ユグドラシル最終日、余所のギルド拠点で談笑中、現実世界の方で寝落ちしてしまいました   作:挫梛道

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開戦 ~小虐殺(?)~

◆まろんside◆

太陽が最も高い位置に達した時、戦の始まりを告げる空砲が この平野に鳴り響くらしい。

つまり、大凡そ2時間後…位か?

 

「「「「「………………………。」」」」」

緊張か、はたまた余裕か。

ジルクニフ君達は、その どちらとも取れる表情で待機している。

そして、敵さんの方は…ん?

…ジルクニフ君、モモンガさん、あっちあっち。

そうそう、そっちの方向。

ほら、マーレも。

  

◆まろんside・了◆

 

▼▼▼

王国陣営、国王ランポッサⅢ世が陣取るテント。

1人の貴族が、ランポッサの隣で帝国側の様子を遠眼鏡で窺っていたが…

 

「こ、国王!」

「な、何事じゃ?!」

「こ、此れを!」

その貴族は慌てた様子で、その遠眼鏡をランポッサに手渡す。

 

「?」

何か、異変でも起きたか?…そう思いながら、受け取った遠眼鏡を覗き込むランポッサ。

周りの貴族、そして戦士長ガゼフ・ストロノーフも、手持ちの遠眼鏡で、帝国側に目を向ける。

 

「これは…」

「な、何だ、あれは?!」

「巫山戯るな!」

その眼に映ったのは、遠眼鏡越しの自分達に、満面な笑顔で手を振る帝国皇帝。

そして、表情は判らないが、やはり挨拶するかの様に手を振る、黒ローブに奇妙な仮面を被った人物。

その傍の()()も、恥ずかしそうに、無理に作ったのか、少し引き攣った感じな硬い笑い顔で手を振っている。

更に もう1人。

『見てるの見えてるぞ?』…と言いた気な不敵な笑みを浮かべ、自分達に向けて人差し指を差す、金色の鎧を着た黒髪紅眼の男。

 

「クソ!完全に舐めている!」

「若僧共が!」

その立ち振舞いは、貴族達の頭に血を登らせるのが目的だとすれば、効果覿面だった。

 

「ゴウン殿…魔導王アインズ・ウール・ゴウンとは、やはり貴方だったか…

そして、まろん殿…か…?」

その余裕全開な態度に、怒り全開な貴族達の横で、ジルクニフの横に立つ人物の姿を見て、魔導王アインズとは、以前カルネ村で会った人物だと、改めて確信するガゼフ。

 

「報告によれば、魔導王はアンデッドだと聞いたが…

ゴウン殿…そして まろん殿。

貴方々は一体、何者だったのだ…?!」

怒り収まらぬ儘、自身が指揮する陣の元に戻る貴族達を見ながら、王国戦士長は呟いた。

 

▼▼▼

  

◆まろんside◆

「伝令! 王国軍、中央左翼右翼より、前衛陣が進攻を開始しました!」

「ふっ、まさか、本当に来るってか?!」

「呆れますね。」

ジルクニフ君の元に届いた、王国軍進軍の報せ。

まだ、太陽が最も高い位置に達するには、少し間が有るにも…だ。

…しかし、

「ああ、()()()()()

備えは、出来ているのだろう?」

「はっ!」

既に帝国軍側は、王国がフライング…謂うならばゴング前に奇襲を仕掛ける可能性は、想定していた。

正確には、王国側の軍議を遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)で覗いていたモモンガさんにより、バレバレだったのだ。

尤も、一般兵には『その可能性も有る』程度にしか、伝えていなかったみたいだが。

しかし その甲斐有ってか、帝国軍は慌てる事も無く、迎え撃つ構えを見せている。

…しかし、マジに仕掛けてきたか?

戦争ってのは、現場で武器を振り回したり指揮する者だけが、全てじゃない。

両軍に"記録係"という者が居る筈だ。

当然、帝国側にも それは何人も居り、今も離れた場所から この様子を窺っている。

過去の歴史に残る戦で、『〇〇〇がΧΧΧを討ち取った』等の記述は、この様な者達による働きが有ればこそ。

当然だが、こうした者に手を出すのは、戦に置いて最大の禁忌(タブー)というのが、暗黙の了解である。

そうした者が見ている中、この様な後の歴史に永久に残る行為に走るとは…本当マジか?

