かつて自作した聖杯戦争   作:マジカル赤褐色

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セイバー陣営とアーチャー陣営との衝突が始まってまもなく、セイバーのマスター銀子はアーチャーのマスター麗花に襲撃を受けてピンチに陥る。───そこに現れたのは……
そして、街の外れでは二人の強力なマスター同士の闘いが始まろうとしていた。


第六章 共闘交渉

 

 

《ライダー陣営》

 

 

「さーて……吸血鬼は吸血鬼は、っと……」

 

「いや、そんなすぐには見つからないだろ……」

 

わたしとライダーはさっき共闘関係を結んだアサシンたちと、吸血鬼探しをしていた。アサシンたちは街の北、わたしたちは南を探索することにした。

 

「アンザス、令呪はどうだ?」

 

「ばっちり、三画ありますよ~自分用のやつも三十画ちゃんとあります!」

 

「自分用……?」

 

「はい、身体強化に使うやつです。まぁ、実質、無限ですけど」

 

わたしの令呪は、規格外レベルの能力を持っており、司祭代行さまから貰い受けた三十画の【特殊な】令呪なのだ。その特徴はどうやら聖杯戦争としての令呪にも引き継がれているらしく、あいにくと令呪には困ってないわけだ。

 

「アンザス」

 

「うん?アレは………」

 

向こうに、背丈の高い男がいる。貴族のような服装を着て、その上に熊のような毛皮のコートを肩口からかけている。

その男がサーヴァントなのは、見ただけで理解した。

その男は大鉈を取り出すと、一直線に、わたしたちに斬りかかってきた。

 

「危ない!!」

 

ライダーが攻撃を大盾で防ぎ、渾身のキックで相手を吹き飛ばす。

 

「大丈夫ですか!?ライダー!おっぱい揉みますか!?」

 

「その乳貫くぞオマエ!!冗談もほどほどにしろ!!」

 

ライダーの激昂を見るに、無事なようで助かった。1.9メートル近くあるあの大柄な身体とは裏腹に、とんでもない速度だった。セイバーだろうか。だが、攻撃が明らかに一撃重視の斬撃で、騎士のような技量を持ってはいたが、あの剣術、全うなセイバーの類いではない。

 

「驚きですね……その剣術、対死徒用の剣術ではないですか。どこでそんなもの覚えてきたんですか?」

 

男は計ったり、といわんばかりに自信に満ちた顔で、

 

「おれを喚ぶためにはそのままの姿では喚ぶことができないそうでな。この男の身体と自我を借りなければこの世界に残れなかったわけだ。この男は奇遇にも、貴様の言う、対死徒用の剣術とやらを会得している。それが、おれの力にも引き継がれただけだ」

 

「ふーん、擬似サーヴァントですか。どこぞには、対死徒用の剣術を生み出した死徒がいるとはいいますが、そのお弟子さんですかね、まぁ、いっか。ライダー、令呪を以て命じます、そのサーヴァントを倒しなさい!」

 

わたしの左手の甲にあった、令呪の輝きが薄れた。三画あった令呪が二画に減る。

 

「このおれが狩りとはな。いいだろう、逃げ回る熊を狩るのはこの器が覚えているようでな……!おれはサーヴァント、ランサー。その炎(ねつ)、貰い受けるぞ、ライダー!!」

 

ランサーがライダーに接近する。大鉈を構えて斬りかかる一文字。

 

「すまない、アンザス、この場所では不利な可能性が高い、少し場を離れるぞ!」

 

ライダーが逃亡する。その背中をランサーが追う。ならばわたしの仕事は終わりか。あとはライダーの勝利を待つだけ。

 

「おや、誰かと思えば、アンザスじゃないか。この聖杯戦争にいるのは、僕だけだと思っていたのだけど」

 

「!?」

 

背後から声がしたから、振り返ってみた。木陰から、誰かがやってきた。

片手用の魔杖を持ち、柔らかい顔つきの、碧毛の若い男性だ。貴族のような服装の上に、白い上着を掛けているが、その服装……

 

「ユグドミレニア……?あいにく、ユグドミレニアに知り合いなんかいませんよ?」

 

「そうかい……知らないなら今のは忘れてくれ。その方が、都合がいいのでね。ならば、初めまして。僕は、ケイアス・ヨルムンガンド・ユグドミレニア。ユグドミレニア最強の戦士、ランサーのマスターだ」

 

「わたしはアンザス・マリオン。教会の鍵。ライダーのマスターです」

 

知らない……といえば知らないのだが、なぜか、その顔に見覚えがなくもない。わたしに知り合いは数少ない。だというのに覚えていない相手など、初めましてもいいところだ。なのに、彼を見ると、妙な高ぶりを覚える。

