・ifでもし原作のイタチルートをそのまま辿って(イタチはサスケと一緒に木葉で暮らしてる)影から弟達を見守るシリーズ
の「里抜け編」の下です
今回もだいぶ描写を省略してます
ダンゾウ曇らせならぬ黙らせによって若干気持ち良くなっていた俺の上向きな心は、すぐに急降下することになった。
「あなたは……どうして、こんなことを……?」
「…………」
一時的にお面をとって対峙したうちはイズミが、俺の足元で動かない自分の母親を見て目に涙を溜めている。
少しでも多くの人間に
彼女は瞬時に写輪眼になって振り向こうとしたが、その前に首に手刀を落とす。
脳震盪と写輪眼でさらに真っ赤に染まっているであろう視界の中に入らないよう身を引きながら、伸ばした腕でイズミが床に身体を打ちつけないようにゆっくりと降ろす。
「い……たち、くん……助け……」
『…………来ないよ』
気絶してしまったのか、ぴくりとも動かないイズミを置いて彼女の家を出た。
「スバル……? お前がなぜここに……」
次はヤシロの家だった。俺の手に持つ忍刀が血に濡れているのを見て、彼はすぐに居間へと消えた。
俺の目の前で閉じられるところだった扉の隙間に刀と片足をねじ込んで、無理やりこじ開ける。
「あなた……!」
「お前は寝室にいろ、何があっても出てくるな!」
逃げるつもりかと思ったが、妻の安全を確保するためだったらしい。ヤシロの言葉に女性が慌てて別室に隠れたのが見えた。鍵をかける音がする。
彼女が逃げ込んだ部屋には人が通り抜けることは不可能な小さな窓しかない。焦る必要はないだろう。
すらっと伸びた刀身を軽く振って、乾き切っていない血を振り落とす。
『よく俺だと分かりましたね』
「お前が暗部で白い猫のお面を使用していたことは、すでにフガクさんから……」
『流石ですね。まるで密告部屋だ。そのせいか、貴方はなんでも知ったつもりでいる』
「……どういう意味だ」
写輪眼になって忍刀を構える。
『貴方がクーデターの要にするつもりだった、うちはマダラの裏切り……そのせいで自分や愛する妻が死ぬことになんて、想像もしなかったでしょう?』
先に動いたのはヤシロだ。マダラと俺の名前を叫びながらクナイを振りかざそうとしている。その手を掴み、自分の方へと引っ張る。ヤシロがバランスを崩したところを狙って、その首を切り離した。呆気ない最後だった。
『あとは……』
お面を上にずらして両手で印を結ぶ。
先ほどヤシロの妻が逃げ込んだ部屋に向かって、豪火球を放つ。
巨大な炎の塊が寝室どころか家全体を包み込んだのを確認して、俺は次の場所へと向かった。
「順調だな、うちはスバル」
『わざわざそんなことを言うために来たのか?
残すは自分の家のみとなったところで、背後でぐにゃっと空間が歪む。そこに現れたのは、数日前に自ら俺にクーデター阻止を手伝ってやろうかと提案してきた男――うちはマダラだ。
彼にうちは一族抹殺を手伝ってもらう代わりに、俺は里を抜けた後に彼の作った暁とかいう組織に身を置くことになっている。
なぜ俺なのかと聞いてみれば「お前は弟の命をチラつかせれば、死に物狂いで何でもやりそうだからだ」と言われた。
奴隷が欲しいなら事前に言ってほしい。死に物狂いでお断りしたのに。
「お前が一族を手にかけたくないと泣きついてくるのを期待していたんだがな」
『子孫アンチが老後のお楽しみってことか? いや、既に死んでるなら老後じゃないな……そもそもお前なんで生きてるんだよ。こういうのにありがちな、前世の記憶を持って転生〜今世でも最強です!〜みたいなクソライトノベルでも始めるつもり?』
「………………」
マダラは無言で空間を歪めるとそのまま姿を消した。相変わらず失礼なやつだ。
両親を殺した。
お面を外していたせいで、頬に直接ついた血を拭おうとしたらさらに広がってしまった。当たり前だ。俺の手のひらはもっと血で染まっている。
懐から取り出した布で頬と忍刀の血を拭う。
「…………」
涙は出なかった。ただ、記憶が途切れ途切れで、何度も反芻しないと自分が何をしていたのか分からなくなる。
俺はここで、クーデター計画を知るうちは一族を全て殺した。
こんなことはやめてと泣きながら叫ぶ母さんの首を飛ばし、激昂して本気で俺を殺そうとしてきた父さんの胸を忍刀で貫いた。
イタチやサスケが生まれる前……この世でもっとも愛していた二人を殺したんだ。
だから言ったのに。俺は死んでも譲るつもりはないと。
