黒き王の原罪   作:イテマエ

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第15話 仲間-family-

 裁定者として悪魔である一誠たち、そして「黒き王」の力を宿す春雄を観察しつつ、彼らの教師として成長を見守っていく神永。

 彼は、圧倒的な力を見せつけられたオカルト研究部と、春雄の間に深い溝が生じる可能性を危惧したが、特別そんなことを気にすることなく、彼を取り巻く身近な人は受け入れてくれるそうだ。

 

 一方で一誠も、春雄をいつも通りに接しようとしてくれる友に、心から安堵し、感謝するのだった。

 

 

 

 いつも通りの時は過ぎてゆき、それぞれの生徒が部活やバイト、用のない者は遊びに歩いたり、そのまま帰宅する、解放された気分となる放課後。

 

 俺は兵藤一誠。

 早めにホームルームが終了し、たまたま会った木場、そしてルームメイトであり大切な家族でもあるアーシアと共に旧校舎へ向かう。

 その時、木場を見て黄色い声を上げる腐女子や、アーシアの隣を歩くだけで嫉妬の視線を向けてくる男子生徒が鬱陶しいが、今となれば慣れたもんだし、一度本気の殺意を当てられた俺からしてみれば、そんな視線は随分と生温く感じちまう。

 

「春雄さん…目を覚ましたでしょうか…?」

 

 部室に向かう途中の廊下を歩いていると、アーシアが心配そうに呟いた。

 春雄と同じように親がおらず、教会でもずっと孤独な日々を過ごしたアーシアは、自分以上に壮絶な幼少期を過ごしてきたアイツに思うところがあるんだろうな。

 

 そんなアーシアも、純粋な思いでアイツを妹分として支えたいと強く心で誓った。

 

 俺は本当に良かったと思ってる。

 まだアイツの周りには、沢山の支えになってくれる人がいる。

 

 俺や両親はもちろん、くだらない付き合いの最高の友人と、優しさで溢れるオカルト研究部、そして心に寄り添ってくれる最高の担任。

 

(アイツを独りにしたくねえのは…みんな同じだぜ…)

 

 

 

 部室に行く手前まで、俺は一つ気になったことを木場に聞いてみようと思う。

 

「なぁ木場、春雄も気にしていたんだけどよ、アイツが暴走する前、部長がたまに物思いに耽る表情していたんだが…」

 

「…ああ、それのこと。実は部長…!」

 

 俺たちが扉の前まで来ると、木場は何か言いかけたところで、表情を一変させて黙り込んだ。

 

「まさか…僕がここに来て漸くあなたの気配に気付くなんて…」

 

 俺もアーシアもよくわからん。

 だが、今の木場は些か動揺しているように見える。

 冷や汗が伝うその顔は、一切油断なく、それで僅かに強張っている。

 

 木場がこんな顔をする時は…

 

 

 

…今部室の中に、強い奴がいる…

 

 

 

 冗談じゃない。

 今部室には春雄がいる。

 

 俺は勢いよく扉を開けると、そこにいる全員が俺に注目した。

 いや、厳密に言えば、寝てる春雄以外の人がこちらを見ていた。

 

 俺が真っ先に見たのは、見知らぬ銀髪の、メイド服を着たかなり美しい女性だ。

 

 固まった俺に気付き、部長は銀髪メイドの軽い紹介をしてくれた。

 

「イッセー、彼女はグレイフィア。詳細は省くけど、簡単に言えば、グレモリー家に仕える身の人よ」

 

「グレイフィアと申します。以後、お見知りおきを」

 

 部長から紹介されたグレイフィアさんは、クールながらも丁寧に挨拶してくれた。

 俺も彼女のお辞儀につられて頭を下げるが、それにしてもすごい美人だ。

 光沢のある銀色の髪が、少し揺れるだけで世の男たち気をそそるほど艶かしく、それでいて整った顔立ちを持つ…

 

