魔法科高校の劣等生〜彼女はモブになりえるのか〜   作:アリス☆

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入学編 第二十九話

 

四人を保健室に送り届け、北山と光井の怪我だけを確認してその場を後にし、業務に戻った……。

 

本日の勧誘活動時間も終わり風紀委員本部にてメンバーが一人一人、委員長に報告をすませる……彼以外は。

 

私の報告は最後に回されたが、あの件以外では私の方は平和だったので他に報告をすることがなく、かといって件について余計な口を出せばさらに委員長からの厳しい視線を頂くのは目に見えているので敢えて触れずに報告を済ませた。

 

だって面倒なんだもん。

 

そして今から体育館の一件で三巨頭と彼で話し合いが行われるらしい……知ってるけど。

 

「お先に失礼します」

 

他のメンバーは彼や委員長を待つつもりみたいだけど、私はその件の結末を知っているから先に上がることにした。

 

本部を後にし廊下を歩く。時間も時間なので、グラウンドにはそれなりに……しかし校舎内は……本当に人の気配がない。

 

だけど、忽然と何かに駆り立てられるように足早に階段を一階分降りきると、声を掛けられる。

 

「どうしたの智駿……そんなに急いで」

 

「何か……急用でもあるの?」

 

頭上からの声に視線をあげると階段の踊り場から見えた彼女の姿に笑みを浮かべながら答える。

 

「……いいえ、特に何も………」

 

「それで、何か御用?……司波さん」

 

窓から差し込む夕陽の逆光で顔色は伺えないが、声色は普通なのに何故だか、とてつもない威圧感を感じるのは、彼に投げかけた罵声が上の階の生徒会にまで聞こえていたからだろうか。

 

「ええ、とても大事な用事よ……」

 

「先程の……お兄様への侮辱を撤回してください」

 

一段、また一段とゆっくりと階段を降る彼女から視線を外せず、けれどももう戻れないところまで来ているので彼女への恐れや好意、罪悪感などを顔に出さず素知らぬ顔で言葉を発する。

 

「……一体なんのことかしら?」

 

声が上擦ってないか心配しつつも私の言葉に彼女の身体の内から想子が活性化していく。

 

全身氷漬けは避けたい所だけど、身体の一部なら……まぁ、致し方ないかな。

 

「お兄様を雑草呼ばわりしたことです。」

 

階段を降り切り私の目の前に立つ彼女の顔は……怒りを押さえつけたような無の表情だった。

 

 

…………美少女の真顔、怖っわ。

怒り狂ってる渡辺摩利なんて目じゃなかったわ。

 

 

「……でも、彼がウィードなのは事実でしょ?」

 

私の口からはそれでも彼への侮辱の言葉を平然と紡ぐ。

 

「それは智駿が、お兄様本来の実力を知らないからです」

 

……ちょっと待って、話の流れがやばい方に向いてない??それって私が聞いていい話なの??違うよね??

 

「……それって、CADへの造詣が深いとかそういう話?」

 

一応話を逸らすように、あくまで技術面への優秀さを彼女に問いかける。

 

彼の扱う魔法の真価を私が聞いていい話じゃないからね。

 

「それもありますが、お兄様は勉学に武術、それに……」

 

「お兄様は本来であれば魔法だって特別なものをお持ちなのです」

 

「決して……決して、侮辱されるようなお人ではないのです」

 

……周りに人はいない、カメラも何も無いこの場には私と彼女だけ。

 

良かった……でもダメよ、司波深雪さん。

誰が聞いているか分からないこと不特定多数の人が所属する学校でそんな不用意なことを言っては……。

 

少し、お灸を据えて差し上げるわ。

 

「……特別な魔法、ねぇ」

 

「一般的な基準で測れない特別な魔法とは一体どんな物なのかしら」

 

「でも結局の所、国から定められた一般的な 評価基準を満たす“一般的な”能力でないと……この徹底された才能主義が蔓延るこの学校からは劣等生のレッテルを貼られ…… 」

 

「兄を敬愛するあまり、司波さんごと爪弾きにされるだけ」

 

「司波さん、ブラコンなのは良いけど……もう少し現実を見ては如何?」

 

彼女が感情的になりやすいように言葉を選びながら、なるべく私にヘイトが行くように……例え私を氷漬けにしても彼女が罪悪感を抱かないように酷い言葉を並べる。

 

「今の話は聞かなかったことにしてあげます。……もう少し物事を熟慮されてから口に出してくださいね」

 

 

彼女の身体がわなわなと震え、己の怒りのままに腕を振り上げ……ぱんっ、と乾いた音ともに私の頬に衝撃が走る。

 

 

「お兄様の……お兄様のことを何も知らないくせに……」

 

「平凡で一般的な才能しかない森崎さんがっ!」

 

「お兄様を侮辱しないでくださいっ!」

 

涙を浮かべて上階へ去っていく彼女を見送り安堵する。

 

良かった……これで私は彼が持つ魔法の真価を知ってはいるけど、知らないの。

 

そして……これで彼女にも嫌われたわ……。

 

しかも、氷漬けにもされてない。

 

ただ、司波深雪に手を上げさせてしまい、人を打ったことなど一度もない白魚のような手に痛みを感じさせてしまったのは心苦しいけど、仕方ないの。

 

本当に……良かった。

 

……彼女に打たれた頬は赤く染まることなく至って普通の顔をした私はそのまま帰路に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日付が変わって翌日。

