「観客多いな……」
観客席は全席埋まっていた。
中学校の体育館程の広さがある。
(多分集めたのはフールかな、こういう決闘とかそういうの好きそうだし……)
ため息混じりに息を吐く。
実況席らしきところには黒い実況者風のスーツを身にまとったフールがいる。
その傍には、ディアが居た。
『いやぁー!こんなに人が集まると思わなかったね!お姉ちゃん!!』
『ええ、想像以上に集まりましたね、少し驚きです。』
「なんで実況席にディアまで……」
『あ!改めて自己紹介!!私はエイル・アイシュ・フラルージュ!今回の試合の実況を務めさせてもらうよ!そしてこちらは!』
『解説させていただきます、エイル・アイシュ・ブレイディアと申します。』
『私たち二人が実況解説をして行くよ〜!!』
「「「うぉぉぉぉ!!!!!!」」」
観客席からの野太い叫び声が響いてくる。
アイドルのライブかな……?
『今回戦うのは!!アヤト・アヤツジ対!グリーブ!!このふたりの決闘だよ!!』
「なあ、アヤト、だっけか、聞いたことあるか?」
「いや、聞いたことがない、けど、さっきギルドで氷姫と焔姫のふたりに案内されて入ってきたらしいぞ……」
「……許せなくね?」
「あぁ、ゆるせねぇ……!あの二人は……俺たちのオアシスなんだ……!!あの男……!」
「グリーブ!!そんなやつボコッちまえ!!!」
「ぶっ殺しちまえぇー!!!!!」
観客席から俺に対する罵詈雑言が飛んでくるが、それ以上に気になる単語があった。
(……氷姫に焔姫……多分ディアが氷姫、フールが焔姫かな……)
なんか、イメージ会うなぁ……
そんなことを考えていると、グリーブがこっちに近付いてくる。
「さぁて、てめぇをボッコボコにしたら、あの二人をどうとでもできる……楽しませて貰うぜ……!」
下卑た笑みを浮かべながら俺に告げる。
(俺を倒したあとの想像でもしてるのか……クソだな……けど)
俺は相手の目を見ながら、しっかりと告げる。
「……あんたに俺は倒せないよ。」
「あぁ?」
「別に俺に突っかかるのは別にいい、けどな。」
俺は魔力を体内に練り上げ、殺意、敵意と呼べる様なものを込めて、グリーブを睨む。
すると、グリーブは驚いたのか一歩下がる。
「俺は、友達を、お前なんかの下卑た思惑に巻き込ませる訳には行かない。」
魔力を体に浸透させ、身体能力を強化し、両腕の力を抜いて、相手を見据える。
「てめぇ……!舐めた口聞きやがって……!!」
グリーブも魔力を練り上げ、背負っていた大剣を前に構える。
(……ディアはああ言ったけど、自信はないな……魔力量も負けてる……しかも、俺は実践も積んでない……)
考えれば考えるほど、自分自身の勝ちの目が薄いことが分かる。
(でも、負けられない。)
友達を守る為に、全力を尽くして目前の敵を打倒す。
覚悟を決め、心を鎮めた時、フール声が響く。
『両者準備は良さそうだね〜!!!それじゃあ!!!バトル!スタートだよ〜!!!!』
俺は開始の合図とともにグリーブ目掛けて一直線に駆け抜けた。
速攻を仕掛けられたグリーブは想定通りとでも言いたげに笑い、横薙ぎに大剣を振るう。
「甘いな!!速攻なんざ想定済みだ!!!」
「だと思ったよ!!」
振るわれた剣を、体を限界まで低くし回避する。
髪の毛の先が少し斬られ散る。
そのままグリーブへと近付き、練った魔力をチカラへと変える。
「投影、開始!」
脳裏に描くは白と黒の双剣。
赤き弓兵が振るう、正義を目指す青年の振るう、夢の剣。
干将、莫耶。
「切り裂け!!!!」
剣を回避した俺は懐に潜り込み、双刃を振るう。
ギン!!
そんな鈍い音を立てながら、干将莫耶は弾かれた。
「なっ!?」
「言ったろ?甘いなってな!!!!」
(接近戦じゃなく、超接近戦で大剣を振るう好きを与えない……読まれてたか……っっ!!!!)
やはり、経験の差だろう、実際グリーブは幾度も戦闘を行い、こういった戦法を行う敵も存在した、見立ての通り戦闘は経験がものをいう。
100の訓練より1の実践、まだ実戦経験のないアヤトには及ばない部分が多々あった。
斬られるであろう部分に防御魔法を使い魔法の盾を生成していたのだろう。
斬られた直後何やら不穏な魔力がグリーブの腹部から発せられた。
グリーブがにやりと笑う、それはまるで、罠にかかった獲物を見るような目で。
(これはいった……!?!?!?)
