無能in異能バトル   作:我らに幸あらんことを

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 作者の糧になることがままあるそうです
 なにとぞ


彼女の異能はなんなのか?

 俺の住んでいるマンションは、ややぼろっちい七階建てのコンクリート製である。趣はない。

 俺には二人の妹がいるから三人家族であるが、ファミリー用ということもあってか部屋の数、広さはともに申し分がない。

 ただちょっと、周りの住民が優しくないというのが欠点である。

 部屋のかぎがかかっているため、おそらく二人とも帰ってきていないのだろう。

 途中で帰ってきたらどうしようかな。高校生のお兄ちゃんが自分と同じくらいの女の子を家に連れてきたらどんな反応するんだろ。

 

「それで、案というのは?」

「いや、それはまだ教えられない。今はまだ仮説の段階だからな。資料とすり合わせてから説明したい。半端な仮説は混乱を招きかねない」

「それっぽいこと言いますね。名探偵のまねごとですか」

 

 コイツなんでこんなに当たり強いの?

 

「カリカリすんなよ。なんなら面白い話でもしてやろうか。人類は小麦の奴隷であるって説が――」

「本当にどうでもいいので早く調べ物を済ませてください」

「おーけーわかった。冷蔵庫勝手にあさっていいよ」

 

 これ以上無駄口をたたくと本当にひさのに怒られかねん。

 ぱっぱと居間から俺の部屋に移動して、お目当ての資料を探し出す。

 しかし俺の部屋きたねーな。相当時間かかりそうだ。

 

 

「あったあった。すまないな待たせて。ところでお前何やってんの?」

「チャーハン作ってました」

 

 マジかよコイツ、人の家でチャーハン作りやがった。常識のかけらも無ぇ。どうりで香ばしいにおいがすると思ったら。

 

「早く案とやらを説明してくださいよ。ちなみにチャーハンはもうありません」

「それはもういいよ。えっと、まず、お前の異能は『炎』を『生成』する能力じゃない」

 

 ひさのは驚いた顔をしているが、これは全く彼女が驚愕するような話ではない。むしろ、俺の方がびっくりするぐらいだ。

 つまり、こういうことだ。

 家族の異能は似たようなものになる、という情報から「それじゃあ私の異能はお姉さまと同じものなんだ」と幼少期のひさのは理解した。

 しかし、その異能はうまく発動できない。すると本来どう考えるか。

 

「努力が足りない、ですか?」

「違う。まず前提を疑うはずなんだ。『私の異能はほんとにこれなのか』って」

 

 でもひさのは違かった。公私を混同しないよう尊敬する姉をわざわざボスと呼ぶ生真面目な性格、それと姉に対しての盲信ともいえるほどの憧れ。これらが招いた本来あり得ない弊害は――。

 

「だってお前、『炎』を『生成』する目的以外のことで異能を使ったことないだろ」

「――あっ」

 

 あっ、じゃないんだよ。マジでこんないかれた人間は久しぶりに見た。

 日野(姉)のカリスマっぷりは十分に理解しているつもりだったが、姉妹ほど長い期間いるとこんな事態に発展するんだな。

 

「そ、それじゃあ私の異能はいったいどんなものなのですか」

「それは知らん。そのための資料だ」

 

 俺が部屋から持ってきたのは、ありとあらゆる『炎』にまつわる資料である。

 炎の仕組みから、用途、扱い方、他には象徴としての意味合いなど様々な情報が書いてあった。

 

「この中からそれっぽいのを片っ端から調べていくわけだけど」

「今日中に終わります?」

「あたりをつけていくしかないだろうなぁ」

 

 こればっかは運だな。あと異能自体がそれなりに強くないとカンナに勝てない。

 

「そうだな。とりあえずこれからいっておくか」

「どれです?」

 

 ひさのは俺の手元にある資料をひょいっ、と覗き込んだ。

 

「ひさのは『ヘラクレイトス』って知ってる?」

 

 

「ただいまー」

「お帰り、美青(みお)

 

 ひさのが帰ってから少しした後である。

 ふと時計を見るとすでに六時を回っていて、すっかり妹たちが返ってくる時間になっていた。

 今帰ってきたのは大きい方の妹である美青である。

 

「いいにおいがするねー。お兄ちゃん何か作った?」

「チャーハンを作ったんだ」

「おいしかった?」

「わからない」

 

 なにそれ、といって美青は笑った。

 美青は高校生なので俺と同様に午前授業であったが、友達と遊んできてすでに晩御飯は食べたという。

 そういえば、自身が昼から何も食べていないことに気が付いた。

 

月音(つきね)の奴が返ってくる前に、晩御飯でも作ってやるかな」

「確かに、こんなおいしそうなにおいさせておいて、何も作ってないのは罪だよね」

「そんなに匂うか?」

「うん。チャーハンのおいしそうなにおいと――女の子のにおい」

 

 美青はぐっと俺に身を寄せて、鼻を近づけた。

 

「……三人かな?全員クラスメイトじゃないね。それに懐かしいにおい……日野さんかな?」

 

 激やばであった。心なしか目に光がともってない。

 冷汗が背に浮かぶ。

 間違いなく、今日一番のピンチがここにあった。

 

「全部話してくれるよね?私たち兄妹なんだから」

「いや……」

 

 別に話さない理由もないけど、しかし、異能だとか何とか言って気持ち悪がられないかが心配である。

 そのうえ、この厄介ごとをわざわざ美青に知らせて、巻き込むようなことはしたくない。

 美青には悪いけど、しばらくの間は秘密にしておきたかった。

 

「美青には悪いけど……」

()()()だから話してくれないかな?」

「……んぁ、ああ、そうだなぁ。わかった」

 

 結局俺は包み隠さず話すことにした。異能という点はどうやら美青も知らない様子であったが、すんなりと受け入れてくれた。

 

「ふうん。大体のことはわかった。でも、どうしてお兄ちゃんは日野さんのお願いを聞き入れたの?」

「そりゃあ友達だから……」

「でも、友達だったら約束を優先するものじゃない?だって相手は約束を反故にしたんだよ」

 

 約束。ああそういえば、していたんだった。

 なんか、あたまが、えー、あー、なんだっけかな。

 

()()()だから思い出して。日野さんと勅使河原さんとお兄ちゃんがした約束を」

 

『飯泉はこれからの人生、日野および勅使河原と関わらないことを約束する』




 ヤンデレ?
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