ユグドラシル最終日、余所のギルド拠点で談笑中、現実世界の方で寝落ちしてしまいました   作:挫梛道

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魔導国外交篇(仮)の前に、【閑話】を。
  


【閑話】First Contact

▼▼▼

ユグドラシル。

凄まじい程の自由過ぎる設定で爆発的な人気を博したVRMMO・RPG。

サービス開始から それなりに時が流れ、カンスト・プレイヤー、所謂"ガチ勢" "廃人"等と呼ばれるプレイヤーも珍しくなくなってきた頃。

 

 

≫≫≫

 

バンッ! バンバンバンッ!!

 

「報復だーっ! 絶対に報復以外、有り得ーん!!」

「シャババさん、落ち着け!」 

白い匣(ホワイト・ホーム)。

ユグドラシル9葉の1つ、ミズガルズの砂漠エリアに聳える、巨大な白い立方体の建造物。

ギルド"ヴァーリ・トゥード"の拠点である。 

その内部、会議室の様な部屋で、一ツ眼巨人(サイクロプス)が1人、円卓を壊す程に派手な勢いで叩きながら声を荒げ、それを2つ隣に座っていた男が、宥める様に話し掛けていた。

 

「まろんちゃんの言う通りだよ、眼魔ちゃん。

誰も何もしないなんて、言ってないじゃん?」

その台詞に続けるのは、小柄・童顔な金髪の少年。

この少年の名は真里(マサト)。

ヴァーリ・トゥードのギルドマスターである。

ヴァーリ・トゥードは その"何でもアリ(Vale Tudo)"の銘に相応しく、現在約60人から成るギルドメンバーも、人間種から異形種まで多種多様。

彼等がゲーム内に於いて参加するイベントも、戦闘から探索にスポーツ他、殺伐系から まったり系まで多岐に及んでいた。

そんな彼等が今、話している議題は『異形種狩り』。

その儘の意味で、人間型プレイヤーが異形種プレイヤーを狩る、PK(Player killer)行為の事を指している。

イベントに於ける、必然的戦闘でも無ければ、そのプレイヤーが所持しているアイテム狙いでも無く。

勿論、純粋に同意での手合わせな、P(Player) V(versus ) P(Player)でも無い。

単純に人間種、特に純・人間型プレイヤーが異形種プレイヤーをモンスターに見立て、多くの場合は、単独、或いは少数の者を多勢で狩りに出るPKである。

…その異形種狩りに、ヴァーリ・トゥードのメンバーの1人が遭った件について、話し合っていたのだ。

 

「ふっ、結局は殺るんだろ?

まあ、当然な話だがな。」

「教えてやろうよ。『狩って良いのは、狩られる覚悟が有るヤツだけ』ってのをね。」

強面なモヒカン男が、済まし口調で話し、妖精種(ピクシー)の少女も、それに続く。

 

「何処の何奴かは、既に知れているんです。」

「そういう事ね。

ついでに言えば、奴等、次は何時 何処で行動するかも、凡その調べは付いてるわ。」

続く面々も、消極的意見は出さず、報復の方向で話は進んでいく。

 

「ね? 眼魔ちゃん。心配しなくても、皆、殺る気なんだからさ♡」

「ふ…ん!」

マサトの悪戯っぽい言葉の投げ掛けに、サイクロプスの眼魔(ガンマ)(愛称:シャババさん)は不機嫌そうに…しかし一応の納得は、した様に頷く。

 

「それじゃ、誰が出張るかだけど、先ずは当然、俺ね。

それから、ケンちゃん。」

「はい!」

マサトの指名に、格闘胴着を着た少年が、力強く応える。

 

「せーこちゃん。」

「了解です。」

そして次は、眼鏡に黒のスーツにネクタイ。

ガッシリした体格を除けば、どう見ても普通のサラリーマンにしか見えない中年風な男が。

その後も次々とヴァーリ・トゥードの面々が報復というか、御礼参りに参加する様に呼び掛けられ、その全員が嫌な反応をする事無く、それに応じていく。 

 

…中略

 

「ビュウ君。」

「任せろ。」

左右の腰に各々、長剣を携えた金髪の青年が。

  

「それから、谷屋ちゃん。…って? あれ? 谷屋ちゃんは?」

「アイツも昨日、別件でデスペナ食らったばかりだから、今日は来てないぞ?」

「互いの個人所有のアイテムを賭けた、普通のPVPだ。

…で、見事に負けてやんのw」

「同意のバトルだそうだから、コッチはギルドで どうこう、動く話じゃねぇ。」

「そうなの?…それなら、りえりん。」

「ふっふっふ…何だか谷屋の代わりみたいな指名は、少し気に入りませんが、良いでしょう!

