「行ってきまーす」
「いってらっしゃーい。野生のスーパーファミコンに気を付けるのよ~!」
兵藤一誠
HP 100/100
AP 100/100
ATK 15
DEF 20
《保有スキル》
◆索敵LV1
◆身体能力強化LV1
《実績》
◆はじめの一歩
《技コマンド》
◆パワースラッシュ 消費AP50 威力105
俺が朝ご飯の湯豆腐を食べた後、このウインドウについて色々と判明した。
①このウインドウは俺にしか見えない。
②音声も俺にしか聞こえない。
③手元にすぐ出せるものは必ず手に収まるように出る。
④クエスト中は現実の時間が一切進まない。(起きた時間と戻って来た時間がほぼ変わらなかった)
そして……
「うおおおおおっ!? めっちゃ早く走れるし疲れんぞおおおお!?」
⑤スキルは現実世界においても反映される。
ということである。
否、それだけでは無い。
「わほわほ」『犬 5/5』
「にゃガガガガガガが……」『猫 5/5』
「今日も取引先にわが社のパイナップルを買わせてやるぞー!」『サラリーマン 115/115』
「婆さん飯はまだかのぉ?」『近所のジジイ 10000/10000』
「\(^o^)/オワタ」『競馬に全負けし有り金を溶かした2ちゃんねらー 1/2』
「セガサターン……シロ!」『野生のセガサターン 32/32』
(うわあ、すれ違うだけでもさっき見たいな表示が出てくるなぁ……近所のジジイ強くね?)
この様に俺の視界では人や犬や野生のセガサターンなどと言った生き物のHPが現れては消え現れては消え……を繰り返している。鬱陶しいから切っとこ。
いつもなら大体30分くらいで俺の通う駒王学園(わりと最近共学化したらしい)にたったの5分で着いてしまった。サラブレッドもびっくりである。と思っていたら何やら校庭の方が騒がしかった。
「なんだろ?」
すぐに校門をくぐれば人だかりが出来ていた。見れば校庭の真ん中で痛々しい改造がされた高級車が暴走しているであーりませんか。
「げひゃひゃひゃひゃ!!! どうした高校のお子ちゃまども!!! てめーらみてーな優等生にはこんなこと出来ねーだろ!!!」
「ぎゃひゃひゃひゃ!!! 上級国民のぼきゅ達にこの校庭を献上することだなぎゃひゃひゃひゃ!!!」
え?何あれは?
「うわぁなんだよアレ」ヒソヒソ
「追い誰か警察よべよ!!!」
「馬鹿言え、あの兄弟は大企業の○○会社の息子だぞ! 無能な警察はすぐ釈放するぞ!」
(うーん朝の時と言い今日は色々と濃い一日になりそうだ……)
などと思っていると痛々高級車はこちらに向けて突っ込んできた。どうやら俺たちが避けるとでも思っているのであろう。
「げひゃひゃひゃひゃ!!! オラオラどけどけ底辺ども!!! 上級国民様のお通りだ!!!」
「ぎひゃひゃひゃひゃ!!!」
「おいこっち突っ込んでくるぞ」
「あかん逃げろ!!!」
「ちくわ大明神」
「おい何ぼさっとしてんだ逃げろ!」
(あ、あれ?)
ここで俺はある事に気が付いた、あのクソ兄弟の乗っている高級車は優に時速180㎞は超えているだろう。しかし、俺の動体視力はそのスピードに寸分なくついていけているのだ。よくハエや蚊は人間の動きがスローモーションのように見えているという話を聞くがそれと似たようなものであろう!!!
「ぎゃひゃひゃひゃ!!! 兄ちゃん逃げ遅れたやつがいるよ!!!」
「げひゃひゃひゃひゃ!!! 構わねえ轢き殺すぞ!!! 俺たちは上級国民だから何をやっても許されるんだよぉ!!!」
「あっ君逃げろ!!!」
「お刺身大納言」
(……)
次第に高級車は俺の目の前に来たが、俺はそれをスクランブル交差点ですれ違う人を避けるかのような自然な動作で左に避けた。避けてしまったのだ。そしてこれはほんの出来心に過ぎなかったのだが……。
「いい加減にぃ……」
俺は、右腕を構え普通に殴る位のつもりで……。
「しろっ」
裏拳を叩き込んでしまった。
ゴシャアッ!
