ユグドラシル最終日、余所のギルド拠点で談笑中、現実世界の方で寝落ちしてしまいました   作:挫梛道

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覚悟の凶刃

「異議あり!」

 

◆モモンガside◆

法廷内に響く声。

 

「ジ…ル…?」

その声の主は、ジルだった。

 

「…………………………orz」

そして それを見た まろんサンが、最高に凹んだ顔をしている。

そんなに あの台詞、(一番最初に)言いたかったのですか?

ええ。気合い満々で蒼のスーツ、新調していましたものね。

ユリから聞いていますよ?

決めポーズの練習も、していたんですよね?

いえいえ、別に悪いとも恥ずかしいとも思いませんよ?

俺だって未だに、『支配者らしいポーズ』の練習、隠れて していますし。

…と、話が逸れましたね。

先に言っておきますが、こういうのは一番最初だからウケるのであって、それ以降はマジ異議とかじゃない限りはウザいし寒いだけですよ?

もう、止めるのをお勧めします。

 

「異議申し立てを認めます。…ジルクニフ殿?」

「…感謝する。

最初に言っておくが、私は死刑判決その物に、異を唱える心算は無い。

…しかし!

それでも その前に、ハッキリさせておきたい事が有る!

スレイン法国神官達に問おう!

貴国は何故、リ・エスティーゼ王国の開拓村を襲う際に、自国兵を我がバハルス帝国の騎士に擬装した?

納得の往く回答を、今、此の場で示して頂きたい!」

そしてジルの異議の意味。

俺から その事を教えられ、前々から法国には質問状を何度も送っていたが、一向に返答は無かったという。

それを改めて、問い質そうとしているのだ。

あくまでも在らぬ罪を着せられそうになった、国として…だ。

 

「「「「………………………。」」」」

それに対して、神官達は変わらず、黙りの姿勢を崩さない。

どうせ殺されるのは確定済みだから、態々言う必要も義務も無いとでも考えているか?

いや、死ぬのが決まっているからこそ、全てを洗いざらい話すべきでは無いのか?

 

「どうしました? この法廷、黙秘権は認めていませんよ?」

頑なに沈黙を貫く神官達に、デミウルゴスも発言を促し、

「…どうやら貴方達は、少し勘違いをしている様だ。

仕方有りません。

先ずは それを、払拭させる必要が有りますね。

段取りが少し狂ってしまいますが…」

 

ス…

 

デミウルゴスが無言で右手を翳すと、それを合図に2人の男女が登場した。

ルプスレギナと筋骨な大男。

アイテムによる人化が施されたデミウルゴス直轄、憤怒の魔将(イビルロード・ラース)だ。

 

「な…?」

「はいは~い♪ じっとしてるっスよ~?♡」

 

カチャ…

 

「???!」

事態が飲み込めない神官の1人に、ルプスレギナが満面の笑みを浮かべ、兜を被った髑髏の装飾の黒革の首輪を取り付ける。

 

「それでは師匠(せんせー)、よろしくお願いするっス!」

 

コク…

  

…師匠呼びには、敢えて突っ込まないぞ。

ルプスレギナの呼び掛けに、魔将は小さく頷くと、

 

ボウヮッ…ガシィッ!

 

ギャァァァアッ!?

左腕に紅蓮の炎を纏わせ、その手で神官の首根を掴み、頭上高く持ち上げる(リフトアップ)

 

ガァンッ!

 

…からの、片腕式(ワンハンド・)咽輪落とし(チョーク・スラム)

 

「ぐべらっ?!」

因みにだが、この法廷の床は、本来なら この世界には存在しないコンクリート製(超硬質)だ。

炎のダメージと後頭部痛打のプロレス技。

魔将のパワーを考えれば、普通なら死ぬ程なダメージだが、この神官は まだ辛うじて生きている。

 

ボロ…

 

その代わり、最初にルプスレギナが装着させた首輪が、ボロボロとなり砕け散った。

死の騎士(デス・ナイト)の首輪

これが、このアイテムの名称。

どんな致死ダメージを受けても、HP1でギリギリ耐える事が出来る、死の騎士(デス・ナイト)の特性を持つアイテムだ。

効果発動と同時に壊れてしまう(喪われてしまう)事を踏まえても、一見 有能アイテムに見える。

…が、特殊設定により、コレを装備したら、他の装飾品系装備が一切不可になるという、実はゴミアイテムだ。

 

「はいは~い♪ それじゃ、回復するっスよ~♪」

そして、瀕死の神官を魔法回復(ヒーリング)するルプスレギナ。

 

「お解り頂けましたか?

貴方達の罪。本来ならば、()()()()()()で、終わらせる程に軽くは無いのです。

それでも早く…痛み苦しみ、恐怖に絶望も無く楽になりたいのなら、素直になるのをお勧めしますよ?

それとも…100回死にますか?」

「「「「…!!!」」」」

因みにだが、死の騎士(デス・ナイト)の首輪は手持ちは沢山…本当に沢山、有ったりする。

所詮はガチャのハズレ・アイテムだからな!

