じんせい詰め合わせ   作:湯切

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ネタ募集で提供してもらった
・ifでもし原作のイタチルートをそのまま辿って(イタチはサスケと一緒に木葉で暮らしてる)影から弟達を見守るシリーズ
の「暁編」の中です
今回もだいぶ描写を以下略

これと、
・その際これまた原作イタチと同じく鬼鮫と組んで鬼鮫がスバルの本性を知りながら長門達と上手いことやり取りする(モズみたいな)
さらに、
・なんやかんやあって暁に入ったスバル
というネタを同時に消化


「暁編」中

 十蔵が死んだ。

 

 彼の故郷である霧隠れで任務を遂行していたらまさかの水影が出てきた。十蔵は刀が急所を貫いたせいで助からない。

 水影との戦いは随分と苦しめられたが、菊理媛(ククリヒメ)でスライムが受けたダメージをたっぷりお返ししてやったら気絶したのか動かなくなった。

 相手が強ければ強いほど反動がデカいこの術も、案外便利かもしれない。

 

「お前があんな術を持ってたとはな」

『…………十蔵』

「はっ……オレはただ、生まれ育ったこの場所で死ぬだけだ。そんな情けないツラすんじゃねェ」

 

 俺はお面をつけているし、どうせこの顔はぴくりとも表情筋を動かしていないだろう。

 それでも俺の心情を言い当てた十蔵にかけたい言葉がありすぎて、どれを拾い上げたらいいのか分からない。

 

『お前、俺以外に親しい人間は?』

「……待て、なんでお前と親しい前提なんだよ」

『違うのか?』

 

 首を傾げると「そういうのをやめろって言ってんだ!」とキレられた。そういうのってなんだよ。

 

 俺にはこれまで親しい人間なんてほとんどいなかった。友達だと思っていた少年が後になって少女だと分かったことはあるが、同性で友情らしきものが芽生えたのは十蔵が初めてかもしれない。

 

「……いるわけねーだろ。霧隠れの忍は情の繋がりってやつを信じてない」

『でも、俺はお前のこと結構好きだったし、お前もそうだろ?』

「なんでそんな自信満々なんだよ……」

 

 呆れたように呟いた十蔵が口から大量の血を吐いた。もう時間がない。水影のこともある。すぐに追手がやってくるだろう。

 

『なら、唯一親しい人間である俺に何か言い残したことは?』

「…………」

 

 お面を外す。直接目を合わせたことで、言葉にするまで俺が動かないことを悟ったらしい。十蔵は痛みに顔を歪ませながら口を開いた。

 

「さっさと逃げろバカ野郎が………いつか弟に会えるといいな」

 

 十蔵が俺を見て目を見開く。そして、憑き物が落ちたような顔で苦笑した。

 

「なんだよ……笑えるんじゃねーか」

 

 

 

 千千姫(チヂヒメ)でチャクラが半分以下になっていなければ、十蔵の死体と彼が大切にしていた首切り包丁を持ち帰れたかもしれない。

 少し悔やんだりもしたが、彼の「生まれた場所で死ぬだけ」という言葉に救われた。あれで良かったかもしれないと思えたからだ。

 生まれた場所……。俺が死んだ時、俺は木ノ葉に戻れるんだろうか? どんな形であれ、イタチやサスケの元に…………。

 

「十蔵がやられたか」

 

 俺がリーダーに十蔵のことを報告すると、いつものように全員を集めて会合が行われた。相変わらずホログラムでの参加だったので、わざわざアジトに出向かなくて済むのは嬉しい。なんてホワイトな組織なんだろう。

 

「やられたのはもう一人いる」

 

 リーダーの言葉に、俺は真っ先に角都を見た。角都も俺を見つめていたので、たまたまそっち見てただけですよアピールをして正面を向いた。こっち見ないで。

 

「敵にやられたというより、味方にやられたというべきか」

「あの野郎がグズグズしていただけだ」

 

 暁の監視カメラ……いや、アロエが記録していた映像を流して「その判断は皆に任せる」と言った。

 映像内容を簡単に説明すると、角都が敵と交戦中の仲間の背後をとり、仲間もろともカイリューはかいこうせん! していた。

 どっからどう見ても角都にやられてたし、別に仲間はグズグズしていなかった。というより、仲間が汗水流して敵の攻撃を受けている間にテメーは何やってんだと言いたい。仲間の背後じゃなくて敵の背後をとれ。

 

