マダラの兄弟(兄or弟)if。(柱間に嫉妬したり死んでいく弟たちによって闇堕ちしたり生き残ってるマダラとイズナに依存したり、最期はマダラにトラウマ植え付けて死ぬ→穢土転生or原作時空に転生するとか)
です
特に何も決めずに書き始めたらマダラ兄になりました
2026年2月、2000文字くらい追加しました
「戦国時代編」①
俺は戦いの中で生まれ、育ってきた。
この世は混沌に満ちている。
毎日のように人間同士が争い合い、殺し合い、無数の屍の上に立っている。今俺たちがいるのも戦場だ。戦いに終わりは訪れず、息を落ち着かせる暇もなくこうやって駆り出されている。
「何かあれば火遁を天に向けて知らせるんだ。いいな?」
言い聞かせるような父様の言葉に、帯裏に忍ばせてあるクナイや手裏剣の数を確認して頷く。準備完了の合図でもある。
「行くぞ」
《はい》
俺の指文字を確認した父様がさっさと走り出したので俺もすぐに追いかけた。
パシャッと踏みしめた水溜まりから水滴が飛び散る。水滴がついた刀を軽く振り払っていると、複数人の気配を感じた。
前を走っていた父様が立ち止まったのに合わせて、その隣に立つ。
「スバル」
刀を向けた先―――茂みの奥から大袖に
「千手が今回の戦に加わったとは聞いていませんでしたが」
ひそかに額に冷や汗を浮かべていた父様が平静を装って口にする。
どこかで見たことがある家紋だと思ったら、そう、千手だ。最強と持て囃されているうちはと唯一互角に渡り合える一族。そんな一族の家紋を一瞬とはいえ失念していただなんて悟られるわけにはいかない。俺はいつも以上に表情を引き締めて「初めから気づいていましたよ」感を出した。
「うちはの当主タジマと、その嫡子スバルだな」
俺が戦に出るようになってからおよそ十年。
死にたくない一心で父様に引っ付いて敵を殺して回っていたら、今ではすっかり有名人になっていた。しかも「攻めのタジマと守りのスバル」という何の捻りもない、しかも父様とのコンビ前提の二つ名で呼ばれていたりする。
火力重視の一点突破型(相手も味方も被害多め)の父様と、安定重視の生存ムーブ(味方の被害少なめ)な俺ということらしい。
千手一族を見かけるとアドレナリンがドバドバと出てIQ10くらいになる父様のストッパー役ってところだ。あの人放っておいたら勝手に敵地に突っ込んでいくんだよ。あと、生存ムーブというより俺より後に戦に参加するようになった弟たちを可能な限り危険から遠ざけていたらそうなった。
いつ誰が死んでもおかしくない戦国時代、下に四人もいる弟たちが未だに無事でいてくれているのは幸福と言えるだろう。
「突破するぞ」
写輪眼になった父様に続くべく刀を握り直す。俺はまだ写輪眼を開眼していないので、せめて足手纏いにならないよう豪火球の術でサポートだ。
「この二人を仕留めればうちはは弱体化する!! 絶対に逃すな!」
「ああ!」
そりゃあ当主を殺せばうちはは失速するし、一応順番的に跡取りとされている俺まで死んだら一時的とはいえ混乱に陥る……と思う。ただ、次男のマダラは強さと愛らしさを兼ね備えたワガママブラザーなので、さほど被害もない気もする。
死んでいく人間も多いが、次の優秀な世代がどんどん芽吹いてくるのも戦国時代。俺や父様が死んだって、必ず彼らがうちはを導いてくれるはずだ。
真っ先に父様に飛びかかろうとした千手に豪火球を放つ。発言から醸し出されていたが、向こうは千手とはいえ下っ端の下っ端。
俺の大したことない火遁はあっという間に水遁で打ち消されてしまった。しかし、炎に隠すように投げておいた手裏剣が彼らに命中する。
「……この!!」
すっかり俺に気を取られている数人に父様が斬りかかり、抵抗される前に写輪眼で幻術に嵌めていた。びくっと彼らの身体が震えて地に膝がつく。もう抵抗は出来ないだろう。
父様と一緒に一人一人の喉に刀を突き刺していき、とりあえず一息つく。どうやら周囲に他に敵はいないようだ。待ち伏せではなく、たまたま彼らのいた場所に俺たちが居合わせただけだろうか。
「スバル。お前が体術を使わなかったのはどういう心境の変化だ?」
あまり忍術が得意じゃないからとひたすらに体術だけを極めた結果、優秀な弟たちに唯一誇れるレベルには達したと自負してる。父様にも「それだけ体術を扱えるなら十分だ」と褒められたこともある。
長所は伸ばすべきだ。短所に伸び代がないなら尚更。でも体術だけではどうしようもない状況もある。
もしも遠くで戦っている弟たちが敵に殺されそうになったら? どれだけ足が速くても届かない距離にいたら?
