じんせい詰め合わせ   作:湯切

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スバルが原作知識持ち転生者でクーデター実行できてたらっていうネタです。

※クーデターは成功するけど多分スバルは死ぬので苦手な人は注意してください。そこまで書けるかは微妙。
※前世の記憶がある分性格が少し違ってます。ブラコン濃度も低め(ブラコンじゃないとは言ってない)。厨二レベルは増してます。



原作知識持ち転生者シリーズ①

 三歳の誕生日に父親から貰ったのが《忍の心得 巻ノ一》っていうクソ分厚い巻物だった。分厚すぎてもはや鈍器。開くたびに巻き直す時のことを考えて憂鬱になる。

 

 健気な三歳児だった俺は毎日寝る間も惜しんで意味不明な文字の羅列たちを必死に追いかけ、咀嚼し、小さな頭に押し込もうと努力した。

 

 ――忍、忍とはなにか? 任務のために生きて死んでいく存在? 馬鹿馬鹿しい。俺は俺のためだけに生きますけど?

 

 そんなことを考えながら、いつの間にか眠ってしまったらしい。

 

 

 浅い眠りの合間に夢を見た。

 

 意識を刈り取られる直前まで読んでいた本の影響か、忍が出てくる夢。俺は意識だけの状態で高いところからそれを見下ろしているような、不思議な感覚。

 

 忍は、うちは一族。仲の良い兄弟の仲睦まじい光景を見せつけられてるなと思っていたら、兄弟のうちの一人が一族を皆殺しにして――――この悪夢はいつまで続くんだろうと思ったところで、ぷつんっと夢から覚めた。

 

「…………」

 

 もしも俺が声を出せたなら、「は?」って言っていただろう。「ふざけるな」だったかもしれない。

 

「…………」

 

 持ち上げた両手を見つめる。マメだらけでとても小さく、なにも掴めなさそうな頼りのない手のひらを。

 

 指の隙間から見えるのは、テーブル。テーブルの上にあるのは読んでいた巻物や、その内容を書き写すための紙、そして、うちはの家紋が描かれている特別な毛筆。

 

 俺はこの家紋を見たことがある。以前にも……ここではないどこかで。

 

 三歳の誕生日を迎えてから僅か二週間後。なんの前触れもなく、前世の記憶が()()()

 

 

 

 NARUTOという作品に出会ったのは高一の時だった。多分。もしかしたら中二だったかもしれないけど。

 あの頃の記憶のほとんどが黒歴史(ブラックリスト)入りしているから曖昧なんだよ。

 今? 今はとっくに卒業してる。本当だとも。

 

 NARUTOについて知ってることはほんの一部で、そんなに多くない。

 うずまきナルトという少年が主人公で、主人公は九尾っていう化け狐を体に宿していて。あ〜なんだっけ。実は火影の息子なんだっけ?

 それから、うちはサスケとうちはイタチ。サスケは一族を虐殺した実の兄、イタチに復讐するために写輪眼(当時の俺はこれが大好きだった。かっこいいし)を開眼して戦い、見事勝利する。しかし、後になってイタチの真実が明らかになって……って話だったはずだ。あの辺りはアニメもリアタイしてたからよく覚えてる。

 

 という感じに、眠ってる間に思い出した前世の記憶とやらを整理してみた。

 で、大事なのは今だ。

 今の俺は、うちはスバル。あるうちは一族の二人の元に生まれた子ども。生まれつき何故か声が出せない体質ってことを除けば、平々凡々。特筆すべきこともない普通の子どもと言えるだろう。

 

「…………」

 

 ダメじゃん。うちは一族ってイタチとサスケを除いて皆殺しにされるじゃん。

 ……いやマジか。俺も死ぬのか。

 それはちょっと。ただでさえ前世でも死ぬ間際に色々あっ――――

 

 

 前世で自分が死んだ時のことを思い出したら、記憶だけじゃなくて写輪眼まで生えた。しかもこの写輪眼、なにやら様子がおかしい。

 あのかっこいい写輪眼とは違って、キラキラした星が散りばめられてるというか……少女漫画ならまだ許されそうなビジュアルをしている。

 

 これってもしかして:万華鏡写輪眼!?