瞬間、高級車が右にそれ車体が浮き上がる。
「げひゃ!?」
「ぎひゃ!?」
(あ、やべ)
そのまま高級車は浮きながらスピンし、そのまま裏返しになった。
「「ぎゃああああああああああ!!!!!!!」」
クソ兄弟はそのまま投げ出され校庭に叩きつけられ気絶した。
「……えなんだ今の」
「今あいつ殴ってふっ飛ばさなかったか?」
「いやそれ以前にあの猛スピードの車を避けてなかったか」
ざわざわと、ホンの数名の視線がクソ兄弟から俺の方に向く、これは非常に不味い不味いぞ……。まさか身体能力強化がここまでのモノとは予想できなかった。腹いせに裏拳をかますつもりがハリウッドである。そう思ったので俺は……。
「わしゃしゃしゃしゃっ! バッカでぇー!!! こいつらチキってハンドル切って自爆してやんのー!!! わしゃしゃしゃしゃっ!!!」
取り合えず、あのクソ兄弟が自爆したことにしてお茶を濁す事にした……。
さて、あの後誰かが通報したのか警察とそのあとあのクソ兄弟の親(多分どっかの会社の社長)がやって来た。警察は社長を見るなり恭しそうに頭を下げていてこびへつらう様子であったが肝心の社長の顔は青ざめており、何かをうわごとのようにつぶやいていた。よくテレビで見るのだがあのクソ兄弟の父親は警察と癒着しているとマスコミに詰められている時は「そんなものは知らん!」と怒鳴り散らしているのだが。今ではその様子が一切見られない。寧ろ何かに怯えているようである。
因みに俺はというと警察が来たことにより野次馬が集まり始めたため騒ぎに乗じ、さっさと教室に戻らせていただいた。
「よっ、イッセー! 朝から大変だったらしいな! なんかクソ兄弟の車がハンドルミスってひっくり返ったんだって? 朝練がなきゃ見物できたのになぁ」
「確かあの警察との癒着で有名な兼田割造社長の馬鹿息子どもが騒いでたらしいな。俺も図書委員でいなかったけど」
「あっ、そういやお前ら居なかったな」
教室から事件現場を見下ろしていると一誠の友人である松田(丸刈り)と元浜(メガネ)がやって来る。どうやら二人とも所用であの場には居合わせていないようだった。
松田も元浜も一誠と同じように教室のベランダに出て、松田は恐らく学園備え付けの自販機から買ってきたであろうスポドリを二人に手渡した。一誠はそれの蓋を開けながら一言。
「あーあー、こんな騒ぎになっちゃって。これじゃ午前の授業は潰れただろうな」
「いやイッセー案外早いかもしれないぞ何たって相手はあの警察と癒着してる社長様だからな! 観ろよあの警察の姿、俺たちの税金があんなのに費やされていると考えると呆れてものも言えないね」
「全くもって同感だな。……イッセー、元浜、俺はあの社長とクソ兄弟が二限までに無罪放免になるのにカツサンド三個賭けるぜ」
「松田お前、不謹慎だっての。はは、この元浜様は一限までに釈放でちくわサンド三個賭けるぞ」
「おいおいお前らこんなのでトトカルチョすんなっての。ンモー」
学園以来の事件をネタに賭け事をする友人二人を尻目にスポドリを飲みつつ校庭でレッカーされていく高級車を見てよもや指紋鑑定とかされないだろうな。と一瞬不安がよぎったがよく考えれば裏拳だから何の問題もないし殴った部分は事故にあったのか如くひしゃげていたから問題ないとガタイで判断した。
しかしながら、様子がおかしいことに気づく。あの警察癒着社長があのクソ兄弟をこれでもかと怒鳴りつけている。遠くのためあまり聞き取れないが「よりにもよってあのお方達の学園でーー-!」などと喚き散らしている。
「あれ? 警察と癒着してるっていうのに随分うろたえてないか?」
と一誠が問うと、二人も同じことを考えていたようだ。
「確かに、警察に賄賂渡してはいサヨナラかと思ったんだが」
「なんかテレビで見た兼田割造とはイメージが違うな……ん? おいあれ見ろよ」
松田が何かに気が付いたようで指を指す。二人が指し示された方向を見れば、制服を着た集団がぞろぞろと出てくる出てくる。三人はその集団に見覚えがあった。松田がスポドリを飲み干した後に口を開く。
「おい、あれって」
「ああ、生徒会とオカルト研究部たちだよな?」
校庭に現れたのはこの駒王学園では知らないものはいないという生徒会長の支取蒼那とオカルト研究部の2大お姉様ことリアス・グレモリーと姫島朱乃が生徒会と研究部メンバーを引き連れてやってきたのだ。
あのクソ社長は先輩方を見るや否やいきなり土下座して何かを喚き散らしている。社長に媚びていた警察は先輩方に何かを言おうとしたのだが飛んできた上司であろう警察官に殴り飛ばされ土下座させられていた。
「なんだ?こんなときは普通教師が出てくるもんじゃないのかよ?」
「そうだな、生徒会は分かるけどなんでオカ研の連中が出てくるんだ?」
(妙だな……)
一誠は不審感を覚え、切っていたウインドウの表示をオンにしてリアス・グレモリーに視線を移した。
(え……?)
