「くああああ!よく寝た」
俺は眠りから覚めるとベットから体を起こす。
「あれ?ここ何処だっけ?」
ぼんやりする意識のなか周りを見回すとそこは俺の部屋ではなく見たことのない部屋だった。
「ああ!そういえば俺、ぜんぜん知らないところに来たんだっけ!」
昨日の夕方に学校から帰る途中に急にできた穴に落ちて俺はまったく知らないところに来たんだった。そして色々あってここで寝ているんだった。
「わき腹は………良しっと!」
昨日とある理由でわき腹を傷つけていたのだが思ったよりも酷い怪我ではなく伸びをしても痛くはないのでそのままベットから起き上がる。
ちなみに昨日目の前にあったテーブルは食器ごといつの間にか片付けられていた。
「一先ずは昨日のお礼を言いにフランドールの親御さんに挨拶しなきゃな」
怪我を負ったのはフランドールのせいだが、色々と見ず知らずの俺をここに置いてくれて食事まで出してくれるのだからお礼を言うに越したことはないっと思い一先ずは部屋から出る。
「しかし、長い廊下だな。」
部屋を出てひとしきり目の前の廊下を歩いているのだが普通の家より大分長い廊下を歩いて誰かいないか探していた。
そうこうしていると目の前に昨日知り合ったフランドールがいた。
「よ!フランドール、おはよう!」
「あ!恭一!おはよう!!」
こちらに気づくとフランドールは笑顔でやってくる。
「もう怪我は大丈夫なの?」
「ああ、軽い怪我みたいだったし大丈夫だよ。そんなに心配しなくてもいいよ。」
自分や負わせたせいかフランドールは心配そうな顔でこちらを覗く。
しかし、怪我自体もたいしたことはなかったのでもう大丈夫っと言うことで笑顔を見せる。
「ほんと?よかった。それで、恭一はどうしてこんな所にいるの?何か用事?」
「ああ、そうなんだよ。フランドールのお父さんかお母さんは今いる?会って話がしたいんだけど。」
「パパとママ?いないよ」
あいにくの留守なのか。それじゃあいつぐらいに帰ってくるのか聞かないとな
「それじゃあ、いつぐらいに帰ってくるとか分かるか?」
「その前にここの館にはパパとママはいないよ。私が物心付いた頃からあっていないもん。」
うーむ。何か重い話のような気がしてきた。ここは話を変えるべきか?
「それじゃあ、昨日フランドールと一緒にいたお姉さん何処にいるかわかるか?」
「お姉さまのいるところ?だったら分かるよ!」
そういってフランドールはこっちに手を差し出す。
「?」
「手、案内してあげるから手をつなご!」
その子供らしい姿に微笑ましく感じ、フランドールの手をとる。
「じゃあ、連れて行ってくれ。フランドール。」
「ん!分かった!それに私のことはフランでいいよ!フランドールだと長くて呼びにくいでしょ。」
「じゃあ、フランって呼ぶことにするよ」
「うん!」
フランと手を繋いで俺はそのままレミリアのところまで案内してもらうのだった。
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「此処がお姉さまのいるところだよ」
先ほどまでご機嫌の様子で繋いだ手を上下に振っていたフランだったがレミリアのいる部屋に近づいていくと段々元気がなくなっている様子だった。
「ここがお姉さまのお部屋だよ恭一」
「お、ありがとうフラン案内してくれて」
ある部屋の前に来るとフランはその前に止まった。
「それじゃあ、またあとでね」
「あれ?フランも一緒に行かないのか?」
フランも一緒にくるものだと思い聞いたのだが
「ううん、私はいいや。それじゃあ、恭一。またあとでね。」
そういってフランは手をこちらに振るとそのまま廊下の影に消えて行ってしまった。
「どうしたんだ?フランのやつ。何だか悲しそうな顔をしていたけど」
そう思ったがまた後で会うだろうと思い、とりあえずは目の前のドアをノックする。
『コンコン』
「開いているわよ。中に入りなさい」
そう中から声が聞こえてくるが相手が誰だか分かるのだろうか?
