ユグドラシル最終日、余所のギルド拠点で談笑中、現実世界の方で寝落ちしてしまいました   作:挫梛道

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剣士vs魔拳士

◆セバスside◆

他人(ひと)の名前を聞く時ゃ、先に自分が名乗るもんだって、教えられなかったか?」

まろん様…失礼、マカロン氏の『名前は?』の問い掛けに、『それなら先に名乗れ』と言わんばかりな男。

その容姿は、馬車を襲った男達からシャルティア様が魅了(チャーム)で聞き出した それその物。

どうやら この男が、この野盗団・死を撒く剣団の用心棒…武技の使い手な様です。 

 

「そりゃ ごもっとも。マカロンだ。」

「…ブレイン・アングラウスだ。」

マカロン氏が名乗ると、この男もアングラウスと自身の名を名乗りました。

これも、シャルティア様が聞き出した名前。

この男が武技使いで決定ですね。

 

「アンタ達、強いんだってな?

細かい事は無しだ。さあ、()ろうぜ?

どっちだ? そっちの兄ちゃんか?それとも爺さんか?

何なら両方纏めてでも構わんぜ?」

剣を…この世界では珍しい日本刀(カタナ)を抜き、その切っ先を我々に向けるアングラウス。

侵入者と用心棒ですから、戦闘不可避は当然。

この剣士が私とマカロン氏、どちらが相手となるかを聞いてきます。

ソリュシャンは戦力と見てないか、それとも女性は斬らない流儀か…最初から相手として数えてない様です。

 

「俺が出るよ。

セバス、ソリュシャン、それで良いな?」

そして前に出たのはマカロン氏。

 

「了解致しました。…それでは!」

 

シュシュシュッ!

 

「「「ぎょえぃっ?!」」」

「周囲の露払いは、お任せを!」

ソリュシャンが背後から襲ってきた敵の眉間を、ナイフで射ち抜いて答えます。

 

「ヒュー♪」

それを見たアングラウスが、称賛するかの口笛。

 

「な…?」

「この女も…」

先程から、痛め付けて動けなくしていた野盗共も次第に回復したのか、此方に集まってきました。

尤も、洞窟入り口は既に術式結界を施し、脱出不可能ですから、奥側(こちら)に進むしか道は無いのですがね。

そして この者達、ソリュシャンを見て、彼女も戦闘要員だった事に驚いています。

貴族令嬢なドレス姿。

そして洞窟突入から今迄、一切 戦闘に参加してなかったから、それは無理も無いですか?

そして…

 

「…武器は持ってないのか?

まさか丸腰で、(コイツ)と戦り会う心算か?」

「俺は武闘家だ。この拳や脚が、武器であり凶器なんだよ。

それとも何か?

馴れない剣か何かを持っての、弱体化のハンデを求めているのか?」

「ハッ!上等だ!」

あの御二方も、戦闘開始の模様。

間合いは あの刀の、半歩外ですか。

ならば、 

「ふん!」

 

バキッ!ガンッ!グシャッ!

 

「うの?」「どす!」「とれす!?」

私とソリュシャンは、その邪魔となる者達の、排除と参りましょう。

 

 

◆セバスside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

「キェェイッ!」

 

斬!

 

ブレイン・アングラウスが気合いの雄叫びと共に、速く鋭い踏み込みからの斬撃を繰り出すが、俺は それをギリギリのタイミングで躱し、

 

バスッ!ビシッ!

 

「…ぐっ!」

更に此方から踏み入り、下段蹴りと肘打ちで迎え撃つ。

刀の様なリーチの有る武器に対して、俺は その内側…近過ぎて逆に刃が届かない位置からの、振りの小さい攻撃だ。

…速く鋭い踏み込みと言ったが、それも あくまで、最近 解ってきた現地基準の話だ。

確かに この世界に来てからは、それなりな攻撃だったが、それでもユグドラシルのカンストがデフォな俺には緩過ぎる。

舐めプな心算は無いが、一応 武技の使い手らしいし、それが使()()()()かどうかを判断する迄は殺すのは無しの方向だ。

 

「聞いてるぜ? 武技の使い手なんだろ?

