目が覚めると、見知らぬ天井が見える。
……見知らぬ天井……これは、あのセリフを言うしかないな。
「……しらないてんじ「失礼いたします。」
言えんかった……
王道のセリフを言い切る直前に部屋へと女性が入って来た。
「……えっと、ど、どちら様で…?」
「挨拶もなく失礼いたしました。」
蒼い髪が綺麗な女性は自己紹介を始める。
この人が俺を助けてくれたのか。
「私の名前はエイル・アイシュ・ブレイディア、冒険者を生業としています。」
冒険者……やっぱり、異世界、しかも魔物や魔獣がいる世界、あって当然か。
「これはご丁寧にどうも……あ、俺の名前は綾辻悠樹、危ないところを助けてもらったみたいで、ありがとう。」
「いえ、たまたま通りがかっただけですから…………アヤツジ…… それがあなたの名前ですか、家名もあるということは、どこかの貴族の方でしょうか?」
あ、そうか、ここは地球で言う中世に近い世界。
家名を持つ者は貴族か同等の権力を持つ者、って感じかな。
「あ、いや、俺は貴族じゃない、それと名前はユウキの方、アヤツジは苗字、まあ家名だよ。」
「そうでしたか、服装からしてどこかの貴族かと思ったのですが。」
不思議そうに顔を傾ける。
服……あ、日本から来た時そのままだから質がいいのか。
「……質の良い服、家名を持つが貴族ではない……そうなると、貴方は異世界からの来訪者、でしょうか?」
……隠すべきか……神さんに貰った知識ではかなり珍しいが、無いことではないっぽいし……明かしても大丈夫か。
「ああ、その通りに、俺は異世界から来た、多分異世界転移、だと思う。」
「転移者の方でしたか……こちらへ来てどれくらいになりますか?」
「えっと……今日が初日、だな。」
「………そう、でしたか、随分危険な状況でしたが……」
まあ、右腕折れて肋骨折れて、よく生きて……え、足動くんだが……!?腕も治ってるし……!?
「あの、ちょっと聞きたいんだが、俺の怪我を治したのはどうやって?多分、腕とか肋骨とか、すげぇバッキバキに折れてたと思うんだが。」
「治癒術士による回復術によるものですね。」
(やっぱり回復能力によるものか、じゃないと考えられない回復速度だしな……)
「そうか、その治癒術士の人にありがとうって伝えて貰えるか?」
「それならば今しがたお伝え完了しましたね、治したの私ですから」
……マジか、どれだけこの人に助けられてるんだろうか俺。
「そうだったのか……改めて、本当にありがとう、貴方が居なきゃ、俺はあそこで死んでたと思う、助けてくれて、ありがとう。」
ベットに座りながらだが、深々と頭を下げる。
「いえ、気にしないでください、困っている方を見つけたら助けるのは冒険者として当然のことですから。」
そう言って彼女は微笑んだ。
(困っている人がいたら助ける、正義の味方……か。)
俺の憧れる正義の味方、それは、彼女のような人のことを言うのだろうな。
「冒険者として当然……か………なあ、えっと……」
なんと呼べばいいのわからず言葉につまると。
「エイル・アイシュ・ブレイディア、ディアで構いません。」
「わ、分かった、えーっと……ディ、ディア……さん」
「私に敬称は不要です」
…………悲しいことに女子と絡まないオタクには呼び捨てはハードル高いんだぞ……!?
「そ、うか……えっと、ディア、その、冒険者ってのは異世界人の俺でもなれるものか?」
「はい、冒険者ギルドに申請し、認定試験を合格すれば、老若男女、異世界人でも誰でも、登録可能です。」
「認定試験……それって、どんなものなんだ?」
「よくあるものですと、戦闘試験ですね」
「戦闘試験……それは試験官との模擬戦的なものか?」
「ええ、概ねあっています、試験官によって内容は変わるので一概にそうとは言えませんが。」
「そうか……戦闘試験……」
多分、きちんと投影魔術を扱えれば勝てるのだろうが……まだ慣れてない俺じゃきついだろうな……
「戦闘試験と言っても、魔獣や魔物との戦闘が可能か見極めるためのものです、命を懸けたり、大きな怪我をすることは無いはずですね。」
「そうなのか、戦闘になるなら怪我はしそうなものだが」
「魔術師、魔法使いによる異界化の術………結界内を別の世界のルールに書き換える結界が掛けられますので、どのような攻撃も精神力、体力等を削るだけに止められます。」
………固有結界のようなものか。
「そうか、ありがとう」
「他になにか質問等はございますか?」
「んや、これくらいかな」
知識は基本神さんから貰ってるし、気になるものも今は無いしな。
「そうですか、では、これにて失礼致します。」
ディアは綺麗なお辞儀をして部屋から去っていった。
そして3分後気がつく。
「あ、ここがどことか聞いてねぇや」
自分の抜けた頭に後悔しながら、思考を深める。
(この世界には冒険者って職業があり、世界の基盤を担ってる、なら、この世界で生きてく為に、冒険者になるのはいいアイデアか。)
それに、日本にいた頃から、冒険者ってのには憧れてたし、ちょうどイイな。
……その後も、これからのことについて考えていたが、とりあえず。
「もうそろそろ寝るか。」
部屋に有る窓から見える景色は、満天の星空と、どこまでも続いていそうな広大な大地。
今になって実感する。
「本当に、異世界に来たんだ。」
もう元の世界には戻れない、そう考えると、寂しさもあるがそれ以上に、ワクワクとドキドキが、止まらない。
「奇跡が起きて、俺はここに居る…………もう後悔しない、自分の心に従った人生を歩むんだ。」
この異世界を、無限の剣製を使い、心行くまで生き抜き、楽しむ。
異世界に行きたいと願い続けた俺は、その悲願をかなえた、ならば、楽しまないのは損というもの。
心に従い、自由な世界を、楽しもう。