魔法科高校の劣等生〜彼女はモブになりえるのか〜 作:アリス☆
アンケート一位、おめでとうございます。
春の風が心地よく吹く雲一つない晴れた昼下がり。
私は髪を切りそろえに美容院ヘ行き、髪を整えてもらった。
余計な詮索をされない為に敢えて年頃の女の子らしくオシャレをして、終始店員にはおちゃらけた雰囲気で会話をし、セミロングの髪がショートボブの長さまで整えられた。
会計をし外へ、吹く風が切ったばかりの髪を撫でる。
肩口に触れる毛先が妙にこそばゆい。
近くの広場のベンチに座り黄昏ていると不意に声をかけられた。
「智駿!?その髪....」
視線をやると達也と一緒にいる深雪が驚いた表情を見せていた。二人で仲良く
昨日のこともあり、達也と目を合わせるのが気恥しいので深雪の方に目を合わせる。
「二人共、こんにちは。髪が....何か?」
「いえ....なんでもないわ。....ショートも似合っていますね」
「ありがとう。二人はお出掛け?」
「ええ、智駿は?」
「そこの美容院で髪を切りに」
そう言って広場近くの先程まで滞在していた美容院を指を指す。
「そう....智駿、この後予定は何か有りますか??」
深雪にそう尋ねられてしばし考え込む。
せっかく外に出たのだから手芸屋に行っても良いし....いや、もう家で過ごそう。美容院で普段なら絶対にしない喋り方して疲れたし。
「いいえ、特に何も。このまま家に帰るだけよ」
私の言葉に深雪の顔が、ぱぁっと輝く。街ゆく人達は深雪の輝かんばかりの微笑みに皆一様に足を止める。ただ一人、深雪の微笑みに動じない人物....達也だけはいつもの表情で私を見つめてくる。
う、美しい....目が焼かれてしまいそう。やっぱり絶世の美少女の微笑みは国宝よね!その笑顔、私じゃなくて是非お隣に立つご自分の
「では智駿。
んへ?なんか副音声が聞こえたような....
「俺も、智駿と一緒に居られたら嬉しいよ」
うっ!そんな柔らかな笑みをこちらに向けないで。達也っ!
その顔は
私が答えを出すのに困っていると。この兄妹は、私の両隣に座り顔を近づけ、達也は手を握り、深雪は腕に抱きついてくる。
やめてーっ!その綺麗な顔をこちらに向けないでーーーっ!!
「ね、智駿?良いでしょう?」
「智駿、ダメか?」
........っ!
「ち、近いっ!分かった!分かったから、もう少し離れなさいよっ!」
「あら智駿。公共の場で声を荒らげては迷惑になるわ」
「誰のせいよ!誰の!」
「智駿、落ち着け。通行人の視線が智駿に向けられてるぞ」
「向けられてるのは私じゃなくて、貴方たちよ!」
「そうか?/そうでしょうか?」
も〜....なんか、二人の
「はぁ....それで、何処に行くつもりなのよ」
深いため息をつく私の問いかけに達也が答える。
「智駿の事がもっと知りたい....だから、智駿の行きたい場所で構わない」
........なんか、ものすごいこと言ってない??
なんで私なんかを知りたがるの??私は別になんの面白みもない人間ですけど??仕事のない休日なんて鍛錬が終われば部屋で一日中刺繍したり読書して過ごすようなインドア派な人間ですけど??
「そうですね、休日の智駿が普段行くような場所に行ってみたいです」
達也の言葉にそう続ける深雪の言葉に申し訳なさが勝つ。
ごめんなさい。外はあまり出歩かないんです。二人共私の身体能力が高いからアウトドア派の人間だと思ってる??そんな勘違いはやめて欲しい。私は割と部屋の中で一人で過ごす時間がとても好きなんです。そう....それこそ前世から!!だから二人が想像しているような場所には行かないし。てかまず、元々美容院も半年に一回髪の毛先を整えるだけに行くくらいだし、しかも毎回違う美容院に行くし、行きつけのお店なんてそれこそ手芸屋以外ないのだけれど....ど、どうしよう......。
「あ....千代田先輩に教えていただいたんですけど」
思い出したかのように深雪が思考の海に耽る私にそう話しかけてきて思わずこの二人が花音さんから何を吹き込まれたのか心配になる。
「花音さんが....何を....」
「智駿は刺繍が趣味で、最近ではぬいぐるみやぬいぐるみに着せる洋服まで製作しているとか....」
プライバシーの侵害....いや、花音さんにそんなことを教えてしまった私が悪いのか....