―――せめて火遁を扱えたらと後悔する日が来ないか?
俺は絶対後悔するね。神に誓ってもいい。
そんなわけで元々苦手な豪火球をコソ練して、今日こそが修行の成果を実感できる日のはずだったのに。以前より精度は上がったものの、威力は大したことなかった。俺もまだまだだな。
遠くから太鼓のような音と、笛の音が聞こえくる。戦の終わりを告げるものだ。
父様の袖を掴む。父様はそれに少し意外そうな顔をして「戻るぞ」とだけ言った。
「スバル兄様!」
戦から戻ってすぐ、たたたっと勢いよくこちらに駆けてきた小さな影に突進された。バランスを崩すことなく難なく受け止めて内心ドヤ顔をしていると、今度は後ろから誰かが飛びついてくる。ぐえっ。
「イズナ兄さんだけずるい! オレも抱っこして、スバル兄様!」
「兄様、怪我してない……? 大丈夫?」
自動おとうとあつめ状態になった俺は、正面からへばりついている二番目の弟イズナと、背中にぶら下がっている三番目の弟セカイ、左足にちょこんとしがみついている四番目の弟タカラを落とさないよう細心の注意を払いながら歩く。
うちは一族ではすっかり見慣れた光景になっているせいで、すれ違う人たちには非常に微笑ましそうに見られた。
そうだろう、そうだろう。可愛いは世界を幸せにする。みんなよく分かってるな。
「あれ? マダラ兄さんは?」
「兄様知ってる?」
《…………しらない》
こてんと首を傾げたイズナの頭を撫でる。イズナはもう五歳。こんなに可愛い顔をしているが戦にも出ている。こんなに可愛い顔をしているのに。大事なことなので二回言った。
俺の指文字を正しく理解したイズナはしがみついていた俺から離れると「兄さんも兄様の帰りを待ってたのに」と寂しそうな顔をした。
マダラは難しいお年頃に突入したようで、最近はあまり俺と目を合わせてくれない気がする。
ところで、なぜ弟たちが俺を「兄様」と呼び、他の兄たちのことは「兄さん」と呼ぶのかは知らない。俺は父様と同じカテゴリにいるんだろうか。ちょっと嫌だ。………マダラが俺を避け気味なのもそのせいなんだろうか。
うちはの男は育児は完全にノータッチだ。弟たちの世話はほとんど一族の女性がしてくれている。母様はタカラを産んですぐに亡くなってしまったし、弟たちは俺よりも親の愛情というものを知らない。さらに父様は当主という立場から多忙を極め、戦に同行する時以外で関わる機会はほとんどない。
弟たちはともかく、俺は父様に一般的な父親に対する感情を抱いたことはない。幼い頃、同世代の子どもたちは戦場に出てばかりいる父親を恋しがっていたが、俺は黙々と体術の修行をしたり、まだ赤子だったマダラを見に行ったりしてた。父様と関わるよりマダラの寝顔を見ていた方が百倍心が休まるに決まってる。
父様のことは嫌いじゃないし、うちはを束ねる長として尊敬もしてる。ただ父親として好きかと言われればノーだ。だって父親らしいことされたことないし。血は繋がってるけどただの一族の長。そんな感じ。
という長すぎる前振りを経てじっくり考えてみよう。俺が弟たちにとって父様と(関係性的な意味で)同列だとする。
………やっぱり嫌われてるんじゃ?