 

 いよいよ、異世界転生〜チートスキルを添えて〜になってきたなと思いながら、とりあえず今日のところは寝ることにした。チャクラ大量放出されちゃったせいか体がダルすぎる。

 

 

 

 起きた。たくさん寝た。ぐーっと体をのびのびする。

 いつものように布団を折り畳んで部屋の隅に移動させ、うとうとしながら服を着替える。

 男の子でも身だしなみは大事だと母さんに口酸っぱく言われてるので、部屋を出る際についでに姿見鏡の前に立った。その心は?

 

「…………」

 

 鏡に映っているのは、無表情のままこちらを見返してくる子ども。

 

 うーん。写輪眼じゃないな。普通だ。普通の黒目。あれは夢だったんじゃないだろうか。いっそ前世の記憶も、夢ならばどれほどよかったでしょう……。

 夢として見たんだから実質夢では。なんかこれこそレモン(Lemonではない)みたいじゃん。

 そこのお前! レモン一個に含まれるビタミンCはレモン一個分だぜ!

 

 

「……スバル。何をしてるんだ」

 

 鏡の前で、両目に人差し指と親指を添えて同時に開眼させたり、決めポーズをキメたりしていたら、偶然部屋の前を通りかかった父さんに見られてしまった。

 暑いからって障子を開けっぱなしにしていた昨日の俺、ギルティ。

 

 

 

 前世の記憶が生える前の俺は全く興味がなかったので意識の外だったが、そろそろ弟か妹が生まれることになっている。

 どっちだろう。前世は一人っ子だったから、自分が兄になるっていうのがしっくりこない。むしろ精神年齢的に自分の子供か孫レベルだろ。

 

 

 今日もいつものように手裏剣術の練習をしたり、ついでに念能力にも目覚めないかなと思って瞑想や水見式をしたりして時間を潰していた。

 

 チャクラが存在してるんだからオーラみたいに使えたりしても良くない? 俺の両目は万華鏡写輪眼(ダブルカレイドスコープ)したいよ、俺だって。

 

 ひとしきりやって満足して庭から戻ってきたら、

 

「す……すば、る」

「…………」

 

 台所で母さんが倒れていた。大きなお腹を守るように身を丸めて。

 

 うそ。もしかして、もう産まれる? 予定日ってもっと先じゃなかった?

 

 慌てて駆け寄る。足元で水溜まりのようなものがバシャッと跳ねて、全身の血の気が引く。

 

 ……破水? 破水……って、なんだ。ああもう、忍の心得とかよりこっちを先に勉強しとくべきだった! 今日に限って父さんいないし!

 

 母さんの目の前でしゃがむと、母さんが俺の手を掴んだ。物凄い力で面食らってしまった。

 

「玄関、に、カバンを用意してるから……脱衣所から大きめのタオルを数枚と……」

 

 泣きそうになりながら頷く。急いで脱衣所に行って清潔なタオルをいくつか手にして戻ってくる。母さんの意識はすでに朦朧としていた。

 できるだけ体を動かさないように気をつけながら、タオルを二枚重ねにして母さんに巻きつける。

 

 三歳児とはいえ忍のはしくれだからか、思ったより簡単に母さんを抱き上げることが出来た。

 

「大きく、なったのね……スバル」

「…………」

 

 それ、絶対今かけるべき言葉じゃない。フラグみたいだからやめて。

 

 玄関を出る前に忘れずにカバンを引っ掴んで、すれ違う一族の人たちがぎょっとするくらいの速さで木ノ葉病院に向かった。

 

 

 

 あー、びびった。出産は命懸けだって聞いてたけど、ほんとそう。見てるだけで怖かった。

 