嫌な予感を感じとった瞬間。
爆ぜた。
耳鳴りが響き、視界は明滅し、口は乾く。
爆発魔法を使われたのだと気が付くのに、少し時間がかかった。
この戦闘場は試合の際は怪我を防ぐ為に魔法によって一人一人HPが定められており、それがゼロになると敗北となる、そのため、魔法やスキル、物理攻撃といった直接ダメージを与えるものは衝撃は与えるが、HPを削り、本人にはダメージを与えないはずなのだ。
しかし、こうして俺は、爆発魔法を実際に受けている。
痛みすら感じない大怪我。
ふと顔に影が落ちる。
気がつけばグリーブがすぐそこに立っていた。
「あらら、まさか戦闘場の魔法が解けてるなんてなぁ……運が悪いとしか言いようがないなぁ……」
にやにやしながらこちらを煽るように話す。
「その怪我じゃあもう戦えないなぁ……審判!!!」
「はい!!!!!」
ステージの下でこちらを見ていた審判を呼ぶ。
「こいつはもう戦えないみたいだ!!事故もあったようだしなぁ!!」
(よくもまあぬけぬけと……というか審判もグリーブの仲間かよ……)
心中で俺はそう呟く。
「そうですね……では……勝者!ぐり」待ちなさい。」
その声が聞こえた瞬間、時が止まったかのように静まり返った。
爆発による怪我を心配する声も。
俺を罵倒するような声も。
グリーブを評価するような声も。
全て全て、静まり返った。
「審判」
「……は、はい!」
「消えなさい。」
「はい!!」
多分グリーブの仲間であったろう審判はディアの一言で目にも止まらぬ早さで消えて行った。
「……爆発魔法発動の瞬間、戦闘場の保護魔法が解除されたようです。」
「私たちが止める間もなく爆発しちゃったから、少し困惑しちゃったよ。」
「この試合は無効試合とさせていただきます、保護魔法が一瞬とは言え解除され、その一瞬により一方だけ攻撃を受けた、公平な試合とは言えません。」
「おいおいおい!!そりゃねぇぜ!!解除されたのなんてそっちの責任だ!!戦ってる俺たちに干渉するすべはないんだ!このまま決着でいいだろ!!」
無効試合と言う言葉に今まで静かだったグリーブが声を荒らげた。
「私の言うことが、聞けませんか?」
「グリーブの言うことには俺も賛成かな。」
そう声を出した瞬間、観客が一気に盛りあがった。
「ですが……公平性の無い試合など……」
「……いいじゃねぇか!!こいつがそう言ってんだ!魔法を受けた本人がな!!」
流石のグリーブも立ち上がるとは思っていなかったようで、困惑しながらも威勢を張る。
「……お姉ちゃん、いいと思うよ、続行でも。」
「フール……」
「大丈夫だよ、負けないよ、アヤトは。」
「…………分かりました、試合続行を許可します。」
さらに観客の歓声が上がった。
少しして2人は実況席へと戻った。
俺とグリーブは、また真正面で向かい合っていた。
形勢はグリーブへと傾いている。
最初も思ったけど、やはり分が悪い。
技術も足りぬ、知識も足りぬ、経験も足りぬ。
まだまだ及ばない。
だが、及ばないのならば、死力を尽くして抗うのみ。
「あらためて、宣言するよ。」
「何をだよ……さっきまでボロきれのように転がってた野郎が……」
「俺は、お前に…………勝つ!!!!」
宣言と同時に魔力を練り上げる。
今までの魔力とは桁が違う。
全力を超えた、文字通り死力を尽くす魔力生成。
その圧に、グリーブは1歩下がる。
「っ……なめんなぁぁ!!!」
グリーブも目いっぱいの魔力を生成し、俺と向かい合う。
『それでは改めて……戦闘!!!開始だよ!!!!』
「最初から全力だァァァァァ!!!投影!!!!!開始!!!!!」
開始の合図と同時に練った魔力を変換していく。
2度目の錬成、それも、自身の限界値を超えた錬成。
本来、まだそれを作るには足りない。
死力を尽くしても尚。
しかし、それは作れないという訳では無い。
足りないのならば、足せばいい。
命という莫大な魔力リソースを削って。
脳裏に描くは黄金の剣。
騎士王が振るいし勝利の剣。
その名も。
「
暴風を纏いし聖剣が、俺の右手に握られている。
グリーブは投影された剣を握る俺をみて、声を荒らげる。
「何だそのふざけた剣は!!!そんなデタラメな魔力を纏った剣があってたまるかぁぁぁぁ!!!!」
絶叫しながらこちらへと駆け抜けてくる。
大剣を振りかざし、真っ直ぐ振り下ろしたたっ斬るつもりだろうか。
今の俺には、止まって見えた。
多分あと10秒もすれば俺は倒れるだろう。
だが。
(10秒で十分だ)
俺は近くまで来たグリーブの剣を交わし、剣を振り上げる。
光が剣に収束していく。
「覚悟は良いか。」
問いかける間にも光は集まる。
「ま、まっ「返事を待つわけねぇけどな!!!!」
その光景は神々しくもあり、破壊的な魅力に満ちていた。
光が解き放たれ、星すら穿つ、聖剣の波動が放たれる。
その名は。
「
あとがき1回書いたんですが、ミスって消してしまったようです……
作者です。
最近全く音沙汰なく申し訳ないです。
創作意欲が減衰しておりまして……描く気力がありませんでした。
楽しみにしていてくれた皆様には大変申し訳ありませんでした。
また次の更新も長引くかもしれませんが、良ければ待っていてくれたら幸いです。
また次の更新で。
作者でした。