我が魔力の真髄、特と見せて…いえ、魅せてあげましょう!」

大きな三角帽子に黒のマント。

如何にも魔法詠唱者(マジック・キャスター)な格好の小柄な少女が、マサトの呼び出しに応える。

 

「…以上、このメンバーで。」

「「「「いや、巫山戯んなよ!?」」」」

「オラ、プンプンすっぞ!」

しかし、そのマサトの報復部隊選抜メンバー発表に、再び眼魔、そして最初に眼魔に冷静になるように宥めていた、黄金の鎧…の様な衣(・)を纏った首無し騎士(デュラハン)、まろんを筆頭に、名前を呼ばれなかった数名が怒声を上げた。

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

「「「「どーゆー心算だ?!」」」」

俺にシャババさん、キャロット君他、御礼参りチームとして名前を呼ばれなかった異形種のメンバーが、マサトに詰め寄る。

 

「まぁまぁ、気持ちは解るよ。…でもね、」

マサトは穏やかな口調で、それに応じる。

 

「今回は単なる異形種狩りの報復じゃない。

ヴァーリ・トゥードのメンバーに手を上げた事での報復だよ。

解るかい? これは、ギルドとしての復讐だよ。

人間種だろうが異形種だろうが、俺達(ヴァーリ・トゥード)に手を出したら どうなるか?

それを解らせる為…だから今回は敢えて、異形種メンバーは外して、人間種だけで人選したんだ。」

成る程。理解は、した。

 

「しかーし、それで納得すると思うか?」

シャババさんの言う通り。

特に俺は、今回の異形種狩り、その被害に遭ったスラ吉とは それこそ今日、卓球(ダブルス)のイベントに出場する予定だったのだ。

イベント管理している運営に問い合わせてみたが、事前登録していた出場者の変更は認められないとか。

それなら それで…それだけなら、仕方無いで納得してやった。

だが、あのクソ運営、出場手数料代わり、先に出したアイテムの返還にも、応じやがらねぇ!

不戦敗扱いと、来やがった!

 

「…ざっけんなよ! 俺もスラ吉も、得点(ポイント)した時の雄叫びの練習とか、散々したんだからな!」

「いや、卓球の練習しろよ。」

「何だか怒りの矛先が、運営になってる気がするんですが?」

「そ、そんな事は無いぞ?

…と、マサト、お前の考えも解る。

しかし、それでも異形種代表として1人位、メンバーに入れても良いのじゃないか?

さしあたっては、見た目は人型な俺とか。」

「あっー!汚いぞ、まろん!」

「オメー、抜け駆けすっ気か?」

「「「「ぶーっ!ぶーっ!」」」」

「いや、見た目 人型に拘るなら、シャババさんは もう100%(パー)アウトだし?

キャロット君は尻尾、コカビーは羽、鬼ぃさんは角、生えてるし。」

その点 俺なら、首を外さない限りは大丈夫じゃないか?

 

…ぽんっ!

 

「「「「「態々、外さなくていいっ!」」」」」

「「「「「恐いわっ!!」」」」」

 

 

◆まろんside・了◆

 

 

▼▼▼

『タィガーニーッ!』

『ぎゃぁあぁ~っ!?…』 

…巨大な寝釈迦像の傍らで、眼帯をしたスキンヘッドの大男の飛び膝蹴りが、セーラー服の少女を吹き飛ばした。

 

 

「な…んだとォ??! お、俺の、俺の さ〇らが!?」

「どうだ、コカビー! 俺の勝ち!!」

…あの後、異形種も一応は1人だけ参加OKとして、それを誰かにする話し合いが行われるが、癖と我の強い面々が、平和的に他者に譲る事も無く。

最終的には 殴り合いに発展する前に、 20世紀末から21世紀初頭に掛けて人気を博していた、格闘系テレビゲームでのトーナメントで決める事に。

結果、その決勝にて まろんが天使種の男を下し、異形種枠とでも言うべきか?…報復チームに入り込んだ。

 

「よし、それじゃ皆、行こうか。

異形種狩り狩りの時間だ。

待ってろ…“ひき肉”にしてやんよぉッ!!」

 

▼▼▼

 

◆まろんside◆

【地球防衛軍】。

それが今回、スラ吉を襲ったギルドだ。

このギルド、普段から異形種狩り其れ自体を、ギルドのメインのスタイルとしているらしい。

そして奴等…その中心となるメンバーが今、何処に居るかも調査済み。

因みに その情報を持ってきたヤツに『どうやって知ったんだ?』と尋ねると、『世の中、知らない方が良い事って有るわよ?』と切り返された。

何か恐いわ!