「躱せばいいだけだ。お前もそう思うだろう、うちはスバル」

『…………』

 

 無理やり俺に話を振るのはやめてくれよ。

 

「暁はツーマンセルで動く。どうする角都。相棒を失った者同士、スバルと組むか?」

「それが…………」

『それはやめておいた方がいい。無駄に死体が転がるだけだ』

 

 それがいいと言いかけた角都が不快そうに睨みつけてくる。

 

「誰の死体が転がると?」

 

 俺に決まってるだろ。

 

 わざわざ言わせるなとため息をつきながら首を振る。

 何故か怒り狂った角都がこちらに手を伸ばしてきたのでちょっとビビった。俺のために争わないで!?

 ただの映像だから触れられないと分かっていても、角都のあまりにも鬼気迫る表情は夢にも出てくる。絶対に。

 

 最終的に相棒の件は保留。暫くはソロ活動をすることになった。

 リーダーにはソロの間は任務量を減らすと言われ、この組織はやっぱりホワイトだなあと思った。

 

 

 

 数ヶ月ほどぼっち活動を堪能していたら、ついに新しい相棒がやってきた。

 

「うちはスバルさん……ですか」

 

 振り返った俺の顔に白猫面がついていたせいか、長身の男が少し自信なさげに問いかけてくる。

 男のやけに親近感のある顔つきに目をぱちっと瞬く。なんだか懐かしい。どこか十蔵に似ている気がするし、まったく似ていない気もする。とにかく、不思議な心地だった。

 

「今日からアナタと組むことになった干柿鬼鮫です」

『…………鬼鮫?』

 

 名は体を表すというが、彼ほど外見や雰囲気と合致した名前の人はいないだろう。

 

『お前は背が高いな』

「はい?」

 

 鬼鮫を見上げながら、つい本音が漏れてしまった。首が痛い。

 怪訝な顔をした彼に右手を差し出す。

 

『うちはスバルだ。よろしく』

「…………話に聞いていたよりも気さくな人のようですね」

『俺の国では第一印象をなによりも大事にしている』

「火の国がそこまで社交的だとは知らなかったですねぇ……」

 

 火の国じゃなくてスバル国の話だったが、説明が面倒だったので適当に頷いておいた。

 

『リーダーから聞いていると思うが、俺はこのお面がなければ話せない』

「ええ」

 

 アナタに関することは一通り聞いていますよと言われたので、それならいいやと話を変える。説明する手間が省けてラッキー。

 

『初任務をこなす前に教えておかなければならないことがある。これはリーダーも知らない。お前にだけは言っておきたい大事なことだ』

「……聞きましょう」

 

 真剣な表情になった鬼鮫に、俺は懐から一枚の写真を取り出した。

 

 

 

「ますますアナタという人が分からなくなりましたよ、スバルさん」

 

 お面を外し、水を湿らせた布で付着した血を拭っていると、それを見ていた鬼鮫がため息混じりに言う。

 

「うちは一族というのは、みんなそのような……」

「…………」

 

 お面を付けていないから『それはどういう意味だ』と聞くことが出来ない。

 

 おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行くように、鬼鮫は残党狩りに、俺は川でお面に付いた血を洗い落としていたら、戻ってきた鬼鮫によってこの会話が始まったわけだ。

 どうも鬼鮫は俺という人間を見極めようと必死になってくれているようだが、焦る必要はない。時間は有限だけどゆとりはある。それに、俺たちはまだ会ったばかりじゃないか。

 

 何やら考え込んでいる鬼鮫の背中をバシバシと叩き、まあそこにいろよと焚き火の前に座らせた。困惑気味にこちらを見上げてくる鬼鮫。洗い終わったお面を乾かすために近くの木の枝に引っ掛けておく。

 

 鬼鮫の正面によっこらせと座る。で、何が聞きたいんだ? という気持ちを込めて彼を見る。

 

「…………わざわざ偽りの自分を晒す理由は何です」

「…………」

「スバルさんの素顔を見て、これまでのアナタの言動がおかしいことくらいすぐに分かりますよ」

「…………」

 

 誤解だと言いたかったが、お面が以下略なので神妙な顔をするしかなかった。お前は何を言ってるんだ。

 

「“同胞殺しのうちはスバル”。ぴったりな呼び名じゃありませんか。まるで血の通わぬ……理想の忍と言える」

「…………」

 

