魔法科高校の劣等生〜彼女はモブになりえるのか〜   作:アリス☆

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入学編 第三十五話

 

 

 

服部先輩を先頭に沢木先輩、中条先輩と私という順番でゾロゾロと件の放送室を目指していると。

 

階段の踊り場付近で彼と彼女に出会した。

 

「あ、先輩方もお揃いで....森崎さん?」

 

私も背が高い方だけど、それより身長が高い服部先輩と沢木先輩に前に立たれると、流石に隠れるらしい。それよりも低い中条先輩の事見えてるのかと変な心配をしてしまう。

余り仲がいいとは思われてない先輩達と一緒に現場に向かう私の姿がよっぽど珍しかったであろう彼女の驚いた声聞いて、つい話しかける。

 

「ん....なにか?」

 

「いえ、何も森崎さんも放送を聴いて?」

 

「....いや。わたしはきいて、ない....」

 

「えっと....先輩方とはどうして一緒に?」

私のこと、嫌ってるのに....なんで聞いてくるの??

........どうでもいいか。

 

「....さっきまで、いっしょにいたから....流れで(ながれで)、ね?先輩方(せんぱいがた)?」

 

話を振られた先輩方のうちの副会長が答える。

 

「ああ、桐原と五十里、あと千代田の七人で集まってたんだ」

 

「ま、とりあえず現場に向かおうか。もう他も集まっているだろうしな」

 

沢木先輩の言葉で止めていた足を進める。

彼女は中条先輩の横に、彼は何故か私の横に立ち歩き始める。

 

これ以降は誰も何も会話もなく、現場に到着し他のメンバーや三巨頭((3分の2))の到着を待って、扉の前で話し合いが始まった。

 

(ここ)の流れは原作そのままで私はまるで他人事のようにその光景を見ていた。

 

やがて彼の連絡によりノコノコと篭城していた放送室から出てきた壬生紗耶香が取り押さえられ、開かれた扉から私を含めた風紀委員メンバーが雪崩のように突撃し制圧にかかる。

 

制圧が終わったタイミングでまるで舞台上で主演を張る大女優ような登場をした生徒会長と、壬生紗耶香の会話に耳を傾けて、この場は終わる........はずだった。

 

「と、こ、ろ、で!森崎さん!」

 

まだその場にいた全員が放送室の部屋にいる中で、小悪魔のような笑みを浮かべた生徒会長が私に近寄ってくる。

 

「なんでしょうか、生徒会長(せいとかいちょう)

「今の達也くんのやったことどう思う??」

 

「どう....とは?」

 

「人の気持ちを弄ぶ(もてあそぶ)ような言動とか?何故、壬生さんの連絡先を知っているのかとか?」

 

「どうでもいいです」

 

「ほ、ほら、言いたいことがあるんじゃない??達也くんに??」

 

いや彼に関しては本当にどうでもいいのだけれど....そうね、強いて....

 

「....そうですね、強いて言うのであれば、やれ男女二人で居るからとか、やれ男性が複数の女性に粉かけてるとか、やれ今のように言葉巧みに女性を貶めているさまを見ながら....その他色々をとやかく言う、“恥知らず(・・・・)“な人間の方がもっと嫌いですけどね」

 

「なので....御二方。先週の委員長と今の生徒会長には些か人間性を疑ってしまいます。」

 

「てか、彼が誰に声をかけようと、誰とお茶しようと、誰と懇意になろうと....私に関係ないですよね。私に意見を求めないでください。迷惑です」

 

「では、この件は生徒会の一存に委ねられるのであれば....風紀委員である私はお邪魔ですね。生徒会長及び皆様方、お先に失礼します」

 

次こそは引き止められない様にさっさと放送室の部屋から出て廊下を歩き出す。

 

めんどくさい。あぁめんどくさい。

とくにもかくにもめんどくさい。めんどくさい!!

 

なにより....すごく....ねむい........。

 

ああ、だめだめ!!

ひるからもじゅぎょうがあるんだから....おきてないと....

