LAST LORD   作:シラネ

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1話

整備がされずそのままになった風化した石畳の道、廃屋の壁や柱。それを照らす薄暗い街灯の数々。

女王である、私は剣を構え、遠く存在する倒さなければいけない敵を見張る。

 

 

空気がピンと強く張り、同時に風圧が襲いかかる。その風圧の影響か、既に崩れ掛けていた柱が二本、私のもとに降ってくる。

 

「ヨウカ!危ねぇ!!!」

 

風圧を受けた反動か動けなかった私をタックルするような形で私を突飛ばし、柱が落ちてくる所から避けさせた。

 

「ボケッとするなよ!次がいつ来るか分からねぇ!」

 

戦友は即座に立ち上がり、私の手を強い力で引っ張り、身体を起こさせる。

 

「ごめん!ちゃんとする。」

「ああ、油断はするなよ!」

「ヨウカ!大丈夫!?」

「目立った怪我は見当たらなそうだな。」

「うん。……さて、いくか。」

 

他の戦友である二人も合流し、体制を立て直す。

 

 

そして、私たちは、異常な威圧を放つ不気味で末恐ろしい彼女に対峙するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

勇者と呼ばれた四人が世界の存亡を掛けた闘いをする6年前。

 

 

ヨウカ・イリス・ブランケは彼女の父親に謁見していた。

 

 

「……旅の行程、日程を了承し、ヨウカ王女の出発を認める。」

「ありがとうございます。陛下。」

「旅の無事を祈る。……皆、下がって良い。」

「御言葉、感謝致します。」

 

 

イリス王に謁見していたヨウカを含む四人は、謁見の間をおずおずと退出し、エントランスホールまで出てからようやく、口を開いた。

 

 

「お前さぁ……もうちっとうまいこと言えなかったもんなの?」

「王女様ってもっと凛々しくないと! 」

「今の時点でこれだからな……。これからどうなることやら。」

「言えるものなら、言いたいし、凛々しくありたいけど出来ないんだよ……。」

 

ヨウカは、先ほどの謁見で見せた応答について一緒に謁見させられていた仲間達に文句を言われていた。

 

そのうち、ヨウカの耳にタコが出来そうになるほどにグチグチ文句を言われ続けていたが、

 

「ヨウカ様!」

 

と、呼び掛けられたことにより、それは収まるのだった。

 

 

ヨウカ達一行を呼び止めたのは、王宮の侍女長である、ルナ・ハーベストだった。また、その横ではルナに支えられるようにゆっくりと足を進める、セミファ陛下だった。

 

既にかなりの高齢になっており、歩くのも困難な陛下は杖をつきながら四人を追いかけていた。

 

「色々と後になってから言いたいことが出来るものでな。公の場ではないから畏まらなくて良い。」

 

四人が敬意を示そうとするのを制し、セミファはヨウカを向く。

 

「どうされたのですか?」

「いや、最後に娘と話したいというのが世の父親というものよ。」

「最後なんて言いきられては嫌ですよ。そんな事分かっていないのに。」

「いつそうなるか分からない。ヨウカにとって私が真の父でないにしろ、私はヨウカと話したい事は沢山あるのだから。」

「ネガティブ思考からの安全策は止めた方が良いと思う。聖王国との会談もあるし。」

「言うようになったものだ。でも、それを治すような時間は残されていない。……ヨウカや仲間達の話はヨウカが無事に旅を終えてからゆっくりと聞かせてくれ。」

「分かりました。お父様。」

「……ただ、私の言うことは少しでも覚えてくれていたら嬉しい。……直ぐには帰ってこれない。投げ出すことは許されない。そんな使命を負った私の娘。めげずに常に胸を張って生きてくれ。」

「大丈夫よ。そんな簡単に諦めるように貴方に育てられた私じゃあないもの。」

「頼もしいな。」

 

久々に見た父親の顔。いつもは国の象徴としての顔をしている陛下の顔が父親の顔になる時をヨウカは好んでいた。

 

 

「……私にとっては自慢の娘だ。その事は相手側にも伝わっておることだろう。だが、そんな娘でも困難は必ず訪れる。その時は一緒に行動を共にしてやってくれ。」

 

セミファはヨウカの友人である三人を向き、懇願する。

そんな状況に三人は慌てつつもしっかりと行動をすると誓い、セミファを安心させるのだった。

 

 

 

では、行って参ります。お父様。

 

十分に気を付けてな。私の娘よ。

 

 

そうして、彼女達四人組は、王都アルケイディアを発つのだった。

 

 

 

 

 

 

私は非常に安堵していた。車の免許を持っておくことは非常にステータスになるのだと感じた。だが、同時に酷く不安も覚えていた。最初運転していたグラキエは運転者なのにも関わらず、車酔いを起こしてしまっていたのだ。そして、代わりに私が運転する羽目になっていた。(王女なのに。)

 

「貴女達。なんで私が運転しているのよ……?」

「そんなもん、お前以外に運転できるのがいないからだろ?王女様の目の前で無免許運転は流石にな……?」

「車の免許ぐらいは持っててよ……。」

「……気持ち悪い……うっ。」

「グラキエ!ステーイ!!!我慢して!」

 

アクセラがグラキエを必死に看病するなか、ヨウカは焦ったようにスピードを上げ、スクトゥムはスマホの地図アプリを開いてグラキエを休ませることが出来る場所を探していた。

陛下から賜ったこの車には様々な機能があるくせにナビは無かったのだ。

 

 

「おい、あっちの方角に向かえ!そうすりゃ小さい町があるからそこで休ませようぜ!」

「分かった!」

 

 

この時、後に世界を揺るがし、永劫に消えない傷を世界にもたらすことになる事件が起ころうとしていた……。

 

 

 

「……!」

「グラキエ!!!ダメェェェ!!!」

 

 

 

アクセラが叫ぶのも虚しく、真っ青になったグラキエは虹色の水を車内に流してしまった。

 

 

「……。カークリーニング行きだな。」

「……。そだね。」

「す、すま……ない……。」

「グラキエ……我慢って言ったのに……。」

 

 

こうして、すっかり気分が暗くなってしまったヨウカ達は最初の町、オーバーフィクスに向かうのだった。




キャラクター紹介

ヨウカ・イリス・ブランケ

イリス王国第一王女。イリス王国唯一王位継承者。12歳よりセミファの養子になると同時に王女としての権限を所有することになった人物。旧名はヨウカ・ホムラ。元の名前があれなので火の扱いや火魔法は得意……という訳ではない。普通である。

グラキエ・ホルン

イリス王国宰相の子女。最初は王女になったばかりのヨウカの世話係だったが、ヨウカ自身がそこまで世話されないといけない程の人間ではなかった為に主に話し相手、稽古相手としてヨウカと接していた。趣味は色々とあるが、変な意味で目立つのは男装趣味。乗り物酔いは最近なってしまった。

スクトゥム・フィデス

イリス王国近衛将軍の子女。男勝りな性格だが、姉貴面で何かと便りになる存在。ヨウカのことはお前と呼ぶこともあるが、ヨウカは気にしてない。意外なのはスクトゥムがパーティー全体の金銭管理を担当しているということ。頭は決して悪くない。

アクセラ・リベルタス

ヨウカの中学・高校の学友。一般人(元々ヨウカやセミファなどとは無関係な人物)でヨウカに気軽に話しかけることが出来るのは恐らく彼女ぐらい。本人曰く、パーティーのムードメーカー的存在らしく、何かとサポートに徹することが多い。
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