「よし!こんなもんでいいだろう。」
俺は勝手に台所を使わせて悪いと思いつつも腹を空かせている巫女のためにご飯を作った。
まあ、材料事態も少ししか持ってきていないので、おにぎりと野菜炒め。
それに味噌があったので茄子を入れた味噌汁を作った。
「口に合えばいいんだけど………とりあえず持って行くか。」
できた料理を持って居間で倒れている巫女に持っていく。
「ほら、ご飯ができた………」
俺が言い終わるよりも早く、巫女は俺の手に持っている料理を奪い取るとそれを怒涛の勢いで食べていく。
「はぐはぐはぐはぐはぐ!ずず~~……ふう、はぐはぐ………んっぐ!!」
そりゃあ、そんなに勢い良く食べれば喉にも詰めるわな。
喉に物が詰まったらしく息ができずに顔を徐々に青ざめていく巫女。
俺は居間にあった急須で巫女にお茶をいれてやる。
「んぐんぐんぐんぐんぐ!」
俺が入れたお茶をひったくって勢いよく飲んでいく。
「ぷは~~~~!満足満足!さすがに3日間も何も食べないでいたら死ぬかと思ったわ。」
三日も何も食べなかったんかい。
どんだけここの神社は金に困っているんだ。
そう思っていると目の前の巫女がこちらに声をかけてくる。
「ひとまず助かったわ、ありがとう。あなたがこのご飯を作ってくれたんでしょ?味はなかなか美味しかったわ。」
「そいつはどうも。それより何でそんなに腹を空かせていたんだ?」
「それは、私の神社にお金が無いからよ。」
それは至極当たり前の話である。
そりゃあ、金がなかったら物は買えないわな。
「外にお賽銭箱は置いてあるんだけど誰も中に入れてくれないのよ。それどころか参拝にくる人すらいない状況。まったく、困ったもんだわ。」
そういってお茶を飲んで一息つく巫女。
「ああ、そういえば挨拶がまだだったわね。私の名前は博麗 霊夢。この博麗神社の巫女をやっているわ。」
「俺の名前は日野 恭一っていう。最近この幻想郷に来て、今は紅魔館に住んでいる、ただの人だ。」
「知ってるわよ。というよりかは私とあなたは一度会ったことがあるもの。まあ、あなたは気絶をしていたからわからないでしょうけど。」
ああ、やっぱりあの時フランの暴走を魔理沙と一緒に止めてくれた巫女だったんだ。
名前は聞いてなかったが此処に巫女が居ると聞いたので多分そうじゃないかと思っていたんだけどやっぱり思ったとおりだったな。
「あの時は本当に助かったよ。意識は無かったけど下手をしたら死んでいたからね。博麗には感謝している。」
「霊夢でいいわよ。今回私を救ってくれたみたいなものだから別に気にしなくていいわよ。でも、どうしてもしたいっていうなら、素敵なお賽銭箱はそこにあるわよ。」
賽銭箱のある方に指をさしながら霊夢がいう。
しかし、俺は幻想郷で使える金は持っていないので入れる事はできない。
石ころとか入れたら怒るだろうか?
「まあ、いいわ。それで、あなたはどうしてこの幻想郷に来ることになったの?」
そうだ!今日は幻想郷から出るための方法を霊夢に聞きにきたんだった。
霊夢の質問にここに来た理由を思い出す。
「それが、家に帰る途中に急に足元に穴が開いて、そのまま落ちたらこの幻想郷に着いたんだ。ほんと分けの解らない状況だよ。ここに来て俺に何をしろっていうのかね?」
「ふ~ん………ねえ、その穴の中は目がいっぱいの光景じゃなかった?」
「そう!その通り目やら何かの標識やらでいっぱいだった!何か心当たりでもある?」
「ええ1つだけ心当たりがあるわ。というよりも1つだけしか心当たりが無いといった方が正しいかしら?まず、その穴を作った人物は八雲 紫っていう妖怪ね。この幻想郷を作った人物でもあるし皆からは妖怪の賢者とも言われているわ。」
八雲 紫。その人が俺を此処に連れてきたのか?でも何の理由があってここに連れてきたんだ?
