隙だらけとなった姿を見たアルビノジョーカーは笑いながら
「まったく、これだから人間は甘いんだ」
「っ!!」
その言葉と共にアルビノジョーカーはそのままグレイブに向けて、強烈な一撃を食らわせる。
「がぁ!?」
そのまま、吹き飛ばされたグレイブは薄い道路へと転がる。
同時にグレイブの腰にあるバックルは閉じられ、姿は元に戻る。
少年は恐怖に蝕まれながらも、目の前にいるアルビノジョーカーに向けて、怒りの声を叫ぶ。
「お前っ、兄さんの姿でっ」
「まさか、こんな簡単な手で倒せるとはな」
そんな少年に対して、アルビノジョーカーは笑いながら、ゆっくりとその手の鎌を向ける。
「ここまで傷つけたんだ。
向こうで兄さんと一緒に楽しく暮らしておけ!!」
死を覚悟した。
その瞬間だった。
聞こえてくる足音と共に何かが刀磨に見えた。
全身を黒いスーツに身に纏っている、目元はサングラスをつけていた。
「彼は弱くない。
弱いのは、お前だ、ジョーカー」
「貴様っまさかっ!!」
その人物を知らない刀磨は見つめている間にも、男の元に飛んできたのは始が使っていたブレイドバックルだった。
まるで男が元の持ち主と言わんばかりにブレイドバックルはそのまま腰に巻かれる。
【TURNUP】
鳴り響く音と共に黄金の輝きと共に、その戦士は姿を現す。
その存在に、ジョーカーは驚きを隠せなかった。
「まさかっ、お前はブレイドっ!」
同時にブレイドは刀磨を守るように前に立つ。
「あなたは」
「俺は剣崎一真。
またの名を、仮面ライダー剣」
身に纏う感覚は、どれほど久し振りだっただろうか。
人間を辞めたあの時から、もうこの姿になる事はないだろうと思っていた。
それでも、今、もしも再びこの姿で戦うのならば、俺は迷わない。
「人々を守る事がライダーの仕事ならば、俺は戦う!」
それと共に手に持つ剣を、見たことのないジョーカーに向けて。
「お前には、容赦はしない」