じんせい詰め合わせ   作:湯切

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ネタ募集で貰っていた、要約するとセキとのイチャイチャ話です。

以下、原文
「もっとセキさんとのイチャイチャを…」
「セキちゃんとのデートをですね希望します!中忍試験後にそれとなく理由(忍具が前の試験の時に使い切ったとか、任務で必要になったとか)でスバルを呼び出して、普通に買い物してイチャイチャして、甘味処に寄ってイチャイチャして、ツーショット撮ってイチャイチャしてて欲しい。スバルは上のことをデートって認識してなくて、別れ際に今日のデート楽しかったよまたね!って言われた後にこれってデートだったのか!ってなって顔真っ赤にして欲しい」

もう半年前らしいです。送ってくれてありがとう…!書くの楽しかったです。イチャイチャしてるかはどうかは当社比。



デート日和

 中忍試験が終わり、モズから「休暇延長申請はちゃんと通ってるから」というありがた〜いお言葉と共に「オレはこれからお前の監視」と死刑宣告を受けた。

 いくらなんでも休暇中24時間体制ではないだろうが、常に見られていると思っていた方がいい。なんて憂鬱なんだ。

 

 

 翌日。いつものように自室で朝を迎えた俺は、ふああと欠伸しながら上半身をぐいぐい伸ばした。

 これもモズに見られてるのか? こういうのならいくら見られてもいい。ほらほら、好きなだけ見ていけよ。なんなら写真を撮ってくれても構わない。

 

 洗面所で顔を洗って歯を磨き、朝食にはまだ早いからと無駄に広い庭で手裏剣術の修行をした。

 例えばこういうのが写真に撮られてダンゾウに報告されたら「休暇中もきちんと修行に励んで素晴らしい奴だ」ってなったりする? ならない? アイツの自室の壁全体を俺の修行中の写真で埋めてやろうか。

 

 

 あー良い汗かいた。

 肩にかけていたタオルで汗を拭い、自室に戻って着替える。背中にうちわマークが入ったパーカーに、七分丈のズボン。いつものスタイルだ。

 背中のマークさえなければなあ。俺はシンプルなのが好きなんだよ。

 

「あら、スバル。こんなところにいたのね」

 

 台所ではなく、玄関の方角からやってきた母さんがにっこりと笑う。なんだか妙に機嫌がいい。いいことでもあったんだろうか。

 

 母さんはもう一度「ふふっ」と意味深に笑って、首を傾げた俺に言った。

 

「今呼びに行こうと思っていたの――女の子が来てるわよ」

 

 

 

 癖のない真っ黒な髪が、少女の肩先でさらりと揺れた。

 

 母さんに言われるまま玄関で靴を履き、こんな朝っぱらからなんだと思いながら外に出た俺は、首後ろに手をやった状態で……固まった。思考と共に。

 

 少女はふわりと綺麗な笑みを浮かべる。

 

「ごめんね。こんな朝早くに非常識だった」

「…………」

 

 さっきの愚痴を読まれてた。

 

「近所のうちはの女の子が来たと思ったの? ……その子、スバルに会いにくるんだね」

「…………」

 

 いや、その子が俺を訪ねて家まで来たことはないけど……。消去法でその子かなって。

 なんだか言い訳っぽくなってしまった。

 

 少女――セキは「ふーん」と目を細め、やがて俺が困惑してることに気づいたのか、申し訳なさそうな顔をする。

 

「……えっと、あのね。今日ここに来たのは」

 

 よく見てみれば、セキは私服ではなく忍装束だった。中忍試験の時とは少し違うデザインだ。

 

「これは、違うんだ。何を着ていけばいいのか、分からなくて」

 

 あるある。俺も久しぶりの休日を満喫してると、いつもの癖で忍装束身につけちゃってたり、どうせこの後修行するからこっちでいいやーってなったり。やんなっちゃうよな。

 

 セキは心を読めるから不要かと思ったが、一応両手を持ち上げる。

 

《しゅぎょうの さそい》

「……そう。そうだよ。スバルがいつまで休みか聞きそびれていたから。中忍試験のリベンジもしたかったし」

 

 だからこんな早くに来てしまったのだと、セキはもう一度謝った。俺はふるふると首を横に振る。気にしなくていい。

 

 どう答えたものか。悩んでいると、後ろからパタパタとスリッパで歩いた時の音が聞こえてくる。母さんだ。

 