ウインドウに移されていたのは……。
『リアス・グレモリー 2000/2000』
(え? 何この数値は)
明らかに今まで見てきた人間とは思えないHPの数値であった。一誠はすぐに松田と元浜に向き直る。
『松田繁雄 100/100』
『元浜夏彦 80/80』
どう見てもこの場において異常な数値を叩き出していた。若干動揺する一誠を余所に、校庭ではリアス・グレモリーがクソ社長に対して何かを行ったとたんクソ社長はキチガイのように発狂し、警察から拳銃を奪い取り自殺を図るがすぐさま取り押さえられた。遠くからでも「終わりだ!破滅だ!何もかも?!ほひっ、ほひひひひひひヒヒヒヒッ!アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」と喚き散らしている。
そして、何処からかやってきた黒服の人々にクソ兄弟媚びていた警察諸共連れ去られ、そのまま生徒会とオカ研メンバーは校舎へと戻っていった。ちなみに高級車はレッカーされていった。
「おう松田、元浜、賭けるまでも無かったな」
「そうだったな、でも何なんだろなアレは?」
「確かグレモリー先輩達っていいとこのお嬢様らしいぜ。
松田は飲み干したペットボトルを教室のゴミ箱に投げ込んだ。燃えるゴミであった。
「えー、であるからして民明書房の資料によればこのとき清少納言は紫式部に対して『テメェの乳首引きちぎって私のと交換してやろうか!?』……と喧嘩を売ったわけですね」
「あーつまんね、結局アレ何だったんだろ」
あの後、まるで何もなかったように授業が始まった。一誠の苦手とする古文の授業であったので一誠は退屈だと思いウインドウを眺めていた。スマホのようにフリックせずとも頭の中で思っただけで操作出来るようであった。
ファンタジーゾーンのクラブンガーの様な顔をした古文教論とウインドウを交互に眺めつつ、ミッションの項目に「!」マークが表示されている。
(あっ新しいミッションの項目かな?どうせ時間進まないみたいだし行ってみようかな)
☆1盗撮犯を懲らしめろ!
やぁまたあったね一誠くん!今回はチュートリアルのおさらいだよ!トレセン学園の女子生徒達が盗撮の被害にあっているぞ!どうやら盗撮犯は自分の姿を透明にする能力を持っているから捕まえる事が出来てないようだ。しかし、キミの強化された身体能力と索敵スキルなら匂いや音で気付くことが出来るハズ。前回の報酬を活かして卑劣な盗撮犯を懲らしめてやろう!
失敗条件
・3回力尽きる。
・ターゲットの死亡。
報酬
・片手銃【ハイ=G=コウ】
・大剣【バン=D=リア】
・大鎌【ニワ=C=キング】
・見た目装備【ウマウマ変身セットウマ耳&ウマ尻尾】
・ランダムなアイテム
・5000cp(クリアポイント)
・マイワールド開放
(トレセン学園って何処の学校だろ?トレセンって聞いたら競馬のトレーニングセンターしか思い浮かばないしなー。騎手学校か?……ん?)
どうやらミッションの説明文はまだ続いているようであった。
ミッションに出発しますか?
yes/no
(ウマ娘……?女性騎手専門の学園なのか?まあいいや、ちょっと行ってこようかな)
一誠は特に深く考える事無くインベントリ内に前回のミッション報酬の太刀【邪剣・夜】が有ることを確認し、ウインドウのyesを押した。
ところ変わって、トレセン学園。ここでは日々勝利をもぎ取るためウマ娘達が鎬を削っている学園であり、またの名を婚活会場とも呼ばれている。
ウマ娘とは異世界の競走馬の魂を受け継いだ目麗しい種族であり、人類と共生し、今ではアイドル兼世界の中心的スポーツ選手と化していた。
そんな表向きはきらびやかなトレセン学園であるが、その一室、理事長室では重苦しい空気が流れていた。
理事長室の椅子に座っているのは、大きな帽子とその上に乗った猫とどう見ても幼女な理事長『秋川やよい』とその前に立つ緑色を基調とした服と帽子を被る秘書『駿川たづな』、そしてその前にはトレセン学園の歴史学教師であるネクタイがデカ過ぎる男『ネクタイデカスギ』と古文教師のガタイの良い公家の様な男『肉体派おじゃる丸』達が神妙な顔つきで何かを話し合っている。
ちなみにネクタイデカスギと肉体派おじゃる丸はウマ娘シンデレラグレイ87巻から登場しているので気になった人は読んでみよう!
