無能in異能バトル   作:我らに幸あらんことを

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なにとぞ


『槍』『生成』VS『磁場』『拡大』

視点:金鞍カンナ

 

 

 洞窟の中とは言え、槍をふるえないほど狭くないのは行幸だった。

 明かりもなくはない。少し視界は悪いが戦闘に支障は出ないだろう。気を抜かない限り、気が付けば目の前に敵がいる、ということにはならない。

 ならば、

 ぐんっと足に力を入れ、速度を増す。

 この戦闘は、八人中一人でも勅使河原のもとに行ければ勝利だ。だから、馬鹿正直にトーナメントなどやってやる必要はない。

 真っ先に敵を倒して、誰も決闘室、準決勝室に来ないまま、決勝室に言ってやればいい。

 猪突猛進、一番槍、どちらも自分の得意分野だ。

 視界が何かをとらえた。

 瞬時に戦闘態勢に入り、目を凝らす。あいつは……

 

「金鞍カンナさんね。この前ぶりかしら?」

 

 喫茶店にいた四人のうち一人、利発そうな少女。

 体は細いものの、目はいくつもの修羅場を迎えたことのある、ぎらつきにも似た特有の光を放っている。おそらく、十分戦闘ができる異能だ。

 

「あんたは石風呂の一派か」

「……そうだけど、私にもちゃんと名前があるのよ。星場(ほしば) 思彗(しえ)。できればそっちで覚えてほしいけれど」

「無理だな。覚える間もなく、倒しちまうからっ」

 

 槍を生成。

 投擲。

 一連の動作をほぼ反射神経で行う。

 生成した槍は、まっすぐ星場のもとへ向かう。

 避けるにしろ、防ぐにしろ、それで相手の戦い方がわかる。さしずめ、腕試しの一投ではあったものの、しかし

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なっ!?」

「ふふふっ、()()()()()。いい武器だわ。()()()()()

 

 星場は止めた槍を地面にそっとおろす。

 もちろんこの際に一度も手を使っていない。

 槍がひとりでに止まり、ひとりでに地面へと降り立った。

 

「自己紹介の続きをしましょう。私は星場 思彗。『磁場』を『拡大』する異能の持ち主よ。よろしく」

 

 星場はそう言って、不敵に笑った。

 しかし、種を明かしてしまえば、こちらのものだ。

 『磁場』の『拡大』?だが、磁石に反応するのは鉄だけだろう。

 

「親切にどうも。だから私も親切心で教えてやる。私の異能は『槍』を『生成』する異能だ。槍だったら、()()()()()()

 

 私は()の槍を生成し、思いっきり投げつける。

 これなら、相手にも効くはずだ。

 しかし、またしても、ピタリ、と止まってしまった。

 

「まだ自己紹介が足りなかったかしら。『磁場』の『拡大』といったわよね。なら当然、『磁場』の対象金属を『拡大』するに決まっているでしょう?」

 

 ……まれにたどり着く『異能の拡大解釈』か。

 これは少しばかりてこずりそうだ。

 

「それじゃあ、今までのぶん、返してあげるっ!」

 

 相手に送った二つの槍がふわふわと浮きはじめ、一斉に発射された。

 手元に槍を生成して薙ぎ払う。

 一本、二本……っ!?

 ()()()()()()()が、二つの間を縫うように浮かび上がってきた。

 何とか身をよじって回避するも、わき腹を少しかすめてしまった。

 

「馬鹿な!?私は三本目の槍など生成していない!」

 

 すると、先ほどの黒い槍はだんだんと溶けてしまう。

 いや、これは溶けているのではない。()()()()()!?

 

「そう、()()よ。私だっていつも相手の武器を奪ってばかりじゃないわ。こうやって、いろんなことができるのよ」

 

 空中に浮かぶのは、包丁、ナイフ、アイスピックなどの鋭利な刃物である。

 これらがどのように扱われるのか、想像に難くない。

 

「いけぇっ!」

 

 すべての刃物がこちらに飛んでくる。

 しかし、来ると分かっているのなら避けられないほどではないな。

 包丁をたたき落とし、ナイフを避け、アイスピックの軌道をゆがめる。

 そうやって一つ一つ対処していけば、いつかは終わる。

 

「……恐ろしい身体能力ね。それも異能?」

「努力だ。それに言ったはずだぞ」

 

 お前は覚える前にやっつける、と。

 一気に加速する。

 相手と自分の距離をできるだけ詰める。

 考える隙間を与えるな。

 遠距離じゃだめなら、近距離に持ち込めばいい。

 それに――

 

「槍じゃだめでも、()()()()()()()()()()()

 

 こぶしを握り締め、星場に近づく。

 彼女も驚いてはいるが、いかんせん距離がありすぎた。

 

「っ甘いわ!」

 

 彼女は黒い壁に包まれる。

 それは砂鉄でできた壁だ。私のこぶしなど容易に防いでしまうだろう。

 だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 黒い壁は、星場の視界をも防いでしまっている。

 

「はあッ」

 

 槍が砂鉄をぶち抜いた。目を見開いている星場が現れる。

 

「なっ、あなたの槍はここでは使えないはずっ、なぜっぐっぁ」

 

 槍であごを打ち上げる。

 星場はそのまま地面に倒れて動かなくなった。

 

「なぜって、みりゃわかんだろ。()()()()()()()()

 

 竹は、金属じゃないよな。

 しかし、さっさと勝つつもりが、思わず時間をかけちまった。それに――

 

「星場 思彗。くそっ、覚えちまった」

 

 とにかく急ごう。悪態をつくのは走りながらでいい。

 私は決闘室へと足を速めた。

 次の対戦相手はどんな強者か。

 星場みたいに強ければ面白いんだが。




明らかになった名前・異能
星場 思彗 『磁場』を『拡大』する異能

異能バトルらしくなってきましたね

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