 

「ハァ…それではアインズ、頼んで良いか?」

「ああ、任せてくれ、ジル。」

そして、予定通りだったか…本当に予定通りだった事に、少し呆れているジルクニフ君のリクエスト…

 

 

帝国側の初撃は、モモンガさんのド派手な、且つ、帝国兵が どん引かないレベルの それなりに破壊力を持った魔法を使って欲しい

 

 

…それに応えるべく、モモンガさんが1歩、前に出る。

  

「先ずは、見栄えをより良くする為の、下拵えだ。

…《昼夜反転(ラナルータ)》!」

そして唱えたのは、昼夜反転の魔法。

これにより戦場は瞬時、太陽照らす昼から星光る夜に変化する。

本来は この魔法、昼と夜をひっくり返す事で、例えば吸血鬼等、夜行性属性を持つキャラクター(プレイヤー、NPC、敵モンスター問わず)を強化や弱体化させたりするのが目的の魔法だ。

あくまで戦闘魔法で、街中等の非戦闘空間では使えない。

尚、モモンガさんや俺も不死属(アンデッド)だから、この魔法の影響は受けたりする。

 

「おをおおぉーーーーーっ!!!?

な、何と素晴らしい魔法ぢゃ!!」

あー、おじーちゃん、うっさい。

しかし、モモンガさんの魔法演出は、これで終わりじゃない。

 

「な、何とおぉぉぅぉおぉぉーーーーっ???!」

あー、だから じじぃ、うっさい。

突然 音も無く、オレンジに煌めく巨大な炎の壁が地面から噴き上げ、王国側帝国側…戦場全体を包み囲んだのだ。

但し、実は この炎、幻術の類で、触っても全然 熱くない。

ダメージもデバフも何も無い、単なるハッタリだ。

しかし 此だけの見た目の炎、好き好んで触れに行くヤツなんて居ないだろうから、それがバレる事も無い。

この いきなりの変化。

突撃していた王国軍は完全に動きを止めて、あたふた大パニックだ。

当然、まだ後方で控えていた者達も然り。

 

「さあ、下地は整えた。

此れからが、本番だ!」

モモンガさん、再び魔力集中。

 

ヴォン…

 

それにより、特大サイズの立体多重魔方陣が出来上がる。

しかし、此処迄しておいて敵側に何の妨害的行為も無しとは、改めて王国には、ユグドラシル関係者は居ない事が確認出来る。

 

ボォ…

 

そしてモモンガさんの頭上高い位置に、2つの魔法光の球が現れる。

成る程。モモンガさん、()()をやる気か。

確かにアレは、明るい時より暗い方が栄えるよな。

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

表情から察するに、まろんサンは今から俺が使う魔法の当たりは着けているだろう。

 

的狙撃(シューティング・)星屑光弾雨(スターダスト・レイン)》!!

 

轟々々々々々々々々々々々ッ!!!

 

…そう思いながら、魔法を発動させる。

既に、ユグドラシルのプレイヤーは向こうには居ないと確信しているので、時短系アイテムの類は使わない。

そして2つの光の球は天高く昇り、爆散。

散り散りとなった光の欠片は幾千幾万の弾丸の雨となり、突撃してきた兵士団、そして後方待機している王国軍陣営に、流星の如く降り注ぐ。

 

「「「「「「「「ぎゃああああっ!??」」」」」」」」

「「「「「「「「うわぁあああっ?!!」」」」」」」」

「「「「「「「「あじゃぱーーっ!?!」」」」」」」」

「「「「「「「「ぬわーーーーっ!!!」」」」」」」」

「「「「「「「「ちぃぶゎぁーっ??!」」」」」」」」

それにより広がる、断末魔の大合唱。

 

「綺麗…」

「ほ、本当に、綺麗ですぅ!」

その光景を見た女騎士さんとマーレが、うっとりした表情をしてるが、一応はコレ、大量殺戮場面だからな?

 

…さて、一応この、《的狙撃(シューティング・)星屑光弾雨(スターダスト・レイン)》について、説明しておこう。

この魔法は事前に、その攻撃対象を設定しておく必要が有る。

その設定とは?

それは術者が…今回の場合、俺が事前に魔力で創った"魔法刻印(マーキング)"を、その標的に埋め込む作業だ。

此の度は、俺が大量に創った其れを、シャドウデーモンやフウマ、ハンゾウ達に王国中の標的認定した者に刻むと云った作業をして貰ったのだ。

これは数が数な為、労いの言葉を贈ろうと思ったが、『勿体無き事です!』『アインズ様からの任を完遂する事こそ、我等が喜び!』と返されてしまった。

いやいやいや、無自覚ブラック社畜過ぎるだろ?!

俺は そーゆーの、望んでないっての!

せめて、良い仕事した後は誉めさせて!