「憤怒ッ!このままではいかぁーんッ!」
「こんな事絶対に許してはいけません。大事になる前に犯人を捕まえなければ……!」
「被害件数は110弱くらいでしょうね、ええ」
「警備システムが作動してないのに明らかに侵入されていて笑っちゃうんすよね。何者かが手引きしてる可能性が濃いすか?これは警備員の連中が怪しいんじゃないですかね?」
明らかに不穏な内容である。
「うむ、肉おじゃの言うとおり警備員の面々を嘘発見器に掛けて調査を行ったが誰一人として不審な点は見つからなかった!」
「しかし、被害は増えつづける一方です……。もしかしたら最近現れ始めた『異能者』かもしれません。デカスギさん、お知り合いの迫真空手部の皆さんになんとか協力を得ることはできないでしょうか?」
「たづなさん、それは無いですね。彼らは今下北沢で『異能者』の対応に追われてて戻って来るのはあと110弱くらいでしょうね、ええ。なんかもう、バラマキ、されそうで怖いっすねなんかね(未来予知)」
「うぅ〜、どうにか証拠を掴めれば良いのだが……『異能者』とあればそうもいかんだろうな……」
「しかしですねぇ理事長さん。こないだストーカーを捕まえるために警察を頼ったらそのストーカーが警察だったってオチでしたし警察も頼りにならないかも知れないスよ?頼みの綱の毛利小五郎さん達も今頃オーストラリアでしょうし。笑っちゃうんすよね」
悔しがるやよいを気の毒に思いつつも肉体派おじゃる丸は集めた資料を手渡した。
「暗澹っ!仮に相手が『異能者』とあれば通常の手段は取れないかもしれん」
やよいは『憤怒!』と書かれた扇子を閉じ、机の上の資料に目を向ける。
この世界では今、『異能者』と呼ばれている人間達が徐々に増え始めていた。その能力は人智を超えており、この世界で起きた大きな事件では『「小麦粉」を「毒ガス」に変える能力』や『「昆布」を「大斧」に変える能力』、『「大声」を「指向性爆音」に変える能力』、『「包丁」を「誘導ミサイル」に変える能力』、『「アルコール」を「殺人ウィルス」に変える能力』を持った『異能者』達がとある大学を襲撃し、大量の死者と怪我人を出し今でも大きくマスゴミに取り沙汰されていた。学者の中にはウマ娘に対抗するために人類が進化し始めたと唱える者も居た。とまあ、そのような能力が今、トレセン学園のウマ娘達に向けられているかもしれないという事実に身が震える。
「たづな、この写真が販売されていたのは確かインターネットのサイトだったな?」
「はい、肉おじゃさんが趣味のネットサーフィンをしていなければ直ぐに気づくことは出来なかったでしょう」
「クキキキキ……。(褒められて嬉しい)」
「アングルを見たかぎり明らかに侵入されてますよねええ。念の為指紋や足跡、頭髪が落ちていないか調査しましたがなんにも見つからなかったなかったようですね、ええ」
こうして、有効な手立ても思いつかないまま、時が過ぎていく。
(覚悟!私達がウマ娘達を護らなければっ……!)