すぐマイナス思考になったり被害妄想大爆発しちゃうのがうちは一族の悪いところだと思う。ほんとに。分かってるんだけどね。こればっかりはどうしようもないんだ。
その日の夜、これはマズいことになったぞと父様の寝室に足を向けた。
部屋から出てきた父様は俺が裾を掴んだ時のように驚いた顔をして「……何の用だ」なんて言う。真夜中に部屋を訪ねてきた息子に対してこの態度はどうかと思いますね。
俯いていた顔を上げる。長い前髪がさらっと揺れて両眼が露わになった。
「写輪眼!? いつの間に……」
弟に嫌われたかもしれないという自己嫌悪と父様への憎しみ(とばっちり)でいつの間にか写輪眼を開眼していた。
戦力面では喜ばしいところだが、いつまで経っても写輪眼が元に戻らない。このままではチャクラを永遠に放出し続けて死ぬのでは……。
俺はこんなところで死にたくない。まだまだ弟たちを愛で足りないし、彼らが幸せな結婚をして子宝に恵まれ、甥もしくは姪に「スバルおじちゃん!」と呼んでもらってない。
「写輪眼から戻らないのか?」
父様の言葉にこくこくと頷く。甥っ子姪っ子目に焼き付け計画の為にも俺を助けて欲しい。もっともっと長生きしたいんだよ。
父様の時はどうやって元に戻したのかと尋ねれば「感覚でどうにでもなるだろう」とまったく参考にならない答えが返ってくる。これだから天才肌は嫌いなんだ。
《どうしたらいいですか》
「…………力のコントロールには冷静な思考が必要だ。そうは見えないが……初めての写輪眼に戸惑っているんだろう。少し外に出て風にでも当たってくるといい」
もしその方法が上手くいかなかったらチャクラが枯渇するか寒さで死ぬのでは?
俺の不満げな表情を見たのか見てないのか、父様は自分の羽織を俺の肩に被せてくれた。………温かい。
父様の部屋の襖を開けて、無駄に広い庭に出る。戦争続きで庭の手入れをする暇すらないけど、手の空いた人が時々伸びきった雑草を刈り取ったりしてくれているようだ。おかげで足を取られることなく散歩ができる。大変ありがたいことである。
雪が降っている。そりゃ寒いわけだ。
ぽつぽつと小さな雪たちが地面に吸い込まれるように消えていくのを見つめ、ごろんとその場で横になる。背中は冷たく、水分を含んだ土が服に張り付いた。
父様の羽織を掛け布団のようにして被り、星が瞬く空をじっと見上げる。
はーっと吐いた息は白い。こういう時冬だなあって実感する。
これからさらに寒さが厳しくなって降り積もった雪で移動が困難になると戦争も減ってくる。
火を扱えるうちは一族は寒さによる健康被害は比較的少ない。でも他の一族と同じく深刻な食糧不足に陥るので、結局領地で大人しくしているしかなかった。
どれくらい経っただろうか。
写輪眼のせいで全身に巡っていた熱はすっかり引いている。しかし両目ともばっちり写輪眼続行中である。頭どころか全身が冷え切っているのに効果はなかったようだ。
こんなに寒いのになんだか眠いな……。
心地よい眠気に誘われるようにして、ほぼ無意識のうちに目を閉じる。視界が真っ暗になっただけでより深いところへ落ちていける感覚がした。
「なっ…………」
ザクッと雪を踏みしめる音は浅い。数センチ積もったのかもしれない。
ザクッザクッと音が大きくなって、どんどんこちらに近づいてくる。あれ?と思った時には閉じた瞼の向こう側を影が遮ったのが分かった。
「……スバル兄様!? なんでこんなところに……誰にやられた!」
寒さで意識が朦朧としていた俺の頭はその声を聞いた瞬間にクリアになった。予めプログラムされた機械のようにぱちっと目を開ける。
「…………はぁ?」
焦りと心配が混じった表情でこちらを見下ろしていた顔があっという間に呆れに満ちた。
「…………何してんだよ、こんなところで」
「…………」
