作者の励みになることが予想されます
なにとぞ
「待てよ」
「……なにか?」
カンナの様子はまるっきり強者のそれであった。会話が続くことさえ彼女の気まぐれであるようだ。
だがそれでいい。続きさえするのなら、俺お得意の口八丁で切り抜けられる。
「確かにひさのは弱い。今の実力じゃあ、あんたに勝てない。けど、あんたはまだ俺の実力を見たわけではないだろ。俺は敵を倒す強さを求められていない。他人を強くする能力を求められたんだ」
もちろん、俺に他人を強くする技術は持ち合わせていない。こんなものはただの出まかせだ。
しかし、今はそれで十分だ。少しでもカンナに期待を持たせる。今は何としても時間を稼がなくてはならない。
カンナは少し考える素振りをしながらも、こちらの要求を受け入れた。
「いいだろう。明日、アジトでもう一度ひさのと戦う。そのときひさのが私に勝てれば、あんたらの要求をのもう。だから、ボス代理補佐としての初任務はそれだ。『ひさのを私より強くする』。失敗すれば」
次の任務はない。そういう話だった。
上等。
「それじゃあ、楽しみにしてる」
悠然とこちらに背を向け、トレードマークのポニーテールを揺らしながらカンナは去っていった。
……何とか第一関門突破、といったところか。まあ、問題はまだまだ山積みである。
「それじゃあ、ひさの。作戦会議といこう。とりあえずうちにくるといい。あそこには資料が沢山あるのでな。……ひさの?」
返事がない。ふと後ろを振り返ると、ひさのはうつぶせで寝っ転がっていた。四肢をぐでんと放り出している姿は、幼い子供特有の、体裁とか理性とかを振り切った、本能感情あるがままの雰囲気をかもし出していた。
つまり、間違いなく拗ねてる。
「あー、ひさのさーん?」
「……どうするのですか」
明らかに声が震えていた。
俺はいい子なので、知らないふりをした。男子は泣いているときそっとしてほしいものである。女子は知らん。
「どーするんですかっ。私がカンナ先輩に勝てるわけないじゃないですか!!私が百人いたって勝てっこないっ」
「俺は千人いても勝てない」
「どうだっていいですよ先輩のことなんて。このまま明日負けたら恥さらしじゃないですか。どーすりゃいいんですか!?助けてぇ、お姉さまぁ」
「落ち着けって」
「なんですか。なんで先輩は落ち着いているのです!?作戦でもあるのですか?」
「ない」
「うわぁぁああああああああん!!びえぇえええええええぇえぇええええぇぇぇ――」
ワァ泣いちゃった。
そういえばこいつ中学生だったわ。大人びた口調に騙されてたけど、節々にこういうところあったな、そういえば。
「ほら、家までおぶってやるからさ、泣き止めって」
「ひん」
割とおとなしく背負わされた。
こうやってると幼いころの妹思い出すなぁ。こいつと妹同年代ぐらいだけど。
というか、正直貧相な体つきをしている俺じゃあ、人一人支えるのは結構きついんだよな。これ家まで持つか?
つうか、自分より一回り幼い泣きじゃくってる異性を背負いながらいそいそ自宅に帰ってる姿を近所に噂されたらどうしよう。俺のメンタル持つか?
いっそのこと俺も泣いてやろうかしらん。
というか、タイムリミットまであと一日しかないから、こんなばかやってないでさっさと情報収集がしたい。
「カンナ先輩の異能ってやつはどんなものなんだ?作戦を立てるも何も、相手の能力がわからないうちは考えようがないぞ」
「……カンナ先輩の異能は『槍』の『生成』です。どんな材質、形状であれそれが槍でさえあるのなら、一瞬で生成できてしまう能力です」
「ふうん。でも身のこなしは結構人間離れしていたぞ。『槍を扱っている際は身体能力向上』みたいな付加はついていないのか」
ぱっと聞く限り、運動能力とは直結しない能力のようだ。というか、能力として槍だけを生成するってかなり弱くねーか。
「もちろん、異能持ちと無能力者の間に身体能力の大きな差があるのは事実ですが、カンナ先輩の強さは努力のたまものですよ。お互いに能力なしでも確実に負けます」
「能力としては、強い部類に入るのか?」
「……まあ、中の下くらいですかね。汎用性でいうなら私の『炎』の『生成』の方が高いし、相性としても悪くはないのですが……」
意外と努力型なんだな、カンナ先輩とやらは。
しかし、『炎』の『生成』とはなかなか強そうな異能だが、なんたって無能もどきなんて呼ばれているんだ。
「私、能力ほとんど使えないのです。出せたとしても火花程度で」
「それじゃあ、どうして自分の異能が『炎』の『生成』だと分かったんだ?」
火花程度は出せるようだから『炎』って点は当たっているだろうけど。
何も異能ってやつは何かしらを生成する以外のバリエーションがないのかしらん。
「お姉……ボスがその能力だからです。親兄弟は基本的に似た異能をもらうことになっているので……。それで、何かいい案思いつきましたか?」
「ついた」
「本当ですか!?」
「ああ、俺の家に」
やめろ、頭をたたくな。これ以上奇行を重ねて近隣住民ににらまれたくない。
それに、
「それに、いい案ってのも思いついてる」
明らかになった異能
日野姉『炎』の『生成』
カンナ『槍』の『生成』