スバルがお湯をかぶると男になり、水をかぶれば女になる特異体質だったらという話。
貰ってたTSネタを書こうとしてたらこうなってしまった。
許してくれサスケ。
大体なんでも大丈夫な人のみどうぞ。
微妙なところだけどBLGL系のタグ追加しておきます
らんまネタ①
俺には性別がない。ないというか、どっちか分からない。
性自認がどうとか身体的欠陥が云々ではなく、これは俺以外の人間にも言えることだ。他人は俺を男だと言ったり、かと思えば女だと断言したりもする。
まあ自分のことを
ちなみに生まれた瞬間は男だったらしいので、戸籍上は男となっている。やっぱり俺は男なのかもしれない。
「スバル。胸元はきつくない?」
「…………」
先日買ったばかりのワンピースを着せてきた母さんが、頬に手を当てて嬉しそうに笑う。
「うふふ、やっぱり女の子はいいわね。こういうの着せてみたかったの」
「…………」
今すぐ脱ぎ捨てたい衝動を抑えつつ、ふわりと広がるスカートの裾をぎゅうっと掴む。
目の前にある姿見鏡には長い黒髪を揺らした女の子が立っている。――俺だ。鏡の中の自分を見ていられなくて顔を逸らす。
別にワンピースが嫌いなわけでも、女である自分への拒否反応があるわけじゃない。でも、これはなくない? 黒いワンピースなんてまったく可愛くないじゃないか。袖は膨らんでいないし、デザインも最悪だ。ワンピースにまで一族のうちわマークを入れてくるなんてどうかしてる。
「昔からうちは一族の女の子はこれって決まってるのよ」
俺の不機嫌オーラを察知したのか、母さんが苦笑する。
囚われの某王女ですら流行りのものは嫌いですかって好みを聞いてもらえるのに? もう嫌だこんな一族。
「さあ、アカデミーに行ってらっしゃい」
ぽんっと背中を押してくる母さんに渋々と頷いて家を出た。
アカデミーは退屈だ。いつもいつも同じことの繰り返し。
くノ一クラスの授業は花をむしり取ったり、“色”を使って男を虜にする術を学んだり、男のそれと比べると身体を動かす時間が極端に少ない。
アカデミーに入学する前、俺は渾身の指文字で両親に《男として通いたい》と伝えた。
父さんにはコンマ一秒で却下された挙句「普段は男のように過ごしているんだから、アカデミーの時くらい女を貫いてみたらどうだ」と言われてしまった為、こうしてくノ一クラスに在籍している。
そもそも男のようにだとか女を貫くとかおかしくない? 戸籍上は男だし一人称だってこんなだし、これまでも家ではずっと男として振る舞ってきた。
女の姿になっている時は心も引っ張られてしまうらしく、女らしさはあったかもしれない。それでも男として過ごしてきた時間の方が圧倒的に多い。
俺は女でもあるが、男だ。……自分でも何言ってるのか分からなくなってきた。
今日もなんとかアカデミーという苦痛でしかない時間を乗り越えた。
真っ直ぐ家に帰るなんてことはせずに、とりあえず湯処に足を向ける。
「ちょっとお嬢さん。そっちは男湯だよ」
「…………」
先ほど入浴料を渡した番台の男がちょいちょいと指を動かして女湯の方を指差す。
俺はふんっと鼻を鳴らしてそのまま紺色の湯のれんをくぐった。後ろから「ちょっとぉ!?」という叫び声が上がる。
脱衣所に入ると複数の視線を一斉に浴びた。見せ物じゃないんだぞ。
カゴの中に着替えやバスタオルを突っ込み、忍らしく一瞬で服を脱いで縦長のタオルで胸元から股のあたりを隠す。一般人には早すぎて何も見えなかっただろう。修行の成果を感じられて嬉しい。
洗い場でも随分と視線を感じたが、ここまで堂々としていたら逆に「いやオレがおかしいのか……?」となるらしく、男湯に女がいることを指摘してくるやつは一人としていない。
しかし、その視線すらもうすぐ無くなる。これから俺が
目を閉じて、桶いっぱいのお湯を頭からかぶる。
ちょうどいい温度に調節したそれは気持ちよく、さらに自分の身体に起きた変化には死んだ表情筋すら動きそうだった。うーん、生き返る!
もう身体を隠すタオルは必要ない。俺は誰かの視線を浴びることもなくのんびりと全身を洗って湯につかり、最後は番台の男に三度見くらいされながら湯処を後にした。
「スバル……兄さん、おかえりなさい!」
アカデミーが終わる時間を把握しているイタチは、ほぼ毎日この時間になると玄関の前でそわそわと俺の帰りを待っているらしい。可愛い。ちなみに母さん情報である。グッジョブ・マザー。
それから俺の名前の後にすぐ兄さんと続かなかったのは、俺が女の姿の時は姉さんと呼んでいるからだ。ずっと兄さん呼びでいいのに。でも姉さんと呼ばれるのも嫌いじゃない。性別も心も二つあるとこれだから〜!