 

 

◆モモンガside・了◆

 

≫≫≫

 

◆まろんside◆

悪魔(デミウルゴス)の呼び掛けに屈したか、自称・神の信徒達は、大神官を筆頭に此方の質問にペラペラと話し出した。

帝国騎士に扮したのも、当時の帝国・王国の衝突を完璧にする為に。

開拓村を救いにきたガゼフ・ストロノーフを後詰めに控えていた、陽光聖典で抹殺しようとした事も。

帝国が王国を飲み込む形で、王国を滅ぼそうとした事等々。

 

「…成る程。理解は、した。」

それを聞いたジルクニフ君が、歪んだ顔で声を搾り出しながら、一言。

これに法国の老害共は、安堵な表情を見せる。

 

「しかし、それで納得するとでも思っているのか!?」

『『『『…………………!??』』』』

…が、即座に一変、修羅如き表情からの怒声。

 

「ああ、確かに当時のリ・エスティーゼ王国は腐りきっていた! それは解っていたさ! 王は決断力皆無な優柔不断の無能! その下の貴族共も己の利権の為だけに国益等何も考えず互いの足を引っ張り合う俗物! 犯罪組織と普通に裏で通ずるクズの極み! 敵国に平気で自国情報を流す売国奴! 果ては貴族たる義務を全うしようともせず権利を勘違いして民に理不尽・横暴な対応をする愚か者! しかし それが罪の無い民を虐殺して良い理由になるのか? あれか? 私の二つ名は鮮血帝だから多少の虐殺行為の悪名は被せても大丈夫だとでも思ったか? 帝国はテロ国家認定されても平気だとても思っているのか? 我が帝国をそんな茶番の駒に仕立てようとは帝国を…私を舐めているのか? アインズ達にも言われたのだろう? 王国を世界の癌として粛するならば堂々とスレイン法国を名乗り王国王都に進軍すれば良かったじゃないか? ああ、スレイン法国は人類の守護者(笑)だから人の都を表立って襲う事は出来ないか? 汚れ役は帝国に押し付ければ それで良いと思ったか?」

「へ、陛下?」

「…………?!」

あ~ぁ、完全にキレテーラ。

大国の施政者とは思えない、感情剥き出しの早口の言葉で捲し立てる。

普段のクールさは一体 何処へやら。

その変わりっ振りに護衛の騎士、バジウッドや盾の人も、面喰らっている。

…って、ジルクニフ君や、その辺りで勘弁してやりな。

 

「…………………………orz」

ほら、キミは そんな心算は無いのだろうけど その台詞、今のリ·エスティーゼの王様の方が、大ダメージ負ってるから。

 

「………………………。」

そして もう1人、神官の発言を聞き、尋常じゃない殺気を放つ人物が。

 

「そんな…そんな理由で村を…父さんと、母さんを…?」

エンリだ。

 

「エン…リ?」

「赦さない…絶対に、赦さない…!」

普段、俺が『族長さんw』と おちょくる時の返しとは比べ物にならない、凶悪な殺気。

俺の呼び掛けに反応しない程に、完全に周りが見えていない、殺意100㌫の危険な精神状態だ。

モモンガさん、彼女を証人として この裁判に喚び寄せたのは、どうやら失敗だったよ。

最初は村の惨状を彼女に語らせ、帝国や聖王国に法国ヘイトを上乗せさせる計画だったが、もう多分 無理。

しかし、この儘 放置も出来ないな。

此処迄に膨らんだ負の感情は、簡単に納める事は出来ない。 

当然だ。彼女からすれば、肉親を不条理極まりない理由で殺されたんだ。

まだ世間一般的に正当な理由でも在れば、納得は せずとも理解し、自身の中で無理矢理に解決したかも知れない。

しかし法国の言い分は完全にアウトだ。

もう その怨いは、直接に その対象に ぶつけなければ一生消えないだろう。

しかし それは、彼女の心に、また別の一生消える事の無い深い疵を刻む事になる。

 

「仕方無い…か。」

ンフィーや妹ちゃんに、エンリの事は『頼まれた』のだからな。

 

「ルプスレギナ。そっちの大神官(ジジイ)に、首輪付けろ。」

「はひ?…はいっス!」

俺の言う儘に、大神官の首に死の騎士(デス・ナイト)の首輪を嵌めるルプスレギナ。

 

「「マカロン…?」

       …殿?」

予定(シナリオ)には無かった展開に、モモンガさんやデミウルゴスも戸惑っている様だが、モモンガさんもデミウルゴスも、アドリブ力は高いから、察して合わせてくれるだろう。

…デミえもんは深読みし過ぎての暴走が、少しだけ怖いが。

 

 

◆まろんside・了◆

 

≫≫≫

 

◆モモンガside◆

エンリ・エモット…今はバレアレだったか…の、精神状態がヤバイのは、俺でも判る。

そんな中で まろんサン…

アナタは何を、考えているのですか?