…そんな訳で俺達は今、奴等を追ってニヴルヘイムの氷樹森林地帯にやって来た。

地球防衛軍の奴等、今日は この森林に自生する、レアな薬草を採りに来ているらしいが…

 

「はい?」

「え?」

「あら?」

「ぬ?」

「へ?」

…確かに、連中は見付けた。

しかし奴等、現在絶賛戦闘中。

それも異形種の集団と、だ!

 

「あ、アイツは!?」

「え? ビュウ君、あのヒト達を知ってるの?」

「ああ、あの白い鎧…アイツは、ワールド・チャンピオンの たっち・みーだ!」

マサトの問い掛けに、そう答えるビュウ。

…って、ワールド・チャンピオンだと?!

それってユグドラシルの戦士系じゃ、最上位の職(クラス)じゃないか!

 

斬ッ!

 

「ぎゃぁっ!?」

確かに、あの剣技は凄まじい。

あ、そうか。ビュウも以前、ワールド・チャンピオン所得しようとして、優勝者に その資格(…の1片)が与えられるトーナメントに出たんだったよな。

…で、見事に1回戦負けだったと。

 

「そ、その相手が、アイツだったんだよ!」

必死に言い訳するビュウだが、それよりも あの異形種軍団、強いのは そのワールド・チャンピオンだけじゃない。

鬼火力な魔法を連続で繰り出す山羊頭悪魔(バフォメット)、雷光の矢を連射する金色鎧の鳥人間(バードマン)。

それから見た目がTHE・侍とTHE・忍者に、その巨体にすら不釣り合いな、馬鹿でかい鉄甲拳(ガントレット)を振り回す…巨人?

そして派手な飾りが施された黒ローブを着た、骸骨(スケルトン)の魔法詠唱者(マジック・キャスター)!

更には その他その他。

あの異形種、全員が各々に強い!

 

「…って、マサトさん、どうするんですか?」

「そりゃあ、決まってるでしょ?

とりあえず、『敵の敵は味方』って事で…

行くよ!!」

「「「「「応っ!!」」」」」

確かに、此処まで来て、追っていた獲物が他者に奪われるのは間抜けな話だ。

異形種軍団と共闘するのも…向こう側が それを拒んだりしない限りは、決して悪手じゃない。

その結論の元、俺達も あの大乱闘に乱入するのだった。

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆???side◆

地球防衛軍。

異種狩りを主要目的(メイン・テーマ)と公言している このギルド。

もしかしたら、ギルド…いや、クランを立ち上げる前、俺もコイツ等に殺られた事が有ったのかも知れないな。

まあ、それは もう どうでも良い話だ。

現状で異形種狩りな輩なのだから、俺達からしたら、敵以外の何者でも無い。

今回は奴等が、この森林に足を運ぶと云う情報を得た俺達は、奇襲に成功した。

しかしコイツ等も、決して弱者では無い。

俺達が劣勢になる事は無いが、決定打となる一撃を撃ち込める隙も無く、泥試合な展開に入ろうとしていた。

 

「ねぇ~、そのケンカ、俺達も混ぜてよぉ~♡」

「「「「「「「!??」」」」」」」

そんな時、緊張感の無い台詞と一緒に、人間種の集団が、この戦闘の場に雪崩れ込んできた!

ま、不味い、新手か?

あれだけの人数が敵に加わったら、一気に形勢逆転されてしまう…!?

 

バキィッ!

 

「ぐわぎょっ?!」

…って、え?

しかし、この乱入者、先頭で自動2輪(バイク)に載って飛び込んできた少年?は俺達では無く、俺と対峙していた地球防衛軍の男を鉄パイプみたいな武器で、殴り飛ばした?!

 

「ワールド・チャンピオン! そして異形の集団よ!

我等ヴァーリ・トゥード、故有って この戦闘(バトル)、押し掛け助っ人で参加させて貰うぞ!」

 

斬々ッ!

 

「ギャーッス!?」

更には その言葉と同時、火焔飛竜を駆る2刀流剣士の炎の斬撃が、

 

「礼には及びませんよ? 私達も確とした理由で、コイツ等を追ってきたのですから!」

 

どっかぁ~~~~~~~んっ!!!!

 

「「「「「ぬわーーっ!??」」」」」

そして如何にも魔女っ娘の爆裂系魔法が、地球防衛軍の面々に炸裂した!

…って、魔女っ娘も倒れた?

 

「モモンガさん、彼等が何者かは、後回しだ!」

「兎に角チャンスだ、一気に決めてしまいましょう!」

「時(・)間(・)は俺達が、作りますよ?」

そ…そうですね!

  




名前が出たヴァーリ・トゥードの面々(以前から、名前だけ登場してたキャラも居ましたが)。
モデル・元ネタが全て分かった人は、上級読者(笑)
 
次回『First Contact②』
乞う御期待! 感想もヨロシクです。
 
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