作者の血肉となります
なにとぞ
視点:日野ひさの
私は洞窟の中を走っています。岩肌がむき出しで、薄暗く、あまりここにいたいと思いません。
しかし、私に与えられた任務は勅使河原を倒すこと。そうすれば、ボスに褒めてもらうことができます。
今までさんざんチームの足を引っ張ってきましたから、頑張らないと。
道をまっすぐいくと決闘室と呼ばれる部屋が見えてくるそうですが、まだたどり着けていません。
また、その道中に勅使河原が雇った刺客が待ち構えていると――
「っ!」
視界が悪くて気づくのに時間がかかってしまいましたが、どうやらその刺客のようです。
女性、でしょうか。低身長でショートカット、眠そうで、ゆらりゆらりと歩きながら迫ってきます。
あまり見た目で判断するべきではありませんが、戦闘よりの異能持ちではなさそうです。
「止まりなさい。あなた、勅使河原の刺客ですね」
「んー?そうだよー。私はねー
名前を知られているのは驚くに値しません。相手側には裏切り者勅使河原がいますから。
しかし、叶という少女、ずいぶんと戦う気力がないような。
割と近くにいるのに、構える素振りも見せません。敵とはいえ、無抵抗の相手をなぶる趣味はないのですが……
「そろそろ戦闘を始めますよ。よろしいですか?」
「んー。そっかー、ひさのっちはあまり戦いなれていないんだったねー。戦闘はねー、
なにを、いっているのでしょう。彼女は何のそぶりも見せていないのに。
「私の異能はねー、『夢』に『誘導』する異能なんだー。だから、
「夢?何を言っているのですか。ここは現実ですよ。私がいて、敵であるあなたがいて」
「ひのっちってー、ちょっとおつむがー、弱いかも―。
「……は?」
言いましたね。言いましたね!?私の前でいってはならないことを、よくも、よくもくもよくもよくも――
するとどうでしょう、祈はひとりでに燃え始めたではありませんか。
「あっちー、あっちー。……なんちゃって。ここはー、夢の中なんだよー。痛みなんてーあるわけないでしょー?」
燃えているにもかかわらず、彼女は何でもないように話していた。
それに、そうです。私の異能はあくまで『炎』に『分解』すること。何もないところから、炎を生み出すことは不可能なはず。
「ここがやっとー夢の中って気づいたー」
「う、うるさい!お前なんか、
すると、祈跡形もなく消えてしまった」
っ、そうか、ここは私の夢の中だから、そうなってほしいと考えたら、そうなってしまうんだ。
「とはいえー、私の異能は『誘導』だからさー。現実に戻るトリガーを教えておかなくちゃいけないんだー」
祈の声がどこからともなく聞こえてくる。
そうだ、私は勅使河原をやっつけなくてはならないんだ。早く現実に帰らなくては。
「それはねー、夢の中で自殺することだよー。痛みもないからー簡単だよねー」
そんなの簡単です。この頭を石壁に叩き込めばいい。
そうと決まればさっそく――。
「
……そうです。ここは本当に夢の中なのでしょうか?
相手が幻術を見せる異能で、ただ私を殺そうとしているだけでは?
そうでない保証は、どこにあるのでしょう。
「ふっふっふー。私の恐ろしさに気づいたようだねー。それじゃあ、また現実で―。君にその勇気があればだけど」
「
それっきり、祈の声が届くことはありませんでした。
どうしましょうか、どうすればいいのです?こんなとき、こんなとき、頭のいい人、解決策を出せる人、
「俺を呼んだか?」
「飯泉先輩!?どうしてここに」
目の前には、いつものだらしない先輩。
最初はお姉さんに連れてこられた気に食わない奴でしたが、なかなか頼りになることがわかりました。
しかし、先輩はここにいないはず。では――
「そう、俺はひさのの作った幻だ。それにお前の夢の中だから、お前が思いつかないことは俺も思いつかない」
「……役に立ちませんね」
「そのままブーメラン刺さってるぞ」
な、ならば、でもまだ話し相手にはなるはずです。
「そ、それでは先輩っ。ここは本当に夢の中だと思いますか?」
「十中八九そうだろうな。もちろん、幻術を見せる異能の可能性もあるが、一番今の現象に理屈が通るのは、ここが夢の中で、彼女の言い分が本当であるって線だ」
「でもっ」
「そう、絶対じゃない。これは簡単な話なんだよ、ひさの。
わ、私は、死にたく、でも、このままじゃ、お姉さまの役に、もし、見捨てられたら、私は、お姉さまなしでは、いや、見捨てないで、おねえさま――
「おい、お前もわかっているだろうが、夢の中ってことはもちろん悪夢もある。あまり最悪を想像すると――」
ああ!お姉さまがそこにいる!
もう、飯泉先輩もいない。洞窟の中でもない、何もない。ただ、お姉さまがいて、私を見て――
「本当に、ひさのは役に立ちませんね」
「うーん。動きそうにないねー。それじゃあ、ぱぱっと縄で縛ってー」
祈が近づいてくる。手に縄をもって、どうやら、彼女の異能は本物であるようです。
私は、近づいてくる手を、とっ捕まえた。
「っ、起きたんだー。結構ガッツあるんだねー」
「いえ、私は夢の中である確信などしていませんでした」
縄を自分の手に持ち替え、祈を縛り始めます。
無抵抗であったのは、一度突破されると連続で異能が使えないからでしょう。
強異能にありがちなパターンです。
「じゃあ、なんでー?」
「お姉さまに見捨てられたので。
「……えぐ」
第一回戦は、私の勝ちです。
明らかになった名前・異能
祈 叶 『夢』に『誘導』する異能
ひさのちゃん始点かきやすー
かなえちゃんすきー