「あなた、朝ご飯は食べたの?」

「えっ……はい……いえ、まだです」

「それならスバルと一緒に食べてから行きなさい。この子、さっきまでお稽古しててまだなのよ」

 

 セキが助けを求めるように俺を見る。

 

「スバルも。お腹すいたでしょう?」

《うん》

「二人とも手を洗ってから居間にいらっしゃい」

「は、はい!」

 

 セキの声がいつになく跳ねている。緊張しているようだ。

 

《こっち》

 

 玄関に入って慌てて靴を脱いでいるセキに手を差し出す。

 セキは「えっ」という顔をして、俺の顔と差し出した手のひらを交互に見た。……どういう反応?

 

《だんさ あぶないから》

「うん……」

 

 俺の手のひらの上に自分の手を重ねてきたセキ。俺より小さな手をしっかり握り、そのまま洗面所へと向かった。

 

 

 

「セキちゃんって呼んでもいいかしら?」

「ええ、嬉しいです」

「アカデミーの同級生だったのね。この子、自分の話は全くしないから」

「…………」

 

 なんだろう、この疎外感。ただただ居心地が悪い。落ち着かないっていうか。

 母さんはセキにご飯をよそいながらアカデミー時代の俺の話を聞きたがるし、セキはニコニコとそれに対応している。

 

「もしも嫌な気持ちにさせてしまったらごめんなさいね。スバルは声を出せないし、感情を表に出さないでしょう? だからセキちゃんが羨ましいわ」

「……スバルも同じようなことを言っていました。自分の気持ちを汲み取れる私が、いいなって」

「まあ。……ねえ、今はどんな声が聞こえてるの?」

 

 母さんとセキが、黙々とご飯を口にしている俺を見た。やめてくれ。

 

「……これ以上はやめた方が良いかと」

「残念ね」

 

 母さんが小さくため息をついた。セキに良心が残ってて良かったよ。

 

 

 

「スバルのお母さん、すごく優しいし、ご飯も美味しかった」

「…………」

「温かい人だね」

 

 朝ごはんを食べ終わって家を出る。

 セキの横顔は少し寂しそうで、何かを思い出してるようにも見えた。

 

《どこをつかう》

 

 この辺りだと、新しいうちはの演習場がある。修行するならうってつけだ。

 しかし、セキは「あの……」と言いづらそうに視線を逸らした。

 

「修行……のつもりで来たんだけど、クナイも手裏剣も持ってきてなくて」

《むこうにある もんだいない》

「……ちょうど新しいのが欲しいと思ってたんだ。一緒に選んでくれないかな?」

 

 そういうことなら。クナイも手裏剣も自分に合ったものを使った方がいいよな。

 

 

 

 うちはの商店街で買おうと思っていたが、悪い意味で有名な俺と、覚方一族唯一の生き残りであるセキという組み合わせは目立った。とにかく目立った。ので、こっちの方が品揃えもいいだろうということで、木ノ葉の大通りにまで足を伸ばしていた。

 

 ここはいつも人が多い。途中何度か分断されそうになったからか、セキは俺の服の裾を掴んだ状態で隣を歩いている。

 

「スバルはいつもどこで忍具を買ってるの?」

 

 根に所属してからは、必要な武器などは全て支給されている。自分で買ったことはほとんどなかったはずだ。

 

「そうなんだね。あそこ見ていい?」

 

 セキが指差した先には、忍道具専門店。中に入ってみると、テーブルや壁中に忍具が並べられたり立てかけられている。すごい数だ。

 

「……これだけあると選ぶのも大変だ」

 

 セキの言葉に同意し、適当に目についた手裏剣を手に取る。普段俺が使っている物より小さくて軽い。セキも同じものを手に取って「軽くて投げやすそう」と言った。

 

「そこで試し投げできるよ」

 

 話を聞いていた店主が人の良さそうな笑みを浮かべながら、自分の真後ろにある的を指差した。

 

「どれ、当てやすいように移動させて――」

 

 店主が椅子から立ち上がった瞬間、俺とセキが同時に手裏剣を投げた。

 

 二つの手裏剣はどちらも的の中心に突き刺さり、なぜか店主のメガネがずり落ちた。

 ……おかしいな、そっちには掠りもしてなかったはずなのに。

 

「私の勝ち」

「…………」

 

 悔しいことに、セキの投げた手裏剣の方が中心に近かった。

 

 

 