深夜のトレセン学園周辺、盗撮の件もあってか周囲にはいつでも侵入者を始末出来るように武装した警備員がコレでもかと配置されていた。しかし、そんな様子を見ている怪しい男が一人。
(へっ、トレセン学園の奴ら警備を強化したな。まあ、何もかも無駄なんだけどな)
その男はスマートフォンを携えフードを深く被り目立たないような真っ黒な服を着ている。このあからさまに怪しい男こそ今トレセン学園の悩みの種である盗撮犯であった。その男は怪しい者がいないか巡回する警備員を嘲笑う。
(全く、天下のトレセン学園の警備員は無能ばっかだなw俺の『「自分の姿・触れているもの・出した声」を「認識出来ないよう」に変える能力』さえ使えば俺は無敵だ!」
男の姿がみるみるうちに透けていき、声が聞こえなくなりやがて完全に見えなくなってしまう。そしてトレセン学園の塀をよじ登る。勿論物音を立ててしまうが……。
「ん?おい、今物音がしなかったか?」
「いや、俺達誰もいないぞ?どうせ理事長が飼ってる猫かなんかだろ。捨て置け捨て置け!」
「警備ご苦労さまでーすwwwwww」
そのまま男は慣れた様に警備員をすり抜け、ウマ娘たちが普段生活している寮へとたどり着きスマホのカメラを起動させる。
「さ〜て、今日はどのウマ娘にしようかな〜w全く、トレセン学園のウマ娘共の写真をばらまくだけで大金が手に入るんだからボロい商売だぜw」
そして、出来るだけ音を立てないように窓に近づき中を確認する。寮の周辺にはウマ娘達に不安を与えぬよう警備員が配置されていないのだ。
手当たり次第窓を確認し、めぼしいウマ娘を見つける。
「おっ、ラッキー!マヤノトップガンとトウカイテイオーじゃんwこれは50万は固いな〜www」
男は汚らしい笑みを浮かべスマホを寮内に向ける。
その時であった。
「あ?なんだ?足音か?誰か巡回してんのか?まあ今の俺は透明だし音も聞こえないようになってるから無駄なんだけどなwww」
「え……?」
透明になっているのにも関わらず本能的に男が振り返る。そう、振り返ってしまったのだ。そこにいたのは……。
(な……なんだよコイツ!!?俺の事が視えているだと!?)
刀身が真っ黒な大業物を携えた土偶の様な仮面を着けたガタイのいい男であった。仮面のその闇の淵の様な孔が男を射貫いていた。そして一言。
「こんばんは、盗撮魔さん。悪いけど……」
死なない程度にお仕置きしてやるよォ……!
「おっ、ついたな。ここがトレセン学園ってとこかー」
時を少し遡ると、一誠はyesの項目を押した途端何処かの施設へと飛ばされた。あたりを見回すと校舎らしき建物の裏のようであった。一誠はウインドウへと目を向けると自信のステータス・インベントリ・ホットバーの他にフードを深く被った男の顔写真が写し出されている。
夜中であるため周囲に気づかれぬように声を発しないようにした。
(こいつがターゲットか、でも姿を消す能力があるんじゃ探しようが無いんじゃ……ん?)
一つのウインドウが一誠の目の前に表示される。
(意識を集中か……いつもガタイで判断する容量でやりゃいいのかな……よし!)
一誠は意識を集中させると、言葉では言い表せないがこのトレセン学園にいるであろう生徒や警備員や事務員、教師等の人が大体どの辺りにいるかかなり大雑把で何となくではあるが把握した。そして人が集中しているエリアへと目を向けた。それは学生寮であった。
(盗撮魔がいるとすればあそこだな。早速言ってみよう)
一誠は音を立てぬように寮へと足を運ぶ。夜中であるがところどころ電気が点いているため転ぶようなことはなかった。ホットバーからいつでも【邪剣・夜】を取り出せるように用意をして。
(しかし、どれがターゲットかわからないな。レベルが上がれば分かるようになるのかな?)
やがて学生寮につくとおそらく学生の部屋の窓の下に奇妙なモノを見つけた。
(え?なんでこんなところにこんなものが置いてあるんだ?)
それは明らかにゲームに出てきそうな宝箱であった。その場に似つかわしくない奇妙な光景に首を傾げる一誠にまたウインドウが表示される。
(いよいよゲームじみてきたな……部屋の人は寝てるよな?開けたときの音で気づかなきゃいいけど)
一誠は良くないとは思いつつも部屋を覗き込む……。そこには女の子らしい部屋が広がっており、暗くてよく見えないがウマ耳とウマ尻尾を生やした少女が二人寝ていた。
「むにゃむにゃ……杉元さん……アシリパさん……白石さん……もう食べられないですよぅ……うへへへへへ……むにゃむにゃ」
「ZZZ……スペちゃん……アシリパちゃん……だめよ……私のにんじん……勝手にチタタプにしないで……ZZZ」
(そうか、この世界は現代ファンタジーの世界でこの学園はこのウマ耳生やした女の子たちの専門校だったのかぁ。それにしてもカワイイな)
実はこの世界ではウマ娘は女性しか居ないのだが、一誠は変な勘違いを起こしてしまう。この勘違いが後にこのウマ娘世界に波乱を巻き起こしてしまうのだがそれはまた別の話。
(おっといかん。擬人化したとはいえ他の馬に現を抜かしたら
一誠はトレジャーBOXを開けるするとそこには、仮面の女神をもした土偶のお面があった。手に撮った瞬間トレジャーBOXは消滅した。
(土偶の……お面?)