胸を貫かれた父さんは、最後の力を振り絞って俺の首を掴んで爪を立てた。
返り血なのか自分の血なのか分からない。自分の首元にそっと手を触れる。
あとは生かしているイズミたちの口から俺の名前が出てくれば問題ない。彼らのことは三代目が守ってくれるだろう。俺は里を抜ける前に彼に懇願するだけでいい。
…………そのはずだったのに。
俺は玄関の扉の前に立っていた二つの影に絶望していた。忍刀を握る手のひらに汗が滲む。
「スバルさん」
影の一つ、うちはシスイが痛ましげな表情で俺の名を呼ぶ。彼の隣には、任務帰りの格好のまま困惑気味にこちらを見つめているイタチがいた。
ダンゾウが二人に手配した任務は決してこの時間に終わるものではない。仮に終わってしまったとしても、ダンゾウに報告へ寄った時に上手く足止めしてくれるはずだった。
あの野郎、しくじりやがったな。
「……ここに来るまでに、多くの死体を見てきた」
今まで聞いたことのないような冷たい声がイタチの口から溢れてくる。
「シスイの両親も……ヤシロさんたちも……」
『…………』
シスイは、忍界大戦で片足を失い、そこから病を得て寝たきりになってしまっている父と母との三人暮らし。
シスイの父上は写輪眼を持つ優秀な忍だったが、大戦で負った傷が原因で、数年前から息子であるシスイのことすら認識できないくらい弱っていた。……殺すのは容易なことだった。
「まさか、父さんと母さんも……?」
『そうだ』
お面をつけている俺をスバルだと認識しているということは、やはり父さんを脅した時の会話を聞かれていたらしい。俺もまだまだ未熟だ。
「どうしてそんなことを!? 兄さんの様子がずっとおかしかったのは……」
『俺はうちは一族を恨んでいた。それはお前も知っていただろう?』
両眼が熱を持って、写輪眼……いや、恐らく“ふたつ目の瞳”である万華鏡写輪眼になった。
真実の中に嘘を。偽りの中に事実を。
『俺はこの愚かな一族に絶望してきた……。声を出せないというだけで、限られた世界の中で向けられる冷たい目……ずっとこの時を待っていたんだ』
「スバルさん、貴方がこれまでうちはの大人たちからどのような扱いを受けてきたかはよく理解しているつもりです。……立派な忍となって里のために貢献してきた貴方を彼らが認めていたことも、気づいていたのではないですか」
『…………過去はなくならない。一生俺の足を掴んで離さないんだよ、うちはシスイ』
彼らは過去のことなど忘れたかのように振る舞って、俺に「立派になった」なんて言う。
俺は昔から何も変わっていない。声を出せないことも、何もかも。
変わったのは、俺を見る大人たちの目だ。
「父さんは、兄さんのことを誇りに思っていると…………」
『あの人に必要なのは俺のような“出来損ない”じゃない。お前やサスケのように優秀な息子だ』
彼らにとって俺は良い息子ではなかった。イタチやサスケにとっても、俺は良い兄ではなかっただろう。
『俺は長年の望みを叶えた』
こんな状況なのになぜか俺は笑い出したくて仕方がなかった。
皮肉なことに、小さな子どもの望みを本当に叶えてしまっていたからだ。……今の俺はまったく真逆のことを望んでいたのに。
するっと手のひらから忍刀が落ちる。刀が地面にぶつかる音がしたのと同時に、両足に力を込めた。
「……待て!!」
走った。走って走って、うちはの集落の裏に広がる森に逃げ込む。
予めここで落ち合おうと決めていた場所だった。
入ってすぐのところに立っていた仮面をつけた男に手を伸ばす。男が俺の腕を掴む。
顔だけで後ろを振り返る。
「スバル兄さん……!!」
仮面の男、マダラの万華鏡写輪眼によって別空間に転送されながら、俺の頬を涙が伝う。
…………最後の最後まで俺のことを兄と呼んでくれるのか、お前は。
イタチの手が届く前に、俺は何度か見たことのある何もない空間に立っていた。
「……修羅の道を選んでしまったのか」
『申し訳ありません』
深夜。こっそりと火影屋敷の三代目の寝室に忍び込んだ俺を、彼は予測していたのか起きた状態で出迎えてくれた。
『三代目には心から感謝しています』
「分かっておる……ワシの力が及ばなかった」
『いいえ。貴方はこの里に暮らす誰よりもうちはのことを考えてくれていました』
三代目と四代目が俺の言葉を信じてくれていなければ、俺はここにいなかった。弟たちをクーデターに巻き込んで一緒に死んでいたかもしれない。
