作者のバイタリティーがバイバイします
なにとぞ
八つの穴が開いた山、『八つ穴の祠』。
東西南北、北東南東北西南西それぞれに穴が開いていて、一本の道になっている。
進んでいくと各々二つの道が少し広い空間で合流する。ここを『決闘室』と呼ぶ。
四つに減った道も、それぞれやがて『準決勝室』に合流。
二つの道は最奥にある大空間でつながり、『決勝室』で長い洞窟は終わりを迎える。
勅使河原は決勝室で待ち構え、おそらく八人の番人をそれぞれの穴に設置しているはずである。
こちらの戦闘員も八人。問題は誰をどの穴に送るかである。
「みんな知っての通り、勅使河原は『
異能力は個人の技量も大事ではあるが、相性もまた同様に大切である。
もし、誰がどの穴に入るのか勅使河原に知られてしまうと、相性の悪い相手と戦わざるを得なくなる。
「そのための対策がこれだ」
俺が取り出したのは何の変哲もない紙と鉛筆であった。
「紙と鉛筆がどうして対策になるのですか」
「正確に言うなら、紙と鉛筆自体では勅使河原の異能を防ぐことはできない」
俺は鉛筆を動かし、あれを制作し皆に見せる。
「縦線と、横線?いえ、これは――
あみだくじ、言ってしまえば完全に運任せであった。
明日、八つ穴前であみだくじを使って、だれがどの穴に向かうかを決める。
直前までどこに行くのか知らなければ、勅使河原も知りようがないのだ。
「とはいえ、あみだくじはあくまで戦況を五分五分に戻すだけのしろものだ。そこらへんはまかせたぞ」
「任せてくださいっ。勅使河原の奴が卑怯な真似をできないなら、私たちに負ける通りはありませんからっ」
本当に勅使河原のこと嫌いだなこいつ。
周りの人たちもうんうんとうなずいてるのもいかれ具合を増進させてる。
「勅使河原に勝ったらボスに褒めてもらうこと間違いなしです!みんな頑張りましょう!」
おおー!
歓声が上がる。このチームには日野狂信者しか存在しないのだろうか。
「勝ったらお姉さん褒めてもらえる……」
しかし、妹になつかれてのはうらやましいな。美青のやつは俺の心配ばっかして妹って感じしないし、月音はバカだから論外だし、俺も尊敬してくれる弟妹がほしいな。
「褒めてもらえる……ぐへへ」
やっぱいらねーわ。
「……」
チーム全体がお互いを鼓舞しあっている中、カンナ一人じっと考え事をしていた。
「どうしたカンナ。俺の運任せ作戦はちょっと不安か」
「……いや、そういうわけじゃない。ただ、さっき手を合わせたやつのことを考えていた」
さっき、というとあの石風呂と呼ばれていた、カンナの槍を防いだ男性か。
「あいつは強い。間違いなくな。私以外のメンバーじゃすこし荷が重いかもしれない」
「そんなにか?」
「ああ、少しでも手を合わせたら相手側の技量などすぐわかる。おそらくだが、今回の戦いで一番強いのはその石風呂か――」
「――金鞍カンナ。あの中で一番強いのは彼女だろうね」
八つ穴の祠、その一室に男子女子二人づつ座っていた。
各々が何か資料のようなものを手に、岩肌に寄りかかりながら話をしていた。
そのうち一人、先ほどの発言をしたのは石風呂。
「もしかしたら僕でも勝てないかも」
「そうかァ?すこし謙虚が過ぎると思うがなァ」
「そうだよー。いっしーはもっと自信をつけるべきだよー?いっしー強いもん」
四人組は、喫茶店で飯泉を襲ったメンツである。明日決闘を控えているため互いに見解を言い合っている。
石風呂と三人はもともと一緒のチームであり、今回勅使河原にお金でやとわれて決闘に参加した。
すでに前金はもらっているものの、明日の活躍次第で給料が決まる歩合制であるため手を抜くことができない。
「確かに、戦績を見てもカンナだけは別格ね。でも、前言った通り私と尾鳥は相性がいいわ。いざとなったら私たちに押し付けて頂戴」
「任せなァ」
紙を逆立てた男性である尾鳥は、自信ありげに答えた。
「逆にー、ほしちゃんはー、ひさのっちに弱いかもねー」
「……そうね、叶ちゃん。その時は私を助けてくれる?」
「もっちのろーん」
利発そうな、まっすぐ髪を下ろし後ろでまとめている、ほしちゃんと呼ばれた少女。
眠そうな少女は叶ちゃんというらしく、和気あいあいとしてる。
女子同士が話をしていると話題は彼らのボス、勅使河原に移っていった。
「相性の話をしているけどよォ、ボスは相性のいい相手をよこしてくれるんだろォ?」
「どうもそうらしいね」
「でもさー、相手はボスの古巣なんでしょー?対策とかされちゃうんじゃないのー?」
「そこらへんは大丈夫だって言ってたわよ。何でも
「まず、ボスの異能に対策なんてできるんだね」
石風呂はおもむろに資料をめくった。
項目は『考えられる対策』。
「ふうん。
「ええ、言われてみればそうね。何でも知られてしまうな最初っから知らなければいい。うまい作戦だわ」
しかし、と四人は笑う。
「これも対策済みなんだろォ?じゃァ心配いらねーな」
「ええ。あとは、万全をこなすだけね」
「それじゃあ、ボーナスのために頑張っていきましょう」
「おー」