 十蔵に似ているからという理由でモリモリと上がっていた鬼鮫への好感度が下がった気配がする。

 暁の連中は何かと俺の過去を掘り下げたがるが、十蔵はそうじゃない。彼は俺の過去に興味はないと言い、律儀にも“今の”俺の話に耳を傾けてくれる奴だった。

 

「私としてはやりやすいですよ。トビのようにお喋り好きではありませんから」

《ばーか あーほ》

「……指文字はまったく分かりませんがね、バカにされたことくらいは伝わりますよ」

「…………」

 

 このまま言われっぱなしもどうかなと思って指文字で貶してみたらすぐにバレた。何でだよ。

 

 その後、乾いたお面を被って一息ついていると、なぜか鮫の産卵についての豆知識を披露されたので『すごいな。まるで鮫博士じゃないか』と褒めたらとても微妙な顔をされた。

 

 

 

 鬼鮫は「お喋り好きじゃない」と言った割に何かと話しかけてきて俺を困惑させた。

 

「アナタでも夜眠る時に死んだ人間が出てきたりするんですか」

『出てこない』

「そうですか。そもそもスバルさんが夢を見るとは思えないですがね」

『死者は出てこないが、生きてる人間は出てくる。……何度も。眠れないくらいに』

 

 しかもクソ重いシリアス話を振ってくるからタチが悪い。

 真面目な話のようだったから真面目に返したら、鬼鮫が意外そうに首を傾ける。

 

『前に見せただろ』

「……弟さんですか」

『そうだ。お前はいつも死者が出てくるんだな』

 

 毎日ではないが、“夢を見たことを自覚している”といつも二人の姿があった。

 二人は幼い姿であったり、最後に見た姿であったり……俺の知らない姿の時には必ず憎しみのこもった瞳でこちらを見つめている。

 彼らが俺に何か言おうとすると目が覚めてしまう。俺は夢の中でも二人の言葉を待つばかりで、何でもないフリばかりしていた。

 

『夢の中に死んだ人間が出てくるのは、お前が不本意だったからだろう』

「……アナタは違うと?」

『俺は望んで同胞を殺した。今も後悔はしていない。すべきことをしたと思っているから』

 

 自分の中にある鬼鮫への印象を改めていると、彼は少し口端を持ち上げて笑った。

 

「案外……私たちは似た者同士なのかもしれませんね」

『それはない』

「…………」

 

 

 

 ***

 

 

 

「お前のようなヤツにこそ、オイラの芸術を理解させてやりたいんだよ!」

 

 俺よりも明らかに年下の男が、呆れたような気配を醸し出している俺と鬼鮫、サソリの前で何かを作り始めた。突然現れた人間の前でこの無防備さはすごいと思う。

 

 彼の名はデイダラ。リーダーによって選出されたサソリの相棒候補だ。

 サソリは「こんな頭悪そうなクソガキがオレの……」と不満そうだったが、彼が以前組んでいた大蛇丸と比べたら遥かにいいんじゃないだろうか。口からデロデロ何か出さないし(多分)、ろくろ首のように首を伸ばして噛みついてこないだろう(多分)。

 ちなみにサソリは大蛇丸が俺に浮気して暁を抜けた時には別の相棒と組んでいたが、その男は最近の任務で死んだらしい。暁は人の出入りが激しすぎる。

 

「ほら、見てみろよ! オレ様が生み出す芸術をッ!」

 

 我が道を行くデイダラは粘土で作った鳥を俺に見せてきた。デフォルメされた鳥は普通に可愛い。

 

「手にとって見てもいいんだぜ」

『…………』

 

 そこまではいいかなと遠慮すると、鬼鮫が「ごっこ遊びに付き合ってあげるなんてお優しいですね」と言った。デイダラはキレ散らかしていた。

 こいつらには協調性ってやつがないのか? いちいち煽らなくていいんだよ。

 

 デイダラは写輪眼になっている俺の目を見てため息をついた。

 

「うちは一族ってのはよぉ……炎の扱いが得意なんだろ? 炎と爆発は兄弟であり家族であり、切っても切り離せない関係じゃねェか」

『…………』

 

 そうか? 赤の他人じゃね?