 途中から合流した父さんと二人で出産を見守ってたんだけど、あんなに痛がってる母さんは初めて見た。というか何度か死ぬんじゃないかと思ったくらい。

 あの父さんですら先生に「妻は本当に大丈夫ですか?」「一人目の時はこれほどでは……」ってしつこく確認してたし。

 

 やっと生まれた子どもは男の子だった。

 

 汗だくで青白い顔をした母さんが赤ちゃんを胸に抱いて涙を流し、父さんはそんな母さんごと抱きしめて何度も「よくやった」と口にしていた。

 

「……ほら、スバル。あなたの弟よ」

「…………」

 

 そう言われてもあまり実感がない。前世でも赤子と関わる機会がなかった俺は、もっと近くで顔を見るように言われても首を横に振るだけだった。

 父さんの背中に隠れるように立つと二人には苦笑された。

 

「名前はもう決めたの?」

「ああ」

 

 無意識なのか、父さんが俺の頭にぽんっと手を置いた。

 

「イタチだ。うちはイタチ」

「まあ、いい名前ね」

「…………」

 

 それこそ夢だろ。

 

 

 

 将来自分を殺すことが確定している人間とどう仲良くしろっていうんだ。俺のメンタルはそこまで強くない。

 

 母さんが退院して弟と共に家に帰ってきてからも、俺は一度もイタチと関わってない。抱っこもしてないし、そもそも視界にすら入れてない。

 父さんと母さんは何かと俺に「あなたの弟は可愛いわね〜」「一度は抱っこしてみたらどうだ?」と勧めてくるが、完全に無視してる。

 どのような理由があろうと、その子は俺と両親を殺すんだ。『お前だけは殺せなかった』に俺たちは入らない。そんな弟を可愛く思えるはずがないじゃんか。

 

 

 

 相変わらず弟とはほとんど関わりを持たないまま、二年が過ぎた。

 漫画世界の補正なのか最強といっても過言ではないキャラだからなのか、二歳とは思えない言動が目立つイタチ。

 すでに“空気を読む”を覚えたのか、俺に嫌われてると察しているようで、去年のように纏わりついてくることはなかった。実に平和である。

 

「スバル。ちょっといい?」

 

 庭で軽い運動をしていたら母さんに声をかけられた。その隣にはイタチが立っている。嫌な予感がした俺は首を横に振り、何か言いたげなイタチの横を通りすぎて自室に戻った。

 

 

 

「お前はどうして、弟であるイタチを邪険にする」

 

 翌日、父さんに呼び出しを食らって説教された。

 

 なぜって言われても。俺の立場でイタチ大好きムーブしてた方がサイコパスだろ。

 

 貴方の次男は将来一族全員殺すんですよ、俺は死にたくないです、なんて言っても信じてもらえるはずもないので、黙秘権を行使する。

 

「たった一人の兄弟だろう」

「…………」

「はぁ……何が気に入らないんだ」

「…………」

「……お前を普通の子どものように産んでやれなかったことを恨んでいるのか?」

《ちがう》

 

 意図しない方向に解釈されそうだったので即座に否定する。声を出せるイタチに嫉妬していると思われるのは心外だ。

 俺はただ、その『たった一人の兄弟』にすらなれないのが……。

 

「あの子が気にかけてるのは分かってるはずだ」

「…………」

「イタチはお前と話をするために指文字を覚えた。なのに、スバル。お前ときたら会話どころか視線すら合わせようとしない」

「…………」

「……今日は部屋から出なくていい。どうやら甘やかし過ぎたようだな」

 

 そのまま父さんは出ていってしまい、部屋には俺一人だけが残された。

 

「…………」

 

 ここは父さんの部屋なんだけど。自分の部屋に戻るために一瞬外の空気を吸うことになってもいいってことでファイナルアンサー?

