無能in異能バトル   作:我らに幸あらんことを

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 割と純粋な異能バトルになりそう


幼なじみのお願い

「いざ尋常に、はじめ!!」

 

 その言葉とともに、彼女はまっすぐに向かってきた。

 黒い髪を後ろに束ね、女性にしてはやや高い身長。

 十人見れば九人が振り返る美しい容姿。振り返らない奴はおそらく逆張り野郎だ。

 そして何より異質なのはその得物である。

 何も持っていなかったはずの両手には、いつのまにやら俺の身長と同じぐらいの槍があった。

 

「まずは小手調べだ」

 

 彼女は持ち手の部分を、俺の横っ腹に向け思いっきり振り払う。

 俺はその攻撃を――まんま食らった。

 

 

 

 俺が美少女と戦う羽目となる二時間前、学校から帰宅している途中だった。

 高校二年になって友達という友達も作れず、午前授業にもかかわらずまっすぐ家に向かう敗北者がここに一人。

 しかし、この帰宅途中、へんてこりんな人物が待ち構えていた。

 不審者、というには少々不適切である。

 逆に、この場合は俺が不審者扱いされかねないのだ。

 なぜなら、待ち構えていたのは女子中学生であったのだから。

 

「あなたが飯泉さんですか?」

「いかにも、私が飯泉である」

「いつもそんな口調なのですか?」

「そんなわけないだろ」

 

 初対面にも関わらず絡みにくいボケをかますのは俺の悪癖であった。

 しかし、と思う。

 この少女は何者だろうか。

 セリフ的には明らかに俺を待っていた風だが、そんなことされる心当たりはほとんどない。

 

「俺に何か用ですか?」

「急に敬語ですね。しかし、見ての通り私は年下ですのでもっと砕けた口調で構いませんよ」

「おいガキ」

「怒りますよ」

 

 話が進まん。どうにも俺は前置きが長いのは苦手なんだがな。

 そんなことを考えていると、彼女は一息ついて要件を伝えてきた。

 

「日野さんがおよびです。と言えば伝わりますよね」

 

 全然伝わらなかった。

 

 

 日野、という人物は一言でいえば幼なじみであった。

 小中までは仲が良かったものの、ある一件から連絡を取らないようになった。

 そもそも高校違うし。

 彼女が呼んでいるとして、ついてくるように言われているが、その要件についてはとんと検討がつかない。

 というかそもそも、向かう先が彼女の家ではなかった。

 

「そも、俺たちはどこに向かっているんだ」

「言ってませんでしたっけ?病院ですよ。ボスは今入院しているのです」

「手土産は……」

「必要ないとおっしゃっていました」

 

 なんともまあ、寛容なことで。

 いや、無理やり人を呼びつけているから、多少の非礼を無視するのは妥当か。

 

「ボスは寛容な方ですが、失礼な態度はとらないでくださいね。殺されてしまいますから」

「いや、俺とあいつが何年一緒にいたと思ってるんだ。あいつはそんなことしねーよ」

「ボスが殺すのではありません。私が殺すのです」

「怖っ」

「それに」

 

 彼女は俺に威嚇するような顔を向けた。

 

「あなたよりも、私の方がボスと長い間一緒にいます」

 

 とのことだった。

 しかし、なんだかその顔に既視感があったのは、なぜだろうか。

 

 こうして戦闘まで残り一時間。俺たちは病院にたどり着いた。

 

「ああ、久しぶりですね。飯泉」

「久しぶり、だな。日野。しかし、ずいぶんと……」

 

 彼女の様態がどのようなものであったかは詳しく語らないとして、一言でいえば「ひどい」であった。

 これでは当分、動くにも動けないだろう。

 

「それで、要件ってのは?」

「ええそれですが、あなたには私が運営しているチームの代理リーダーになってもらいたいのです」

「ふむん。しかし、そういうのは普通副リーダーがやるもんじゃないのか。少なくともぽっと出の俺が指揮を執るのは、反発とか生まれそうだが」

「そ、そうですよ、ボス!!どうして私たちが、こんなどこの馬の骨かもわからぬやつの命令なんて……」

 

 早速反発が出てるし。まさに寝耳に水って感じだな。おそらく他のメンバーたちにも伝えていないことだろう。

 俺は人間関係のごたごたが一番苦手なんだがな。だから、俺は友達が少ないのか。

 少女が何やらキャンキャンと続けていたが、どうやらそれもしまいのようだ。

 

「お願いします、飯泉。私は今あなたに頼るほかないのです。もちろんこのことが例の約束を反故していることは十分理解しています。しかし、今の状況のチームを託すことができるのは、あなた以外にいない」

「いるだろう、勅使河原の奴が。少なくともあいつと俺は同格だし、そもあいつとは同じ高校だろ?どうして彼女を頼らない?」

 

 俺と、日野と勅使河原。全員が幼なじみであり、勝手知ったる仲間であると確信していた。

 俺はまあ、あの一件からあまり彼女らとはかかわらないようにしていたし、彼女たちも同様に俺と関わらないようにしていた。それが約束であり、そのためにわざわざ高校を別にしたのだ。

 にもかかわず、彼女は俺に頼ろうとしている。勅使河原ではなく。

 

「彼女もまた私のチームの一員で、元副リーダーでした」

「では、なぜ」

「彼女は今脱退し、私たちの敵対チームのリーダーです」

 

 ……終わった。

 

「彼女と敵対しているチームのリーダーになれと?かなりの無茶を言ってる自覚はあるのか」

「あります。だから、あなたにしか頼めない。私は、あなた以外に頼る相手がいないのです」

「ちょっと待ってください!!」

 

 病院内とは思えない大声を出したのは、案の定道案内役の少女であった。

 彼女は顔を真っ赤にしたかと思うと、俺にピシッと指さし、早口でまくし立てた。

 

「こんな奴に頼らなくても、私たちで勅使河原倒せますっ。やっつけて見せます。だから私にもっと頼ってください!!お願いします、お姉さまっ!!」

 

 ……お姉さま!?




 ヤンデレって別に主人公に対してじゃなくてもいいよね?
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