性能
・防御力+15
・耐酸
・耐熱
(とりあえずつけとこうかな)
一誠は土偶マスクをウインドウを操作し装備した。今ここに制服を着て日本刀を携え、土偶のお面を着けた第三者から見れば明らかな不審人物が誕生した。一誠はそれを窓の反射を利用して確認する。
(ヤベェェェ!超イケてるじゃん!)
一誠の感性は少しズレているようだった。というかアホ且つバカであった。……しかしここで悲劇が。
「うーん……トイレ……」
(あっヤベっ)
そう、スペシャルウィークが起きてしまい……。彼女の瞳が窓の外を捉えた。そして……。
「えっ……?」
思い切り目があってしまったのだ。瞬間、その可愛らしい瞳が大きく見開かれ……。
「ほんぎゃああああ嗚呼アアァアァアァーーーーーっッ!?」
「どっ!?どうしたの!?」
余りの大きな悲鳴に隣で寝ていたサイレンススズカも起き出してしまう。そりゃ起きたら外に土偶それも仮面の女神が外に居たら誰しも驚くであろう。
(何やってんだ俺!逃げなきゃ!)
クソアホバカ間抜けマン一誠はその場からスタコラサッサと逃げ仰せた。後ろから
「ス、スズカさん!お化けが!窓の外にッ!土偶のお化けが!えらいこっちゃ!」
「お、落ち着いてスペちゃん!そんなもの居ないわよ!大丈夫だから!」
と聞こえたが身体能力を駆使し死角へと避難する。
(マジゴメン)
一誠は心の中で謝りつつミッションへと戻った。
これを読んでいる諸君も馬を怖がらせないように注意しようね!
(いやいや、飛んだドジを踏んでしまったな)
一誠はすぐさまあの場から離れ学生寮の裏へと回っていった。どれも電気がついておらず誰しも眠りについているようであった。
(そういえばもしここの世界の人に見つかったらどうなるんだ?失敗条件には3回力尽きるのとターゲットの死亡って書いてあったけど……あれ)
などと考えつつ歩幅を進める一誠であったが違和感を覚えて立ち止まる。
ザリッ……。
と、いきなり立ち止まったからなのか地面がより大きな音を立てた。一誠は違和感のする方向へと目を向ける。
(おかしいな建物の中じゃなくて外から気配を強く感じる……あそこの窓か?)
一誠は更に意識を集中し、その方向を凝視した。するとどうしたことであろうか。みるみるうちに窓をスマホを持って中を盗撮しようとする男が浮かび上がり始めたのだ。
(こいつは……!)
「……回してんのか?まあ今の俺は透明だし音も聞こえないようになってるから無駄なんだけどなwww」
それと同時にいきなりアンプのボリュームを上げるかの様に声が聴こえるようになった。窓の外で汚らしい笑みを浮かべる男は間違いなく今回のミッションのターゲットであった。
其れを知覚した途端、一誠は土偶の仮面の奥で凶悪な笑顔を浮かべた。
「みーつけた」
「え……?」
男がありえないものを見るかのように振り返る。明らかに動揺している様子であった。一誠は男に言い聞かせる様に言った。
「こんばんは、盗撮魔さん。悪いけど……
死なない程度にお仕置きしてやるよォ……!」
「う、うわぁぁァああああっ!?」
その瞬間男は脇目も振らずに逃げ出した。一誠の今の身体能力を持ってすれば追いつくことも容易いほど足が遅かったが敢えてここは逃げるように仕向けた。何故なら……。
(ここで事を起こせばこいつらが起きるかも知れないよな)
「くそっ!くそくそくそォっ!?なんであいつ俺の事が見えてんだよ!?」
男は一誠に話しかけられ脅しをかけられたあとに何処かの見つからない場所を探しに走り回っていた。お世辞にも早いと言えないが……。
「はあっ……っ!はあっ……っ!クソがぁ!?あの野郎欠陥能力を渡しやがったな!?ふざけやがって!……ってあれ?」
男はここにいない誰かへの罵声を発しながらやがて昼間はウマ娘達が集まる三女神像の噴水へと足を踏み入れた。
そこで男はあることに気づいた。
「追ってこない……?」
男は辺りを見回すが土偶の仮面を着けた男は影も形もなかった。それに気づいた男は笑い出す。
「は、ははっ!なんだよビビらせやがって!そうだよな!俺の能力は無敵なんだ!きっと最近深夜に活動してたから幻覚を見たに違いない!そうだきっとそうなんだ!ひゃは、ヒャハハ!」
盗撮男が勝ち誇った様にそう言い、スマホを持ってまた寮へと向かおうとした。
まさにその時である。
「ごめんなー、幻覚じゃなくって」
「ははははっ……!……はえ?」
三女神の影から人型の影が跳び上がる。その影は正しくライダーキックの構えを取っていた。其れを認識した途端、超大型トレーラーに衝突したかの様な衝撃が盗撮男の顔面を襲う!
