ユグドラシル最終日、余所のギルド拠点で談笑中、現実世界の方で寝落ちしてしまいました   作:挫梛道

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ユグドラシル最終日、余所のギルド拠点で談笑中、現実世界の方で寝落ちしてしまいました 
ユグドラシル最終日


 

◆???side◆

ユグドラシル。

凄まじい程の自由な…自由過ぎる設定で爆発的な人気を博したVRMMO・RPG。

しかし それも時の流れか、その人気も次第に衰退していき、今日を以て、その12年に渡るサービスを終了する。

 

「……。」

現在の時刻は06:55。

この日…この日の為に、この日に照準を絞り、正しく働いて働いて働いて、働き通し、有休をもぎ取った俺は、その久し振りな休日の朝、自室のパソコンを起動させ、()()()()()()()()()()()、ユグドラシルにログイン。

意識を その仮想空間にダイブした。

そして俺は その中で、ブラック企業の社畜・鈴木悟から、死の支配者(オーバーロード)・モモンガとなる。

 

≫≫≫

「【(^o^)ノ】どうも、モモンガさん。」

「【( ゚∀゚)】ヘロヘロさん!来てくれたのですね!」

 

ナザリック地下大墳墓。

ユグドラシルにて俺がマスターを務めるギルド、『アインズ・ウール・ゴウン』の拠点(ホーム)

嘗ては41人のメンバーを擁していた このギルドも、気付けば訪れるのはギルマスの俺だけになっていた。

しかし、今日は違っていた。

その下層に在る、ギルドメンバーが集う円卓の間に無言で1人佇んでいた時、暗紫の粘体(スライム)が巨大な円卓の自分の席に、姿を現した。

ギルメンのヘロヘロさんだ。

今日はユグドラシルの配信サービス最終日。

俺は数日前から、ギルメン全員に『最後はギルドに集合して、語りませんか?』とメールしていた。

しかし朝から ずっと待機していたが、誰も来ず。

訪れるのは、別にギルメンに限らなくても良かったんだ。

余所のプレイヤーが、()()()みたいに最後の最後、積年の怨みとばかりに乗り込んできても、そっちは そっちで、オ・モ・テ・ナ・シ♡の用意は万全だった。

しかし、そっち方面でも誰も来ず。

ナノマシン切れによる強制ログアウト→速注入(チャージ)からの再ログインを繰り返し、時間だけが無駄に過ぎていく。

孤独(ぼっち)の放置プレイ。

本当に精神的にヤバイと感じていた22時を過ぎて漸く…それでも、俺の呼び掛けに応えてくれたのだ。

 

「【(・∀・)】どうも、モモンガさん。お邪魔しま~す。」

「((⌒∇⌒)】ああ、よく来てくれました!」

そして、その少し後に もう1人。

身を包む装備は、眩く煌めく黄金。

所々、癖の様に跳ねた長い髪は、光を否定する如くかの漆黒。

精悍に整った顔だが、鋭い瞳は鮮血に染まった様な紅…所謂 悪人系イケメン、即ちワルメンな表現が相応しい顔付きな男。

ユグドラシルにて、その所業故にDQNギルド認定されているAOG(ウチ)と友好関係を結んでくれている数少ないギルドの1つ、『ヴァーリ・トゥード』所属の まろんサンだ。

ギルド間だけで無く、プレイヤー個人としてもフレンド登録している彼は、自分のギルドに一度 顔を出した後、此方にも最後の挨拶に来てくれたのだ。

 

≫≫≫ 

「zzzzzzzzzzz…」

「【(;¬_¬)】………………。

えーと…ま、まろんサ~ン?」

「【(―_―;)】い、いや、さっきまでは普通に話してましたよね?

もしかして、現実(あっち)で寝落ちしちゃった?」

色々と話していると、急に まろんサンの動きが止まった。

ヘロヘロさんの言う通り、現実(リアル)の方で寝てしまった様だ。

ゲーム内の状態異常(スリープ)で無く、現実(リアル)で眠っているらしく、目は開いているのに…パソコンのマイクが拾っているのだろう…静かな寝息を立てているという、かなり異様な雰囲気を醸し出している。

本当に つい先程まで、普通に話していたのに…だ。

 

「【(´・ω・`)】まあ、まろんサンも以前から、仕事が『くっ殺レベルに忙しい』とか、言ってましたからね。

此方に顔を出してくれているだけ、有り難いですよ。…で、どうしましょう?」

「【(T∀T)】此方で叩いたりしても、起きないでしょうからね~?

起きるのが先か、ナノマシン切れのログアウトが先か…」

結果、とりあえず向こうのギルマスさんには《伝言(メッセージ)》で事情を知らせた上で、放置に決めた。

 

≫≫≫

 

「巫山戯んなよっ!!」

 

時刻は22:55。

この時間でヘロヘロさんも、「明日も早いので、そろそろ…」とログアウトしていった。

ヘロヘロさんの勤め先のブラック振りは、昔から聞かされていた。

だから あと約1時間、「どうせなら最後まで…」…引き留めの為に、その言葉を言う事も出来なかった。

結局、今日この場に来てくれたのは、ギルメンではヘロヘロさんだけ。

多分、もう誰も、此処には来ないだろう。

ヘロヘロさんが来てくれただけで、感謝すべきだ。

ユグドラシルは所詮はゲーム。

そりゃあ、ゲームよりも現実(リアル)を優先させるのは当然だし、それは理解は出来ている心算だ。

…しかし!

