第一章-1 初夜・アーチャー陣営
《蝦碑市千藤邸》
「マスター、序盤戦はどう立ち回る予定でいらしていますか」
「そうね……」と、彼女に淡い返事をしてみる。
聖杯戦争。極東で行われるとされる、へんてこな儀式が開かれるのだと、一週間ぐらい前に知った。勝者に与えられるは「何でも願いをかなえる聖杯」だという。願わくば、二度とこんな争い事が起きないようにしてほしいが………
私たち千藤家はこの蝦碑市の統轄をしている一門で、言うほどお金持ちではないけど、ちょっと偉いお家なのだ。そんなこともあって、殺し合いだなんていうものだから、仕方なく、私たちも参加して、この争い事をなるべく穏便に済ませようとしている。喚ばれた英霊はアーチャーとか言う、可愛い女の子の英霊だった。女の子はさすがに幼い喩えか。若い女性だ。私にも負けない、というか、優に上回る別嬪さんだ。私程度の美形は彼女の輝きの足元にも及ばない。
そんな私こと、「
「ひとまず、マスターの権限は兄さんに託し、あなたへの指示は兄さんに代行して貰うことにしましょう」
「……はっ」
アーチャーはうやうやしく、跪いて、細く厚い声で応えた。
「ごめんなさいね、急にいきなり、マスター失格の行動をしてしまって」
「いいえ、とんでもない。これも正当な作戦。マスターのご命令とあらば、一切の否無しに、私はそれに従います」
「麗花、本気なのかい?僕も、少し自信がないんだけど……」
アーチャーの隣に立っているのが「
実は……私は世間様では、私は一人娘ということになっている。それは、私のお父さんが戸籍をいじってこうなったらしいが、私のお父さんはもう三年前に亡くなってしまった。今じゃ誰も解決できない永遠の闇だ。可哀相なので、今はバンバン外に出して、私は妹らしく振る舞っているが。
「いいですよ、私は兄さんを信じていますから。それじゃあ早速だけど、兄さん、アーチャーにこの街を案内してあげてくださいますか?」
「うん、分かった。それじゃあ、行こうか、アーチャー」
「はい」
アーチャーは立ち上がって、兄さんについていく。退室時も、しっかりと「失礼します」とお辞儀をして去っていった。
ここまで作法が成っているということは、日本人だろうか……?まぁ、歴史が大の苦手な私には解るわけが無いのだろうが……
◆ ◆ ◆
僕こと千藤幹太とアーチャーは、二人で屋敷の外にでて、夜の街を歩いていた。
「抜かり無い探索ですね。同じ道を通ることなく、成るべく人通りの多い道を通る。戦の才がお有りかと存じます」
「あはは……そんなことないよ、これぐらい、調べたらすぐ判るし。人通りの多い道を辿るとすると、屋敷から一番近い通りを通って、三つ目の信号で右折して道なりに1.8キロ歩くとコンビニがあるから、そこの横にある橋下を通れば街に出れるよ。直線距離では最短の2.9キロ。他のところから行くと、すごく時間が掛かるんだ。だから、僕はいつも、このルートで街に行ってるよ」
「流石……土地の情報をよく知っているのは、戦においては最大級のアドバンテージに成り得ます。貴方たちと共に戦えば、間違いなく、此度の聖杯戦争は我々の勝利に終わることができる。貴方たちの援護有る限り、このアーチャー、貴方たちの望みを叶える糧となる事を此処に約束します」
「……う、うん、それは頼もしいね。よろしく頼むよ」
堅苦しいな……僕は、あんまり、こういうのが苦手だ。僕はマスターではないのだから、もっと、こう、崩して貰っても構わないんだけど………
「それで、貴方の事は何とお呼びすればよろしいでしょうか」
唐突に呼び名か。僕は、一応、学校では苗字をチョコレートの銘柄と掛けてセントーと呼ばれているけど……
「僕?僕は千藤幹太。困ったらセントーとでも呼んでくれればいいよ。あ、でもセントーって、麗花もか……」
「解りました、ではセントーとお呼びいたします。マスターはマスターです。私がマスターの事をマスター以外の名で呼ぶ資格はない。よろしくお願いいたします、セントー。貴方に忠誠を。マスターと貴方の二人を、私は死力を尽くして死守してみせる」
「あはは、頼りになるね、君は。それじゃあ、よろしくね、アーチャー。まだまだ未熟者だけど、妹に代わって、君の事を責任もって守り抜くからね」
自分なりに、ニッコリと笑ってみたとおもう。
それが彼女を怒らせてしまったのか、彼女の顔色が崩れる。
「い………いぇ……わ…たしは、マスターを護るものであって……で…であって、その、護られるものでは……」
「顔色が悪いけど、どうかした?サーヴァントも体調を崩すものなのかな?そうか、じゃあ今夜の散策は終わりだ。何事も無かったし、良いことだ。疲れただろうし、お詫びに今日は僕がおぶって帰るとするよ」
「へぇ????え…!?いゃ、まって……」
よっこいしょ、とアーチャーを背中に乗せて屋敷に戻る。
少し、可哀相な事をしてしまったかも知れない。
でも、こんなにも愉快な新しい家族が増えたこと、僕はとても誇らしかった。きっと、今日から、善し悪しはあれ、騒がしくなるんだろうなと思った。
◇ ◇ ◇
キャラ紹介【アーチャー陣営】
千藤 麗花(せんどう うるか)
アーチャーのマスター。
今回の聖杯戦争の舞台、蝦碑市を統轄する一門、千藤家の一人娘。争い事を好まない、自称「マスター失格」。居ないことになっている兄のことを誰よりも大切にしており、今回の聖杯戦争の序盤戦では、兄に自分の代わりをやって貰い、自分は陰ながら兄の活躍を見届けることになる。
アーチャー
弓兵のサーヴァント。
麗花に仕える、忠誠心に満ちた礼儀や作法に満ちた若い女性。麗花曰く別嬪さんだそうで、同姓の麗花すらも魅了する。マスターである麗花だけでなく、マスターの権限を代行する幹太にも忠誠を誓い、マスターと幹太両方を死守するつもりでいる。普段は威風堂々とした風格だが、ときには、世間知らずの処女らしさも見せ、特に幹太の前ではその鋭利な態度を緩ませることも。
千藤 幹太(せんどう かんた)
アーチャーの一時的な保持者。
麗花の兄で、全身真っ黒の独特なファッションが特徴の若男。千藤家の長男だが、何故か戸籍上は、父親の工作によって、居ないことになっている。父親の死と同時に、現当主に置かれた麗花の許しを経て社会に復帰。麗花からアーチャーを託され、彼女と共に、一時的なマスター代行として聖杯戦争に擬似的に参加する。
今作は、私、マジカル赤褐色が勝手に創作した、完全オリ聖杯戦争です。勝手な解釈や滅茶苦茶な展開の多い、凄まじい駄文となっており、まだまだ作者が慣れないところを思わせる片鱗がありますが、興味を持っていただけたら幸いです。これから、凄まじいマイペース投稿になりますが、是非とも、マジカル赤褐色をよろしくお願いいたします。