「買い物に付き合ってくれたお礼をさせてよ」

 

 さあ、今度こそ修行タイムだ! 手裏剣勝負のリベンジだ! と思っていたら、セキが先手を打ってきた。

 

《きにしなくていい》

「私が気にする。……それに、甘いもの食べたい気分なんだよね」

「…………」

 

 甘いもの。

 

「この間新しくできた甘味処知ってる? 柏餅が美味しいんだって」

 

 柏餅。

 

「あと、苺大福も。どうかな」

 

 俺は迷うことなく大きく頷いた。

 

 

 

 新しくできたばかりで話題の店だから少し並んだが、その間にセキとアカデミー時代の話や、最近の手裏剣術についての話をしていたから退屈ではなかった。

 

 あ〜これこれ。生き返る。甘味こそ人類の救世主だろ。我等友情永久ナリ。ズッ友でいて。

 

 柏餅と苺大福、さらには栗饅頭を平らげた俺は、ズズズ……と温かいお茶を啜っていた。

 老後の爺さんみたいだという自覚しかない。俺は一向に構わない。

 

「おいしかったね」

 

 セキの言葉に何度もこくこくと頷く。セキは頬杖をつきながら、どこかうっとりとした表情でこちらを見ている。

 

「うん? ああ……スバルが幸せそうに食べてたから、私も幸せだなーって。いろいろ噛みしめてた」

「…………」

 

 完全に油断してた。セキはこれだから。

 

 

 

 いい感じに腹が膨れたところで、やっと修行の時間だ。たらふく食べてしまった罪悪感をここで拭い去りたい所存。

 

「スバル! 昼市やってるんだって。見に行こうよ」

「…………」

 

 セキが俺の腕を掴んで駆け出す。

 そこには様々な屋台が立ち並び、食べ物だけではなく手作りのアクセサリーや織物、さらには既製品まで幅広く売られていた。

 

 セキは早速アイスキャンディーを二つ買って、片方を俺にくれた。まだ何も考えていなかったはずなのに、俺の好みの味を選んでくれていて不思議だった。

 

 

「何を見てるの? ……かんざし?」

 

 アイスを食べ終わって、ぶらりぶらりと屋台を見て回っていた。俺は店主にお金を払って、包装を断った簪を受け取る。

 

 俺の心を読んだんだろう。何かを言いかけたセキが口を噤む。

 それなら話は早い。買ったばかりの簪をセキに差し出す。

 彼女は目をまん丸にさせ、何度か口を開こうとしては言葉にならなかったようで、もどかしそうにしていた。

 

「……スバルは、私に似合うと思って選んでくれたんだよね」

 

 セキがそっと俺の手のひらから簪を受け取る。その際に、ぽたりと簪に何かが落ちた。

 雨でも降ってきたのか? 思わず顔を上げて、驚いた。

 

「…………ありがとう」

 

 セキは泣いていた。

 

「嬉し泣きだから誤解しないで。ほら、前にもあったでしょ? 涙腺が緩いんだよ」

「…………」

 

 ラーメン屋でのことを思い出す。どうやらデザインが気に入らなかったとか、俺のことが嫌いだとかではないようで良かったけど……。

 

 セキは指で涙を拭い、くるっとこちらに背を向けた。自分の後ろ髪を手のひらで掴み、隣に簪を添えてみせた。

 

「どうかな?」

 

 俺は頷いた。その簪を選んだ自分のセンスも褒めたいくらいに似合っていたから。

 俺の心を読んだセキが吹き出した。やめてよ!

 

「今の髪の長さでいけるかな……家に帰ったらやってみる」

 

 俺はうんうんとさらに頷く。女の人ってあれでどうやって髪を結ってるんだろ。謎だ。

 

 

 セキは簪を綺麗な布に包んで鞄に仕舞っていた。断らずに包装してもらった方が良かったかもしれない。

 

「そこのお二人さん。写真を撮っていかないかい? すぐ手渡しできるよ」

「ぜひ」

 

 声をかけてきた男にセキが秒で返事をしていた。……俺の意見は?

