ユグドラシル最終日、余所のギルド拠点で談笑中、現実世界の方で寝落ちしてしまいました 作:挫梛道
最初は前回の場面を、別視点で。
◆ガゼフ・ストロノーフside◆
「な…何なのだ…これは…?!」
それは、余りにも突然過ぎた。
先功隊が突撃…これも、予め両者取り決めの合戦の時刻を無視しての、戦に於ける、最低限の儀礼を破る恥知らずな行為!…を仕掛けたと思えば、突然 周囲が暗く…夜となり、戦場外周を巨大な炎の壁が取り囲む。
それは魔法による物だとは、即座に理解出来た。
この様な魔法の存在は知らないが、他に解答が浮かばないというのが、正しかった。
「これも、魔法の力だと云うのか…?」
俺の旁で、陛下も驚く中、帝国砦の門が開き、何者かが1人、姿を見せる。
その風貌は
しかし それは、彼の逸脱者、フールーダ・パラダインでは無い。
「アインズ・ウール・ゴウン…殿?」
その姿は紛れも無く、あのカルネ村で出逢った…そして今は、魔導王を名乗る御仁だった。
「これは、ゴウン殿の魔法なのか…」
これ程の魔法…魔法の知識は殆んど皆無だが、今起きている現象が、とてつも無く凄まじいレベルな魔法による物なのは、嫌でも理解出来る。
そしてゴウン殿も、
しかし、ゴウン殿の魔法は、これで終わりでは無かった。
いや、寧ろ これからが本番だった!
ゴウン殿を包む様に現れた、巨大な立体の魔法陣。
其処から現れた2つの光の球が、天高く昇り、弾ける様に無数に飛び散る。
そして散り散りとなった小さな光の球が、突撃を仕掛けた王国兵に、そして後陣に控えていた、此方側にも矢の雨の様に降り注いできたのだ!
「な…何と…何という事だ…!」
結果、無数の屍が、戦場に横たわる。
その全てが、王国側の兵だ!
開戦早々、一瞬にして、幾万もの王国兵が戦死してしまったのだ!
幸いにも俺が…陛下が居たテントは、その直撃を受ける事は無かった。
「私は今、悪夢でも見ているのか…?」
しかし、その光景を見た陛下も茫然とする他に無く、目に映る景色を現実と受け入れる事が出来ない様子だ。
これが、魔法の力…
「陛下!」
「陛下!御無事ですか?」
そうした中、やはり直撃を避ける事が出来た兵士や貴族達が、此方に集まってきた。
「陛下!おお、戦士長殿も御無事で!」
「おお、レエブン侯、貴公も無事だったか!」
その中には今回の戦の総指揮を任されている、レエブン侯も居た。
「アレは、凄まじい等の表現で済む様なレベルでは、有りません。
どうやら我々は魔法という物を、軽視し過ぎていた様です。」
歯痒そうに、声を絞り出すレエブン侯。
「陛下…降伏すべきです。」
「レエブン…侯?」
そして次に出たのは、この言葉。
「ガゼフ殿…すまなかった。
我々は もっと、貴殿の声に、耳を傾けるべきだった。」
「レエブン侯…」
更には俺にも謝罪してきた。
『今更…』とは思わない。
仮に、貴族達が私のゴウン殿への注意を聞き入れていたとしても、これ程の魔法の威力は俺としても想定外。
この結果は、大して変わらなかっただろうから。
「陛下、降伏を! 陛下も もう、理解されているでしょう!
アレは決して、
そして再度、陛下に降伏を促すレエブン侯。
これも、間違った選択とは誰も思わないだろう。
この広範囲の無差別攻撃で、各部隊を率いる
指揮系統も乱れ、統率の取れない集団。
如何に現状、数の面では確かに未だ有利だが、既に それだけで勝てる状況では無いのだ。
「陛下…御決断を…!」
「陛下…!」
「………………………。」
俺もレエブン侯と共に その命令を待つが、陛下は惑いの表情を隠さず、沈黙の儘だ。
『王足る者、何時如何なる時も、平静を保ち適切な判断を迅速に下すべき。
…そうは、思わないか?』
「「「??!」」」
何処からか、声が聞こえたのは、そんな時。
ヴォ…
「「「!!!!?」」」
その場の全員が、キョロキョロと、その声の元を窺っている時、空間に突然、黒い穴が開いた。
その中から出てきたのは、黒ローブを纏い、仮面で顔を隠した人物と、あれは、ダークエルフか?…の小柄な少女。
「ゴ…ウン…殿…」
「久しいな、ガゼフ・ストロノーフ戦士長。
カルネ村以来か。」
ザザッ…!
