聖剣の波動がグリーブ目掛けて放たれる。
黄金の輝きを放ち、収束された星を穿つ程の魔力がただ一人の人間に向けて向かって行く。
「やめろぉぉぉぉ!!!」
そんなとんでもないものが直撃したグリーブは、戦闘場の防衛魔力に守られながら絶叫を発していた。
既に設定されていたHPは尽きていたが、HPが尽きた後も使用者の命の危険を避けるために防衛魔力と呼ばれる、物理、魔法ともに攻撃を肩代わりしてくれる機構が存在する。
しかし、そんな防衛魔力をガリガリと物凄い勢いで削る聖剣の波動、そんなものを目の前で見ているのだ、次の瞬間には防衛魔力すらすべて削り尽くされ、自分に直撃して死んでしまうかもしれない。
そんな恐怖が今、グリーブを支配していた。
防衛魔力は、はるか昔から存在する魔力貯蔵庫に蓄積された魔力から捻出されるものである。
貯蔵庫には戦闘場を管理するギルドが定期的に魔力を蓄積するために人員を手配し、魔力が尽きぬよう厳重に管理されているため、直ぐに消えてしまうことは無い。
しかし、貯蔵庫とはいえ無尽蔵の魔力がある訳では無い、いつか底を尽き、防衛魔力が護ってくれなくなるかもしれない。
無慈悲な攻撃を受け続けながら、グリーブは心に思う。
(あぁ……俺はここで死ぬのか……)
グリーブは長く冒険者を続けてきた、そのおかげで様々な知識が身に着いていた。
今だけは憎い、この防衛魔力の気候に関する知識がある事が。
知らなければ死ぬかもしれないと言う考えも浮かばなかったかもしれない。
(あぁ、あんなガキに手を出さなきゃ良かった……)
ここに来てようやく、グリーブは理解した、手をだす相手を間違えたのだと。
踏んでは行けない虎の尾を踏んだと。
「俺の負けだ!!だから!!やめてくれぇぇぇ!!!!」
グリーブの敗北宣言と共に、ディアとフールの決着の声が響く。
『『そこまで!!グリーブのHP全損によりアヤトの勝利!!』』
宣言と共に観客が一気に湧き上がり、拍手や歓声が飛び交う。
その大きな歓声に決着したと気が付き、俺は剣を下ろした。
負けなくてよかった……そんな想いが胸中にある中、体から力が抜けていく。
(またかよ……)
いくら鍛えても、身の程知らずなチカラを使ったことに変わりは無い。
しかも今回は文字通り命を削って魔力を生成したのだ、無事なはずがない。
膝から崩れ落ち、大量の血を吐血する。
魔力を使いすぎ、その上に命をけずっての魔力生成、更に、聖剣を生成し、魔力を流し込み続けたのだ。
体はとっくに限界を超えていたし、なんなら今生きていることがありえないほどである。
「アヤト!!!」
「お兄さん!!!大丈夫!?!?」
「もう、むりぃ……」
バタンキュー、なんて、可愛い擬音で済むようなもんじゃない。
どっちかと言うならぐちゃ、みたいな?
自身の吐いた血の中に倒れ伏す。
(もうちょいましな戦闘終了……ないかなぁ……)
まとまらない思考の中、そんな考えしか浮かばなかった。
最後に見えた景色はディアとフールが治癒魔法を俺にかけているところだった。
そんな様子を見て、ほっとした俺は、またもや戦闘後に意識を飛ばした。
目が覚めたのはそれから3日後の事だった。
話を聞いたところ、あの後グリーブは冒険者を引退したらしい。
正確には追放された、という。
戦闘場の保護魔法を解除し、故意的に直接ダメージをおわせたこと、審判の買収を行ったことが原因らしい。
ちなみに審判はフールが最初やろうとしたらしいが、グリーブにどっちか一方と親しい奴が審判をするべきじゃない、とド正論ぶつけられて変わったらしい。
その結果あれだけどて……
あとは、本来HPが尽きた瞬間決着のはずなのだが、俺はしばらくエクスカリバーに魔力を流し続けていたはずだ。
なので俺にも一応危害を加えようとした意思があるとして、なんらかの処罰があってもおかしくないのだが……
そこは先にルールを破ったのはあちらであり、正当な理由があるとして今回は不問に致すらしい、ありがたい話だ。
「それで……ディアさん……?」
「なんでしょうか。」
「いや、なんでしょうかではなくて……なぜ俺は正座させられて……?」
「お兄さんそんなのも分からないの……?」
「わかるけど分かりたくないというか……」
今俺は病院の自室で正座させられていた。
理由はカンタン。
「なぜあの程度の輩に追い込まれているのですか……」
目頭に指を当て、目を揉むように嘆く。
「いやぁ、場数の差というか……逆上した結果と言いますか……」
「確かに経験の差で圧倒される部分もあります、が、それ以前にもっと冷静に観察していれば、懐に誘い込まれていることは読めたはずです……」
「その通りです……」
「なぜあそこまで怒りに身を任せたのですか?最後の攻撃も……下手を打てば相手を殺しかねませんでしたよ?」
「お姉ちゃんもお姉ちゃんで鈍感だねぇ。」
フールはやれやれ、とでも言いたげに頭を振る。
「2人ともさぁ!もう少し素直になりなよ!」
「素直にってたって「まず!」はい……」
この世界、マジで話の割り込みする人多いよねぇ。
「お兄さんは私たちのために怒ってくれたんだよ!お姉ちゃん!」
「私たちのため……?」
「いや、それは、そのぉ」
「そこでヘタレない!私は嬉しいよ!私たちのために怒ってくれて!」
「……まあ、あいつが2人になにするか、わかったもんじゃないし、怒りは……したけど……」
そう言うと、ディアの顔がぼふっと赤くなる。
oh......kawaii......
「……で、ですが!最後の攻撃はよくありません!」
「あれは俺も反省してる、防衛魔力?だっけ、あれがなきゃ俺は、グリーブを殺してたかもしれない。」
「その通りです、力加減というのは大事です。」
「そうだよ〜、力を見せるにも順序って大事だよ?お国に目をつけられて幽閉されちゃうかもよ?」
「幽閉は困るなぁ……まだ2人と居たいし……」
「……そんなときめくこと急に言わないでよ!もう!」
フールが頬を赤らめながら照れるように言い、ディアは顔を赤くして俯いてしまった。
嫌がられていないのは嬉しいが……恥ずかしいな……意図しない、漏れた心の本音だからか……
「ま、まあ!次から自重するさ!あんまり目立ちすぎるのも良くないみたいだし!」
「まあ、ちょっと手遅れ感あるけどねぇ……」
「ええ、既に民衆にも広く知られたようですからね……」
「え?」
そんな気の抜けた声を出した俺に、フールが新聞のようなものを渡してくる。
そこには、俺がエクスカリバーをぶっぱなしたシーンがでかでかと描かれており、B級に打ち勝つ無名の少年!と見出しに書かれていた。
俺は窓から明るい空を見上げ思う。
(ちょっとどころか完全に手遅れでは……?)
しばらくぶりです、作者です。
書いてた8話、9話が全部飛んで萎えてました。
ちゃんと保存はしたんですがね……
長いこと書かないで申し訳ないです。
期間がかなり空いているので、書き方がまた変わっているかもしれません。
自分じゃ分からないのでなんともですが……
それでも面白いと思っていただけたら、幸いです。
ストックとかもないので、また気が向いたら書いていきます。
作者でした。