黒き王の原罪   作:イテマエ

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 今回は何人かのハイスクールddの登場人物の設定を変えました。
 と言っても、大幅な変更はありません。

 今回、ゴジラシリーズに登場した人物に関係した人が出ます。
 


第22話 安らぎを

 ライザーとの戦いを経て大きく成長した、リアス率いるグレモリー眷属。

 そして、春雄の内に秘められた力の主の恐ろしさも垣間見えた。

 

「またあの夢…」

 

 その日を皮切りに、力の主の夢をよく見る春雄は、その中で見る光景に恐ろしさを感じてしまう。

 

 いつか自分もああなってしまうのか…

 

 ありとあらゆるものを破壊し尽くす「荒ぶる神」になり、大切なものまでその手にかけてしまうのだろうか。

 

 

「…とまあ、こんな感じです」

 

 俺は兵藤一誠。

 放課後の活動場所である旧校舎は、使い魔による清掃が行われているので、今日は俺の家で会議でした。

 

 いつの間にか俺のアルバム鑑賞会に変わり、恥ずかしい過去がみんなに晒されたわけだが、とある写真を見てから木場の様子が大きく変わった。

 

 春雄と言い、木場と言い、オカ研の男子はみんな大丈夫か?

 

 とりあえず俺は、木場の様子を気にかける傍ら、話に上がった俺の父さんについて話していたわけで。

 

「そう…家族との時間のために…」

 

「ちょっと恥ずかしいすけど、嬉しいんですよね」

 

 俺の父親、兵藤五郎はこの駒王町から離れたところにある、日本の雀路羅(ジャンジラ)市の原子力発電所に勤めていた。

 どうやら俺が生まれる前から働いていたそうで、それと同時にアメリカのチームと共同してとある研究も行っていたらしい。

 そのことを知ったのは、俺と春雄が中学校を卒業する間近、父さんが今の仕事を辞めると打ち明けた時だった。

 その時、俺も春雄も進路は決まっており、二人揃って私立高校へ行こうとしていたので、学費の面で不安に駆られたが、

 

『なーに、心配するな。大した研究じゃないし、次の就職先でも大丈夫なはずだ。それに貯蓄だってあるんだしな。あと次の職場は家から近いし、休みも決まって貰えるからね』

 

 『楽しみだよ』と笑いながら話す父さんが、全く気にする素振りを見せないことに、俺たちは強がってるんじゃないかとも思ったっけ。

 すると父さんは雰囲気を改めて告げた。

 

『いやなイッセー、春雄。父さんはな、家族と過ごせる時間の方が何より大切なんだ』

 

 そう言う父さんの顔は忘れられない。

 

 原子力発電で働きながら研究に没頭する父さんの生活は、毎日忙しそうだった。

 それこそ受験生で勉強に追われる俺より何倍も。

 

 そして何より危険なのだ。

 歴史の授業でチラリと教わった、世界で起きた原発事故。

 初めて聞かされた時は、そこに父さんが勤めていることもあって心臓を鷲掴みにでもされた気分がした。

 確かにあれだけのエネルギーと電力を生み出せるから便利かもしれないけど、万が一のことが起きたら途轍もない被害が出てしまう…

 

 そしてそこで働き、研究もする父さん…

 

「『家族と過ごしたい』…その思いは生半可なものじゃなかったでしょうね…」

 

「こうして楽しい生活ができるのも、お父様のおかげです!」

 

「『家族のために』…素敵なお父様ですわね…」

 

「…カッコいいです」

 

 良かったな親父!

 お世辞にもめちゃくちゃカッコいいとは言えない親父が賞賛の嵐だぜ!

 とは言う俺も、親父は素直にすげえと思ってるし、尊敬もしてるし、憧れてもいる。

 「カッコいい」とは見るものを魅了する者。

 そしてそのカッコいいは様々。

 

(親父もカッコいいんだな…)

 

 

 時間は過ぎ、俺とアーシア、部長はみんなを見送った。

 

 結局木場は考え込んだままだった…

 何も起こらなければいいが、そんな俺の不安を掻き立てるように、吹き出した風が草木を揺らしてザワザワと音を立てる。

 

「みんな帰っちゃったの?」

 

 すると母さんが外へ出てきた。と、同時に家の中から美味しそうな匂いが漂う。

 

「はい、お母様。今日は私の我儘に付き合っていただきありがとうございました」

 

「もう、リアスさんったら、一緒に暮らしているんですから、そんなかしこまらなくてもいいのよ」

 

