じんせい詰め合わせ   作:湯切

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頭脳は同じ!!(ではなかった)

いただいていたネタです。そろそろこどもの日ですね。とりあえず書けたところまで載せにきました。

以下、原文
「スバルがご都合忍術にかかって、子供(2〜3歳)になる話。
そんな自分より小さいスバル兄さんをイタチが見て、胸を抑えながら悶えることになる話。
時系列はどこでも大丈夫です!
スバルは子供の頃から無表情だったりしたけど、「弟センサー」ならぬ「お兄ちゃんレーダー」によってめちゃくちゃイタチに甘えてるスバル(無表情?)の話を見てみたい!
勿論、幼児化したスバルはそのことを覚えてなくて、イタチだけがこの出来事を胸の中に留めておいているんです!
イタチだったら、スバルが幼児化していたなんて話をしなさそうだし、これは俺だけが知ってる兄さんの話だ。とか思って言わなそうなので!」

>これはオレだけが知ってる兄さんの話だ
この作品のイタチへの解像度高すぎて三回くらい頷いてしまった
ネタ提供ありがとうございました!!楽しかったです。




小さくなっても 上

 下忍として与えられた任務をこなすようになってから、一年が過ぎた。

 

 迷子のペットを探したり、ご老人の話し相手になったり、配達業務を手伝ったり。

 下忍とはいえ簡単な任務ばかりで拍子抜けしたこともあるが、それだけ木ノ葉には誰かの助けを必要としている人がいて、自分が力になれるという事実には誇らしさも感じていた。

 

 担当上忍である水無月先生は、穏やかな性格で良くも悪くも部下を平等に扱おうとしてくれる人だ。

 チームメイトであるテンマやシンコとはほとんど話をしないし、テンマに至っては何かとオレに突っかかってくるけれど、水無月先生に「仲良くね」と釘を刺されているからか、手を出されたことはない。

 なんだかんだ、平和な下忍生活を送っていると言えるだろう。

 

 それに…………。

 

 今は、スバル兄さんがいる。

 

 根から火影様直属の暗部へと異動になった兄さん。昔のように同じ家で暮らしていることが今でも信じられない。本当に……帰ってきてくれたんだ。

 

 スバル兄さんと寝食を共にするようになってから、朝起きた時、任務から帰ってきた時、毎日でなくともその姿を見られることが何よりも嬉しかった。

 兄さんは任務のために数日家を空けることもあったけれど、少しでも時間があればオレとサスケの様子を気にかけてくれる。

 

 オレもサスケも、そんなスバル兄さんが大好きだ。

 

 

 その日は早めに任務が終わり、水無月先生に報告書を預けて帰路についていた。

 

 元々は昼過ぎに終わる予定だったのに、まだ昼前。

 父さんは警務部隊の仕事、母さんとサスケは病院や買い物で夜までいない。シスイは任務に出ているし、スバル兄さんは今朝俺が起きた時にはすでに家を出ていたので、帰りが何時になるかも分からない。

 

 家に帰ったら適当にお昼ご飯を食べて、父さんに頼まれていた盆栽の手入れをして、久しぶりに一人で手裏剣術の練習でもしようかな。

 

 よし、と脳内のやることリストに追加していく。

 そうこうしているうちに家に着いた。

 

「ただいま」

 

 誰もいないと分かっていても一応。癖みたいなものだった。

 

 靴を脱いでる途中で動きを止める。

 

「…………」

 

 今、何か物音がしたような。

 

 つつ、とホルスターに指を伸ばす。音を立てずにクナイを取り出して右手に握る。

 

 ――侵入者か?

 

 家にサスケや母さんがいない日でよかった。靴を脱いだ状態で廊下を歩き、何度か壁に背中をつけながら気配を探る。……また音がした。ここまで堂々と音を出すなんて。まさか、忍ではないのか。

 

 物音はスバル兄さんの自室からだ。部屋の前に立ち、勢いよく障子を開いた。

 

「…………」

「…………」

 

 子供がいた。癖のある長めの黒髪が揺れ、猫のように大きな目が一瞬でこちらを向いた。

 

「…………」

「…………」

 

 オレの中の時間もいくらか止まっていた気がするが、相手もそうみえた。子供は二歳くらいの男の子で、無駄に大きな布を身体に巻き付けている。

 

「それは……スバル兄さんの服?」

 

 ただの布かと思いきや、よく見れば見覚えがあった。スバル兄さんがよく着ているものだ。

 子供はオレの言葉に驚いたように顔を上げる。

 

「…………」

「キミ、どうしてここに?」

 