まあね、ずっと真夜中でもなければずっと男でもないし。イタチの好きに呼んでくれたらそれでいいや。
飛びついてきたイタチを抱っこしながら靴を脱ぐ。
「……また男の姿で帰ってきたのか」
待ち構えていた父さんが俺の姿を見て責めるように言う。イタチが俺と父さんの顔を交互に見てハラハラしている。大丈夫だと伝えるためにぽんぽんと頭を撫でた。
《こっちのほうが たいしょしやすいから》
俺はお湯を被ると男に、水を被ると女になるという特異体質を持っている。ついでに常時声を出せないオプション付き。ただのデバフである。
男の姿の時は体術がそれなりに得意だが、女の時はやけに身体が重くなるし筋肉のほとんどが脂肪に変換されるようで、どちらかというと苦手だ。
その代わりチャクラコントロールはしやすくなるのか、男の時は難しかった忍術を簡単に扱えるようになったりする。これが噂のデタラメ人間の万国ビックリショーかな?
そんなわけで総合的には男の時の方が戦闘力は高い。いつ何が起きるか分からないこのご時世、俊敏に動ける男の姿でいた方が安全に決まってる。しかし、父さんはそう考えていないようだった。
「声も出せないお前が普通の男として忍になれるはずがない」
「…………」
「それならば女として生き、女としての幸せを探すべきだろう」
ええ……。反応に困っていると、奥から母さんが顔を出した。
「女の生活もいいものよ。イタチは男の子だし、お母さん……ずっと娘と買い物に行って服を選んだりするのが夢だったの」
そういえば家紋入りのワンピースを注文してた時の母さんは、ここ最近で一番ウキウキしてた気がする。
「勿論決めるのはスバルよ。でもね、これまではずっと男の子だったんだから、暫くは女の子でいるのもいいんじゃないかしら。あなたはどちらでもあるのだから」
「…………」
どちらでもある。確かにそうだ。別に女の姿が嫌ってわけでもないし、両親が満足するまでは女として生活してもいいかもしれない。
こくりと頷くと、母さんがそれはもう嬉しそうな顔をした。
「じゃあ、もう一度お風呂に行ってらっしゃい。イタチも一緒にね」
「うん!」
「…………」
つまり水を浴びて女になってこいって意味だ。鬼畜すぎる。
俺はイタチを抱っこしたままお風呂に向かった。
ささっと身体を洗って一緒に湯船に浸かる。イタチはずっとニコニコと笑っていた。可愛い。
「スバル兄さん、今日はアカデミーで何したの?」
「…………」
そういえば今日はくノ一クラスの授業でその辺に生えてる花を集めてこいって言われたんだった。俺はどうやら花を選ぶセンスとやらがないらしく、この授業はいつも評価が低い。花なんてどれも同じだろ。
《はなを あつめた》
「花?」
イタチはちょっと不思議そうな顔をした。そうだよな、花なんて集めて何がしたいのか俺も分からない。
「コスモスとか、ヒマワリも好きだよ」
「…………」
だよね! 花っていいよね。俺もコスモスとヒマワリ大好き!
授業で集めた花は持って帰ってもいいし、誰かにあげてもいいらしい。これまではクラスメイトの女の子たちが欲しがってたから適当に押し付けてたけど、持ち帰ってイタチに渡そうかな。
湯船から出て、冷たい水を頭から被る。つめたっ!
「スバルに……姉さん!?」
片手で自分の目元を隠したイタチが、もう片方の手を伸ばして俺にバスタオルを押し付けてくる。
「早くそれで隠して!」
やけに必死だ。俺はありがたくタオルを受け取って身体に巻き付ける。……これ温かい風呂に入った意味なくない?