それでも納得の行かない感情が、俺の頭の中を支配する。

 

 

それじゃあモモンガさん、何時か何処かで、また会いましょう。

 

はい、ヘロヘロさん。また何時か…

 

 

 

……………………………。

 

 

 

 

 

『何時か』『何処か』って、何時だよ?何処だよ?!

今迄、皆で この規模(レベル)に迄 築き上げたナザリックは…AOG(アインズ・ウール・ゴウン)とは一体、何だったんだよ!?

この最後の時に、せめて何か少しだけでも…何も…本当に何も思う事も無いのか?

所詮は、その程度な代物だったのか?…という想いが。

 

「zzzzzz…」

「こ、この人は…」

しかし そんな時、変わらず眼を開けた儘で寝ているという、リアルなら奇妙で器用な危ない人認定間違い無しな まろんサンが目に映り、少しだけ気持ちが和らぎ、落ち着いた。

少しだけ、冷静になれた。

…そうだ。

このユグドラシルは、あくまでもゲーム。

普通に比べたなら、現実の生活の方が大切に決まってる。

これは養うべき家族も居なければ親しい友人、恋人も居ない、仕事、食事、睡眠…それ以外はコレしかやっていない、コレだけしかない、俺だからこそのエゴなんだ。

 

≫≫≫

「ハァ…」

その後、部屋の隅に控えていたNPC達を引き連れ、俺はナザリック最深部・王の間に。

最後の刻は、この部屋で迎えると、前々から考えていたのだ。

日付が変わる、ユグドラシル終了の その刻その瞬間に、皆で ()()()()を唱え、それで締めようと。

 

「…それも、叶わず、か。」

疲れた様に、どさっと座った玉座の脇には、黒翼・白い衣装の美女が立っている。

アルベド。

穏やかな笑顔で佇んでいる彼女はナザリック地下大墳墓の、最上位NPCに設定されている存在だ。

 

「…………………。

どんな設定なのかな?」

自分が創ったキャラじゃないから、今迄その設定(なかみ)を見た事は無かったが、ふと好奇心が沸き…どうせ今日が最後だと、メニューを彼女に合わせ、その設定画面(ステータス)を開いてみる。

ゲームのキャラとは云え、女性の内面を覗くのはセクハラかも知れないと、少しだけ罪悪感。

 

「ぅゎ なっが…」

そして、その設定説明文の永さに唖然。

 

「そう言えばタブラさんて、設定厨だったよね…」

ギルメンの1人である彼女の創造者(タブラ·スマラグディナさん)は、何事に対しても設定には かなりの拘りを見せる人物だと言う事を、思い出したり。

 

「ぃゃ…これは無い…無いですよ、タブラさん…」

そして その彼女の説明…戦力(ゲームキャラ)としても女性としても、あらゆる面で優れている事を語られているであろう解説文…その読む気を喪失させる程な長文の最後の行…目に付いた その最後の一文の()()に苦笑したり。

 

「あ…そう言えば この人、ギャップ萌えだった。」

そして、別の拘りを思い出したり。

 

「いや、でも やっぱり、コレは無いですよ、タブラさん…」

そして、それを改めて見た俺は…

 

≫≫≫

「こうやって見ると、凄い光景だな。」

…あの後、玉座の間に他のNPCも数体、呼び寄せた。

ナザリックにて、『守護者』という役職・設定で創られた、強力なキャラクター達だ。

そんな中には、俺が創ったキャラクターも1体。

 

「………………。」

改めて見ると、コイツは やっぱり…

いや、今更に悔いても仕形が無い。

兎に角それ等 皆が今、片膝を着いて、俺を見据えているのだ。

 

そして時刻は いよいよ23:59。

60秒を割った。

……………………。

玉座に座る俺の前、アルベドを筆頭に畏まるNPC達を見ながら、頭の中で台詞の長さを計算して、タイミングを合わせる。

……………………。

そして いよいよ その瞬間、日付が変わる、ユグドラシルがシャットダウンする瞬間を狙って、

 

ガタッ…

 

俺は立ち上がり、派手なアクションと共に盛大に叫んだ。

 

「アインズ・ウール・ゴウンに栄光在れ!!」

…………………。

うっわ、恥ずかし!カッコ悪っ!…とか、誰も見てなくて良かった~(汗)とか、全っ然、思ってないぞ!

やらなきゃよかった(泣)的な、後悔も反省も、微塵も無いんだからね!

まあ、良いんだ。これで、終わるんだ。

Good-bye,YGGDRASILL.

Good-bye & Thank you…AINZ・OOAL・GWOn 

『『『『『『『『アインズ・ウール・ゴウンに栄光在れ ! ! 』』』』』』』』

 

 

………………………。

え…えぇえ゙ーーーーーーーっ???!

 




  
 
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