…魔法の説明に戻ろう。

"魔法刻印(マーキング)"だが、実は2種類有る。

1つは、その対象(ターゲット)を光弾が確実に貫き葬る『死の刻印(デス・マーク)』。

もう1つは その真逆、対象は絶対に光弾に当たる事は無い『生の刻印(ライブ・マーク)』。

共に、有効範囲は術者中心に半径100㌔。

有効期限は魔法を発動させるか、マーキングから100日経過の何れか。

当然だが、其れを刻まれた者に、その自覚は無い。

つまり、事前に有能・無能や他の要因で、この魔法によって此の場で殺す者、殺さない者の選別は終わっていた訳だ。

因み両方のマーキングを受けてない者で、この攻撃範囲に居た者は…言うなら、運が良けりゃ…な!

そして それで死んだ者は、まぁ、アレだ…どんまい!

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆ジルクニフside◆

は…はははは…

はぁーーーーっはっはっはっはァッ!!

素晴らしい!

まさか、まさか これ程の魔法が存在するとは、思いもよらなかったぞ!?

レイナースとダークエルフの少女も言っているが、美しくも凶々しく!

 

「ぉ…おぉぉぉぉ…?!」

爺が…あの爺が、その光景に超興奮(ひゃっはー)する事も無く、感涙しながら固まっている程だ。

今回はロープは必要無いか?

 

「うわっ…パねぇ!」

「凄い…」

「……………………?!!」

バジウッド達も予想以上の魔法に、驚きを隠せていない。

 

「凄い…」

「これが…魔法…」

「魔導王…殿…?」

そしてアレを真近、前線で見ていた騎士達も、やや興奮気味だ。

事前に『王国が奇襲を仕掛けてくるだろうが、それは魔導王が対処する』とは伝えていたのだが…いや、伝えていたからこそ、この程度の ざわつきで済んでいるのだろう。

 

「ふっ…どうだったかな、ジル?」

「ああ、見事としか言い様が無い。

本当に、私の期待を遥かに超えていたぞ、アインズ。」

そして一仕事終えて此方に戻ってきたアインズに、労いの言葉を。

 

「そう言って貰えると、嬉しいよ。」

「…本音は?」

「全く、無茶振りをする友人を持つと、本当に苦労する。…って、まろんサン?」

「はっはっは!」

アインズの話だと、今の魔法は、最初から後ろに控える指揮官を中心に狙った攻撃だったとか。

確かに あの光の雨は、遥か後方まで降っていたな。

 

「…もしかして、ランポッサも殺ったのか?」

「いや、あの王は、此の場で討っても意味が無い。…そうなのだろう?」

「…ふっ」

流石は ぷれいやー…なのか?

よく解っている。

…さて、今の魔法で王国側は完全に固まってるが、此方も少し、落ち着きが無くなってるな?

とりあえず、鎮めておくか。

 

「讃えよ!」

「「「「「「「「「「「「「…!!!!?」」」」」」」」」」」」」」

いきなりの私の声に、帝国騎士達は姿勢を正し、此方を刮目する。

 

「魔導王アインズ・ウール・ゴウンの至高なる魔力、至高なるチカラ!

…そして我が盟友(とも)アインズを、讃えよ!!」

「「「「「「「「「「「「「……………。」」」」」」」」」」」」」

 

 

パチ…パチ…

 

 

パチパチパチパチパチパチ…!

 

 

「「「「「「「「「「「「「うぉおおぉおーーーーーーっ!!!!」」」」」」」」」」」」」

 

約5万の拍手喝采と大歓声。

開戦、アインズの一撃で、王国は全体の約1/5を失った。

しかも、指揮官である王国貴族の殆どは、既に死亡。

反対に帝国の被害は、当然だがゼロ。

そして私の一声により、士気も最高潮。

全ては此方の脚本通り。

 

≫≫≫

「おーし次! 狩猟兵団、前に出ろ!」

空も夜から昼に戻った。

バジウッドが指揮を執り、次の王国の進軍に備える。

さあ、次に繰り出す王国の()も、アインズ情報で知っているぞ?

…でも それ、全く意味無いからな?

 




【次回予告】
 
◆モモンガside◆
「おおーっ! 師よ! やはり貴方様は至高の存在!
やはり儂を、貴方様の弟子にしてくだされぃ!
その対価として、儂の全てを捧げますぞ!
そう! 師が望むならば、風呂だろうがトイレだろうがベッドの中だろうが お供致しますぞ!」
だ、誰か この爺さんを黙らせてくれ!
…と、王国側に新たな動きが。
前に出てきたのは、荷台部が格子籠の馬車が数台。
その中に入れられているのは…
 
次回、『王国の逆襲(仮)』
乞う御期待!感想も、宜しく!
 
「ふが…ふがーーー<っ?!!」
  
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