 

「ほら、もっと近づいて! はみ出ちゃうよ」

「…………」

 

 写真屋の男が、微妙な距離感で立っている俺たちの肩をぎゅっぎゅと押した。

 

「…………」

 

 あの……これはこれで。俺の左肩の少し下辺りにセキの肩が触れている。つまり、それくらい近い。

 

「いい感じだよ! さっ、もっと笑って笑って!」

「…………」

「一、二、お前の表情筋〜!」

「…………」

 

 三! の代わりに歌うように言われて、セキは爆笑していたが俺は真顔のままらしかった。写真屋のおじさんがしょんぼりしている。本当にごめん。

 

 

「すごいなあ。十枚もあるのにスバルの表情全部一緒だよ」

「…………」

 

 セキが感心したように言った。

 

「本当に私が全部貰っていいの?」

《うん》

「見たくなったらいつでも言ってね」

 

 なるだろうか。俺はあんまり自分の顔が好きじゃないから、そんな日は来ない気がする。

 家に飾ってる写真もイタチやサスケが一緒に写ってるから置いてるだけだし。可能なら俺の部分だけ切り取りたいくらいだ。

 

 

 

 昼市が夜市になり、いつの間にか空はどっぷりとした闇に覆われていた。

 こんなにも時間の流れを早く感じたのは初めてかもしれない。

 

 結局、セキの目的だった修行は出来なかった。なんだか申し訳ないなあと思いながら帰路についていると、右手に温かいものが触れた。

 

「スバル」

 

 セキに手を握られているのだと気づいたのは、名前を呼ばれた後だった。

 

「今日、すごく楽しかった。これまでの人生で一番ってくらい」

 

 俺の足を止めるためのものだったようで、セキの手はすぐに離れていく。さっきまでなんとも思っていなかったのに、急に手が寒くなったような気がした。

 

「折角の休日を私に使ってくれてありがとう」

《こちらこそ》

 

 楽しかったと指文字で伝える。セキがふわっと笑う。

 

「またデートしてね。約束!」

「…………」

 

 でーと。date…………デート?

 

 

 

 なんか平衡感覚がバグったまま帰宅した。平衡感覚がバグってるってなんだ。バグってるのは俺の頭か? そうかもしれない。

 

「帰ったのね、スバル。セキちゃんとのデートは楽しかった?」

「…………」

 

 出迎えてくれた母さんに指文字を見せることも頷くこともできないまま、とりあえず手を洗って自室へと向かった。

 

「スバル兄さん!」

 

 とたとたと近づいてきたイタチが控えめに俺に抱きついてきた。足音まで可愛い。存在が可愛い。

 目の前に舞い降りてきた天使に吸い寄せられるように、俺は両手を広げてイタチを抱き寄せた。

 ああ、今なら空も飛べる。俺は無敵だ。イタチが好き。大好き。ホルモンバランスのせいか今日はとくに好き。サスケもだ。俺の弟たちは天使だし常に可愛いし神秘的だし国宝だしゴ◯ホの向日葵の隣に描かれるべき存在なんだ。

 

「あれっ、スバル兄さん……ちょっと」

 

 イタチが身を捩って俺の拘束から抜け出し、手のひらをぺたりと俺の額に当てた。まじまじと俺の顔を見ている。

 

「スバル兄さん、顔が真っ赤だよ」

「…………」

 

 その日の夜、俺は高熱を出して朝まで布団から出られなくなった。

 

 

 

 ***

 

 

 

 休暇が終わるのはあっという間だった。久しぶりに暗部の忍装束に身を包み、背中に刀をさす。

 

『モズ隊長』

「……ああ、お前か」

 

 モズと話すのも久しぶり……ではないか。中忍試験が終わった直後に会ったし。

 

『なんでそんな反応を? 折角可愛い部下に会えたっていうのに』

「お前が可愛い部下なら、この世に存在する人間全員が可愛くなる」

『…………』

「それに言っただろ。休暇中、監視してたって」

 

 すっかり忘れてた。そんなこと言ってたな。

 

『…………』

 

 あれ、ということは。

 

 モズは心底嫌そうに、仕方なくといった様子で口にした。

 

「軽率に女に簪を贈るのはやめておけ。結婚を迫られるぞ」

『…………』

「オレは忠告したからな」

『…………』

 

 翌日。それとなくキノエさんに『男が女に簪贈るのってどう思います?』と聞いてみたら「女が受け取ったらプロポーズ成立だっけ? ボクらには関係のない世界だよね」と返ってきた。

 

「それがどうかしたの?」

『いえ……』

 

 突然恋人でもない男からプロポーズされて恐怖のあまり泣いてしまったセキ、という真実に近づいてしまった俺は、その夜もう一度寝込んだ。

 




本日のMVP:写真屋のおじさん
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