 少し見惚れそうになるが、部室はいつになく冷たい空気が流れていた。

 

 周りを見渡せば、部長は少し機嫌が斜めだし、朱乃さんもいつものニコニコ笑顔に影を感じるし、子猫ちゃんは春雄の眠るソファのアームにちょこんと座って、羊羹を齧っている。

 後ろを見れば、木場が困った様子で苦笑いを浮かべており、アーシアはこの雰囲気に耐えられないのか、不安がりながら俺の制服に掴まっていた。

 

 部長は一つ息を吐き、部員が全員集まったことを確認すると、話したいことがあるらしい。

 部長から感じるオーラから、恐らく相当大事な…

 

(確か部長のお兄さんは魔王だったか…この感じ、部長の家に関わってそうだな…)

 

 俺はことの重大さを覚え、未だ夢の中の春雄を起こそうとする。

 軽く揺すってみるが、反応なし。

 「くかー」と寝息を立てて気持ちよさそうに眠っていやがる。

 

「イッセー、春雄はまだ怪我をしているから無理に起こす必要はないわ」

 

 部長はコイツに気遣ってそのままにしておくつもりらしい。

 

 つーかコイツ、もうほとんど大丈夫だろ…

 前の黒い怪物と戦った時も、あれだけの負傷しておいて結構ピンピンしてたし、今なんて半開きの口から涎が垂れている。

 

「松田ぁ…いい加減…金返せよ…」

 

 どんな夢見てんだよ…

 コイツの呑気さと神経の図太さは本当に呆れるぜ。

 でもコイツの間の抜けた寝言が、幾許かこの張り詰めた空気を和らげた気がする。これに関してはファインプレーだ。

 

 部長は場を引き締めようと咳払いを一つして、話を切り出そうとしたその時だった。

 

「!これは…!」

 

 俺たちの目の前で、炎の如く魔法陣が光だした。

 見覚えのない魔法陣に俺は呆気に取られていた。

 

「木場!これって…」

 

「…フェニックス…」

 

 俺の問いとも思えない問いに木場が答えてくれた。

 とりあえず何のことかよくわからないので、火の粉が春雄とアーシアに飛びかからないように俺の後ろにする。

 

 肌に火の粉が付着するたび軽く痛みを覚えるが、そんな感覚は目の前に突然現れた存在による驚きで消えていった。

 

「ふぅ…人間界は久しぶりだぜ…」

 

 髪を片手でかき上げ、息をつく男が現れたのだ。

 赤いスーツを着ているが、中のワイシャツを着崩して胸の部分を大きく開いている。

 はしたないようにも見えるが、その男はそのような格好がむしろ似合う、悪系のイケメンだった。

 

「会いに来たぜ…愛しのリアス…」

 

 この言葉を聞き、俺は頭が真っ白になった。

 

 

 

 話を軽くまとめると、魔法陣から炎を纏って現れたライザー・フェニックスは、グレモリー家との会談の末決定された部長の婚約相手だ。

 昔からの伝統、悪魔の純粋な血を絶やしたくない双方の思惑が重なり、このような形になってしまった、言わば政略結婚ってやつだ。

 

 当然俺たち眷属もそうだが、部長自身も納得した表情ではなかった。

 そりゃそうだろ。

 この先共に歩む伴侶は、部長の本心で決めるものではなく、双方の家の利益を重視した決められてしまった相手だったんだ。

 

 自分の気持ちを度外視され、更には認めたくない相手と結婚させられるだなんて…

 

 俺は結構頭に来ている。

 もちろん部長の気持ちを踏み躙ることに対してもそうだが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…部長と結婚だなんて羨ましすぎんだろ!

 

 この学園の2大お嬢さまと謳われる人の一人と結婚だなんて…

 悔しすぎる!

 

 それにこのライザーっつう奴の態度も気に食わねえ!

 部長を見る目が、ただの己の欲望を満たすための玩具としか見てねえ目をしていた!