「....確かに私の休日は、日がな一日部屋の中で過ごすことが多いわよ」
だってぇ、休日に誰かと遊ぶなんて
「そうか....なら、智駿の作品を見てみたいな」
「それは良い考えですね。お兄様!」
いや、良くないが??何二人して盛り上がってんの???絶対に無理ですけど....はっ!ここ最近の作品なんか
「盛り上がってるとこ悪いけど、私の部屋....今、人を上げられるような部屋じゃないから....無理よ」
そう....ある意味、私の今の部屋は....欲望にまみれた
「....だめか?」
「だめっ!!」
しゅんとした達也にそう尋ねられたが強めに応える。負けちゃダメよ負けちゃ!!あんな部屋に
「....なら、智駿が....俺の為に作った作品が欲しい」
「....なんで?私なんて素人の域を出ないけど?」
「それでもいい....今日が何の日かわかるか?」
今日?4月24日............ッ?!
そうだったテロリスト襲撃の次の日は....
「俺の誕生日なんだ。だから....智駿の刺繍入りの物が欲しい。それでもダメか?」
「た、誕生日プレゼントがそんなモノで良いわけ....」
チラッと深雪の方に苦し紛れで視線を向けると顔を上下に動かして頷いている。
「智駿が、俺の為だけに作ってくれるならそれだけで....とても価値のある物になるんだ....」
「....分かった。作ればいいのね....で、何にどう刺繍して欲しいわけ?」
「それも含めて、智駿に選んで欲しい」
いやそもそもデザインも何も刺繍は精神統一の一環でやってるだけだから、センスも何ないんだけどな....。
「....なら、ハンカチにでも刺繍しましょうか。」
プレゼントで刺繍と言ったらハンカチなんだけど......人へのプレゼントにハンカチは無いか....意味も言い意味もあるけれど、ある意味の方が印象的でそんな良いものでは無かったような....やっぱり違う物の方が良いわよね。
そんな私の心配を他所に達也は心から嬉しいといった微笑みで私を見つめてくる。
「ハンカチか、楽しみだな」
「では、智駿に刺繍して頂くハンカチを買いに行きましょう」
好意的に捉えている二人に水を差すように問いかける。
「....ハンカチで良いの?」
「ああ、ハンカチを贈られたからと言って智駿と縁を切るつもりは無いからな」
「....そう」
博識な達也が知らないわけないか....。
そう思いながら達也の視線にそっぽ向く。
「それに新しいハンカチには新しいスタートを切る意味合いもあるから、誕生日のプレゼントとして贈られるならこれ以上に相応しい物はないと思っている」
そう言った達也がただでさえ近い距離にいる私にグッと近寄り耳元に唇を寄せて、多分私にしか聞こえないぐらいの声量で囁く。
「智駿からのマーキングだと思うと気分が良い」
「な、な、な、な....そんなわけないじゃないっっ!!!!」
私は恥ずかしさのあまりに思わず立ち上がって二人から距離を取る。
マーキング?そんな意味があるの、ハンカチって!!
別にそんなんじゃないしっ!!刺繍のやりやすさならハンカチが一番いいって思っただけだし!!!
「さて、そろそろ行こうか。」
「そうですね、お兄様。あまり時間をかけますと、皆との待ち合わせの時刻に間に合いませんもの」
立ち上がった二人が私の両腕を掴む。
あれ、前にもこんなことがあったような....
てか、待ち合わせって何??皆って誰??