 

纏まらない思考の中、足取りにも覚束なくなっていると、いつかの時のように後ろから呼び掛けられた。鈴の鳴るような可憐な彼女の声に。

 

「智駿、危ないわよ」

 

また....なまえでよばれた....なんで、わたしのこと....きらいになってくれたんでしょ

 

ゆっくりと振り返るとまるで私を心配しているかのような表情の兄妹が揃って、私の後を追いかけてきたらしい。

 

「森崎、大丈夫か?顔色が、随分と青白いが....」

 

あおじろい....?ちゃんと、めいくしてかくしてるのに....なんでばれちゃうの....

だめね....わたし、ちゃんとできてない....

 

情けなさで歪む視界の端で彼女が私に駆け寄ってくる。

 

「智駿っ!」

 

やだやだ、きらってて、わたしのことほうっておいてよ

 

わたしのこときらいでしょ((わたしのこときらいでいて))

 

「....お兄様を悪くおっしゃる森崎さんは嫌いですけど......。智駿の事は好きよ」

 

「なによそれ」

 

彼女のまるで私が意図して彼を悪く言っているのが分かっているような発言に足元から崩れるような感覚に襲われる。

 

わたしのやってたことむだだったの....でもきらわれなきゃ、すかれてはだめなの....なまえをだすのをけんおするくらい....きらわれなきゃ....

 

ふらりと体勢を崩しかけた私を優しく抱きとめ、頭から何かを被せられ私の顔も姿も隠された....。そのまま誰かに....彼に抱き上げられた。

思わず降りようと身体をねじったりし抵抗を試みるも彼に耳元で囁かれる。

 

 

「暴れるな....これなら、誰にもバレないだろう」

 

 

最後の抵抗でまた一つ、彼に対して誹謗の言葉を投げかける。

 

 

「きみとかかわると....ろくなことがない」

 

 

「それでも、俺は森崎と関わりを持ちたいと思ってる」

 

 

「........へんなの」

 

 

「ああ、森崎と出会ってから変になったのかもしれないな」

 

 

「......わたしの....せいに、しないで」

 

 

まぶたがおもい....

 

今にも眠りそうになるのを我慢しようにも彼の腕の中がとても心地よい。

 

「おやすみ、智駿」

 

まるで私の様子を見透かした彼がそう囁く。

最後に愛しげに私の名前を呼んで。

私の意識は途切れ、微睡みの中に沈んでいった。

 

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遠くの方で聴こえる喧騒に沈んでいた意識が浮上する。

 

寝かされていたベッドから身体を起こし、固まった肩や腕を伸ばすように上にあげたり、回したりし凝りをほぐす。

私が目覚めたのを察したのか、カーテンの外から保健医の......安宿怜美が声をかけてきた。

 

「森崎さん。起きましたか?」

 

「....はい」

 

「少し中でお話出来る?」

 

「出来ます」

 

「そう、失礼するわね」

 

そう答えた安宿怜美はカーテンの内側に椅子を一脚持ち込んで、私と視線が合うように椅子に座り話し始める。

 

「まず、今は5時限目の途中です。あとからクラスメイトの方に授業内容を聞いてくださいね」

 

「分かりました」

 

「はい、それじゃ森崎さん、貴女の身体だけど....ちゃんと食事は摂っていますか?睡眠不足だけじゃその顔色の説明がつかないのは....分かっているわね?」

 

....痛いところ突っ込まれたな。そういやこの先生、医療系特化のBS魔法師....だったわね。だったら誤魔化しても無駄ね。

別にこの保健室、今私と先生以外誰もいないみたいだし。

 

「はい。存じてます....それでも、その....食事を摂るのが億劫で....」

 

「ええ、視ればわかります。医療機関への受診は?味覚異常(それ)は専門的な場所でないと治療は出来ないわよ」

 

分かってはいる....でも、通院する時間すら私には惜しい。

なにより....あと半年で終わろうと思っているのに、無駄なあがきだと思ってしまう。

 

黙り込んでしまった私を困ったように見つめた安宿先生は、諭すようにけれど強制はしない言い方で私を励まし代替案まで考えて提案してくれた。

 

「そうね。食べるのも飲み込むのも辛いでしょうけど。これ以上体重を落とすのはあまりよろしくないから、医療用の高カロリー食を使用するのをオススメするわ」

 

「今の森崎さんに足りないのは栄養じゃなくて摂取カロリーの方。だからなるべくエネルギーになるものを食事に取り入れてみてくださいね」

 

「....善処いたします」

 