 コイツには、部長を本気で愛するつもりなんてねえ!

 それに『兵士』である俺を馬鹿にもしてきやがった。

 

 ああ、もうコイツの何もかもが気に食わねえ!

 今にも飛び掛からんと殺意を放つと、木場や朱乃さんに抑えられてしまう。

 

 部長はしつこく言い寄ってくるライザーに怒りを露わにし、強く反論していた。

 

 部長曰く、悪魔の純粋な血を途絶えさせるつもりはないが、ライザーとは結婚しないと。

 だがライザーも、悪魔の中でも力ある貴族のような立場の者。

 フェニックス家の看板を背負ってやって来た彼は、例え眷属やこの校舎を燃やし尽くしてでも連れて行くと脅迫してくる。

 

「ついでに…さっきから俺がいるにも関わらずそこで寝ている不届き者は…人間か?

 人間風情がいい度胸だな…骨も残さず消し去ってやろうか?」

 

 その言葉に反応した俺や、木場、子猫ちゃんは咄嗟に構える。

 

 一触即発の雰囲気となったところで、グレイフィアさんが止めに入る。

 その時発したであろうオーラに、俺は威圧され、大人しく引かざるを得なくなった。

 

「彼はグレモリー眷属の協力者です。今は戦いや殺し合いをしに来たのではなく、話し合いに来たのですよ。あまり事を荒立たずに」

 

「『女王』にそう言われては…仕方ありませんね…それにしても、彼が噂のね…」

 

 ライザーは春雄を見て薄気味悪い笑みを浮かべていた。

 

 でもあのライザーですら、グレイフィアさんの前では大人しく手を引いた。

 薄々思ってたけど、グレイフィアさんって実はとんでもない実力者なんじゃねえの?

 

 その後、グレイフィアさんが持ち出した提案で、今回の婚約を破棄するか否かを決めることとなった。

 

 レーティングゲーム…

 『王』である上級悪魔が、眷属を駒として、あたかもチェスのように策を巡らせ、駒を動かし戦う遊びだ。

 遊びと言っても、実際戦うわけでもあるので、生半可な思いで挑めば大怪我は不可避だろう。

 『王』は自分を守るため、眷属を駒のように使い、時には捨てる…

 まさしくキングたる、冷静な判断力、駒を的確に動かす技量、時として駒を見捨てる冷徹さ…

 

 あらゆる能力を必要とするこのゲームで決着をつけようと言うことで、部長は渋々承諾した。

 

 部長の人生は振り回されている。

 親と言い、結婚相手と言い、このような状況にした社会と言い…

 

(ここ最近浮かばれない表情をしていたのって、このこともあったんだな…)

 

 そりゃ心がすり減る思いはするだろう…

 

 

 

 ゲームをやることはいいが、相手はライザー。

 聞くところによると、レーティングゲーム経験者であり、フェニックス特有の回復力で勝ちを積み重ねており、これからが期待されている若手の星だった。

 対する部長は、ライザーほど駒を持ってるわけでもなく、ゲームの参加自体したことがない。

 

 そしてまた俺の癪に触ることが…それは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…アイツの眷属、全員女の子でハーレムを築いていやがった!

 

 ライザーは戦力を見せつけるため、揃いも揃ってあらゆる面で美人な眷属を呼びやがった。

 くそっ!ちょっと顔がいいからって…涙が止まんねえ…

 

「リアス…そこの兵士君が何やら俺の眷属を見て泣いているが…」

 

「この子の夢はハーレムを作ることなの…女の子に囲まれているあなたを見て羨ましかったのでしょうね…」

 

 ライザーは困惑し、そいつの眷属は引き気味だし、部長もなんか呆れてるし、子猫ちゃんからも冷ややかな視線を向けられるし…

 

 すると、ショックに打ちひしがれている俺を見たライザーは悪い笑みを浮かべ、眷属の一人である女の子とディープキスをして、その様子をまざまざと見せつけてきた。

 その女の子はえらく官能的な声を発し、その息も少しずつ荒くなっていった。

 

 やめろ!