 ホント部長って礼儀正しいよな。

 作法がなってる。

 やっぱり貴族出身でかなり仕込まれたんだろうな。

 でも部長は一通り家事をこなせるところを見て、ただ使用人に頼り切ったお嬢様の生活を送っていたわけでもなさそうだ。

 

「春雄さん…呼んできますか?」

 

「そうだな、一応食べれそうか聞いておくか」

 

 部長が母さんと一緒に食事の準備をしてるので、俺とアーシアで春雄の部屋の前に向かう。

 

「おい、春雄?大丈夫か?」

 

 ドアをノックしてとりあえず様子を伺うが、返事は返ってこない。

 

「あの、ご飯は食べられますでしょうか?」

 

 アーシアの問いにも、帰ってくるのは静寂のみ。

 寝てるのか…?

 

 

 

…ヒュウゥゥ…

 

 

 

 風の音…?

 窓が開いてるのか?

 

 少し雲行きが怪しくなってきてぞ。

 

「春雄、入るぞ!」

 

 バッとドアを開けると、そこには春雄の姿はなく、開けられた窓から入ってくる風が、カーテンを大きく揺らしていた

 

 どこ行ったんだ…

 俺たちが気がつかないうちに外へ出たか?

 いや、それなら悪魔である部長たちはもちろん気付くだろうし、まず外に行くには一つの玄関から出るしかない。

 

 母さんは料理をしていたらしいけど、流石に気付いてもおかしくないよね。

 

 様々な思考を巡らせ、窓の方を見る。

 まさか…

 

 

 僕は兵藤春雄。

 今僕はオカルト研究室でとある人物と目を合わせている。

 

 その人の顔は、整っていつつも感情が読めなすぎるせいもあり、この部室の雰囲気と相まって不気味さを醸し出していた。

 

「あなただったんですね…『裁定者』」

 

「ああそうだ」

 

 見つめる先にいる、僕の尊敬すべき人、神永先生は悪びれるつもりもなく言葉を発した。 

 

「これでも私はうまく隠したつもりだったが…ちなみになぜわかった?」

 

 今度は僕が質問された。

 

「…『これだ!』って言うものはないです。ただ、人の中にいて、あまりにも不自然に感じたのと、以前公園で出会った裁定者とあなたから同じ気配…そして何より同じ匂いがしたんです…」

 

 正直に僕は答えると、神永先生は驚く素振りを一切見せず、むしろ納得したような顔をしていた。

 

「やはり『匂い』と言うのは残りやすく、証拠として最適か…

 大方君の察しどおり、私は普通の人間ではない。強いて言えば、私の能力で体の組織を限りなく人に寄せているに過ぎない」

 

「…先生は…宇宙人ですか?」

 

「ああ」

 

 僕が恐る恐る聞いた質問に、神永先生は驚くほどキッパリと即答した。

 

「なぜ…ここに…?」

 

「なるべく簡潔に言おう。私の母性はM78星雲の『光の国』だ。その星では、ありとあらゆる星、もっと広く言えば銀河、さらには別宇宙などを監視し、知的生命体の裁定を行なっている」

 

 僕はスケールの大きさに頭がついていけない。

 神永先生は混乱する僕に構うことなく話を続けていた。

 

 宇宙は一つではなく、枝分かれする木のようにいくつも存在すると言う。

 その様々な宇宙には、人間のような知的生命がおり、彼らが将来光の国の害になる者に値するかどうか裁定し、適切なしかるべき処理を行うのだという。

 

 恐ろしいのは、その種族は光の国に「害する者」と判断した場合、『天体制圧用最終兵器』によって、その「害する者」がいる宇宙ごと存在を滅却するという…

 

「なんて…苛烈な種族なんだ…知的生命体なんですよ!?話し合いとかは…」

 

「それを試みて尚危険と判断されれば、だ。事が重大すぎるゆえ、判断を誤らないためにも、我々には長く監視し、なるべく危険な道へと進ませないようにする義務がある」

 

 すると神永先生は、暗くなって星が見え始めてくるだろう空を見上げた。

 

「以前までなら、私は掟通りに行動を起こし、早い段階でその芽を摘むため、仲間のゾーフィと共にそれを行使していただろう」

 

 神永先生から不穏な言葉が溢れでる。

 しかし、次の瞬間には雰囲気が変わった。

 

「私は初めて人間と接触した時、人の持つ『心』に驚かされた。そしてそれは、いい意味でも悪い意味でも人を大きく変える。

 私が見てきたのは数多くの後者だ。だが少しでも良い方向へと向かわせようとする、人間の諦めない小さな努力は時に大きな力を持つことも知った」

 