「ぎゃひあああアアアアァーーーーーッ!?」
メギャッという鈍い音と共に吹き飛ばされ更には……、
「どっせーいッ!」
「がっ……!?」
抜刀しないままの大業物【邪剣・夜】を空中で腹に叩き込まれ盗撮男は石畳に叩きつけられた。
「ぶっぎゃあああアアアアアアアァーーーーーッ!?」
盗撮男は石畳を跳ね、回転しながら着地した。盗撮男が顔を上げるとそこには土偶男、つまりは一誠が立っていた。
「ひ。ひィー!?」
「足おっそ。盗撮するくらいならもっと鍛えた方がイイんじゃないの?」
「な、なんでお前俺が見えてんだよ!?俺の『「自分の姿・触れているもの・出した声」を「認識出来ないよう」に変える能力』は最新の警備システムすらすり抜けられるんだぞ!?ありえねぇ!?」
「知らねーよ、そんなの。俺はとりあえず見えてるんだからそれで良いんだよ」
一誠はどうでも良いとばかりに吐き捨てた。盗撮男は突如として現れた災害並みの理不尽に恐れ慄いていた。しかし、盗撮男にはどうやら切り札があるようだ。
(クソッ!ここで捕まったら今までの稼ぎが全部パーだ!こうなったらコレを使うしかねぇ!)
「て、テメェ!俺が見えるからって調子に乗るんじゃねぇ!これを見やがれ!」
「おっ?それは……」
男が懐から取り出したのは拳銃であった。それも警察が使用するリボルバーであった。
「ひゃはっ。どうだ見たか!?俺の能力にかかればなぁ無能な警察共から拳銃の一つや二つ簡単に盗m」
「ふんッ」
盗撮男が拳銃を一誠に向けると同時に夜の帳を思わせる刃が翻る。その瞬間盗撮男の持っていた拳銃の上部がズリ落ちた。
「は、はあああああああああァっ!?なんで刀で銃が切れるんだよおおおおおおおッ!?」
「うわぁすげえ切れ味。ところでさぁ……」
「ヒイッ!た、頼む!命だけは助けてくれ!そっそうだ!お前俺と手を組まないか!?今までの稼ぎも分けてやる!何なら今まで集めたウマ娘どもの写真を全部タダでやってもいいぞ!?モブ共から有名所から一通り揃えてあるぞ!?な!?な!?もちろん写真の中にはあのメイショウドトウの生がゔェッ!?」
「いい加減にしてくれよなぁ〜」
盗撮男は無様にも命乞いを始めた……のだが一誠により【邪剣・夜】の峰で殴り飛ばされる。
仮面の奥の一誠は完全に無の表情となっていた。
「あのさぁ……俺、一ヶ月に何回かは近所の牧場で飼われてるお馬さんに会いに行くくらいにはお馬さんが好きなんだよね」
「あ……、あ……ひィ……!?た、たすけ……!」
盗撮男は、能力を過信していたからなのかそれとも単純に忘れているからか能力を解除せず助けを呼ぼうとしなかった
「だからさぁお前みたいなマナーの悪い盗撮野郎が居ると歯茎から血が出そうになるくらいストレス感じるんだよねー!」
「ヒイィィィッ!?」
盗撮男は土偶の仮面が地獄の鬼よりも恐ろしく感じられ情けなく失禁した。その盗撮男の様子を見て一誠は拳を握り言った。
「安心しろ、殺しはしないからさ。えーっと2発軽く入れて5ダメージなら……死なない様にするために一発分減らすとすると……」
「た……たすけてくれ……」
「は?やだよ。……俺はあと大体38発お前を殴って言いわけだ」
瞬間、盗撮男の眼前に拳が迫る。
「ぎゃあああァッッッッーーーーーッ!?」
盗撮男の意識はそこで途絶えた。
しばらくして三女神像の噴水前には土偶の仮面を着けた一誠と顔を38発殴り飛ばされ瀕死状態に陥っている盗撮男がゴミの様に打ち捨てられて居た。
「……姿を消す事が出来るって聞いたから身構えたけど何か大した事なかったな……」
帰還しますか? yes/no
「あ?自動で戻るわけじゃないんだ。どうしよっかな。コレこのままでいいのか?一応軍手してたから指紋とかは残らないだろうけど……」
一誠はふと三女神の像を何となしに見上げた。
「あっ!いいこと思いついた!」
「んうぅ……あれぇ……何か外がうるさい……?」
早朝のトレセン学園、そのトレセン学園の生徒の一人であるスペシャルウィークは朝には似つかわしくない騒がしさで目を覚ました。