 そんな光景を俺に見せるんじゃねえ!

 舌と舌が絡む音といい、その女の子の声といい、俺の股間に刺激がいくのも無理はない。

 

 部長は心底呆れた表情だったし、アーシアは湯気が出そうなほど顔を赤くしていた。

 

「イッセー先輩、最低です」

 

 子猫ちゃんは俺の考えてることがわかったのか、絶対零度の視線を向けてきた。

 しょうがないじゃん!

 思春期迎えた男子高校生は、目と鼻の先でこんなことされたらこうなるだろ!

 

「僕はそうとは思えないかな」

 

 木場!お前に聞いてねえよ!

 つーか、なんで俺の心に思ってることがわかってんだよ!

 

「あらあら、イッセー君は本当にわかりやすい表情を見せますのね」

 

 朱乃さん!?そんなに顔に出やすかったんですか!?

 

 目の前にいるライザーと言う強敵を前に、俺は心が折れかけていた。

 すると、ノックアウト寸前の俺をいいことに、

 

「そこの兵士君はこんなことできまい」

 

 と、見事なドヤ顔で俺を煽ってくる。

 くっそ〜〜〜!

 顔がワル系のイケメンだからサマになってんのも腹が立つ!

 

「こんの焼き鳥野郎!」

 

 俺はとうとう堪忍袋が引き裂かれ、神器を展開した。

 

 俺は今、猛烈に怒っています!

 

 部長!コイツを一発だけでも殴らせてください!

 

 ライザーは俺を「フッ」と鼻で笑った後、眷属の一人を寄越してきた。

 

「ミラ!コイツをやれ!格の違いを見せつけてやれ!」

 

 ライザーに呼ばれたミラと呼ばれる女の子の悪魔は、意気揚々と俺に向かって、獲物である棍を突き出す。

 俺とミラがぶつかろうとし、グレイフィアさんが止めに入ろうとしたその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゾワァァァ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部屋の空気が一瞬にして凍りついた。

 

 それは言ってしまえば、直視できないほどのドス黒い殺意…

 

 俺は足を止め、その場を動くことはできなかった。

 目の前のミラって言う子は、ガクガクと膝が笑って口から泡を吹いており、その後ろのライザーとその眷属たちは顔を青くしていた。

 部長たちもドス黒い殺意に当てられて固まっていたし、あのグレイフィアさんですら冷や汗を流して身構えていた。

 

 油断なくグレイフィアさんが見つめる先にはソファがある。

 その殺気を間近で受けている子猫ちゃんとアーシアは、呼吸を止め、目元には涙を浮かべている。

 

 俺も視線を移すと、それと目があった瞬間、金縛りにでもあったかのように全く体が言うことを聞かなくなり、動けなくなってしまった。

 

 

 

 こちらを見つめる春雄の目は、驚くほど開かれており、結膜は充血し真っ赤に染まり、猛禽類を思わせる瞳は恐ろしく鋭かった。

 あまりの殺意の濃さに、その場にいる者全員は一瞬呼吸を忘れていた。

 

「グレイフィアさん…ライザーに眷属を撤退させてください…」

 

「どういうことですか…?」

 

「今、アイツの中にいる奴が、後ろにいるライザーの眷属を『敵』と認識しています…敵意を見せないため…ここはお引き取りを…」

 

 グレイフィアさんは俺の言葉をすんなりと受け、ライザーに全く同じことを言う。

 初めは全く納得した様子ではなかったが、あの殺意を目の当たりにし、大人しく眷属たちを魔法陣で引かせた。

 

 

「は…春雄…俺たちに戦う気力はねえよ…だから…」

 

 頼むから大人しく引っ込んでくれ…

 

 

 

 春雄は再び眠りにつき、さっきまでの殺意が嘘のように消えると、部室にいた全員が安堵の息を漏らした。

 

 結局ゲームは10日後に行うことが決定されたのだった。

 ライザーは、このゲームが非公式であるため、人間である春雄の参加を求めてきた。

 

 人間に屈することは癪だから。

 

 大体そんな理由だったか?

