そこは地獄だった。
私達は、ダンジョンで闇派閥の不審な動きがあるという情報を得て27階層にやって来た。その27階層に待ち受けていたのは、闇派閥が用意したであろう視界を埋め尽くす程の大量のモンスター達だった。私達は闇派閥の罠に嵌り抵抗するも、そこからは蹂躙と言っても過言ではない。
最初は陣形を組んで互いを守り合っていたが、退路は断たれ、モンスターの猛攻によって次々と倒れていく仲間の冒険者達。ある者は悲鳴を上げ致命傷を負い、またある者は絶望に武器を捨て笑うことしかできなくなる。私も魔法を使って抵抗するも、焼け石に水にしかならない。私もマインドダウン寸前で膝をつく。
…ああ、誰でもいい、誰かこの地獄を終わらせてくれ。このままでは全員死んでしまう。この地獄を覆してくれるのなら、私の命を捧げても構わない。だから...。
その瞬間、私達を取り囲んでいたモンスター達が吹き飛ばされる。
私の目の前には、片手には剣を、片手には大盾を持った騎士のような風貌の少年が立っていた。モンスター達は、突然現れた少年に警戒するように一度攻撃の手を止めた。
「よく頑張ったな、もう安心しろ。僕がこの場にいる限りお前達は死なせない、共にこの地獄を塗り替えよう」
少年は地面に剣を刺して、空いた手で私の頭を撫でる。突然頭を触れられた私は立ち上がってその手を払い除ける。
「私に気安く触れるな!」
「おっとすまない。だが、もう立てるみたいだね」
「えっ?」
少年はバツが悪そうに笑っているが、今はそんなことどうでもいい。さっきまでマインドダウンで立つことも出来なかった筈の私は、自身が完全に回復している事に驚く。
それだけでは無い。致命傷を負い倒れ、死ぬ寸前だった筈の仲間達が皆驚きながら立ち上がる。私達は、絶望のあまり幻覚でも見ているのではなかろうか?目の前の少年は、私達の前に出て背を向ける。
「さぁ、立てよ冒険者達!生きる事を諦めるな!我々の全力を持って、全員で地上へと凱旋するぞ!」
その言葉を聞いた私達は、恐怖や絶望といった感情は消え去り、吠えるような咆哮を上げて少年を先頭にモンスター達に向かって行く。
(やっぱりこのスキル、頭狂ってるわ)
どうも皆さん、ライト・ロードです。僕は今、オラリオにいます。
遡る事数日前、ヘルメスがやって来たと思えば僕に帰ってこいと言ってきたのです。だが、待って欲しい。正体は隠してはいたが、僕はアルフィアを抱えてオラリオから逃げ出したある種の裏切りを働いたのだ。この場にアルフィアも居るので言い逃れ出来ない罪を背負っている。
そんな事は関係ないと、笑って言ってくるヘルメス。
「君がオラリオを離れてから、オラリオは大変だったんだぜ?『死の7日間』で多くの人々を救った君は消え、ロキやアストレア、ガネーシャ達が闇派閥の残党を潰すのに大忙し。正直言って、冒険者の数が減り過ぎて闇派閥残党討伐の人手が足りないのさ。
そこで君がオラリオに戻ってきてくれるなら、ギルドが報酬として他のファミリアから君を守ってくれるよ。断ってくれても構わない、その時は君の現状をギルドに報告するだけだから。それで、どうする?」
本当に口の回る神だなヘルメス。
つまり、ギルドは僕を手元に置いて頼みを聞いてもらう代わりに、ゼウスの眷属である僕の立場を守ると。断ったら断ったで厄介な事になるのは目に見えている。
仕方無く僕はヘルメスについて行く事にした。ベル君が泣きながら別れを惜しんでくれる、こっちも泣きそう。「英雄譚〜!」前言撤回、僕との別れよりも魔法で映像化された英雄譚が見れなくなる方が悲しいらしい、逆に泣けてくる。
ゼウスは、「体に気をつけろよ、達者でな」と笑顔で送ってくれた。本当に良い爺さんだよ、ハーレム連呼する変態である事を除けば。
最後にアルフィアなんだが、僕を抱き締めて「早く帰ってこい」とだけ言って先に家に入って行った。ゼウスやヘルメスが驚きの余り目が点になっていたのが印象深い。
こうして、僕はベル君やアルフィアと離れオラリオで生活しています。
はぁ、早く帰りたい。
27階層の悪夢にて
とある冒険者「あの時は死ぬかと思いましたよ。正直言って絶望しか出来ない中で『守護者』が来た瞬間、手の施しようがない傷を負った奴らが皆息を吹き返して立ち上がるんだから、現実を疑ったぜ!しかも『守護者』が居るってだけで、勝てるかどうかも分からないのに勇気が湧いてくるんだ!で、俺達は何とか勝ったんだよ。しかも怪我人は居ても死者は1人もいない!俺達や一部の奴らは、『27階層の奇跡』って言ってるよ!」
尚、とある神は『穢れた精霊』の存在を知ることも出来ず『怪人』も産まれない為ストレスマッハ
とある神の眷属のエルフは、撫でられた頭に手を置きながらぼーっとしてることが多くなり、『死妖精』等と呼ばれることもない