 

「お面越しでも分かるその澄ました顔が、芸術に触れて驚きに満ちるところが見たいんだよ!!」

「スバルさんとはまだ短い付き合いですがね、それは難しいかと……」

「うるせェ! オイラに不可能はない。うん!」

 

 これ以上は時間の無駄になるし、何より隣にいるサソリの纏うオーラが不穏になってきた。角都ほどではないとはいえ、彼もなかなかに短気だしすぐ手が出るタイプだ。新入りが再起不能になっては不味い。

 

『……俺がやろう』

「お得意の写輪眼か!? オレはてめーの目なんか見ないぞ!」

『目はしっかりと開けておいた方がいい。……開けていても追えないだろうが』

「なんだって? それはどう……」

 

 ――木ノ葉剛力旋風!

 

 呆けているデイダラとの距離を一気に詰め、その腹目がけて蹴りを叩き込む。木ノ葉旋風よりシンプルな技だが、その分、力に比重を置いているから一度でも食らえば強烈だろう。

 壁に打ち付けられ、げぇっと腹の中のもの全部出し切ったと思われるデイダラを見下ろす。

 

『大人しく仲間になれ』

「ハッ……てめーがオイラの芸術の糧になるっていうなら考えてやるよ」

『わざと攻撃を受ける趣味はない』

 

 そもそも俺の将来の夢は弟の火遁に焼かれて遺灰を撒いてもらうことなので、デイダラの爆弾による爆死は一ミリも掠ってない為却下である。爆破されたら遺灰どころか全部散り散りになりそうだし。

 もちろん末路が爆散でも相手が弟だった場合はオールオッケー問題なしだ。火遁と遺灰撒きはオプションだから。

 

「今はなくてもこれからだろッ!」

 

 耳元で鳥の羽ばたく音がした――先ほどデイダラが見せてきた粘土だ。

 

 デイダラが印を結ぼうとする。俺は咄嗟に粘土でできた鳥を鷲掴みにした。

 鬼鮫とサソリとデイダラ、つまりこの場にいる俺以外の全員の頭の上に「!?」というマークが出ていたが、俺は右手に鳥もどきを掴んだまま、勢いよく振りかぶった。

 

「おいおいおい、何するつも……ふごふおおおっ!?」

『返す』

「ぶぁっ!?」

 

 俺が振りかぶった鳥もどきを無事に口でキャッチしたデイダラが印を中断する。

 口から粘土を吐き出して何か叫ばれる前に肩に手を置いた。とりあえず俺の話を聞け。

 

『デイダラ……お前の爆発は芸術作品だ。だからこそ、今のようにただの爆破テロリストで妥協しているのはあまりにも勿体ないと思わないか?』

「……な、なにを」

『暁は常に優秀な人材を求めている』

「…………」

『お前の芸術(センス)が必要なんだ。俺と一緒に来い、デイダラ』

 

 デイダラの顔がボンッと音を立てて赤くなった。

 

「は? ………は?」

 

 デイダラはふるふると首を振って、ビシッと俺を指差す。

 

「てっ、てめーはまだオレの爆発を見てないだろ! うん!!」

『お前も芸術家なら()()()のではなく()()()ことができるだろう? ……いい芸術家ってのは、作品を見せる前に己の存在で相手を圧倒するものだ』

 

 心に某プロハンターを飼っている俺はすらすらと口にした。デイダラがギリギリと唇を噛みしめている。

 うーん、あともう一押し。

 

『ならば、特別に俺の芸術を見せてやろう』

 

 両眼を通常の写輪眼から万華鏡写輪眼へと変化させた。俺と目が合わさったデイダラの体がびくっと震える。

 彼はぼんやりと天井を見上げていたかと思えば、次の瞬間には「やめろぉォォッ!」と頭を抱えて叫び出した。あまりに煩かったので耳を塞ぐ。

 サソリが迷惑そうに俺を見た。えっ、俺が悪いの?

 

「……何をしたんですか?」

『ただの幻術だ』

「それにしてはあの苦しみよう……いえ、なんでもありません」

 

 おかしいなあ。俺の中の芸術(イタチ)と芸術(サスケ)のコラボレーションというかハーモニーをたっぷり幻術で見せてやってるだけなのに。

 

 十分後、サソリに叱られたので渋々ながら幻術を解くと、息を荒くしたデイダラに「テメーだけは必ずオイラの芸術で殺してやる……! うん!!」と言われた。『期待しているぞ、うん!』と返すと逆ギレされた。

 暁の連中はほんと短気なやつばっかりだと思う。

 




スバル(口からデロデロ出さないし……)
54巻鬼鮫(口から巻物デロデロ)
スバル『鬼鮫ェェェェェッ!!!』
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