「その紫なんだけど、境界を操る程度の能力をもっていて何処でも自由に行き来することができるの。それこそ、この幻想郷とあなたの住んでいる外の世界を自由に行き来できるぐらいにね。それにそんな事ができるのは紫以外知らないわ。」
「そうね。確かにそのとおりだわ。」
霊夢が話していると急に目の前の空間に穴が開いて、中から金髪の、フリルがふんだんに使われた服を着た女性が現れた。
「お初にお目にかかります。私の名前は八雲 紫と申しますわ。」
優雅な仕草でこちらに一礼をする。
「あ、すいません。俺の名前は日野 恭一といいます。」
一先ず名前を名乗られたのでこちらも名乗り返す。
この人が霊夢のいっていた幻想郷の賢者。
そして俺を此処に連れてきた人なのか。
いきなり現れて驚いたが、此処に現れてくれて丁度よかった。
この人には聞きたいことが多くあるんだ。
そして八雲さんに質問しようと口を開いた時、先に霊夢が
「どうしたのよ紫?いきなり現れて何か言われては不味い事でもあるの?」
「いいえ、霊夢。一先ず誤解を解きたくて此処にやってきたの。先に結論から言うとあなたを連れてきたのは私じゃないわ。」
え?この人じゃない?俺は開いた口を閉じる。
なら誰がやったんだ?あの現れた穴を見た時、確かに中には無数の目があり、標識などもあった。
あれは俺が落ちたときに中に広がっていたものと同じものだったのに。
「じゃあ、誰がやったのよ?私が知る限り、あんな事をできるのは紫以外は知らないわよ。」
「それはね…………非常に言いづらいのだけど私の式神の藍がやった事なの。」
八雲さんがそういうとまた別のところにいきなり、先ほどと同じような穴が現れて中から今度は九本の狐の尻尾をもった女性が現れた。
この人も八雲さんと似たような格好をしている。
「この子が藍というのだけど、この子は私の式神なの。簡単に説明すると私の召使なようなものね。それでこの子がこの前、あの穴、厳密にはスキマというのだけど、そのスキマを作る際に暴走させてしまって、あなたの世界とこの幻想郷の世界に隙間を繋げてしまったの。そして、運が悪い事にあなたがそこを偶然通りかかってしまいそのままスキマに落ちてしまい。この幻想郷にたどりついてしまったというわけ。」
八雲さんがそこまでいうとその式神の藍さんがこちらを向き
「本当に申し訳ないことをした。今回のことは全て私の責任だ。君をここに連れてきたのも私がスキマを制御できずに暴走させてしまった結果だ。謝ってすむ問題じゃないが謝罪をさせてくれ。」
そこまで言って深々と頭を下げる藍さん。
そうか。俺はそんな理由でやってきたのか………。
たまたまできたスキマに落ちただなんて、本当に俺は運が無いんだな。
でも、目の前の藍さんも悪いと思って頭を下げてくれているし、元の世界に帰れるなら特に問題は無いと思う。
「頭を上げてください藍さん。確かに急に連れてこられたビックリはしましたけど、ここでフランやレミリア、咲夜さんといった人達にも出会うことができましたし。」
此処に来なかったらフランにも会うことが無かったしこのような体験をすることもなかったと思う。
そんな事を考えると逆にここに来ることができよかったもかもしれない。
「そう………か。許してくれてありがとう。そういってくれると私も心の重荷がとれた気がするよ」
藍さんは何処と無く影が抜けたような様子でほっと一息をつく。
「その件は、これでお終いにしましょう。それで、ここからが俺の本題なんですけど、俺は元の世界に帰る事はできるんですか?」
「それは大丈夫だ。こちらに来させることができるのだから元の世界に帰す事も当然できる。しかし、今の君の状態ではまだ帰すことができないんだ。」
「それってどういうことですか?」
帰すことができるといわれたので一先ずは安心した俺だったが、その後の今は帰ることができないといった言葉に疑問を覚える。
「説明すると、今のあなたの魂は非常に不安定な状態なの。この幻想郷を抜けるにはこの幻想郷を守っている結界を抜けなければならないのだけど、その結界は非常に強力であなたの今の魂では通ることが難しい状態なの。」
八雲さんが藍さんの言葉をついで話をする。
「今の魂の状態って?俺の魂に何か問題があるんですか?」
「あなたは一度この世界にきて死に掛けた事があったでしょう?その時に魂が一度消耗しているの。だから今のあなたの魂は弱っている状態ね。だから今の状態では結界を通ることができないの………でも安心して。時が立てばあなたの魂も段々と回復していくはずだから大丈夫よ。今すぐというわけにはいけないけど、そのうち時がたてば帰すことはできるわ。」