「スズカさん……?」
隣のベットを見るとそこはもぬけの殻であった。
「いないのかな……?」
彼女はいそいそと着替えると様子を確かめるために騒ぎの中心へと歩を進めた。
しばらくして歩いて行くと彼女は三女神の像の噴水の前でウマ娘、事務員、トレーナー問わず人だかりが出来ているのを見つけた。
「な……何があったんだろう?」
恐る恐る近づくと人混みの中には彼女を担当している沖野トレーナーが目についた。飴を加えているのはいつもどおりだがその表情は何か奇妙かつ恐ろしいものを見たかの様な顔つきであり隣に寄り添う彼女の同室のサイレンススズカも「嘘でしょ……」とうわ言の様に呟いている。
「トレーナーさん!スズカさん!おはようございます!」
「ん!?……ああスペか、お早うさん」
「おはよう、スペちゃん」
「朝からすごい騒ぎですね!何かあったんですか?」
「あ、いやえっーとそれはだな……まあ見てもらった方が早いか」
「そっそうですよねトレーナーさん!スペちゃん昨日みたいに悲鳴挙げないでね?」
「は、はい?」
スペシャルウィークは歯切れの悪い二人を訝しみつつサイレンススズカが指を指した方向へと目を向ける。そこには……。
「え、えええぇっ!?ななななんですかあれぇッ!?」
サイレンススズカが指した方向には三女神の像があった。そこには顔面が判別出来ないほどに腫れ上がった男が磔にされていた。更には噴水の中には恐らく盗撮写真がバラマキされており極めつけには男の首に『僕は盗撮犯です!』というプラカードが垂れ下がっていた。そんな様子を見て沖野トレーナーが、
「まあ驚くのは無理もないよな昨日は何とも無かったのに朝着てみればコレだ」
「えっと、最近トレセン学園で話題になっていた盗撮犯って……?」
「警察が来れば時期にわかるがあそこで磔にされてる男だろうな?誰だあんなことしたのは?もしやあの野獣先輩か?」
「えっ!?田所さんが!?確かヒトならやりそうな気も……」
「トレーナーさん、スペちゃん、それは無いと思う。あっ見て下北沢警察の人達よ!」
やれやれと頭を抱える沖野トレーナー。そうこうしてるうちに通報を受けてきたであろう警察がやってきた。
「警察だ!(インパルス板倉)」
「何だこれは……たまげたなぁ」
「ドロヘドロ!(名作)」
警察達も余りの異様な光景に戸惑っている。
「と、とにかく署まで連れていきます」
「よし、シュバルゴ!(ほのお4倍)」
「フル焼きそば!」
警察が磔にされている盗撮男を降ろすと担架へと乗せた。すると男は目を覚ました。
「な……なんで警察が……?」
「警察だ!(インパルス板倉)ライダー(盗撮犯)何だろ?」
「そうだ俺は確か……」
その様子を見ていたトレセン関係者達がどよめいた。沖野トレーナーはとりあえず版にが捕まった事に胸を撫で下ろした。
「やっぱし黒だな。まあお縄についたから良し……「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァーーーーーッ!」なっ何だ!?」
「えっ!?今度は何なの!?」
「ひぃん!?た、助けて!おかあちゃん!杉元さん!アシリパさん!谷垣さん!尾形さん!」*1
突然の悲鳴に驚くスペシャルウィーク達、しかしスペシャルウィークはさらなる恐怖を味わうこととなる。
「落ち着き給え!本官は警察だ!(インパルス板倉)何があった!?」
「た、助けてくれ!アイツが来る!殺される!」
警察が抑えるもなおのこと叫ぶ盗撮犯、噴水前は得体の知れない恐怖に包まれた。
「アイツとはなんのことだ!」
「ど……土偶……!」
((えっ……?))
「……?スペ、スズカ、どうかしたのか?」
盗撮犯からその単語が飛び出た時、スペシャルウィークとサイレンススズカは背中に薄ら寒いナニカが通り過ぎるのを感じた。
二人は一気に青ざめ、直ぐ側の沖野トレーナーに抱きついた。
サンブレイクたのちいけど琵琶法師が入ってないやん!?
2024/11/05
内容を一部変更しました