 念の為解術をしてみたが変わらない。変化の術や幻術の類ではないようだ。

 子供はオレの視線から逃れるように俯き、スバル兄さんの服をぎゅうっとシワになるくらい握りしめた。

 

「…………迷子、かな」

 

 子供はややあって、こくりと小さく頷く。しまいには姿見鏡の後ろに隠れてしまった。……半分以上身体が出ているが。

 

 どうしたものかとため息をつく。サスケならともかく、知らない子供が相手だ。

 無理に連れ出そうとして泣かせてしまったら可哀想だし、ここにいるということは集落の子供だろう。

 まずは警戒を解いてから両親の名前を聞き出した方がいいかもしれない。

 

 できるだけ子供と目線が近くなるように、その場に膝をつく。

 

「オレはイタチ。この家に住んでいる。キミは?」

「…………」

「怖がらなくていい。そうだな……まずは服をなんとかしよう。サスケのがあったはずだ」

 

 ここで待っていてくれと言うと、鏡の裏から少し顔を出してくれた。不思議そうに首を傾げている。

 ……やけに覚えのある表情と仕草だな。

 

 気にはなったが、いつまでもあのような格好をさせているわけにもいかない。

 急いでサスケの部屋に行き、箪笥からサイズが合いそうな服をいくつか選んで戻ってきた。

 スバル兄さんの部屋に入ると、子供は鏡の裏から出て部屋の中央にちょこんと正座していた。妙に大人びている。

 

「はい、バンザイ」

「…………」

「…………」

 

 しまった。いつもの癖でつい。子供が困惑気味に両手を上げてくれたので、ささっと着替えさせる。下着は元から身につけていたようで安心した。

 ズボンを履かせる際に、臍の辺りにホクロがいくつか並んでいるのを見つけた。

 …………見覚えがあるな。

 

 

「よし。お腹はすいてるだろうか」

「…………」

「昨日の残りだが……よければ一緒に食べよう」

 

 手を差し出すと、子供はぱちりと目を瞬かせた。手を取る気配はない。

 

「…………」

「……嫌だったら言ってくれ」

 

 脇に手を差し入れて抱き上げる。子供はびっくりしたようで、ひしりとオレの首に腕を回してしがみついてきた。大丈夫だと伝えるためにぽんぽんと背中を撫でる。

 この年頃の子供が抱っこに慣れていないなんて。

 

「……ん?」

 

 子供を抱き上げた時に何かが落ちた。拾ってみると、紐を解かれた巻物だった。妙な術式が施されていて、すでに効力を失っているように見える。

 

「キミのものか?」

 

 子供がふるふると首を横に振る。違うらしい。

 とりあえず昼飯の支度をしよう。

 巻物をポケットに押し込み、子供を落とさないように抱え直してから台所に向かった。

 

 

 

 冷静になって考えれば、迷子だとすれば家族が必死に探しているだろう。警戒を解くなんて悠長なことを言っている場合ではなかったかもしれない。

 

 昨日の夕食の残りを温めながら思っていたが、そんな考えは一瞬で吹き飛んだ。

 

「この術式は……呪術に関する本で見たことがある。肉体に影響を与えるものだったはずだ」

 

 黙々とおでんを食べている子供の隣で、先ほどの巻物を開く。

 見たところ一つや二つじゃない。いくつかの術が複雑に絡み合っていて、全てを理解するのは難しそうだった。

 

「そう……あれは、確か」

 

 ――退行。

 

 肉体を過去に戻す、つまりは大人を子供にする禁術。

 さらには記憶に干渉する術式もある。

 

 どくりと心臓が嫌な音を立てた。

 

「…………名前を」

 

 食べ終わったおでんをじっと見つめている子供に声をかける。

 

「名前を教えてくれないか」

 

 子供はきょとんとしていたが、やがて両手を持ち上げた。

 

 たどたどしい手つきで見慣れた()()を綴る。

 

《すばる》

 

 

 

 ***

 

 

 

 子供の正体はスバル兄さんだった。

 

 そんなことがあるだろうかと思って両親に関する質問をしてみればぴたりと言い当てるし、指文字を使う時の微妙な癖がスバル兄さんそのものだった。

 

 しかも、ただ幼い頃の姿に戻っただけではなく中身まで年相応らしい。オレやサスケの話をしても不思議そうにしているし、全く記憶がないようだ。

 さらには暗部の証である刺青も消えていた。まるで、現在のスバル兄さんに二歳ぐらいのスバル兄さんを()()()()()()()みたいに。

 