「はい、是非そうしてください。もうすぐ授業も終わりますね、私は今から会議で保健室(此処)を開けるけど、まだ休んでなさい。今日の体調で一人で帰宅するのは危険だから、誰かと一緒に帰ることにしてくださいね」

 

「分かりました」

 

保健室内に控えめなチャイムが鳴り響く。

体調不良で寝ている生徒に配慮してのこの音量なのだろう。

 

「それじゃ森崎さん。ゆっくり休んでから帰宅するように」

 

「ありがとうございます。安宿先生」

 

先生は念入りにそう言ってからカーテンの外に出て、保健室から出て行ってしまわれた。

 

起こしていた身体をベッドに横になり、ずっと傍にあった彼の上着で身体を包み、顔が緩んでしまいそうになるのをゆっくりと深呼吸しながら収めようとする。

 

彼の上着....。推し()の上着....。愛している人()の上着....だめだ、顔のにやけが収まらない。

彼にあれだけ酷いことを言っているのに、彼を愛している諦めの悪い自分の心に嫌気がさす。

ほんのりと存在する、彼の香りに胸が高鳴る。この香りに包まれている、今、この時が永遠に続けばいいのに....。

 

突然保健室の外から控えめに扉をノックされビクッと肩が跳ねる。

 

気を抜きすぎてた。部屋の外に誰かが近寄ってくるのに気づけない程には....

 

音もなく起き上がり彼の上着を脱ぎ、傍に畳んでおいて、またベッドに横になる。

 

もう一度ノックの音が響き、誰かが扉を開けて入ってきた。

真っ直ぐ私の寝ていたベッドの方に歩いてきてカーテンの前で立ち止まる。

 

カーテン越しに見るシルエットに見覚えがある....彼が何故と思ったが上着を回収しに来たのだろう。

 

私は目を閉じて眠っている振りをして、彼をやり過ごすことにした。

 

「智駿、起きているか」

 

意識を失う前に聞き間違えたのかと思っていたけど、今も下の名前でまた呼ばれたせいでその出来事が夢でもなく現実だと思い知らされる。

 

親しげに名前を呼ばないで、さっさと上着を回収して出て行ってよ....。

 

早くこの場から去って欲しいと願う私とは裏腹に、彼はカーテンを開け放ち、近くに畳まれた上着を私の身体に掛けて、先程先生が置いて行った椅子に座ったらしい。そのまま私の手を取り、まるで恋人がするかのように指を絡めて握ってくる。

持ち上がった腕から下がった私の左腕の袖口から仕込んでいるCADを見えたのだろう、空いた方の手でそのCADを多分親切心で外そうとするその手を、止めようと寝たフリをやめて彼に声をかける。

 

CAD(それ)に触んないで。マナー違反よ」

 

驚いた彼がCADから手を離し謝罪の言葉を口にする。

 

「すまない。智駿が寝苦しいかと....思って」

 

「別に良い。それより手、離して」

 

視線を指が絡められた手に向けて彼にそう言い放つ。

彼はゆっくりと名残惜しそうに手を離して許しを乞うように私と視線を合わせる。

 

「少し、俺と話しをしないか」

 

「....えぇ、構わないわ。いくつか聞きたいこともあるから」

 

そう言って会話するために身体を起こす。起きたり寝たりと忙しないな私。

 

「で? 話ってなに?」

 

「....先日は智駿にも壬生先輩にも誠実でない行動を取って悪かった」

 

「あぁ....それね。私への謝罪は結構よ」

 

「それよりも壬生先輩に謝罪してきたら?」

 

「壬生先輩には二人が去ってから直ぐ謝罪している。寛容にも許してくださってる」

 

「そう....壬生先輩が許してるなら私からは何も。それで?話はこれだけ?」

 

話が終わったのであればシワになっているであろう制服の上着のクリーニング代と共にもう帰ってもらおうかな。....彼と二人っきりは何か勘違いしてしまいそうになるからすごく危険....の前に名前の件だけ聞いておかないと。

 

「いや、まだある。....その」

 

彼が言い淀んでいるのを被せるように私から彼に問いかける。

 

「ねぇ、なんで名前(智駿)で呼ぶの?貴方とはそんなに親しくなった覚えがないのだけれど」

 

