あのまま墓参りに行っちゃったサスケとナルトと、彼らの後を追った主人公の話。短いです。読まなくても本編に影響はありません。
あの後、サスケ達は言い合いに発展しながらも一緒に手裏剣術の修行をして、もちろん午後の授業にも参加し、今日のアカデミーを終えていた。
俺が通っていた頃は実技中心だったが、最近は座学の授業も半分近く占めているようで興味深い。
授業中は教師が目を光らせてくれていることもあって、俺はアカデミーの外に移動して盗聴のみに専念した。
今日だけでも一生かけても償いきれないほどの罪を犯してしまった気がする。
「じゃあ、後で」
「ああ」
アカデミーの前で、何やら意味深な別れの言葉を交わすナルトとサスケ。これからまた二人で修行でもするんだろうか。
アカデミーの前で立ったままのサスケを置いて、ナルトは自分の家とはまったくの逆方向に歩いて行ってしまった。
不思議に思っていると、数分後にサスケも歩き始めた。気づかれないようにサスケの後を追うと、やがて前方にナルトの後ろ姿が見えてくる。エッ!
「…………………」
どういうことだってばよ。
前を歩くナルトときっちり距離を空けながら、しかし確実にストーカーしているサスケ。
これがたとえば大蛇丸であれば
恐々とサスケを追いかけていた俺は、自分がやけに覚えのある道を進んでいることに気づいた。
アカデミーを出てすぐ右に曲がり、たくさんの人で賑わう木ノ葉の大通りを抜けた先。
――――うちは一族の集落だ。
前を歩くナルトが辺りを警戒しながら、集落の中に入っていく。サスケも少し遅れて合流し、集落の中で落ち合った二人は今度は肩を並べてさらに奥へと進んでいった。
「…………………」
うちは一族の演習場には度々足を運んでいたが、こうやって集落の様子をしっかりと見るのはあの夜以来だ。
人気のない集落は閑散としていて、商店街にまで来ると昔の記憶との差異が大きくなっていく。
商店街の一番端にあった豆腐屋の婆さんや、俺が幼い頃から柔和な態度を崩さなかったうちは煎餅のおばさん、無愛想ながらによくサスケに煎餅をおまけしてくれていたおじさん。
ここには誰もいない。みんな死んでしまったから。
並んで歩いていたナルトとサスケは集落の奥……南賀ノ神社にたどり着いていた。
俺にとっては嫌な思い出しかないその場所も昔とは景色が変わっていて、神社の真横にはいくつもの墓石が並んでいる。
神社手前の木々に身を隠して、サスケ達の様子を窺う。この距離では盗聴は必要なさそうだ。
「スバル兄さん」
うちはスバルと刻まれた墓石に手を添えて、サスケがぽつりと呟いた。ナルトは鳥居の辺りにいて、サスケには背を向けている。サスケを一人にする為の配慮だろう。
俺の位置からは横顔しか見えないのに、サスケが俯いてしまったせいでそれすらも見えなくなった。
「あの夜………もしもオレが手裏剣術の修行で帰るのが遅くならなければ………兄さんは、死なずに済んだかもしれない」
サスケがぎゅうっと拳を握る。
「一年だ。スバル兄さんとの記憶はどんどん薄れていく」
………これは俺が聞いていい内容じゃない。
サスケが"兄さん"と呼ぶたびに例の頭痛が酷くなった。
あまりの激痛に影分身を置いてここを離れることすら考えた俺に、止まることのないサスケの言葉が届く。
「一族の無念はオレが必ず晴らす」
サスケはもう俯いていなかった。
「――――だから、オレを見ていてくれ。スバル兄さん」
サスケの目に宿るのは、憎しみ。
本当は誰よりもサスケを愛し、木ノ葉のために全ての罪を背負って生きることを決めた忍……うちはイタチへの復讐。
「終わった?」
立ち上がったサスケの隣に、いつの間にかナルトが並んでいた。昔と変わらない真っ直ぐな笑みを浮かべて、俺の名が刻まれた墓石を見つめている。
「兄ちゃん、サスケはなんか難しいこと言ったかもしんねーけど、」
ナルトはニシシと笑った。
「ぜーんぶ忘れていいってばよ」
「何勝手に決めてんだ、このバカが!」
「ふぐぁ!?」
わりと本気で殴られたナルトの頬がフグみたいになっている。………この二人、見た目より仲良くはないんだろうか?
涙目になりながら自分の頬をさするナルト。ちょっとどころか滅茶苦茶痛そうだ。
「兄ちゃん……サスケの暴力をどうにかしてくれってばよ………」
切実な響きだった。サスケはふんっと鼻を鳴らして、墓石に背を向ける。
「演習場に行くぞ」
「おう!」
さっさと演習場に向かおうとするサスケをナルトが追いかけようとして、最後に一度だけ墓石を振り返った。
さっきまでの眩しい笑みは消えて、痛みに耐えるような表情。
「…………………」
その唇が僅かに動いたが、音にはならない。
読唇が苦手な俺にはナルトが何を呟いたのか分からなかった。