 そう語る神永先生は無表情なのは変わらないけど、どこか優しさを感じさせた。

 彼の真っ直ぐな目は空の何を捉えているのかわからないけど、どこか深い意味があると思った。

 遠く離れた誰かに想いを届けるように…

 

「今の私がこうしていられるのも、あの時出会った仲間のおかげだ」

 

 

 思い起こされるのは、共に破滅する運命に立ち向かった仲間たちだった。

 

 滅亡が迫るとわかっていつつも、いつもと変わらず自分のやるべき仕事をこなし、希望を見出そうとする女性。

 

 一度はその絶望に押しつぶされ、自分が積み重ねてきた努力も、経歴も役に立たないと嘆いたが、世界中の天才と知識を結集させ、破滅回避の糸口を見つけた若い男性。

 

 チームをまとめる立場にあり、時として非情な選択を迫られ、最後には滅亡を前に「何もするな」と命令され、無力感に支配されても、部下たちのことは見捨てなかったリーダー的な男性。

 

 身勝手な行動をとる私に叱責したり、時に熱くなっ声を荒げることもあったが、それでも最後まで仲間として、バディとして信じてくれた女性。

 

 そして…

 

 

 

 私と一体化し、人間とはなんたるかを教え、今の私を形成してくれた友人。

 

 

 

 私は彼が信じたように、私も信じてみたい。

 人間が我々に可能性を提示し破滅を乗り越えたように、外来種たちが可能性を見出し、全員が信じられるような未来を…

 

 

「私はこの星にいる外来種、悪魔や天使、堕天使の調査を任された。現段階では特に危険性はないため現状維持を続けるつもりだ。

 しかし、この地球に大きく影響を及ぼすつもりなら私も実力行使を辞さないつもりだ。

 そして影響が宇宙にまで大きく及ぶのだとしたら…」

 

「最終兵器で滅却するんですか…?」

 

 僕の問いに、神永先生は頷いた。

 そんな…じゃあ人間ではなくなったイッセーは?アーシアは?

 心優しい悪魔の部長たちは?

 

 みんな殺されてしまうのか?

 

 そんなの…あんまりだ。

 そんなことさせたくない!

 

 僕は気がつけば、手や足を変形させ、尻尾も生やして敵意を向ける。

 しかし、神永先生は全く反応を示さず、ただこちらを黙って見つめてきた。

 

 ああ…僕が憧れた真っ直ぐな目…

 流星の目だ…

 

「春雄君」

 

 神永はしばらくの沈黙の後、口を開いた。

 

「私も知っている。君の兄妹や仲間、そして彼らの主人の悪魔が『可能性』を持っていることを。

 そして同じような心を堕天使や天使にもきっとあるだろう。

 だから私はまだ見守りたい。彼らがこれから歩む道を。より良い未来を切り開こうとする力を信じたい」

 

「だから…『裁定者』としてずっと冥界の調査を…」

 

 すると、神永先生はぎこちなく微笑んで頷いた。

 恐らく今相対する宇宙人は慣れてないんだろう。

 

「私はこの世界の人も、生物ももちろん、外来種の悪魔たちも守りたいと思っている…今失くすにはあまりにも惜しい存在だ」

 

 そう言って締め括った神永先生、ようやく人らしい顔を見れた気がした。

 

「…!勘付かれたか…」

 

「え?」

 

 次の瞬間には、そこから神永先生の姿はなくなっていた。

 先程まで感じていた彼の気配は、光の点滅のように消え失せた。

 ただ、その場に匂いだけ残して…

 

「春雄!」

 

 そして、神永先生と入れ替わるように、イッセーとアーシア、部長が慌てた様子で入ってきた。

 

「なんでここに居るんだよ?」

 

 額の汗を拭いながらイッセーが問う。

 

「…いや、ただ忘れ物して…それを取りに…」

 

 その場しのぎの苦しい嘘をつく。

 もちろん忘れ物なんてない。

 

「良かったです〜急に居なくなってしまいましたから…」

 

「本当ね。旧校舎にいる使い魔たちに聞いてみたけれど連絡はなかったし…でも、何より無事で良かったわ」

 

「全く…焦らせんなよ。ただでさえお前、調子悪かったらしいからな」

 

 ああ…僕はこんなに心配されてるのか…

 そして、彼らを裏切るように僕は嘘をつく。

 

(ホント…馬鹿だ…)

 

 みんなで家に帰ったあと、すぐご飯を食べた僕は、風呂にすら入らずそのまま寝た。

 あれだけ好きだった風呂に入る気すら起きないのは自分でも意外だった。

 

 きっと、ここ最近いろんなことが起きすぎて、寝目覚めも悪く、体以上に精神が疲弊していたんだろう。

 

(明日の朝にでもシャワーを浴びるか…)

 

 

 俺の朝は早い。

 堕天使レイナーレとの戦い、ライザーさんとの戦い、それはどれも神器のおかげだ。

 俺自身がもっと強くなって、神器も使いこなせるようになって、みんなを守るためにも日々修行だ!