 だとしてもそれは大人気なさすぎんだろ…

 

 それにしても…あのプライドの高そうなアイツを帰らせるほどの殺意…

 

 本当に…春雄に宿った力の主は何者なんだよ…

 

 

 

「…ふごっ」

 

 息が詰まったかのような間抜けな声を出し、春雄が完全に目を覚ました。

 暴走したこと、そして先程までいたライザーとその眷属に尋常ならざる殺気放ったこともあって、俺とアーシア以外のみんなが身構えた。

 

 対する春雄は目を擦り、一つ大きなあくびをして、俺とアーシアを見ると、

 

「あ、おはようイッセー、アーシア」

 

 普段通り、人畜無害な性格の春雄が帰ってきた。

 今度こそみんなは大きくため息をつき、事が無事丸く収まったことに安堵した。

 

「あれ…そう言えば僕は悪魔になろうとして…あれ…?何も思い出せない…」

 

 どうやら暴走していた時の記憶や、さっき一瞬起きた記憶がないようだ。

 それでいて、気がついた時には部室のソファで寝ているし、全身傷だらけで今は軽くパニック状態だった。

 

「イッセー…僕は…?」

 

 春雄は俺に説明を求めてきた。

 その目は先程までのものとは違って、怯えており、弱々しいものだった…

 

 

 

 

……

 

 

 

………

 

 

 

 

 

…言うべきか?

 それこそ、言ってしまったらアイツが責任感じちまって、俺たちとの間に修復できない程の溝ができちまうんじゃ…

 

「イッセー…頼むから、僕に何があったのか教えてほしい…」

 

 俺の目の前では、真っ直ぐ俺を見つめる春雄がいる。

 その目はよくよく見れば、怯えや不安はあれど、真実を知ろうと覚悟している目でもあった。

 

 俺は振り向いて、オカ研部のみんなを見る。

 みんないつになく真剣で、この先起こりうることへの不安に固唾を飲んでいた。

 

 俺やアーシアはもちろんだが、みんなもコイツが居なくなって欲しくねえんだ。

 でなきゃ部長たちはあそこまで必死になって考えたりもしないし、失敗したとは言え、悪魔になると言った時には喜んでた。

 

 だからこそなんだろうな。

 ここで下手に誤魔化すよりは、しっかりとありのままを伝えた方がアイツのためだな。

 

 

 

 

……

 

 

 

………

 

 俺はとりあえず、今まで起こった全てを、春雄が納得するまで説明した。

 

「…とまぁ…こんな感じだ」

 

 一通り話し終え、改めて春雄の方を見る。

 視線は下がり、やや俯いていた。

 

(そりゃショックだろうな…自分の知らねえところで、力が影響してんだからな…)

 

 フォローに回ろうとする一誠とアーシアだったが、意外にも春雄からは不安がとれた、安堵した和らいだ表情になっていた。

 

 少し気になって俺は春雄に聞いてみた。

 

「なんだ…もっとその…ショックを受けると思ったんだが…」

 

「まぁそれなりに衝撃は受けたけど…みんなに危害が及んでなかったから安心したよ」

 

 寂しさも感じさせる笑みからは、心から安心したのが伝わってくる。

 

 そうなんだよ。

 これが本来の春雄なんだよな。

 普段、奇怪千万・空前絶後な行動が目立つ、学園始まって以来のトラブルメーカーであり、2大お嬢様だろうが、学園の王子だろうが、マスコット的人気を誇る後輩すら知らないほど他人にも一切興味を示さない奴だが、他人を思いやる気持ちは本物だ。

 仲間が苦しい時は手を差し伸べようとするし、いじめられていたら相手がどんな奴だろうと助けに入るし、辛いことがあったら一緒に悲しんでくれるし…

 