ゴウン殿を見た兵士達が、陛下を護る為に前に立ち、武器を構える。
「止めておけ。お前達では、私を殺す事は出来ない。
折角 助かった命、此処で無駄に捨てる事も無いだろう。
戦士長、アナタもだ。
その物騒な剣は、仕舞いたまえ。」
「…………!」
それに対してゴウン殿は、戦う意志は無いのか、兵士達に…そして俺に、武器を収める様に言う。
「仮面の
「ふっ…それは少し違うな。」
陛下の言葉に、否で応えるゴウン殿。
「今の私は、ジルクニフ皇帝の遣いとして、此の場に馳せ参じたのだよ。
何しろ敵陣の最奥だ。
騎士殿に馬を走らせるより、転移をした方が速いからね。
…リ・エスティーゼ王国国王、ランポッサⅢ世。
私のチカラは、もう理解出来たろう。
そちらの貴族殿の言われる通り、直ぐに白旗を上げて帝国軍に降伏するのを奨める…が…え?えええ??」
そして、陛下に降伏勧告しようとした時、何かに気付き、驚いた様な反応を見せた。
「あ、あの旗は…リットン伯の…?」
遠眼鏡を覗いたレエブン候の呟き。
俺も同じ方向に遠眼鏡を向けると…
「な…何だと?!」
目に止まったのは、確かにリットン伯の旗を掲げた部隊。
彼等が、護送馬車に乗せて引き連れてきた…以前、カルネ村で捕虜として捕らえた、
「戦士長…1つ、質問して良いかな?」
それを見たゴウン殿が、呆れた様な口調で、俺に話し掛けてきた。
◆ガゼフside・了◆
≫≫≫
◆モモンガside◆
「あの時、カルネ村で捕らえた者達…
アレは帝国騎士の鎧を着ていたが、実の正体はスレイン法国の兵だと、貴殿より上の立ち位置の者に、報告していないのか?
…どうなのだ?ランポッサⅢ世。
そして、エリアス・ブラント・デイル・レエブン候、だったかな?
ストロノーフ戦士長から その様な報告は、受けていないのか?」
「そ…それは…」
尤も、答えは知っているけど。
この男は確かに、其処の王や貴族達に、有りの侭を伝えたが、『法国が帝国を偽る理由が分からん!』…と、最初から
ついでに言えば、
「それに…捕らえた者達は皆、何を聴いても黙りだったらしくてな。
帝国騎士ともスレイン兵とも、何も答えなかったそうだ…
だとすれば、着ていた鎧から、判断する他に有るまい。」
力弱く、言い訳する様に喋るランポッサ。
あ、『3つの質問の呪縛』か!
そうだそうだ、思い出した。。
そう言えば奴等、
カルネ村での俺と まろんサンによる尋問で それを知ったから、何を問われても無言となるのも解る。
そういう事なら、帝国騎士の鎧で判断されても、それも仕方無いか。
王国が どの様な戦術戦略を仕掛けてくるか…それを話し合う軍義は全部、
当然だがジルには、王国が仕掛けて来るであろう謀り事は、全て伝えている。
この人質(笑)作戦も然り。
そんな訳で、帝国捕虜(笑)を盾にして、何やら交渉に出た貴族率いる兵団は、その人質諸共に帝国狩猟兵団の弓の的にされた訳だ。
帝国騎士では無いと最初から分かっているからこそ、狩猟兵団も躊躇無く、弓を射る事が出来たのだ。
カンニング? 自覚は有る。
しかし こんな卑劣な真似をしてくる相手には、何の問題も無いだろう?
ついでに言えば…
この作戦の指揮役の貴族と その配下の兵、並びに人質達だが、予定通りに人員漏れ無く作戦決行出来る様に、最初の《
…が、まさか本当に、この策を実行してくるとは思わなかったぞ。
それで結局、全員死んだけどな!
◆モモンガside・了◆
▼▼▼
◆ジルクニフside◆
結果から言えば、アインズに『派手、且つ
まろんが言うには、
「単に、破壊力や殺傷力だけを求めていたなら、モモンガさんだったら、多分…」
…まろんが言うには、恐らくアインズは先ず、広範囲の即死系魔法を唱え、それで突撃を仕掛けてきた兵士を瞬時に全滅させる。
そして それを
それで戦場を大荒らししていただろう…らしい。
「それは正に、阿鼻叫喚のカオスだ。」
「「「かおす?」」」
「ほほう!? それは それで、見たかったですな。」
興奮し過ぎて1周したのか、逆に冷静になっていたフールーダが、それを聞いて また
「見ているだけの
「悪魔か?!」
「モモンガさんはアンデッドだぞ?」
そうした中、これもアインズが言った通り、帝国騎士の捕虜(笑)を盾に、何やら言ってきた者が居た様だな。
即座に対処したが。
そして そのアインズだが、今は直接にランポッサの元に赴き、降伏勧告をしている。
しかし、あの甘さと優柔不断には定評の有る無能王だ。
この惨状を見ても、それでも即決するとは思えない。
アインズ…どう出る?