 

 しかし、慣れたとはいえ朝5時スタートの特訓はマジでキツい。

 ただでさえ寝起きで頭も体の動きも儘ならないのに、付き合ってくれる部長のしごきはまさに悪魔…いや、確かに悪魔だけれども!

 腕立て、腹筋、背筋、スクワット、10キロランニング…

 悪魔になって多少は丈夫になっても辛いものは辛い。

 

 加えて、普通に授業もあるんだ。

 朝の特訓の疲れがまわり、1時間目から超強力な睡魔が俺を襲う。

 松田、元浜といろいろやらかしてもなお、こうして学校生活を送れるのは、3人して授業は真面目に取り組んでるからだ。

 

 だからこそ、居眠りは厳禁。

 寝てしまうものなら、問答無用で評価は最低…

 学業でも普段の生活でもダメと判断されれば…

 

 

 

『退学』

 

 

 

 流石にそれだけは避けたい。

 何のために勉強したんだ俺は!

 まだ俺は学園でハーレムを作ってないし、このまま卒業できればエスカレーター式で大学にも行ける!

 あれだけ高い金払ったからには絶対行かねえとな!

 

 何より、俺と春雄を送り出した父さんと母さんの期待を裏切りたくはねえ!

 

 

 

 何とか俺は睡魔を耐え切り、ようやく昼休みを迎えた。

 ふぅ…何度かコクコクといったが大丈夫…なはず。

 

「にしてもイッセー、大丈夫か?」

 

「いくら眠気を吹き飛ばすためとはいえ、それはあんまりじゃねえか?」

 

 松田と元浜がやや引き気味に、包帯でぐるぐる巻きにされた俺の左手の甲を見る。そこは俺がシャーペンをブッ刺したところだ。

 眠すぎるあまり俺は痛みで体を起こそうとしたが、4時間目は「チクッ」だけでは足りず、勢いよく「グチュッ」となるほどの威力が必要だった。

 

「ま、これで居眠り回避で退学回避だからな。安いもんだぜ」

 

 そして、その後も適当な雑談をしながら飯を食う。

 

 なんだろ、ごくごく当たり前なこの時間が、今ではすげえ心に染みるぜ。

 

「そういや、オカ研って球技大会出るんだよな?」

 

「お?まあそうだな」

 

 俺たちの学園では年一回の球技大会がある。

 この時期になると、クラス代表、部活代表が放課後に練習したりする。

 

 ちなみに部長はかなり熱を注いでいた。

 ライザーさんとのあの一件が、部長の勝負心を焚きつけた。

 

 以後、部長はボードゲームだろうが、こういった学校行事にも全力で取り組むつもりらしい。

 まぁ俺も体動かすの好きだからいいけど。

 

「オカ研の奴らがボール競技かよ…てか、去年も運動部相手に勝ってたよな」

 

 そりゃそうだ元浜。

 だって、オカルト研究部は人間で構成されてねえもの。

 

 流石に部長は「力を調整するわ」と言ってたけど、あれだけ熱くなってると、本番が来た時ついリミッターを外しそうで怖い。

 

「クラスだったら俺たち負けねぇけどな…」

 

 松田の呟き、単なる自惚れではなく、実際そうだと思える。

 俺のクラスには結構運動できる奴がいたりする。

 

 俺はもともと運動神経は良かったほうだし、悪魔になったおかげでさらに磨きがかかったと言える。

 そして、そこまで運動は得意ではないアーシアも、悪魔になっただけあり、平均よりは少し上くらいの実力を持ったりする。

 なんなら、松田だって中学まではバリバリの運動部で、俺以上にスポーツができていた。

 そんな俺らに付き合って遊んでくれた元浜も、体力はねえがそれなりにこなせるし、何より…

 

「また春雄と同じクラスで良かったぜ」

 