 今すぐスバル兄さんを抱えて火影様のところへ駆け込むべきか悩んだ。

 調べたところ、この手の術はまず発動すること自体が稀であり、仮に無事に発動したとしてもその効力は長続きしないらしい。

 ……異変がなければこのまま様子見でもいいだろうか。別に、幼いスバル兄さんともっと一緒にいたいとか、そういうわけではないんだけど。

 

 

「…………」

 

 スバル兄さんの自室。サスケの部屋から持ってきた積み木やぬいぐるみで遊んでいる(遊び方が分からないようで、眺めたりつついてるだけだ)スバル兄さんを盗み見る。

 

「これは……こうやって」

 

 スバル兄さんの目の前で積み木を組み立てていく。

 

「…………」

「…………」

 

 どことなく「それで?」という顔で見られた。

 積み木は……積み上げるもので。それ以上でもそれ以下でもなかったはずだが。サスケがこの年頃の時は目を輝かせて喜んでいたのに。

 

「…………こうしたり、とか」

 

 言いながら積み木を指で押す。積み上げていたものが一気に崩れた。……どうだ?

 

「…………」

「…………」

 

 スバル兄さんは明らかに悲しそうな顔をしていた。オレは罪悪感で身を引き裂かれそうになった。

 

 

 

 スバル兄さんに年齢を聞くと《にさい》と返ってきたので、オレの予想は当たっていたらしい。

 

「そうか、二歳か……」

 

 しみじみと口にする。にさい。スバル兄さんが、二歳。なんというか、感情の置き場に困る。

 普通なら一生見ることがなかったスバル兄さんの幼少期だ。今のうちに噛みしめていよう。

 

「スバル兄さんは……いや、スバル……くん……?」

 

 兄さんは兄さんとはいえ、二歳の子供に対して兄さん呼びはどうかしてる。かと言って、スバルくんやスバルちゃんと呼ぶのも違和感しかない。

 

「……スバル」

 

 これはもっと酷かった。違和感の塊だ。もはやオレの知らない誰かを呼んでるかのよう。

 スバル兄さんはそうではなかったようで、嬉しそうに肩を寄せてきた。……可愛い。

 

「少し外に出てみないか。商店街で何か美味しいものでも、」

 

 言葉の途中でスバル兄さんがぶんぶんと首を横に振った。

 

「……大丈夫。あなたに心無い言葉を投げかける人はもういないから」

「…………」

 

 まだ幼いからか、大人のスバル兄さんと比べれば随分と感情が豊かだった。

 全てを諦めているような表情に、きゅっと胸が締め付けられる。

 

「そうだな、外はやめておこう」

 

 スバル兄さんがパッと顔を上げる。そっと頭を撫でれば、驚いたように目を見開いた。そんな反応でさえ愛おしく感じる。

 

 今のスバル兄さんに、どれだけの時間が残されているんだろう。

 

 もっと子供の頃の幸せな記憶を増やしてあげたい。

 

 スバル兄さんの好きなことを思う存分させてやるのは?

 スバル兄さんの好きなこと……?

 

 好きなものなら分かる。おむすびの具は明太子が好きで、野菜ならキュウリ、米料理ならチャーハンだ。中でも特別に好きなのが甘味全般で、近くを寄った際に甘味処にいる兄さんを何度か見かけたことがある。……全部食べ物だな。

 あとは趣味……趣味か。人間観察とか……?

 兄さんは暇さえあればオレとサスケを優しげな目で見つめているから。人を眺めるのが好きなのかもしれない。

 ……外に出ずに人間観察。無理だな。

 

「じゃあ何かご飯を……いや、食べたばかりか」

 

空になった皿の存在に気づいて内心項垂れる。することがない。

 オレは、幼い兄さんにすらしてやれることがないのか……?

 




イタチのスバルの呼び方、しっくりくるものが本当に一つもなくて書きながら笑ってしまった。
「スバル兄さん」が封印されたら唯一まともに呼べそうなのが「スバルさん」な気がする。(※2歳児相手)

内容的にはIFシリーズかな〜と思うんですが、イタチが誰にも言わずに胸にしまっておいてくれるなら番外でもいっかー!ってことでそっちに置いてます。
いつか本編で怪我したスバルの着替えを手伝う時に(そういえばあんなこともあったな…)と思い出しながら「はい、バンザイ」って言うイタチ。魂に刻まれたなんやらで反射的にバンザイするスバル。少し離れたところで両腕がぴくっと動いてしまうサスケ(耐えた)。そんなうちは三兄弟をさらに遠いところから眺めていたサクラとセキ「…………」
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