◆ジルクニフside・了◆
▼▼▼
◆ガゼフside◆
「さて…改めて返答を聞かせて貰おうか?…ランポッサⅢ世よ。」
「……………………。」
シュゥ…
「「「「「「「…???!!」」」」」」
ゴウン殿が陛下に降伏を迫る。
しかし、沈黙を貫く陛下に最後の警告なのか、両手を掲げると、その腕に着けていた籠手を消した。
其処から出てきたのは生身で無く、白骨の腕!
ガバッ…
更にはローブの胸元を大きく開くと、やはり生身の肉体では無く、肋骨が露に。
ス…
「ひっ?!」
「な…!?」
「ぁ…ぁあ…」
そして最後、その喜怒哀楽の全てを一度に表現したかの
「私も決して…気が長い方では、無いのだがな。」
何時までも決断出来ない陛下に対して、自身が異形…しかもアンデッドである事を明かし、それは生命に何の価値観も持っていないというメッセージに受け取れる。
「魔導王…本当に、アンデッドだったと言うのか?」
「陛下!レエブン候!下がって下さい!」
「コレは…本当にヤバい!!」
その姿に、完全に心身を恐怖に支配されたのか、動く事が出来ない陛下や一般兵の前に、レエブン候の護衛の者達が出てきた。
「ストロノーフ戦士長!」
「応!」
そして彼等の声に、俺もゴウン殿…目の前の
「ふっ、私と戦う気か…止めておけ。」
自惚れている心算は無いが、それでも王国最強と呼ばれる程の力は持っている自信は有る。
レエブン候の私兵達も、元はオリハルコン級冒険者の強者達だ。
しかし そんな俺達を前にしても、魔導王は余裕の態度を崩さない。
それも当然だろう。
あれだけの魔法を放った者だ、俺達等、敵と思ってないのだろう。
しかし、勝算が全く無い訳でも無い!
先程、魔導王は確かに言った…
その
それは俺が持つ剣…リ・エスティーゼ王国至宝の1つ、
これならば、ゴウン殿にもダメージが届く!
「それにだ、ガゼフ・ストロノーフ。
お前の相手は、私では無い。」
「何?」
「お前と、戦いたがっている者が居るのだよ。」
「…もしや、まろん殿か?」
しかし魔導王は、俺達…俺と戦う意思を見せないでいた。
…俺と戦いたいという者。
真っ先に思い付いたのはカルネ村、ゴウン殿と一緒に居た、金色の鎧の男…まろん殿。
彼は王族貴族、そして国仕えの者達に かなりの不信感を持っていたのが窺えていた。
特に、権威を振り翳し威張り散らすだけの者や、民から税を貪るだけで、全く民の役に立たない者。
例えば、スレイン法国の襲撃に対して、結果 何の働きも出来なかった俺とか…な。
そして その彼も今、帝国皇帝と一緒に居るのは知っている。
「ああ、まろんサンも この戦場に居るのは知っていたか。
しかし、違う。まろんサンは今回は戦争には手を出さない。
まろんサンは、竜王国からの見届け人として この場に居るだけだからな。」
「見届け人…だと?」
まろん殿が竜王国の人間、そして帝国が竜王国の者を、その様な立場で招いている関係になっている事に驚いた。
「それでは…誰が…」
「ふっ…」
それでは一体 誰が?…そんな風に考えていると、ゴウン殿は右手を大きく掲げる。
ヴォ…
すると、先程と同じ様な黒い穴が また、空間に開き、
「失礼するでありんす、アインズ様。」
「御苦労だったな、シャルティア。」
その中から現れたのは、白いドレス、そして白い仮面で顔を隠した、金髪の女。
「言われた通りに この者、連れてきたでありんす。」
そして穴から出てきたのは、もう1人。
「久し振りだな、ガゼフ・ストロノーフ。…覚えているか?」
「お前…! ブレイン…アングラウス…か?!」
【次回予告】
◆ユリside◆
シャルティア様に連れられて、アインズ様の元に現れたブレイン・アングラウス。
ガゼフ・ストロノーフとの因縁に、決着を着ける事が出来るのか?
「あの
「正シク。アングラウスガ敗レタナラバ、ソレハ、我等ノ責任。
ソノ責任、謝罪ヲ込メテ、次コソハ勝テル様、鍛エ直シテヤル必要ガ有ル。」
「え゙????!」
あの…まろん様?コキュートス様?
余りプレッシャーは、与えない方が…
次回、『ブレインvsガゼフ(予定)』
御期待下さい。
並びに、感想も宜しくお願い致します。