その話を聞いて胸を撫で下ろす。
もし帰れないと言われた時はどうしようかと思ったが時間はかかるが帰る事はできると言われたので良かったとしよう。
「大体どれぐらいとかは分かりますか?」
「どうとも言えないわね。その人の魂の回復力によるから正確な時間はわからないというのが私の考えね。」
「そう………ですか。」
「今回の件は私に責任があるのだし、もし良かったら帰るまでの期間は私が面倒を見ようか?紫様にはその旨は伝えてあるので大丈夫だぞ。」
藍さんが責任を感じてかそのような提案を出してくれる。
しかしながら俺は今紅魔館の方にすでに住まわせてもらっているので藍さんの話は大変嬉しいのだが断ろうと思う。それにフランの教育係の事もあるしな。
「すいません。藍さんの話は大変嬉しいのですけど、お断りさせていただきます。俺は今紅魔館の方に住まわせてもらっていますし、特に生活面に関しては問題ありません。だから特に気にしないで下さい。」
「それならいいが。ならば困った事があったら何でも言ってくれ。できる範囲ならば力になろう。」
「その時はお願いします。頼りにしてますよ。」
「それじゃあ、話も済んだ事だし私たちは帰るわね。それと恭一、今回の事は大変申し訳なく思っているわ。今度改めて御礼を行なわせていただくわね。それと霊夢も、また会いにくるわね」
「別に来なくてもいいわよ。あなたたち妖怪が来たら、人里の人が怖くなって余計に此処の神社に来なくなるじゃない。そうしたらお賽銭が入ってこなくなるし。」
「そう言わないで。じゃあまた今度、霊夢。恭一。」
「では、失礼する。また会おう恭一。それと博麗の巫女。」
そういって八雲さんと藍さんはスキマを作ってその中に入っていった。
その姿を見るとやっぱりこの人達が妖怪なんだなって思う。
見た目は綺麗な人達だったのでなおさらそう感じてしまう。
「さて、恭一さんって言ったかしら?まさかさっきの紫の話を全部信じたわけないでしょうね?」
「え?ちゃんと親切に話してくれたじゃないか八雲さんも藍さんも。」
「それが胡散臭いのよ。あの二人は妖怪なのよ。それに紫があんな素直に人間に対して謝罪するのを初めて見たわ。普段の紫なら連れてきた人間はそのままにして妖怪に食われようがどこかで野垂れ死にしようがお構いなしだもの。藍に関してもそうね。」
「それなら、さっきのあの二人の謝罪は何だったんだ?」
「それは、分からないけど兎に角あの二人には気をつけたほうがいいわよ。あなたの魂が消耗しているってのは私も感じているから本当でしょうけどそれ以外はどうも胡散臭いわ。あの紫の式神がスキマを暴走させた事なんて見たことないしね。気をつけるに越した事はないわ。」
そう………か。
八雲さんとの関わりは初めて会った俺よりも霊夢の方が長いのだからその言葉を胸に留めておくことにする。
それにしてもただの人間の俺をこんな所に連れてきて何の考えがあるのだろう?
「色々心配してくれてありがとう。」
「別にあんたのことが心配なわけじゃないわ。ただあまり人に死なれるのも困るだけよ。」
「どれでも感謝はしとくよ。フランの件でも助けてもらったしね。」
「そう。素敵なお賽銭箱はあそこよ。」
「だから金は無いんだって。」
賽銭箱を指差す霊夢だが何回も言うように俺は此処で使える金は持っていない。
「そのうち金が入ったらちゃんと入れに行くよ。」
「その時はまた歓迎してあげるわ。さて………色々あって夜も遅くなったわね。夜の1人歩きは危ないから今日は此処に泊まって行く?ご飯を作ってくれた件もあるし此処に泊まってもいいわよ?」
確かに早めに帰る予定だったが色々あったことで大分辺りも暗くなってきたし霊夢の提案も嬉しいのだが
「いや、今日は帰る事にするよ。紅魔館の皆にも今日は帰ると言ったしね。あまり心配させても悪いと思うから。まあ、あの人達だから心配はしてないかもしれないけど。」
フランや美鈴さん。小悪魔さんなんかは心配してくれそうだが、残りの連中は特に心配してなさそうだ。
レミリアはフランが大事なだけだし、咲夜さんはレミリアが大事。
パチュリーはあって間もないが特に何を考えているかわからないし………純粋に心配してくれるのはフランと優しそうな小悪魔さんと美鈴さんぐらいなものだろう。
「だから今日はもう帰る事にするよ。それじゃ、また機会があったら尋ねるよ。」
「そ。それじゃあまたね。」
霊夢と分かれて博麗神社からでる。辺りも暗くなってきたし早く帰らないとな。
今日は時間はかかるが元の世界に帰れることが分かっただけでも善しとしよう。
そんな事を考えながら紅魔館への道を歩いて帰るのだった。