そう疑問に思ったのだが入ってもいいという事なのでそのまま中に入らせていただく。
「よく来たわね、人間。ようこそこの紅魔館へ。」
中に入るとフランの姉のレミリアが豪華な椅子に座っており、その傍らに昨日食事を運んできてくれたメイドさんがいた。
「あ、昨日はどうもありがとうございました。それと初めまして、俺の名前は日野恭一といいます。」
「これは、ご丁寧にどうも。私はここのメイド長を務めさせていただいている十六夜 咲夜と申します。以後お見知りおきを」
そういって頭を下げる姿はどこか清廉された動作に思えた。一瞬呆けていたが俺も慌てて頭を下げる。
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
「そして私はレミリア・スカーレットよ。この紅魔舘を統べる者にして偉大なる吸血鬼の一族に連なるものよ。」
フランも自分が吸血鬼だと言っていたのだが吸血鬼って本当にいたんだな。
「あんまり驚いていないようだけど、本当に吸血鬼だと信じているの?」
「ああ。さすがにフランの力を見せられたらな。力も強いし終いには4人に分身したし。これで信じないほうがおかしいだろう?」
実際に分身は吸血鬼の力というのはどうかと思うのだが素手で壁を壊す力などをみるとさすがに信じないわけにはいかないだろう。
「まあ、いいわ。それよりお前に聞きたいことがあるのだけど、昨日はどうやってフランの部屋に入ることができたの?あそこは鋼鉄製のドアで塞いでいて誰も中に入ることができないようにしていたのに。」
「ああ、そのことか。それは昨日の夕方……………」
俺は昨日起こったことを説明していく。
「へえ、それは興味深いわね。まあ、穴をだした奴には心辺りがあるのだけど、多分そいつの仕業でしょうね。」
「知っているなら教えて欲しいんだけど。俺も早く家に帰りたいし。」
「それは多分無理でしょうね。あなた此処がどこだか分かる?」
「紅魔舘って所なんだろ?」
「いいえ、そうじゃないわ。ここが何処の地名なのか分かる?」
俺は少し考えて
「いいや、まったく分からない。此処が何処だか教えてくれると助かる」
「此処は幻想郷というの。妖怪と人間が暮らしている一種の楽園といったところね。そしてこの世界は結界に包まれていて他の人には見ることのできない世界。それが幻想郷なの。かくいう私も最近ここに来たばかりなんだけど。」
おいおい、吸血鬼の次は妖怪かよ。
しかもこの世界からは周りから見ることができない所だときた。
もう俺の常識を覆す話が多すぎて理解することが困難になってきた。
もともと俺の頭はそこまで良くないのであまり深く考えることはないのだ。
「あんまりよくは分からないけど要は此処は他の世界とは離れた、一種の異世界みたいな感じということでいいんだろ?」
「まあ、そう捕らえてもらってもかまわないと思うわ。もっとも私が創ったわけじゃないからそこまで偉そうな事は言えないんだけどね。」
レミリアは一度、自分の横のテーブルにおいてあるグラスを取るとその中身を飲み干す。
「だいたいこの世界のことは分かった?あなたが元の世界に帰りたいと思うのならこの世界を創った奴にあうかそれともあの巫女に会うかのどちらかね。」
巫女?昨日も巫女の話が出たがそれはいったい誰なんだろう?
「なあレミリア、その巫女っていったい誰なんだ?」
「気安く私の名前を言ってくれるわね。人間。」
俺がレミリアと言った瞬間レミリアからものすごい殺気が溢れてきた。
俺はそれにまったく対処することができずに脂汗を凄い勢いでかきはじめた。
しかし、その圧力も直ぐに収まった。
「まあ、フランの件もあるし多めに見てあげるわ。それでその巫女の話なんだけど話すと長くなるわよ。」
助かった。そう思い額のかいた汗を拭ってそう言ってくるレミリアに返事を返す。
「どうせ、どこに行けばいいのか分からないんだから話を聞くよ。それにその巫女に会えば外に出ることができるのかも知れないんだろ?だったら話を聞いたほうがいいと俺は思う。」
「まあ、いいわ。本当はあまり話したくないんだけど教えてあげる。あれは………」
レミリアの話をきいて分かったのだが、最近になってレミリアはこの幻想郷に来たらしく、その目的はこの幻想郷を乗っ取ろうという考えで来たそうな。
それで手始めに里の人間………この幻想郷には人の里があるらしい。
まあ、そこの人間の血を吸って襲っていたらしいのだが、あるとき二人の少女がその解決にのりだしたそうな。
その二人がレミリアの言う巫女と魔法使いなのだが、とにかくその二人は最終的にレミリアたち紅魔舘の連中を根こそぎ倒して………レミリアも例外じゃなく倒された。
それで事件は解決と思いきや地下から大きな音がしてその二人がレミリアを倒したあと地下に行くとそこには鋼鉄製のドアがありその扉の向こうから俺の悲鳴が聞こえてきたので力ずくで扉を破壊。←ここ重要。
して中に入ったところ俺は頭から血を流して気を失っており、そばにはフランが狂ったように笑っていたので俺を助けるため狂ったフランと戦い、何とか勝つことができ、俺は助かったと。
ここまで聞くと1つの物語が書けそうな気がするのは俺の気のせいだろうか?
「それが、その巫女と魔法使いってわけだ。何だか話しに聞くととんでもない化け物みたいだな。極太のレーザーを出すとか、吸血鬼相手に勝つことができるとか。」
その際の戦いは弾幕ごっこというやり方で勝負を決めるらしい。実際に見たことはないので分からないのだが、要は弾をだして相手を地面に落とした方が勝ちらしい。
その他にもスペルカードといった必殺技みたいなのもあるという聞くからに、物騒な感じなのだが基本的に殺す事や相手が動けなくなるほどの攻撃はしてはいけないいうのが最低限のルールなそうな。
「それに私は運命を操る程度の能力を持っているにも関わらずあの巫女はそれをどういうわけか跳ね除けて私に勝ったのよ。理不尽にも程があるわ。」
そうレミリアが言ったように、ここの妖怪などはたまに特殊能力を使うことができるらしい。
例えば、レミリアなら『運命を操る程度の能力』隣にいる咲夜さんなら『時間を止めることのできる程度の能力』みたいにそれぞれ持っている。
これにはさすがに半信半疑だったのだが実際に咲夜さんが時間を止めて俺の横に現れた時などは納得するしかなかった。
だって、今までレミリアの隣にいた咲夜さんが急に俺の横に現れたんだから信じるしかないだろう。
それに首筋にナイフを突きつけられた時には本当に焦った!
