黒き王の原罪   作:イテマエ

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これにて『旧校舎のディアボロス』の章は終了です。
ここまで、多くの人に見てもらえて嬉しかったです。
本当にありがとうございました!
次章はいつになるかわかりませんが、これからもよろしくお願いいたします!


第10話 終わり…?

 俺はこの数週間でいろんなことに巻き込まれて、いろんな思いをして、いろんなことを体験できたよ。

 当然その時、辛いこと、苦しいこと、頭にきたこと…負の感情は数え上げればキリがない。

 それでも新たな人との出会いもあり、それらを吹き飛ばせるほどの嬉しいことがあったのも事実。

 

 目の前で伸びてる堕天使は、かつての俺の初恋相手であるレイナーレ。

 思えばこいつに、俺の全てを狂わされたと言っていい。

 まぁこいつが俺を殺さなきゃ、俺の中に眠ってる力もわからなかったし、部長たちに関わることもなかった。

 

 こいつにはいろんな思うところがある。

 だからこそ、自分の手でぶっ飛ばせたのは気分爽快。流石に殺せてはいないけど。

 悪魔陣営と堕天使陣営でいざこざが起これば、いつ戦争に発展してもおかしくない。現在睨み合いが続く中で、俺みたいな下級悪魔が堕天使一人殺しましたみたいな事態が起これば、大きく戦争に影響するんだろうな…

 

 まぁそれもあるけど、結局俺がこいつを殺せなかったのは、春雄の言う通りどこか優しさ…いや、ただの「甘え」があったんだろうな。

 そんなあまちゃんの俺なりにも、ケジメはつけれたはず…そう思いたい。

 

「ところで部長、アーシアはどうやって…」

 

「そのためには、まずそこで伸びている堕天使を起こさないとね」

 

 俺の疑問に答える部長は、朱乃さんに命令すると…す、すげえ…!

 朱乃さんによって生成された水が、レイナーレの顔面に覆いかぶさる。

 すると、レイナーレは咳き込みながら目を覚ました。

 

「お目覚めのようですわね」

 

 朱乃さんがいつものニコニコ笑顔でレイナーレに語りかける。

 レイナーレは「ひっ…」と恐怖で声を漏らした。そりゃそうだ。俺だってちょっと怖いもん。

 

「さて…堕天使レイナーレ、あなたにはいろいろ聞きたいことがあったけど、こっちで全部問題は解決できたから」

 

「な…何を…」

 

「私たちに協力してくれた人物がいてね…その人が冥界の隅々まで調べてくれおかげでことがすんなりと進んだわ」

 

 

 

 リアスと朱乃が用事と称して部室を離れた際、人気のない架道橋の下に訪れていた。

 そこで待っていたのは、全身厚手の白い和装で、頭全体を覆うように覆面がしてある謎の男だった。

 発せられる雰囲気に緊張するリアスだったが、朱乃が、

 

「彼が私たちに情報を提供してくださいましたの」

 

 リアスが確認のために視線を向けると、男はコクリと頷いた。

 

「事情があって顔を見せることはできない。このままで頼む」

 

 どことなく無機質な声を発する男に、謎は深まるばかりである。

 敵対する意思が全く見られないので、恐らく大丈夫ではあるが、

 

(なんなの…この神聖な力は…!?)

 

 彼から感じる圧倒的なまでの聖なる力のようなもの。

 しかし特別魔法のようなものはないし、そう言った類の道具を持っているわけでもなかった。

 

 目の前の男に、リアスはもちろん、ここに呼んだ朱乃ですら冷や汗を流していた。

 

「不用意に苦しませているようだな…謝罪する。悪魔には我々の光は毒以上のようだ…そちらのためにも手短に話そう」

 

 すると男は話し始めた。

 今回のレイナーレによる一誠の殺害、及びアーシアの神器を狙った計画は、全て個人的なものであり、堕天使本営は全くの無関係であることが告げられた。

 それだけでなく、この地球でとある研究資料が盗まれたのだ。

 痕跡が一切見つからないことから、冥界にいる者の仕業と踏み、調査するとそれは浮き彫りになった。

 

「最近、極めて原始的な特徴を残しつつ、早い段階で進化を遂げた巨大不明生物の卵の化石が見つかったのは聞いているか?」

 

「ええ…数日前のニュースで見たわ」

 

「それは現代この星に住まう生命体の多くの遺伝子を持っている…簡単に言えば、太古の段階で急速に進化を果たした事実上の完全生物に分類されるもの。当然今まで見つかったものは精々、足跡程度だったものだが、ここに来て大きく研究を飛躍させることが起こったわけだ…」

 

「それが…今回と一体なんの関係が?」

 

「化石だと思われていた卵のうち、数個は生きていた。そしてその内いくつかを、今回の堕天使たちにより奪われた。そしてそれらを兵器として転用しようとした動きがあった」

 

 その事実にリアスも朱乃も驚きを隠せない。

 神器を狙うだけでなく、古代の生物を兵器として転用しようとしたなど、悪魔に対して本格的な戦争でも起こすつもりではと、二人は気が気でならない。

 