 

「さて、時間もない。僕から幕を引いてやろう。最後に、花だけでも持っておくかい?」

 

そう言って、ケイアスは杖から、薔薇のような花を作り出した。

真っ青な、茎も花弁も全てが真っ青な、綺麗な硝子のような薔薇。

ケイアスはそれをわたしに投げ渡す。手に受け取ってみれば、ひんやりして、白い煙を放つ、綺麗な青い花だった。

 

「器用ですね、氷細工ですか?綺麗ですね、感心します。素敵なプレゼントです」

 

氷の花は綺麗だし、珍しいし、多分彼の前でしかみれないだろうから、とりあえずポケットに入れといた。別に、なんか害を及ぼす要素もない、ただのプレゼントみたいだし。

 

「受け取ってくれるとは、ちょっと驚きだ。嬉しいな。ありがとう。………では」

 

「始めましょうか」

 

わたしは、前に歩みでて、ケイアスと向き合い、いつものように、戦いを始めた。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

《千藤邸》

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

私は千藤邸倉庫の物陰に身を潜めていた。途中でさっきの四人とはまた別の警備員を六人も相手してきたため、体力的には今は結構厳しい状況だった。

 

「大丈夫……セイバーは来てくれるはずだから………」

 

「そうでもないかもしれないわよ」

 

「!?」

 

瞬間、ドゴォンと音を立てて、天井にあった通気口を突き破って千藤麗花が私の目の前に落ちてきた。

 

「────アーチャーのマスター………!!」

 

「えぇそうよ、セイバーのマスター」

 

アーチャーのマスター、麗花は茶色い手袋を取り出して手にはめて、そのまま私ににじりよってくる。

 

「────よくもまぁ、高を括ってくれたわね」

 

アーチャーのマスターはかなりご立腹のご様子だ。手袋を嵌めた拳を握り締めている。

 

「それはこっちの台詞よ、私は聞きたいことを聞きに来ただけなのに、こんな酷い目に遇わされたじゃない。警備員十人やられたって、文句言えやしないわよ」

 

「いいえ。あなたが一方的に叩きのめしてきたんでしょ!?」

 

「それじゃあ、セイバーを殺させようとしたのは誰の命令よ」

 

「私の命令に決まってるじゃない。マスターとして、サーヴァントにサーヴァントを殺させようとしただけ。あなたが無駄な抵抗するせいで、あなたが暴れだしたのを私が始末付けないといけなくなったじゃない」

 

千藤麗花は長い髪をかきあげて、睨むように私を見据えて、歩み寄る。

 

「AzoLto!」

 

途端に、麗花の手袋が炎に包まれる。炎とは思えない位に、明るく綺麗な輝きを保ちながら、焔が燃え上がっている。

 

「なに…それ!?」

 

「アナタ、魔術師じゃないの?」

 

麗花が殴りかかってくる。燃え上がった手で、私に突進してくる。

 

「危ない!?」

 

鉄パイプと炎の手のぶつかり合い。私が全力で振り回した鉄パイプは容赦なく相手に止められ、

 

「ぶっとばす!!!」

 

麗花のストレートが炸裂し、

 

「おぉら!餓鬼がよぉ!!」

 

それは横から扉を破壊して中に入ってきたセイバーに遮られた。

 

「セイバー!?」

 

「嘘でしょ!?アーチャーは……!?」

 

「おう、あんまりにも動き回るもんでな。ちぃとばかりこてんぱんにしてやったぜ」

 

セイバーが、ボコボコにされて完全にのびてしまったアーチャーを床に転がす。

 

「う、ぐ……申し訳ございませ…ん、マスター………私と、したことが……油断、してしまいました………」

 

「アーチャー!!」

 

麗花がアーチャーに駆け寄る。

 

「大丈夫かい?ギンコ?今頃、警備員に袋叩きにされてるかと思って心配してたんだが、手前、案外丈夫なんだな、見直したぜ」

 

「ふん、遅いわね、相変わらず」

 

笑顔で皮肉っぽく言ってみた。危ないところだった。セイバーがあと少し、来るのが、いや、アーチャーを止めるのが遅かったら、私は今頃やられていただろう。

 

「突然だが、ギンコ、条件付きでアーチャーを見逃すことになった」

 

「は?」

 

「え!?」

 

私と麗花が同時に驚愕する。さらにそれと同時に、セイバーが壊した扉の奥から、また別の誰かがやってきた。

 

「あ、あなたは、確か……」

 

「兄さん?」

 

私が廊下でぶつかった、黒ぶち眼鏡の青年だ。

 