『イタチとサスケのことをお願いします』
「勿論じゃ……お主の分まで、ワシがこの命にかえても守り抜くと誓おう」
『……ありがとうございます』
ああ、良かった。この人についてきて良かったんだ。この人なら必ず二人を守ってくれる。
「これからどうするつもりじゃ」
『暁という組織に所属しようと思っています』
最後に「木ノ葉の結界の暗号は変えない」と言われて苦笑する。いつでも弟たちの顔を見るために戻ってこいという意味だろう。
俺はこちらに背を向けている三代目に深く頭を下げて、火影屋敷を後にした。
「用事は済んだか?」
『ああ』
俺はマダラと仲良く小舟に乗って移動することになった。
あまりにも嫌だったので、マダラをこっそり舟から落としてやろうとしたら、すり抜けたせいで俺が落ちた。マダラはとても愉快そうに笑っていた。
「組織の中でオレはトビという名前で呼ばれている。大した術も持たない、暁の見習い小僧といったところだ」
『トビ?』
「なんだ、不満か?」
『いや……爺ちゃんって呼ぶつもりだったから』
「…………」
マダラが切実そうに「それだけは止めろ」と言ったので、俺は絶対爺ちゃん呼びしようと心に決めた。事実だし。
小舟が目的地に着いた。悪趣味なデザインが施されている扉の先には、見覚えのある人物が立っていた。
『……大蛇丸?』
「あら、そのお面……木ノ葉の暗部ね」
なんでこの人がこんなところに。何年も前に里を抜けたって聞いてたけど、暁に所属してたのか。
お面を外す。俺の顔を見た大蛇丸は一瞬驚いたような顔をしたものの、すぐに納得したように頷く。
「貴方は
「あ〜! そういえばお二人は同郷でしたねっ!」
『…………』
は?
幻術を掛けられたのかと思わず写輪眼になってしまった。現実だった。「懐かしの再会っスかー!」とはしゃいでいるマダラに鳥肌が止まらない。なに? なんなの? なんなんだ!?
『もしかして、俺の脳破壊が目的だったりする?』
「何の話だ」
大蛇丸と別れて、暁のリーダーがいるらしい部屋へと向かう途中。マダラと二人きりになった俺は恐る恐る問いかけた。こいつ、しらばっくれるつもりか。
『いくらなんでも頭おかしいだろ』
「お前にだけは言われたくない」
『子孫に向かってその口の利き方はなんだ!?』
「お前こそ、先祖に向かってその態度はおかしいだろう!」
勢いよく言い返したら、さらに勢いを乗せて反論された。落ち着いてくれないか。やれやれ、話の通じないやつはこれだから嫌なんだよ。
「五大国に代わり、暁が世界を支配する」
『…………』
謎に燃え盛っている炎を見つめながら、暁のリーダーが真顔で宣言した。ところでこの炎はなんなんだ。暖炉か?
「木ノ葉のスバル。我々はお前を歓迎する」
なんかもう共感性羞恥で死にそうになっていると、リーダーに「額当てを出せ」と言われた。面倒くさいなと思いつつ、懐から木ノ葉の額当てを取り出す。
「今から木ノ葉を否定しろ」
『…………』
クラブ「暁」への入部条件にしては簡単すぎない?
何の躊躇いもなく額当ての木ノ葉マークをクナイで真っ二つにする。リーダーが何か言いたげな目でこちらを見ていたので、足りなかったかともう一本追加してみると、リーダーの後ろに立っていた女の人にちょっと引かれた。
そっちがしろって言ったんじゃないか!
お面を外し、二重線の入った額当てを付ける。
「これよりお前は暁のスバルだ」
歩み寄ってきたリーダーが、こちらに手を向ける。手のひらの上でころんと転がったのは「朱」という文字が書かれた指輪だった。
指輪を右手の薬指につけなければいけないことを知ったスバル『嫌すぎる………』
飴(弟とのふれあいタイム)と鞭をきちんと使い分けることによって、スバルからの信頼が厚いヒルゼン。この世界線のスバルは彼をとても信頼しているので、原作イタチのように自分への恨みを強くして弟たちを強くする必要性は感じてません。ヒルゼンなら必ず二人を守り抜いてくれると信じてる。つまりヒルゼン死後は以下略。
こっちのミコトさんは万華鏡写輪眼を開眼してないのでスバルも永遠にはなってない。
フライング鬼鮫摂取タイム
スバル『鬼鮫……どうしてもお前に見せたいものがある』
鬼鮫「何ですか?」
スバル『この世で最も価値があるものだ(イタチとサスケの写真を取り出しながら)』
原作より2年ほど早くうちは一族虐殺事件→里抜けしてるので、鬼鮫とのタッグはだいぶ先だったり。