翌日。空は雲ひとつなくアカデミー日和だ。いつもは憂鬱な気分だったけど、今日は違う。
欠伸を噛み殺しながら被っていた布団を押しのけて起き上がる。いつものように服の裾を掴んで脱ごうとしたら、手の甲がふにゃりと柔らかいものに触れた。
「…………」
そうだ、今は女だった。一気に目が覚めた。本当に毎日風呂で水を被らなきゃいけないんだろうか。やっぱり憂鬱だなと思いつつ、姿見鏡の前に立つ。
昨日寝る前に母さんに「女の子なんだから毎朝ブラッシングしなきゃね」と渡されたブラシを手に取った。
男の時よりも髪質が少し柔らかくなっているのか、ブラシが髪に絡め取られてるし、寝癖もつきやすい気がする。なんて面倒くさいんだ。女ってすごい。
結局髪が爆発したままアカデミーに行こうとしたら母さんに止められた。俺の強情な髪はなぜか母さんの前では大人しくなるようで、今では寝癖がついてたとは思えないくらいサラツヤだ。一生仲良くなれる気がしない。
「今日はアカデミーの裏にある花壇でみなさんの好きなお花を集めましょう。その花について調べて後日レポートを提出するように」
レポートという言葉が出てきた途端ブーイングの嵐だったが、みんな文句を言いつつも大人しく散り散りになっていった。
季節は夏。ヒマワリだけでなくコスモスも咲いている。これほど花集めの授業へのモチベが高かったことはない。
「スバルくん、今日は誰にあげるの? 私が貰ってもいい?」
名前は思い出せないが同じクラスの女の子だ。彼女は頬を染めて指をもじもじと動かしている。
俺はアカデミーでは基本的に女の姿だが、何度か男の姿で通ったことがある。通学途中に事件に巻き込まれてお湯を被ったり、大体はそんなことある? ってくらい何かの意思を感じるようなハプニングがあって、仕方なく男のままアカデミーに行ったわけだけど……。
そんなわけで同級生は俺の男バージョンを知ってる。一度誰かに「どっちなの?」と聞かれたので《たぶん おとこ》と返したところ、スバル
俺は足元に転がっていた棒で地面に文字を書いてみせた。
《これは弟にあげるから》
最後まで読んだ女の子がガックリと肩を落とす。先生には不評な俺の花たちは、なぜかクラスメイトには人気だ。
集めすぎて立派な花束になっている花たち(イタチ用)をよけて、丁度目についた名も知らぬ野花を女の子に差し出してみる。
「え?」
「…………」
こっちは気に入らなかったのか、女の子が目を見開いたまま固まった。うーん、女の子の好みって分からない。
こちらの都合で手折ってしまった花をそのまま捨てるのもどうだろう。俺が花だったら怒りで闇堕ちしてる。
悩んだ末、固まっている女の子の耳の上に花を差し込んだ。うん、いい感じ。
《もらってくれると うれしい》
「……は、はいっ! 喜んで!!」
今のってすごく女子っぽくなかった? いいな、こういうの。お花の冠を作ってお互いの頭に乗せあいっこするのとか地味に憧れてたんだよ。万年ぼっちな俺には夢のまた夢だけどな! 辛い!
「…………?」
そういえばさっき普通に指文字で会話してたような。
「あの、他の子がスバルくんのためにって指文字を練習してたから……一緒に教えてもらって……」
くノ一クラスに何人か指文字を使える人がいたっけ。……まさかその人たちも俺のために?
「そ、それで一つだけお願いがあって!」
俺のために指文字を覚え、なぜか俺の選んだ花を欲しがる女の子。これは……もしかしなくても、もしかするのでは!?
女の子は顔を真っ赤にさせたまま、俺に向かって両手を差し出してきた。その心は!?
「スバルお姉様って呼ばせてくださいっ!!」
「…………」
はい解散。悪鬼退散、煩悩退散〜!
「おかえりなさい、スバル姉さん!」
《ただいま》
珍しいことに、世界一可愛いイタチを見ても俺の中の憂鬱は完全に消えてくれなかった。あまりにも傷が深い。
「姉さん、その花はどうしたの?」
イタチが紙袋に入れて大切に持ち帰ってきた花束を不思議そうに覗き込んでいる。そうそう、忘れるところだった。
紙袋ごと差し出すと、イタチはぱちりと緩慢に瞬いた。
「オレに?」
《すきだって いってたから》
「……オレのために、姉さんが」
イタチはそっと紙袋を受け取って、取り出した花束をじいっと見つめている。
《きにいらないなら すてても》
捨ててもいいと言い切る前に、イタチがぶんぶんと首を横に振った。
「ありがとう。すごく……すごく嬉しい。大切にするね」
「…………」
柔らかく微笑んだイタチの表情に釘付けになる。まさか花束でそこまで喜んでもらえるなんて。
感極まった俺は思わずイタチを抱きしめた。どうしよう、弟への愛が止まるところを知らない!
「わあ!? まってスバル姉さん、今の姿だと……!」
「!?」
イタチは俺の腕から逃げ出して「そういうこと他の人にしたらダメだよ!」と叫ぶ。
それってもうイタチを抱きしめられないってことでファイナルアンサー!?
イタチがラッキースケベ枠を獲得しちゃう世界線