「智駿、お買い物の後は私達と夕食を食べましょうね」
「智駿がいるならとても楽しい時間を過ごせそうだ」
そのままズルズルと否応がなしにショッピングセンターに連れていかれて達也へのハンカチ選びが始まり、夕方の集まりにも参加させられた。
ちなみにプレゼントのハンカチの色は淡い薄紫色で刺繍するデザインや刺繍糸の色は私に任せるらしい。
....何故か私の瞳の色と酷似している色のように見えるのはきっと気の所為だと思いたい。
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ところ変わっていつもの
席順は誕生日席に本日の
両サイドに三脚ずつ並べられた椅子に片側にE組の面子。もう片側には深雪とほのか、雫の順に座っている。
「
エリカの音頭で、その場にいる友人達がグラスを掲げる。
「よーし!今日は飲むわよー!」
場酔いでもしているかのようなエリカに少し引き気味の美月とレオ。
「エリカちゃんたら既に盛り上がっているね」
「おいおい、酒でも入ってんじゃねーだろうな」
場の雰囲気に慣れてないのか、遠慮がちのほのかが深雪に声をかける。
「深雪、私たちも来て良かったのかな?」
「もちろん!是非来て欲しかったわ」
深雪のその言葉でようやく安心したように微笑んだほのかと微かに笑みを浮かべる雫。
大丈夫よほのか。この場において一番の場違いは間違いなくこの
気前よくこの場を貸切にしてくれている。喫茶店のオーナーが大皿に乗せられた料理を運びながら、話し掛けてきた。
「賑やかだね。今日はなんの集まりなんだい?」
「お疲れ会のような....」
という達也の言葉を遮ってエリカが声を上げる。
「達也くんのお誕生日会だよ!!」
「「「「えっ!!」」」」
美月からのエリカへの追求が始まる。
「エリカちゃん!なんで教えてくれないの!?」
「いや〜正確な日付は知らないよ」
「えっ?」
「どうせ、四月中でしょ。誤差の範囲かなって深雪に昨日....」
「そう
フフッと微笑む深雪にひっかかりを感じたエリカは真相を達也に尋ねる。
「まさか、本当に今日だった?」
「ああ、驚いたよ。ありがとう」
そう達也にあっさりと答えられた、エリカは深雪に詰め寄る。
「深雪〜、謀ったわね」
「あら否定はしていないはずよ」
詰め寄られた深雪はエリカの言葉をのらりくらりと交わしていく横で落ち込んでいる蚊帳の外にいたほのかと雫。それをフォローしようにも事実を知らなかった美月とレオも気の利いた言葉が出てこないようだった。
そこへ
「まあまあ、みんなに気を使わせたくなかったんだろう。」
「このザッハトルテを僕と君たちからのプレゼントとして手を打たないか?」
「さすがマスター!」
救いの手を差し伸べられた四人が沸き立つ。
ケーキにロウソクを刺し、火を灯す。
主役の達也が灯された火を吹き消し、友人達からは拍手と共に次々にお祝いの言葉を告げられていく。
友人達に囲まれている達也を目を細めて見つめている深雪の心情を察する。....よかったね、深雪。
不意に気付いたようにほのかが声を上げる。
「ねえ、智駿は驚いていなかったみたいだけど....知ってたの?」
風向きが変わってきて追求するような目で訴えるほのかから思わず目をそらす。
「....知っていたというか....ねだられた....というか....」
「何をねだられたの」
雫が会話に入ってきて周りは私の言葉を待っているようだった。
「....誕生日プレゼント」
「誰の?」
「....達也の」
「へー....智駿は知っていたんだ....」
責めるような視線を向ける雫とほのかに弁明を図る。
「わ、私だって昼間に聞いたばっかりだったの!」
それでも二人の視線はチクチクと私に突き刺さる。
「そういや、智駿。達也と深雪さんの三人一緒に来てたよな」
レオっ!今ここでその話題を出さないでっ!
ただでさえ悪い私の立場がもっと悪くなるだけだから!
突き刺さる視線の数が増えて思わず助けを求め求めるように達也に視線を向ける
「ん?どうかしたか?」
「どうかした....じゃない!