癖の強い黒髪越しに睨まれては何も言い返せない。
うちはマダラ。
とても可愛くて強くて頼りになる一番目の弟だが、怒ると怖いし最近は何かと俺を避けている弟でもある。思い出したら悲しみが増してきた。
心頭滅却、精神統一するつもりがちょっと眠ってしまったらしい。
欠伸をしながら身体を起こす。父様に借りた羽織りにもそこそこ雪が積もっていて驚いた。両手を見れば爪は青白くなってるし感覚がほとんどない。もしかして死ぬ寸前だったのか俺は。
「おい聞いてんのか? ……オレとは口もききたくないってのか」
まじまじとマダラの顔を覗き込む。マダラは苛立ち混じりに舌打ちして腕を組んだ。
「アンタはいつもそうだ。言いたいことがあるならハッキリ言えよ」
《おれをみて なにもいうことがないのか》
「はあ!?」
悴む手で必死に指文字を綴ったら凄い形相で怒られた。やっぱり怖い。
「だから……言いたいことがあるのはそっちだろうが………」
マダラは昔からキレやすく噴火寸前の火山のような子だった。俺限定で。
《しゃりんがん》
「あ?」
「…………………」
マダラの怪訝そうな顔を見る限り、どうやら俺の両目は写輪眼から元に戻っているようだった。
おかしいな、マダラに声をかけられる直前まで両目の熱は引いてなかったのに。
これが弟セラピーってやつですか?
「………ったく、ほら。早く立てよ」
差し出された手をじっと見つめて、握らずに自力で立ち上がろうとする。
マダラのおてては嬉しいんだけどさ。俺の手が冷たすぎて風邪引いちゃうかもしれないから。
しっかりと雪を踏みしめて立ち上がることに成功。でもどうしよう、膝が笑っててここから進めそうにない。
「またアンタはそうやって何でもかんでも一人で……!! ちょっとはオレやイズナを頼れって言ってるだろうが!」
マダラは早口で言って強引に俺の右手を掴んだ。その直後に「つめたっ!?」と飛び上がる。だから言ったのに。言ってないけど。
「マダラ兄さん? それに、スバル兄様ま……で………」
「イズナ、すぐに湯を張るよう伝えてこい!」
「う、うん!」
ちょうどここから近いマダラの部屋に押し込められたかと思えば、湯の準備が出来たとマダラに無理やり服を全部脱がされた挙句、ほかほかの湯船に向かって蹴り飛ばされた。扱いが雑さを通り越して憎しみこもってない!?
しっかり受け身をとって普通に風呂に浸かっていたら、マダラが「すぐに出るなよ。ちゃんと温まってからだ」とこちらを監視していた。さっきとは別の意味で怖い。
「別にスバル兄様を許したわけじゃないからな。……なんでオレが怒ってるのかも分かんねェんだろ」
本当に分からないし湯の熱さに加えて茹でタコになりそう。
つまり……つまりだ。最近のマダラが妙によそよそしかったのは思春期特有のお父さんなんて嫌いだ!(同列俺)じゃなくて、兄様なんて嫌いだ!(純粋に俺が嫌い)ってこと!?
ザバッと湯船から出る。腰に巻いていたタオルがはだけそうになったので片手で押さえる。男同士とはいえ幼い弟に見苦しいものを晒すところだった。
父様のついでに嫌われてるんだったらまだしも、俺自体が無理だって話ならもうどうしようもない……。俺だったら嫌いな奴には出来る限り関わりたくないし、向こうからしつこく構ってくることがあれば嫌な気持ちになるだろう。
以前一族の人たちに「お前は人の気持ちを理解しなさすぎる」と言われてしまったこともある。ここで感情任せに弟に泣き縋って仲直りしてくれと頼み込むのはきっと良くない。ダサい兄だと幻滅されてしまう!
「待てよ! まだ湯船に、」
俺と目が合ったマダラがビクッと肩を震わせる。
これ以上は勘弁してくれないか……!
俺の切実な思いが伝わったのかマダラは引き止めようとしていた手を引っ込め、情けなくもタオル一枚で逃走する俺を黙って見送ってくれた。