 

 

 そろりそろりと忍び足で自室に戻り、部屋の中央で正座した。

 前世の俺は不真面目の塊だったので「監視されてるわけでもないんだから寝ててもいいんじゃね」と思ってしまうわけだが、“うちはスバル”はそうでない部分が大きい。まあ、前世の記憶がうっかり生えてなければこうしてるはずだ。

 

「…………」

 

 目を閉じる。

 こうやって瞑想もどきなことをやって、本当に念能力者になれたらいいのに。雑念だらけな時点で無理か。

 でも考えるだけなら無料だ。この世界で一番強い念能力とかさ。考えるだけで楽しいじゃん。

  

「…………」

 

 部屋に篭ってからどれくらい経ったかな。三時間くらい?

 

 自分がやってることが正しくないことは分かってる。自己満足でもせめてこれくらいは、という気持ちだけが俺をこの場に留まらせていた。

 

 そろそろ足が痺れてきた。エアコンも扇風機もない部屋の中、じわりじわりと汗が滲んでくる。初夏とはいえ、結構暑い。

 

「…………」

 

 ところどころ記憶がない。正座したまま寝てる可能性も出てきた。もしくは短時間の失神。

 ところで、失神のことを気を失うんじゃなくて漏らす方だと思っていたことがあるのは俺だけだろうか。失神って言葉を聞くたびに、また一人尊厳死したやつが……って心の中で合掌してた。

 

「…………」

 

 そんなこと考えたせいでトイレ行きたくなってきた。責任取ってよ。

 

「…………」

 

 もう無理。限界。

 

 尊厳が死を迎えそうになったのでトイレに全力ダッシュしてきた。運良く誰とも遭遇せずに部屋に戻ってこられた。

 

「…………」

 

 外がすっかり暗くなってきたことだけが心の支えになりつつある。たった半日、こうやって部屋でじっとしてるだけで辛いもんだとは思わなかった。

 太陽が沈むと気温も下がって少しだけ過ごしやすい。

 ぐう……と控えめにお腹が空腹を訴えてきた。これさえなければなあ。

 

「…………」

 

 すでに家族みんな眠りの中にいるはずの時間。流石にもう自己満足反省会も終了していいんじゃなかろうか。反省してないけど!

 

 だって、なあ……自分でもどうしたらいいのか分かんないんだよ。

 

 部屋の前でカサッと何かを置いたような音がした。

 トイレに行く時以外閉じたままだった目を開ける。ゆっくり立ち上がると膝が笑っていた。今度からは正座で耐久すんのはやめとこ。

 

「…………?」

 

 障子を開けると、足元に竹皮で包まれた何かが落ちていた。

 

 顔を上げて周りを見渡す。遠くの方で小さな影が走り去っていくのが見えた。

 

「…………」

 

 竹皮を手に取って包みを開く。中には真っ白なおむすびが二つ、ほかほかと湯気を立てながら並んでいる。

 

 胸の奥がぎゅっとなった。

 

 おむすびの一つを掴んで口に運ぶ。

 

「…………」

 

 両目から止めどなく溢れてくる涙が、おむすびの上にぽつりぽつりと雨のように落ちていく。

 

「…………」

 

 ……なんで分かったんだろう。

 

 おむすびの具は明太子。俺の大好物だった。

 出されたものは何でも食べてきたから、父さんや母さんには好き嫌い自体が無いと思われてるはずだ。

 

「…………」

 

 だというのに……俺は何も知らない。

 

 あの子が、うちはイタチが、なにが好きでなにが嫌いか。いつもどんな表情で俺のことを見ていたのかすらも。

 




・(この世界線の)うちはスバル
前世で大好きな母親は病死、父親は心を病んで廃人同然、本人はそれでも前を向いて歩いていこう!と明るく過ごしていた矢先に車に撥ねられて以下略
本編のスバルよりさらに頭が悪いので、自分が念能力なしでも俺の両眼は万華鏡写輪眼(ダブルカレイドスコープ)出来る(出来ている)ことには気づいていない。
ナルトの螺旋丸(影分身との二人がけ)を見た時には(お前の両手で螺旋丸……!)とか思ってそう
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