見せてみろよ、武技。」

 

チョイョイ…

 

「テメェ…!」

指先で『掛かってこい』の煽りアピールに、アングラウスは怒りの形相を浮かべる。

あら?失敗した?

 

「がぁっ!」

キレるのは絶対に悪いとは言わんが、それで動きが雑になったら意味が無いz

「死ね固羅ァァアッ!!」

 

ぶぅんっ!ぶんっ!

 

やはり!感情な儘の、単なる大振りしか しなくなった?

 

「てぃっ!」

 

どんっ!

 

「が…が…?!」

そんな技巧も何も無い力任せ、一刀両断の大振りを避けると背後に回ってのジャーマンスープレックス!

 

「「「おぉっ!」」でありんす!」

セバスとソリュシャン、そして何時の間にか観戦に加わっているシャルティアが、感嘆の声を上げる。

周りを見れば、既に その他の雑魚は皆、纏めて綺麗に縛られていた。

ヘロヘロさん創造…だったよな?…のメイド、ソリュシャンもだが、セバスは たっちサンが戦える(Battle)執事(Butler)の設定で創ったNPC、仕事が早く丁寧だ。

そしてシャルティアの仕事だろう、1体だけミイラみたいに 干枯らびて死んでるのが居るが、これも特に問題は無い。

 

「ハァ…もう良いや。

おいセバス。コイツ、もう殺して良いだろ?

武技の使い手だか何だか知らんが、元々が雑魚だ。

その武技とやらも、どうせ大した事無いぜ?」

一応、武技の使い手は その検証としてナザリック連れて帰る予定だった。

 

「モモンガさんには俺の責任で、『殺っちまったぜ★』って謝るからさ。」

しかし、俺が興味を無くし、その価値無しと判断させて貰った。

 

「誰が…誰が雑魚だと?!

巫山戯んな! そんなに武技が見たいなら見せてやるよ! そして死ね!」

おや?目付きが変わった?

別に発破を掛けた訳じゃ無い…本当に見切りを付けた心算だったが、雑魚扱いが余程 琴線に触れたらしい。

力量は ともあれ その瞳は怒りは鎮まらねど、落ち着きは取り戻し…そんな表情だ。

 

ザッ…

 

バックステップで俺と間合いを空けると刀を鞘に納め、片膝を折った中腰で、居合いの構えを見せる。

 

「篤と見やがれ!

これが俺の武技…領域!」

 

ブォッ…!

 

それはアングラウスの周囲、直径約6㍍に張り巡らされた、剣氣の結界!

成る程…不用意に その中に足を踏み入れようなら、それが例え何処等の方向からでも、超反応から神速の抜刀でスバァッ!…って感じか?

これは正直 驚いた。

これは相当な技術だぜ?

まさか、これ程の技量を精度は兎も角、実際に体現するとは…『大した事無い発言』は、取り消さないと いけないな。

尤も それ…ケンちゃんの流水制空圏の()()()()()なんだけどな!

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆ソリュシャンside◆

「…つまり、魔法や弓、極端に言えば石礫等、あの外からの攻撃には意味を成さないですがね。

…いえ、石や矢程度なら、超反応で打ち落としますか。」

セバス様が言うには、あの武技使いが放った ()()は、対人…しかも近接戦闘を専門にした者に対して特化した物だと云います。

しかしながら まろん様は魔拳士の(クラス)を所得する為の条件として、ウィザードの(クラス)も得ています。

つまり、離れて魔法で攻撃すれば、何の問題も有りません。

 

「しかし、ま~ぁカロンさんの性格からして、『これはカモでありんす♪』と、外から攻撃していくには思えないでありんし?」

はい。同感です。

寧ろ、興味深々に踏み込んで行きs…ってますね。

 

「馬鹿が…

秘剣・虎落笛!!」

 

斬!

 

そして まろん様が その領域とやらに足を1歩踏み入れた瞬間、居合い斬りの一閃!

まともに其れを受けた まろん様の首が、胴体から切り離されました。

…勿論 私達は誰1人、何の心配も しておりませんわ。

 

「成る程…なかなか、良い攻撃だ。

並の人間なら、脅える間も無く、終わっていただろう。

良い速さ、良い太刀筋だ。」

は…はぁぁああ゙??!