私の容赦ない言葉に耐えるようにグッと唇を噛み締め、椅子から降り膝を着いて私の手を取るとゆっくりと口を開く。

 

「....俺は、智駿と親しくなりたいと、思っている。迷惑....か?」

 

....迷惑かと問いかけられたら別にそうでもない。(推し)の顔を存分に堪能出来るのであれば、親しくしていても良いと考えはする。でも私は森崎智駿(森崎駿)だから、貴方とは....貴方達とは仲良く出来ないの。

 

だから私の答えは決まっている....決まって、い、る....。

 

そ、そんな捨てられた子犬みたいにションボリとした顔をしないでよ。断れなくなるじゃない。

 

「智駿....だめか?」

 

私の手を頬に添えて、下から見上げるように懇願する彼についに白旗をあげる。

 

「....分かった。分かったから....そんな目で私を見ないで」

 

もう、なんで私になんか執着するかな、君は。別に私と仲良くなっても良いことないのにね。

 

私の回答に満足したのか、安堵の表情を浮かべた彼はそのまま頬に添えた私の手に口付けを落とした。

 

口付けを落とされた....口付け、された??

誰に?推し()にっ!!??

 

「な、な、な、なにしてんのっっ!!!!」

 

バッと手を払い彼から距離を取るように後退る。

そんな私を追いかけるように彼がベッドに登ってさっきよりも近い距離に近寄ってくる。

 

「何って、お近づきの印に」

 

「ゆ、友人(・・)にいきなり口付けする人間がいますかっ!!」

 

「俺が智駿と親しくなる(・・・・・)のは....友人の枠を超えた先にある場所だからな」

 

「そんなの私の知ったことではなくってよ!君は誰にでも手に口付けをするのかしら」

 

「それ。やめてくれないか?」

 

「そ、それって、何よ」

 

「だから、君だの貴方だの....。俺の名前で、せめて苗字で呼んでくれてもいいんじゃないか?」

 

む、無理。無理無理無理無理、絶対無理っ!!

 

彼の名前なんか呼んじゃったら意識しちゃうじゃん!!推しの名前なんて考えただけでも顔が赤くなったりニヤケたりするのに!!声に出して呼ぶだなんて絶対に無理っっ!!!!

 

「わ、私が君をどう呼ぼうと、どうでもいいでしょ!!」

 

「どうでも良くないが??智駿が俺を達也と(名前で)呼ぶまで今日は逃がさないからな」

 

そう言いきった彼は私の腰に手を回し逃げ出せないようにガッチリとホールドしてきた。

 

「私は君を名前で呼ぶつもりは無い!」

 

「俺は智駿が呼ぶまで離すつもりは無い」

 

かくして、彼女(深雪)が生徒会終わりに、他の友人達と一緒に保健室にやってくるまでこの押し問答は繰り返された。

 

(ちなみに安宿先生は保健室で繰り広げられる痴話喧嘩に呆れ職員室で仕事をしていました。)

 




どうもー作者でーす。
皆さんアンケートには答えてくれてますか?
各々の回答が中々のデットヒートを繰り広げてて作者もワクワクが止まりません(((o(*゚▽゚*)o)))
何がどう影響するかはまだのお楽しみにです。

さて、ちょっと前の話では達也の夢主に対する呼び方を解説しましたが、今回は夢主の解説を!
夢主は達也と深雪だけは内心で彼だの主人公(ヒーロー)だの彼女だのヒロインだの言ってますが、言葉にすると達也は彼や君、貴方など二人称呼びをし、深雪には一貫して司波さん呼びです

どうして達也に対してはそんな言い方なのかと言われれば夢主とってもここはもうフィクションの世界ではないからです。彼は現実に生きている人間だと認識しているからこそこれ以上感情を求めないために敢えて名前を呼ばない選択を取っているんですね。

桐原武明にああ言ったのはある意味、物語のような恋愛を望んでいるのは彼女自身を自虐しているからですね


まだまだアンケートは締め切らないので奮ってご回答お願いします。
また次回に!!

あ、特に何も考えずに押してください。そのうちの予定です。

  • 美男美女兄妹(達也深雪)
  • E組トリオ(エリカ美月レオ)
  • 幼馴染みコンビ(ほのかしずく)
  • 先輩グループ(花音啓服部中条沢木桐原)
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