 

「裁判官。」

挙手をして、裁判官(デミウルゴス)に発言許可を求める まろんサン。

 

「どうぞ、マカロン殿。」

そして それを認めるデミウルゴス。

 

「このクズ共が

「マカロン殿? 如何に貴殿でも、この場で その様な表現は、不適切ですぞ?」

「…失礼。この…スレイン法国神官達の口から出たカルネ村での真実(こたえ)

後に続く聴取で更に併せ業が出るだろうが、どう取り繕っても、この件だけで死刑は既に免れないだろう。」

一応は中立な?立ち位置を見せるデミウルゴスの注意に、まろんサンは苦笑しながら自身の考えを述べていく。

 

「ま、待ってくれ!

確かに我々の行いは、決して許されないかも知れない。

しかし、我々は人類の為に、

「数多くの亜人や異形を討伐してきたとでも言いたいのか?

…この、アンデッド(わたし)の前で!

その正当化は、人間だけの価値観だろう!

確かに貴様等の異形討伐は、人間種からすれば称賛に値するかも知れない。

しかし それは其で、既に多くの者から讃えられたのでは?

カルネ村を基とする、開拓村での虐殺行為を無罪放免とする要素は、何一つとして無いぞ!」

「…魔導王の言う通りだ。

其所で…だ、裁判官。

この神官達の処罰、誰でも良いから1人、エンリに任せてみれば?

彼女には、その権利が有ると思うのだが?」

「ふむ…?」

…そう来たか!

スレイン神官の余りな言い様に、つい口を挟んでしまったが、まろんサンはエンリの危険な精神状態の、ガス抜きが目的か!

確かに そうでもしないと、この娘は この儘、怒り憎しみの感情に押し潰されてしまうだろう。

しかし まろんサン、それは…

 

「ふむ、エンリ・バレアレ。

マカロン殿は その様に申されていますが、貴女自身の意思は、如何程に?」

そして、それを全く止める気の無いデミウルゴス。

まあ、コイツは、そういうヤツだ。

 

「「「「………………。」」」」

「私は…」

皆が注目する中で、エンリが口を開く。

 

「私は…私個人の感情だけで言うなら、私は この人達を、絶対に赦さない!

それが許されるなら、たった1人だけだとしても、私達…いえ、私の心情をその身に理解させたい!」

それは後先も考えずな何の迷いも無い、魂からの本心。

しかし それは、彼女に人殺し(ギリ、セーフになるけど)の業を背負わせる事になる。

まろんサン、それでも良いのですか?

 

「…念の為に言っておきますが、魔導国法では、仇討ちは認められております。」

「その通りだ。このクズを殺った処で、エンリ、お前が罪に問われる事は無い。」

…ぅおいっ!?…って、そうなの?

 

「…エンリ。」

更には収納空間(アイテム・ボックス)から金色の短剣を取り出し、それをエンリに渡す まろんサン。

…って、それ!

神殺しの短剣(ゴッド・スレイヤー)じゃないですか!?

ヒヒイロカネの造りの、"神殺し"の属性を持つ、伝説級(レジェンド)アイテム!

 

「お前が本当に覚悟を決めているなら、この短剣を貸してやろう。

そして刺すのは心臓なんかじゃなくて、此処…肝臓が お勧めだ。

直ぐには死なず、長く苦しむ末に、命を落とす事になる。

真っ直ぐ水平に突き刺し、刃が奥まで刺さった後、抜き際には こう…こんな風に手首を捻る感じで抉るんだ。」

アナタは何を渡そうとしている?

そして、何を助言(アドバイス)している?!

自分の右脇腹を指しながら話す まろんサンに、頭の中で突っ込みが止まらない。

 

「私は…」

そして光の消えた瞳で、その短剣を受け取るエンリ。

駄目だ。まろんサンの誘導も有ってか、エンリも完全に、思考が復讐に支配されている。

 

「…待たせたな。さあ、お前の罪を数えろ。」

「ひぃっっ!?」

まろんサンが処刑対象となった神官に話し掛けると、この男は絶望に満ちた顔で声を詰まらせる。

 

「見苦しいですね…『眉1つ、動かさずに じっとして居なさい』。」

それをデミウルゴスが、【支配の呪言】で その動きを封じ込めた。

 

「さあ、エンリ。」

「はい…!」

そして、まろんサンに背を押され、日緋色の短剣を両手で確と持ち、神官に静かに近付くエンリ。

 

「…………~??!」

 

ズシャ…!

 

デミウルゴスのスキルにより、動く事は愚か声も発せない…顔を歪める事しか出来ない神官の脇腹に、その神をも殺せる刃は遂に突き刺さった…

 

「…痛って~~~~~~~っ!」

「ま、マカロン様?!!」

…事は無く、黄金闘衣を右腕のみ部分装備した、まろんサンの右手に握られ止められるのだった。

 




【次回予告】
 
◆モモンガside◆
…でっすよね~!
まあ、最後は まろんサンが止めに入ると、そう思ってましたけど!
しかし、これにより事態は よりカオスに!
 
「…待ってくれ、モモンガさん。
一言だけ、言わせて貰って良いか?」
はい? まろんサン?
 
「前回のラストの『異議あり!』を、俺の台詞だと思ってたヤツ…そう、お前等だよ! お前等 全員正座だ!」
……………………………。
 
 
次回『まろんの貴族(予定)』
乞う御期待だ。 感想も、よろしくお願いする。
 
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