結局、昨日の件は懲罰委員会が開かれず、OG二人には厳重注意と連帯責任としてバイアスロン部にも厳重注意が下され、この件に関しては話が終わったらしい。

 

まあ、そうだろう。

 

既に卒業しているOGの過剰勧誘よりも、在校生である剣道部と剣術部とのいざこざの方が重大だろうからね。

 

……が、しかし議題には上がったらしい。

 

何故それを知っているかというと……。

 

隣を歩く彼が聞いてもないのに昨日の話し合いの内容を私に教えてくるからだ。

 

「本当に、森崎は随分とやんちゃなんだな」

 

なんて穏やかに微笑まれながらそう言われていたはずなのに……

 

今度は廊下の壁に追いやられ、顔の真横に手をつかれる。

 

私達の体勢がいわゆる壁ドンというやつになっている。顔も近ければ身体も近い。

 

身長は私の方が低いがヒールがある分、この時点では同じくらいなので彼との目線がよく合う。

 

推しのご尊顔が真正面にあるので顔をニヤケさせないように取り繕うが自信が無い……。

 

が、頑張れ私の表情筋。

 

「昨日の夕方……深雪に何かしたのか」

 

双眸に灯るは怒りとそれまた生温くも別の想いが混ざり合った複雑な感情。彼に嫌われるには、やはり彼女を傷つけるのが早いらしい。

 

思わず口元に弧を描きながら彼の言葉に答える。

 

「特に何も……強いて言うなら……」

 

「貴方が、勉学も武術も優れているから……私に侮辱される筋合いは無いと言われた事に、反論を返した。ただそれだけよ?」

 

嘘は言ってない、ただ、魔法に関する事だけを言わないだけ。

 

「……そうか」

 

以外にもその一言であっさりと彼からの尋問が終了してしまうが私の言葉は止まらない。

 

「にしても、兄妹揃って感情的になりやすいのね」

 

「もう高校生なのだから、少しは取り繕うことを覚えたらどう?」

 

つくづく私から発せられる言葉の数々は……可愛くないな。

 

「……森崎から見て、俺は……感情的に見えるのか……?」

 

呆気にとられたような彼の言葉に首を傾げながら答える。

 

「そうね、とても感情的に見えるわ」

 

ただし、司波深雪限定で……が頭にくるけど。

 

「……森崎には、俺の気持ちもお見通しなんだな」

 

…………は?……どういう意味??

 

彼の気持ちがなんだって??ん??

 

彼の言葉の意味を理解しようとすればするほど、頭の中ではそれを理解するなと思考が停止する。

 

そうこうしていると、彼の空いた手が私の頬を撫で、顔がさっきよりもグッと近くなる……これ以上は……唇が、当たっちゃう……。

 

「すまない。口に出して、思いを伝えるようとすると……言葉が詰まるんだ」

 

彼の顔が赤く染まり、彼の吐息が私の唇をくすぐる。彼の複雑な感情を映していた双眸は今やドロリと熱を煮詰めた……これ以上は止めておこう。

 

考えてはダメ、この胸の高鳴りも見ないフリしないとダメ、期待してはダメ、自分がしなきゃ行けないことを……忘れてはいけない。

 

「森崎?」

 

黙り込んでしまった私を心配して彼が声を掛けてくる……私に優しくしないで。

 

「いつまで……私を壁に押付けているのかしら……今から私達は、風紀委員の職務に当たらないと、いけないと思うのだけれど?」

 

「そ、そうだな」

 

「そうよね……それじゃ、私の前から退いてくれる?」

 

「あ、あぁ……」

 

彼の顔が、手が、私から離れ、普通の距離感に戻る。

 

「それじゃ、先に行くわ」

 

そう言って立ち尽くす彼を置いて校舎の正面玄関に向かって歩き出す。

 

本当は嫌われるためにも、何か傷つけような言葉を言わなきゃ、遠ざけないと、嫌悪されないと、いけない……けれど、私も……彼を“本気で”傷つけるのは……言葉が詰まるの……。

 

……なんか、仕事前なのにドッと疲れた気分。

 

「はぁ……何も無いと良いけど……」

 

本当に、今日だけは私の周りだけ平和でいて欲しいわ……。

 

 

まさか……あの言葉がフラグだなんて……その日から勧誘活動の最終日まで魔法系、非魔法系問わず運動に関する全ての部活動の先輩方から連日、追いかけ回され勧誘されるなんて……その時の私は思ってもいなかったのです。

 





な、な、な……夏休みが終わった……つらたん。

いや、既に一社会人ですけど、心はいつまでも学生時代の魔法科に出会った時で止まっているので、八月が終わるとなんだか物寂しい気分です。

しかし、気温……貴様だけは別だ!!

毎年毎年最高気温を更新しやがってクソが!!!

さて、読者の皆様に置かれましては前話のアンケートに答えて頂き誠にありがとうございます。

結果といたしましては、オリ主と深雪は仲良くできる?の票が多かったので後々、仲良くしていく感じに持っていきます。(何話かかるだろうね)
少なくともここまでの話の流れで深雪があの言葉にブチギレないわけないので今は対立してます。

さてはて、オリ主ちゃんには更なる不幸?が待ち受けている様子。知らんけど(笑)

それでは次回に期待しててください。
早く話が出来上がるといいね(多分無理)

あ、特に何も考えずに押してください。そのうちの予定です。

  • 美男美女兄妹(達也深雪)
  • E組トリオ(エリカ美月レオ)
  • 幼馴染みコンビ(ほのかしずく)
  • 先輩グループ(花音啓服部中条沢木桐原)
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