何と無礼な。

まろん様が貴様如きの技を称賛されておられるのに、間抜け顔で間抜けな悲鳴を上げるとは。

 

「で…首無し騎士(デュラハン)?」

宙を浮く まろん様の首を見て、その真実(こたえ)に気付きましたか?

 

「ま…まさか?!」

「その通り。其方のマカロン氏だけで無く、我々は皆、貴方達 人間から見れば、異形と呼ばれる存在で御座います。」

「な…っ」

尋ねる様に此方を睨む人間に、セバス様が それに応えます。

 

「混乱してる処 悪いが、勝負は決めさせて貰うぞ?」

「ひ…く、来るな?!」

 

カィィンッッ!

 

不死属(アンデッド)と対峙するのは初めてなのでしょうか?

首を脇に抱えた まろん様が人間に歩み寄ると、この男は慌てた様に刀を凪ぎ払うが、その刀身は腕での防御(ブロック)で、へし折られてしまいました。

 

「な…何…だと…?!」

その事実に、信じられない様な顔で驚く人間。

あの武器も この世界では其れなりに業物な様ですが、まろん様の着ておられる服の防御力(かたさ)の方が勝っていた様です。

 

「次は、俺の番だな!」

「!?」

そして、まろん様のターン。

アレは肉体防御力上昇の魔力ですか?

それを頭に挿充(チャージ)しています。

身に着ける装備で無く、肉体その物を強化する魔法。

それは武闘家等、己の肉体を武器とする(クラス)の場合、防御力だけで無く、攻撃力もアップ。

つまり、今の まろん様の頭は、強化された凶器に等しく。

その御自身の頭を鷲掴みで持つと、大きく高く、力強く飛翔。

 

「ぁ…」

そして急降下の勢いを乗せ、得物を喪い、茫然と立ち尽くすだけとなった人間の脳天目掛け、

「スラム・ダンク!!」

 

ごんっ!!!!

 

豪快な頭突き(ダンクシュート)を叩き込みました!

 

あ…あぁ…

 

パタ…

 

そして この男は白目を剥いて、その場で倒れ崩れたのでした。

 

 

◆ソリュシャンside・了◆

 

≫≫≫

 

数日後。

 

◆モモンガside◆

俺は冒険者モモンとして、冒険者組合に呼び出された。

 

「失礼する。」

「おお、モモン君。よく来てくれた。」「「「「……………。」」」」

組合長室に入ると、其処には組合長アインザックの他に、数人の冒険者が。

エ・ランテル在中のゴールド、そしてミスリル級冒険者チームのリーダー達だ。

 

≫≫≫

「さて、君達に集まって貰ったのは…」

俺の後から、更に2人の冒険者が顔を出し、慎重な顔付きのアインザックが話し始めた。

 

「…死を撒く剣団。君達も その悪名は説明不用だろう。

このエ・ランテルから少し離れた場所で、奴等のアジトの洞窟が発見された。」

はい、知っています。

匿名で情報リークしたのは、俺達ナザリックです。

 

「それで、王国の戦士団が其の場に赴いてみたら、団員全員が死亡していたらしいのだ。」

「「「「!!?」」」」

はい、それも知っています。

殺ったのは、まろんサン達です。

 

「しかも、その死因が、何者かに…恐らくは吸血鬼(ヴァンパイア)に体中の血を全て吸い尽くされて…でだ!

エ・ランテルから王都へ続く街道近くでも、同様な死体が見つかったという報告も届いている。」

「「「……。」」」

はい、それも全て、シャルティア…それと、俺が創ったアンデッドの仕業です!

 

「冒険者組合長として、諸君達、ゴールド、ミスリル級の各冒険者チームに依頼したい。

この犯人と思われる吸血鬼(ヴァンパイア)の、調査、捜索、そして討伐を要請する!」

 




 
今回の脳天ダンクは、まろんのデュラハン設定が出来た時に、真っ先に思い付いた(ネタ)
その栄え有る?餌食はブレイン君でした。
すいません。作者は『ネタに走らずにいられない病』なんです。
 
感想よろしくです。
 
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