「それじゃ…これっきりだな…」

 

「春雄…」

 

「何?イッセー…まさか僕がここに居て良いとでも?」

 

 春雄は自嘲するように儚く笑った。

 

「こんな危ない奴が居ていいわけないだろ…今日まで散々迷惑かけてきたんだし…それにいろんな勢力から目をつけられてるんでしょ?そんな奴の近くにいたら…」

 

 そう話す春雄は再び怯え、その声は震えていた。

 

「今度こそ…僕が…イッセーたちに…」

 

 得体の知れない、他を圧倒する力が俺たちオカルト研究部に向くことがないとは言い切れない。

 

 でも、俺が聞きたいのはそれじゃねえ。

 

「春雄、お前はどうしたいんだ?」

 

「…え」

 

「お前の本心を聞かせてくれ。お前は俺たちと一緒に居たいのか、そうじゃねえのか…」

 

 俺は部長たちに視線を送った。

 部長たちは答えは決まっているようだ。

 あとはお前だけだ。

 

「僕は…もう少しみんなと居たいかな…悪魔を拒絶し続けた僕を、ずっと受け入れようとしてくれた…こんないい人、他にいないよ」

 

 それじゃ決まりだ。

 

「ようこそ、オカルト研究部へ」

 

「その言葉を待っていましたわ」

 

「やっと僕たちを受け入れてくれたようだね。これで気兼ねなく君とも部活を楽しめそうだよ」

 

 部長も朱乃さんも木場も、春雄を歓迎していた。

 ここまでおよそ1ヶ月近く、漸く俺たちの努力が実を結んだって感じだな。

 

「でも…いいんですか?また迷惑をかけるかもしれないんですよ…?」

 

「…大丈夫です。みんなが居ますから…」

 

「私たちにならいくらでも…迷惑をかけていいんですよ」

 

 子猫ちゃんとアーシアが春雄に答え、俺は彼女たちに続いてハッキリと言う。

 

「だって俺たち、仲間だろ?友達だろ?そして俺やアーシアに至っては家族だろ?親しい奴とは、迷惑かけあってもいいんだよ」

 

 そう言って、俺は春雄の肩を叩いた。

 その時の春雄の嬉しそうな顔を見て、そしてみんな一つになって笑いあって、ようやくオカルト研究部として前に踏み出せることに、俺は人生でもトップに来るくらい嬉しかった。

 

 コイツの苦労も、部長たちの努力も知ってるから…

 

 俺は今回何ができたかわからない。

 でも俺には今日から部員の中に、大切な兄弟であり、俺の目の前に立つ高い壁、超えなくちゃならない目標となる存在ができた。

 

 とりあえず、次のゲームまでに、俺は強くなる!

 今すぐにコイツを、あの力を超えられるとは思ってねえけど、諦めたりはしないぜ!

 兄弟として、ライバルとして、俺はこの先待ち受ける困難に抗ってみせる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つーか、イッセー。レーティングゲームって何?」

 

「言い忘れてたわ。実はな…」

 

 そして俺が簡単にことの顛末まで言うと、春雄はちょいとばかし嫌な顔していた。

 戦いが、争いが嫌なのはわかるが、頼む!

 俺たちの主人があの野郎に取られれば、今後部長は学園に来れねえし、部も無くなっちまう!

 女を玩具みてえに弄ぶアイツだ!

 きっと部長だけでなく、朱乃さんにアーシア、子猫ちゃんまで手を出すかもしれない。

 

 こんな感じの内容のことを話せば、

 

「僕を受け入れてくれた矢先、そんなことが起きてお別れなんて…ライザーマジ許さん。絶対にそのライザーとか言う焼き鳥は殺す(倒す)

 

…まだまだこの先が心配だな…

 

 

 

 

 

 




個人的にライザーはそこまで悪い奴に見えないんですよね。

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