顔に似合わず怖いことをする人だと思った瞬間だった。
「それじゃあ、フランの能力は何なんだ?」
この二人が持ってるならフランも持っているはず。そう思い聞いたのだが
「あの子の能力は私たちとは桁が違うわ。あの子の能力は『ありとあらゆるものを壊すことのできる程度の能力』なの。あの子自身自分の能力を未だに上手く制御することができずに時折あのように暴走してしまうの。だから今まであのこが生まれてから495年間館の地下に監禁していたわ。あの子自身が自分の能力を制御することができるまでね。それが巫女たちが扉を壊したからあの子は外に出ることになったの。これから先どうなるかは分からないけどこれが1つの切っ掛けだと思ってフランを外に出すことにしたわ。」
あんな、殺風景な部屋に1人でいたのはそんな理由があったのか。
しかし495年てのは長生きの吸血鬼からしたら短い時間なのかもしれないがそんな時間をあの薄暗い地下に1人でいたのならさぞかし寂しかったのだろうと思う。
だから、俺が目の前に現れた時にあんなに嬉しそうな顔をしていたんだろうなっと思う。
それにレミリア自身、フランを地下室に監禁しているといったずいぶん酷いことをしているように思えるが本当はしたくなかったのだということがよく分かった。
フランの話をする時など顔を辛そうにして話すし、何より昨日の妹に対して過保護の面もあり妹のことを溺愛しているように思えたからな。
フランのほうは自分の姉に嫌われていると思っているらしくどうもまだレミリアの近くに行くのは抵抗があるみたいな感じだったしな。でも昨日はレミリアの影に隠れてこちらを見ていたぐらいなんだから本心ではレミリアのことは好きなんだろう。
でも、今まで会わなかった分どう接して行けばいいのか分からない様子だったな。
「さっき、フランに会ったが嬉しそうに廊下を歩いていたぞ。色々なものが珍しいのか歩く度に色々なものを眺めていたぞ。」
「フランにあったの?」
「ああ、レミリアが何処にいるのか分からなかったんで適当にぶらぶらしていたらフランにあってな、それでフランにレミリアの事を聞いたら此処まで案内してくれたんだ。」
「そう………あなたに懐いているのね。私にはそんな嬉しそうな姿なんてまったく見せなかったわ。」
「それはまだどう接していけばいいか分からないだけなんじゃないか?フランも俺と別れるときレミリアのいる部屋を見て寂しそうな顔をしていたからな。その内慣れてきたら笑顔も見せてくれると思うぞ。」
「それを聞いて少し安心したわ。それで、そんなあなたにお願いがあるんだけど」
ん?何だ?
「あなたにはこの館でフランの教育係をやって欲しいの。あの子は495歳といってもずっと地下にいたわけだからまだ精神が子供のままなの。それに急に外に出たからか情緒不安定でいつまた狂うか分からないわ。だから、今フランが最も懐いているあなたならフランも言うことを聞いてくれるかもしれない。」
「どうなんだろうな?確かに懐いてくれているような感じはするけど、もし何かの拍子に狂ったりしたら俺じゃあフランは止められないぞ。いいように嬲られて殺されるだけだと思う。」
「それは大丈夫だと思うわ。私の能力があなたなら大丈夫だと言っている。だからあなたに頼むの。それにこれはレミリア・スカーレットとしてではなく1人の姉として頼んでいるの。受けてくれないかしら?」
そういわれるとこっちも辛い。
この姉妹の壊れた絆を直してあげたいと思ってはいる、
何より家族は仲良くってのが俺の持論だ。
それに今は何処とも知らない世界にいるんだし、ここは引き受けてもいいのかも知れない。
「条件があるんだけどいいか?」
「何?言ってみなさい。できうる限りのことはしてあげるわ。」
「まず1つはフランの教育係をやる以上俺を此処に置いて欲しいということ。俺自身も置いてもらうならフランの教育係の他にできる事はする。行く当ても無くどうやってもとの世界に帰ればいいかわからない状況だと、食べ物が食べれて眠れるところが欲しいからな。それが交換条件ってことでどうだろう?」
「それぐらいなら、全然問題ないわ。むしろこっちから此処に住んでと頼むぐらいよ。それじゃあこれからよろしく恭一。」
「よろしくお願いいたします。恭一様。」
ここでレミリアと今までレミリアの隣におりまったく言葉を出さなかった十六夜さんが口を開いていう。
「ああ、こっちもよろしく、レミリア。十六夜さん。」
これが俺の幻想郷に来た始まり。
そしてこれから先ずっと続く幻想郷の面白可笑しい日々の始まりでもあったが、この時はまだ知る由もなかった。