無能in異能バトル   作:我らに幸あらんことを

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なにとぞ


本格異能バトル、開始

 アジト、というにはいささか平凡で、高校の寮であるといった方がしっくりくる場所がどうやら、彼女たちの根城であるらしい。

 目を見張るものはないが、しいて言うならやや大きめの庭であろうか。運動をするには十分な広さがある。

 そんな場所に俺を含めて九つの人影があった。

 カンナ、ひさののほかに、チームメンバーは残り六人いるらしく、これが全勢力らしい。

 

「よく逃げずに来たなひさの。何か秘策でも思いついたか。いや、思いついてもらったか?」

「逃げずに来たな、というのはこちらのセリフですよカンナ先輩。無能もどきにコテンパンにされる準備はできていますか?」

 

 まずは、といった言葉の応酬。なかなかに強烈であるが、どちらもどこ吹く風と平常心を保っている。

 しかし、何といってもひさのの態度。昨日にはなかった自信というものを身にまとっていた。帰ってから相当練習したのだろう。

 能力の相性は悪くない、むしろいい方だ。情報のアドバンテージもある。素人目だが、戦況は五分といったところだ。

 

「始まりの合図は俺が出そう。……いざ尋常に、はじめ!!」

 

 こうして戦いは始まった。

 

「――しっ」

 

 最初に動いたのはカンナであった。手元に槍を生成したかと思うと、何の躊躇もなくひさのに向かって投げだした。

 異能の正体を見破るまでうかつに近づかないことの意思表示であるとともに、その殺しかねない威力は、すでにひさのが異能を習得していることを確信しているようであった。

 ぐんっ、とまっすぐ自身に向かってくる得物を前に、ひさのは冷静でいた。

 

「炎!!」

「なっ」

 

 叫ぶや否や、飛んできた槍はたちまち燃え出し、ひさのの手元に来る頃には原形をとどめていなかった。

 カンナの表情が驚愕に染まる。

 

「『炎』の『生成』!?いや違うっ」

 

 カンナは続けてもう一本、槍を投げる。

 当たれば必殺。しかし、それは当たることなく、再び炎に包まれ消えてしまった。

 

「何回やっても同じことですよ」

「かもな。けど、なんとなくあなたの異能は理解できた。槍は高温によってとかされたわけじゃない。()()()()()()()()()()()()()()()

 

 さすがは百戦錬磨といったところか、未知の相手と戦いなれている。この一瞬で、もうひさのの本質に迫ってきやがった。

 

「さしずめ、『()』に『()()』する異能といったところか」

 

 そう、これがひさのの異能であった。

 現代人の我々は、少なくとも義務教育を受けているため、万物の源が小さな粒でできていることを知っているだろう。

 酸素には酸素の、炭素には炭素の粒でできており、それらの粒でさえ、中性子、陽子、電子の三つでできている。

 しかし、過去の人物にとって常識とは常識ではない。

 まだ何も証明されていなかったころ、賢い哲学者どもは万物の根源とは何か喧々諤々主張していた。

 そのうちの一人、『泣く哲学者』と呼ばれたヘラクレイトスの主張を聞いてみよう。

 曰く、万物の根源は『炎』である、と。

 

「なるほど、相性的にはこちらの方が不利そうだ。でも――」

 

 手元から一気に数十本の多種多様な槍を生成し、地面に突き刺す。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 相性がよかろうと情報のアドバンテージがあろうと、経験の差は埋めることができない。これがひさののどうしようもない弱点である。

 

「いくぜ?」

「……来なさいっ!!」

 

 カンナが投げ、ひさのが分解する。ただ、これの繰り返しであった。

 カンナははちきれんばかりの大振りで、一投一投生命を殺すつもりで投げていた。

 対するひさのも、槍一つの形状、大きさを瞬時に理解し、分解する。

 純粋な異能の比べあい、どちらが最初に限界が来るか、そういったものの戦いに移り変わっていった。

 付け加えるなら、カンナが失敗しても死ぬことはなく、ひさのが分解に失敗したら間違いなく死んでしまうという差がある。

 生死をかけているかいなかは、ひさのにとって大きなプレッシャーになっているはずだ。

 

「くっ……」

 

 ひさのが苦しそうな声を上げる。限界も近いのだろう。この状況を打破すべくどうすればいいのか必死に考えているに違いない。だが、ひさのは動くことができない。

 予想に反してこの均衡を破ったのはカンナの方だった。

 

「はぁッ」

 

 一本の槍を作って、大きく距離を詰めてきた。

 二人の距離が一気に近づく。

 五メートル、四、三、二、一。

 

「遠距離攻撃はっ、分解できても、近距離ならどうだぁっ!?」

「もんだいっ、ありませんっ」

 

 近くで振るったやりさえも、ひさのは炎に分解して見せた。

 そして、この距離間はひさのに分がある。

 しかし、手元の槍が炎に変わった瞬間、カンナは槍を放り出した。

 次に選んだ武器は、()()()である。

 

「武器を分解できても、人間を分解することはできないだろっ。その覚悟がお前にあるかぁっ!?」

「その必要はありません」

 

 ひさのはすでに、分解する以外の攻撃方法を得ている。

 その瞬間、ひさのの背後に隠れていた炎がうねりをうってカンナを襲った。

 たしかに、カンナの生みだした槍は、ひさのによって炎に分解され消えてしまった。

 しかし、その()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ぐぅっ……」

 

 炎に焼かれたカンナは地面に倒れて動かなくなった。

 

「勝負あり」

 

 勝者は、日野ひさの。俺たちの勝ちだ。




明らかになった異能
日野ひさの『炎』に『分解』する異能

初めてこんながちがちの戦闘シーン書いた
分かりずらいかも?
だとしたらすまん
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