「奴は現状『MUTO(ムートー)』と名付けられている。この古代の生物はそれだけの力がある。だが幸いにも、堕天使本営は生物兵器の転用の可能性に気づけてはいない。そこで、このことが冥界に浮き彫りになる前に、今回の堕天使の処刑はもちろんだが、その研究の痕跡と古代生物の排除は必ず行われなければならない」

 

 すると、男は一通り伝え終わったのか、そのまま帰ろうとしたが、

 

「待って…どうしてあなたはそこまで詳しいの…?」

 

「証拠ならある。後に見せても構わないが…」

 

「そうではなくて!どうして冥界でもトップクラスの機密事項になり得そうな情報を事が露見する前に掴めるの…?」

 

 はっきり言って、この男の行動力と、情報収集力は異常だ。さらに冥界にここまで精通していることも。

 さらにリアスも朱乃も気づいている。

 男は人間を装い、人のオーラを出してはいたが、本来の何か特別な力は殺しきれていない。

 人には絶対にない何かがあった。

 

「無理な詮索は控えた方がいい…だが一つ言えるのは、私は君たちの味方はできないが、敵になることもない…私はこの地球が君たち悪魔の他に、堕天使、天使、更には龍族、神がどれほど影響するのかをただ見定めているだけだ…私はただの…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()だ」

 

 

 

 レイナーレは、リアスから今回の騒動について洗いざらい言われてしまい、逃げることはできないほどにまで追い詰められた。

 リアスには、堕天使本営から直々に「レイナーレの処刑」が出されたため、これでなんの懸念もなく今回の事件はレイナーレごと処分できる。

 

「い、いえ、まだ私には部下がいるわ…!」

 

 レイナーレはこの期に及んでまだ足掻くつもりらしいが、リアスが手に持つ黒い羽を見て、青ざめた。

 

「あの『裁定者』と名乗る人物…初めてお会いした時から只者ではないとは感じていましたが…とてつもない実力者でもありますわね…」

 

 朱乃の口ぶりから、ドーナシークをはじめとしたレイナーレの幹部や、その他の堕天使は皆、裁定者によって捉えられたらしい。

 

「見つけた時には既に全員縛られていたわ。正式なお達しもあったから、すぐその場で消し飛ばしてあげたけど」

 

 手に滅びの魔力を集めながら、リアスはレイナーレの前に歩み寄る。

 この時点で、レイナーレは絶望的だ。

 

「い、イッセー君、あんなことしてごめんなさい!わ、私はそうするしかなかったの!ほ、ほら、あなたからもらったものだってまだ大事に持っているから…」

 

 最後の最後まで性根が腐っていた。

 一誠は本当に馬鹿馬鹿しく思えてきた。

 

 

 

…なんでこんな奴に恋心抱いちまったんだろうな…まぁそれは俺が騙されただけなんだが…こんな奴に少し慈悲を抱いちまった俺が気持ち悪くてしょうがねえ…

 

 

 

 怒りで震える一誠に、優しく肩に手を置く者がいた。

 春雄だった。

 

「おいレイナーレ…」

 

 レイナーレは春雄を見た途端、かつての記憶がフラッシュバックし、恐れで震え始めた。

 

「お前があの怪物を勝手な理由で連れてきたようだけど、あの怪物はお前みたいに狂った理由で戦ったりはしない…」

 

 全身これでもかと言うほど傷だらけで、立っているのもやっとなはずの春雄は、王の風格の如く堕天使を見下ろす。

 

「僕も、あの怪物もただがむしゃらに生き残るために殺し合った。お前はそんな必死になって生きていたやつをただ玩具のように弄んだんだ。くだらないことで僕たちの邪魔をしないことだ…」

 

 そう言って、春雄はレイナーレの目の前の地面を思い切り殴りつけた。

 その地面は轟音を立ててボロボロになり、レイナーレは泡を吹いて気を失った。

 その代償として、春雄が殴った方の腕から振動が伝い、ぐちゃぐちゃの肩にまで影響し、骨が飛び出た。

 だが、そんな春雄は痛みすら感じないほど怒っていたのがわかった。

 

(生きるために全力か…)

 

 一誠は心の中で、命のやりとりをした者の言葉を反芻するのだった。

 

 

 

 その後、レイナーレは部長の滅びの力で跡形もなく消された。めっちゃ怖い。

 そして、はらりと落ちていく黒い羽を眺めていると、緑色に淡く輝くものが落ちてきた。これって…

 

「アーシアさんの…」

 

 すると部長は、一誠にアーシアさんをここに連れてくるよう頼んだ。

 

 連れてこられたアーシアさんは、まさしく眠れる美女だった。

 冷たくなった体、元から白かった肌は生気が完全に失せたことで雪のように白くなっており、美しい金髪の髪がその安らかな表情と相まって、不謹慎だけど美しく見えてしまった。

 

神器(セイクリッド・ギア)所有者は、それを抜き取られることによって死んでしまうの。もちろん、一度死んでしまった命はもとに戻らないように、神器を所有者に戻したところで戻ってはこないわ」

 

「じゃあどうするんすか…?」

 

 イッセーの問いに答えるように、リアスはとあるものを取り出した。

 それは確かイーヴィルピースだっけ?イッセーもそれで転生したから…まさかアーシアさんにも?