「みんな、突然だけど、提案があるんだ。さっき、セイバーと話してみて決めたんだけど、僕たちで共闘関係を結ぼうと思うんだ」

 

倉庫の中がしーん、と静寂に包まれる。しばらくの沈黙のあと、

 

「あぁ……うん、いいと思うよ……私は」

 

とりあえず私は賛成しておく。共闘ってことは、アーチャーたちと一緒に戦えるわけだ。こちらにとっては非常に好都合だ。

 

「何を……馬鹿なことを言っているんですか兄さん!!そんなの、するわけないでしょう!?彼らは敵ですよ!」

 

「おんじゃあ、交渉は決裂だ。問答無用でアーチャーにトドメぇ刺してやらぁ。もちろんその後で手前らもぶった斬る」

 

「………う…」

 

麗花が唸りだす。………アーチャーが重傷になっている以上、彼女らに拒否権はない。

 

「えぇい、こうなったら仕方ないわね。いいわ。力を貸してあげる。その代わり、貴方たちも私の護衛なんだから、真っ先に敗退でもしたらただじゃおかないからね?」

 

麗花が処置なしと言った形でオーケーしてくれた。これが上から目線なのがなんとも彼女らしい。

 

「俺たちからしちゃあ、手前らのアーチャーが一番の泣き所だぜ」

 

セイバーが真顔で麗花の台詞の痛いところを突いてしまった。

 

「なんだと……貴様……」

 

セイバーが口を滑らせたお陰で、アーチャーが声を荒げる。

 

「ちょっ……ちょっとストップ!二人とも。仲間なんだから、あまりケンカしないでほしいなぁ……ね?」

 

麗花のお兄さんが間に割って入って爆裂寸前のアーチャーを制止する。

 

「おうよ、そういや、手前らの名前訊いてなかったな。俺は普通にセイバーって呼びな。手前らは?」

 

セイバーの質問に、麗花のお兄さんはにっこりと答える。

 

「僕は千藤幹太。うちの麗花(いもうと)がお世話になるね」

 

「私は円堂銀子。セイバーのマスター。生憎と、普通の女子高校生だけど」

 

「改めて、千藤麗花よ。アーチャーのマスターで、この街の管理者。そっちはアーチャー、私のサーヴァントよ」

 

麗花の言葉にアーチャーは無言で頷く。

 

「よし!それじゃあこれで契約は成立だ!今日から俺たちは味方同士ってわけだな!よろしく頼むぜ!!」

 

なんか、セイバーのこういうところは、私も見習わなきゃな、と思う。ともあれ仲間は増えた。これなら、少しは生き残る自信が湧いた。けれども、今の私が一番心強いと思ったのは、今日のセイバーだけだった。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

キャラ紹介【アーチャー陣営-バトルスタイル】

 

 

千藤 麗花(せんどう うるか)

アーチャーのマスター。

モノを燃やすことを得意とする、一芸特化の魔術師で、後方支援よりも、自分から前に出て戦うことが多い。魔術の詠唱は僅か一節。最小限の韻しか踏まない代わりに、魔術の発動速度は非常に早い。当然、対魔力を持つ三騎士サーヴァントには、勝算無しだが、魔術師同士での闘いなら、ある程度分がある。

 

 

アーチャー

弓兵のサーヴァント。

弓兵のクラスでありながら、白く輝く刀を使った白兵戦を好んでおり、弓を出す機会は少ない。その分、剣術には長けており、剣の英霊であるセイバーと渡り合うほどの実力をもつ。無論、弓を握った時のその強さはアーチャーの名に恥じない。

 

 

千藤 幹太(せんどう かんた)

アーチャーの代理マスター。

本人の戦闘能力は皆無。魔術もろくに使えない一般人。ただ、モノを調べることは得意で、警察が総力を尽くして探し出す情報を、一人でパパッと調べあげて、辞書よりも分厚い資料を何冊も生み出してしまう。情報戦においては全マスター最強。




いつも見てくださっている方、ありがとうございます!マジカル赤褐色です!
さて、聖杯戦争恒例事業、共闘タイムです。結構キャラが濃い登場人物が多く、男女比率もしっかりしてると思うので、まぁ、どれが誰の台詞かには困らないように工夫しています。これは制作裏の話ですが、今作は登場人物が多いので、キャラによって性格を大きく変えて、一人称とかも、「おれ」や「俺」、「オレ」など、一人称でも区別がつくようにしています。最終的にうまくキャラが構成できたので、我ながらなかなかに上手いテクニックだったとは思います。ここからの展開にも是非ともご期待ください。次回もお楽しみに!
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