 そう、去年はコイツのおかげと言っても過言じゃなかった。

 球技大会一年の部では、コイツが配点の高い競技で無双してくれた。

 

 今年もこのメンバーなら…と思ってたが…

 

「そう言うわけにもいかないかもな…」

 

「?どういうことだよイッセー」

 

「あの時、春雄ばっかり目がいってたが、他にも()()()()がいたから勝てただろ…」

 

 すると、俺の示す「アイツら」がわかった瞬間、松田も元浜も顔から難色が窺えた。

 

 俺ら4人は中学からの付き合いだが、高校からできた友人も結構いる。

 揃いも揃って曲者だが…

 

「権藤さんか…」

 

 権藤さん、権藤(トオル)は1年の頃同じクラスメイトだった。

 陸上自衛隊の父譲りのガサツな性格で、「怪我したら唾でもつけときゃ治る!」とか古くさい昭和の考えが抜けない人だ、それもあってみんなは「権藤さん」と呼ぶ。

 しかし冷静な判断力と、思い切った行動をとって翻弄できる度胸を持ち合わせており、勝負どころでは異常に強さを見せた。

 どうやら、「薬は注射より飲むに限る」らしい…

 

「あとアイツも…」

 

 すると、ちょうど噂していた本人がやって来た。

 

「ここにいたんだな、お前ら」

 

 声の方を見ると、そこにはスラッとした男子生徒がいた。

 

「おお、義人じゃねえか」

 

「なんか久しぶりだな」

 

「元気してたか?」

 

「ああ、お陰様でな。でも噂に聞く君たちほどでもないさ」

 

 憎まれ口を叩けるほど俺たちと親しいこの男子生徒は、金子義人(ヨシト)

 こいつ曰く、「機械の言葉がわかり、声を聞ける」そうだ。

 そう豪語するほど機械に詳しく、一度でも世界に入り込めば周りのことは見えなくなる。そしてよく春雄とコンビを組んで何か作っては先生を困らせていた。

 顔を見ればカッコいい部類に間違いなく入るのに、機械オタクと春雄としでかした「失火罪未遂」のせいで関わりづらい残念なイケメンとなってしまった。

 

「今回は君たちとは敵同士だな」

 

「らしいな」

 

 イケメンに恨みを持つ松田と元浜が、まともに話せる唯一の人でもある義人は3人で軽く拳をぶつけ合っていた。

 

 その後、久しぶりの友人との会話に花を咲かせた。

 

 

 

 昼休みも終わりになろうとした時、

 

「そう言えばお前ら『帰宅部連合』を作って部活代表にエントリーするんだろ?」

 

 すると、松田、元浜、義人は自信満々に頷いた。

 

「いや、元浜、義人はともかく松田、お前は写真部だろ?」

 

「いや、あの部の連中が競技に出ると思うか?どうせ競技の思い出でしかない写真を撮るんだ。男のロマンを追求できねえくらいなら、俺は競技に参加する!」

 

「ちなみに、権藤さんとかも参加してくれるらしいから」

 

「あとは…」

 

 マジか…

 オカ研最大の障害となるのは、「帰宅部」になるのかよ…

 

 

 放課後、俺はアーシアと部活に向かおうとする。

 その時、春雄にも声をかけようとしたが、松田、元浜と会話して、自然と笑みが溢れてる様子を見て、そのままにしておくことにした。

 

(ずっとアイツは何か狭い思いをしてきたんだろうな…)

 

 周りのほとんどが悪魔で、イマイチ心が休めなかったアイツには、やはり気兼ねなく接してくれるアイツらが必要だったのかもな。

 

(今度、アイツらには何か奢ってやるか…)

 

 

「ここが…私の生まれ育った駒王町!帰ってきたんだわ!」

 

「…おい、我々は任務で来ているのだぞ。あまり浮かれるな」

 

「わかってるわよ」

 

 駒王町に白いローブのような衣服を纏う二人の少女がいた。

 そしてその二人からは抑えきれないほどの聖なる力が溢れていたが、これに気づくものはいない。

 この段階で気付いたものは…

 

「…あれが教会から派遣された者たちか…」

 

 物陰からひっそりと見つめる裁定者。

 

 そして…

 

「…!」

 

「そうなんだよ、でさ、アイツがいきなり…っておい、どうした春雄?」

 

「え?いや、なんでもない…」

 

 春雄だった。

 ここ最近鳴りを潜めていた「黒い主」が、春雄の中で低く唸った。

 

 

 

 




 登場人物の紹介はそのうちやろうと思います。
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