「....またその呼び方か」
ゆらりと達也が動きだし後退る私を
「ひぇっ!?」
「俺の名前は?」
「た、達也....」
「ああ、ちゃんと呼んでくれ」
「分かった!分かったから....離してーっ!!」
本気で抵抗すれば達也の腕の中から抜け出すのは容易い....けど、達也に傷をつけたくない私は大した抵抗も出来なくて、達也に
「智駿とは、深雪と出かけている時に偶然会ったんだ」
「誕生日プレゼントを願ったのも。智駿の手作りのモノが欲しかったからだ」
「へー、達也くんは智駿に何をお願いしたの?」
「智駿が刺繍したハンカチ。昼間は三人でそのハンカチを買いに行ったんだ」
「そっかー、良かったわねー」
追求する視線が和らぎ、今度は生暖かい視線を送られて居心地が悪い。
場の空気を一新するように深雪がケーキを切り分け始める。
「マスターの分も入れて....そうね、十等分にしてから主役のお兄様のお皿に二切れ入れましょう」
「そうだね」
切り分けられたケーキがお皿に取り分けられていく。
依然として達也に抱き締められたままの私に深雪が
困惑する私に深雪がにっこりと微笑んで言葉を述べる。
「お兄様の手は塞がっているみたいなので、智駿が食べさせてあげて」
「いや、達也が離してくれたら....」
「智駿が食べさせてあげて」
「で、でも、深雪....」
「
あ、圧がしゅごいぃぃ....
深雪からお皿とフォークを受け取り、達也を見上げて問い掛ける。
「あの、一応聞くけど、自分で食べる気は?」
「無いな。智駿が食べさせてくれるんだろ?」
どうやら私を離す気がないようですね。何なのかしら....まったく。
「....分かった。口、開けて」
フォークでケーキをの端を一口大にすくい、達也の口元へ差し出す。素直に開かれた唇の端にチョコクリームが着いてしまったが、それでも達也は満足気に微笑みながらケーキを食べ、舌先で唇についたクリームを舐めとる。
私が達也の口にケーキを運んで、それを達也が咀嚼し飲み込んでいく様を眺めながらケーキを一切れ分食べさせたところで達也から尋ねられる。
「俺に食べさせるばかりで、智駿は食べないのか?」
「それもそうね。いただきます」
本来であればケーキなんて重たいもの食べる気はないのだけれど、達也のお祝いの席のなのだから食べてもいいかなと思い、
「なに?」
「....いや、何も」
よく見ると達也の顔が紅潮しており、さっきまであんなに見つめていた私と目が合わなくなっていた。
私が口をつけたケーキとは別の二つ目の達也のケーキの端をすくいあげ再び口元へ運ぶ。
先程とは打って変わって口を開こうとしない達也に声をかける。
「何、食べたかったんじゃないの?」
「そうだな....いただこう」
達也の小さく開かれた口にケーキを運んで咀嚼する様を見つつ、再び自分の口へケーキを運んで口にする。達也と自分に交互にケーキを運んで....ついには完食する。
自分でもびっくりなくらいケーキを食べれたことに驚いていると、周りの視線がこちらに向けられているので振り返る。
「なに?みんなしてどうしたの?」
「いや、なんでも....マスター、濃いめのコーヒー頼んだ」
そうマスターに言ったレオの言葉をきっかけに、次々に
何故か深雪は一人ほくそ笑んでいるがその真意はわからない。
一体何なのかしら....。
口数が減り顔を赤らめたままの達也や深雪達と穏やかな雰囲気を保ちつつ、私に注がれる生暖かい視線に疑問が残りつつも達也のお誕生日会は終了した。
それにしても....刺繍のデザイン、考えないとな。
達也と深雪との三人で
達也の誕生日会の様子、達也にケーキを食べさせる話を書いてみました。
いかがでしょうか?
あ、智駿は間接キスをしただなんて微塵も考えてないです。
推しにケーキ食べさせるという貴重な経験を味わっているので。
本日はお付き合い頂き誠にありがとうございました。
次回は閑話か九校戦編の話かはまだ未定ですがこれからもよろしくお願いします。
あ、特に何も考えずに押してください。そのうちの予定です。
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美男美女兄妹(達也深雪)
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E組トリオ(エリカ美月レオ)
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幼馴染みコンビ(ほのかしずく)
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先輩グループ(花音啓服部中条沢木桐原)