 

 どうやら僕の予想は当たっていた。

 心底驚いた。

 そのピースを使用すると、神器と共にアーシアの体内に入っていく。

 僕とイッセーが不安と期待を胸に見守っていると、

 

「あ、あれ…?私は…」

 

 聖女は長いようで短い、「永遠の眠り」から目覚めてくれた。

 いろいろやばい文章に思えるけど、今起こったことを端的に言い表せばこんな怪文書になるんだよね。

 ひとまず僕たちは、かけがえのない友だちが戻ってきたことに素直に喜んだ。

 

 

 

 あれから数日して、僕たちはわりかし普段通りの生活に戻ったような気がする。

 イッセーも日中の怠さには慣れたようだし、本当の意味でいつも通りの朝が始まる。

 唯一変わったと言えば…

 

 洗面所で顔を洗っていると、背後に人の気配。

 僕は振り返って挨拶をする。

 

「おはようイッセー、アーシアさん」

 

「おはよ」

 

「おはようございます」

 

 アーシアさんがホームステイという名目で住み始めたのだ。

 部長の計らいでアーシアさんを兵藤家に招くことができた。

 悪魔となってしまった今、当然教会に身を置く場所はないし、そもそも今、どこにも住むところがない。

 

 まぁこんな可愛くて純粋な子を、両親は迎え入れないはずないし。

 家事も率先して手伝ってくれるし、本当にいい子だし。

 イッセーを更生させるかもしれない最後のチャンスかもしれないし。

 僕も家族が増えたみたいで嬉しいしね。

 

「良かったなアーシア!」

 

「はい!イッセーさん!」

 

 アーシアさんも好きな人のもとにいれて良かったね。

 

「春雄さんもありがとうございます!」

 

「?僕なんかしたっけ?」

 

「私を守っていただきましたし…」

 

 ああ、あの時か。あの依頼主の家で、体が勝手に動いたんだよね。

 守りたいとは思ってたけど、普通だったら自分だって危ないあの時、ただ守らねばと言う義務感に駆られたんだ。

 本能がアーシアさんを守ったと言っていい。

 それも僕の中の王が動いたんだから。

 

(彼女の優しさが届いたのかな?それとも…)

 

 あの王にも()()()()()()()がいるのかも…

 

「あの…春雄さん…」

 

「…?何?」

 

「私のことを『アーシア』と呼んでもいいんですよ?むしろその方が距離が縮まった感じがして…」

 

「なるほど…確かに…じゃあ僕もそう呼ばせてもらおうかな」

 

 そう言うと、彼女は微笑んでくれた。

 

 そんなこんなで日常は帰ってきたのかな。

 学校にいるときは、いつも通りボロが出て、生徒会と鬼ごっこ。その後、エロに懲りないあの3人と職員室で神永先生から説教。

 放課後はバイト。時々部の手伝い。

 そしてバイトから8時くらいに帰ると、家ではイッセーとアーシアが待っていた。

 

「ただいま、イッセー、アーシア」

 

「おう」

 

「お帰りなさい」

 

 あんなことがあったのに、驚くほど世界はいつも通り回っていた。

 悪魔側に身を置く今、少なくともこの平和な今を堪能しよう。

 最近、部長が思い詰めた顔をするようになったし、今後何か騒動があるんだろうな。

 

 

 

 平和が一番なのになぁ…

 

 

 

 ふとテレビをつけると、

 

『たった今!新東名高速道路の工事をしていた谷ヶ山トンネルから巨大不明生物が出現!現場の作業員数名と連絡が取れていない模様です!』

 

『つい先程、自衛隊に害獣駆除を目的とした武力行使命令が出されました』

 

『政府は…あのような我々人類の平和な生活を脅かす巨大不明生物を『禍威獣』と呼ぶことに決定いたしました。禍威獣が現れた際の法律制定及び行使は、国民の皆様の安全を確保するためのものであって…』

 

『禍威獣は、自衛隊の攻撃を退け以前進行中です。予想進路内に位置している住民の方は至急避難してください』

 

『信じられません!今だこのようなことがあったでしょうか?前代未聞です!』

 

『速報です。大河内総理により、自衛隊の武器の無制限使用の許可が出され、戦車、爆撃を利用した大掛かりな作戦が投入されることとなりました』

 

 新聞では…

 

『未曾有の災害 多大な被害を出しながらも駆除』

 

『犠牲者 自衛隊含め二百人』

 

 そして、この世界に影響を与えた一週間が過ぎた後、防衛大臣がこんな発表をした。

 

『工事中の谷ヶ山トンネルから現れた禍威獣を…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…『ゴメス』と呼称することになりました』

 

 

 

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