かつて自作した聖杯戦争   作:マジカル赤褐色

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セイバー陣営とアーチャー陣営の共闘関係が結ばれた一方で始まっていた、ライダーとランサー、ライダーのマスターとランサーのマスターの闘い。ライダーのマスター、アンザスの持つ30画の令呪に翻弄されながらも、ランサーのマスター、ケイアスは、遂に、彼自身の持つ奥の手を解放する。アンザスとケイアスの二人のかつての因縁が、二人の闘いの火蓋を切る。


第七章 鍵と檻

 

 

《蝦碑市近郊》

 

 

「はぁん……見失ったのか。ノロマめ」

 

オレことライダーは、高速道路を疾走して、道を走る車を追い越しながらランサーから逃亡していたが……どうやら、あの男、もうオレを見失ってしまったようだ。まぁ、たしかにあのような分厚い服装と大柄な身体。身軽なライダーであるオレに追い付く筈もなく………

 

「───!?」

 

というのは甘かったようだ。背後から、ランサーが宙を舞っていたまま高速で空中から大鉈で斬りかかってきた。

 

「馬鹿な!?」

 

手にした槍で間一髪攻撃を弾く。驚いた。奴はちっとも遅れていないどころか、むしろこちらの先回りをしていた。

すぐさま近くのビルの屋上に飛び乗り、ランサーと向かい合う。

 

「やるな……オマエ」

 

「おれも侮られたものだ。「ノロマ」がどうと言っていたな」

 

「あぁ。速さじゃ、此度の聖杯戦争では間違いなくオレが最速だ。オマエと比べられても困るな」

 

「そうか、貴様の迅さとやら、このおれに見せつけてみろ、ライダー」

 

「上等だよ、いくぞ!ランサー!!」

 

地を蹴って、槍を持ち直し、ランサーに走り寄る。

オレの手持ちの武装では、些か荷が重い気もするが、関係ない。相手は鉈を持っている。得物のリーチの長さは明確。相手の攻撃よりも、こちらが先制して攻撃を繰り出せる。

一突き、二突き、三突き。その三連撃はランサーに届くことなく、鮮やかな動作で躱される。

攻撃を避けたランサーはオレから急激に距離を取り、鉈を持たない空の左手を虚空に伸ばす。

そこから生まれるは、二つの青い炎。蒼炎は手となり、このオレへと放たれる。

 

「なんだそれは!?」

 

すかさず盾で防ぐ。飛び道具はオレの盾には通じない。宝具の投擲すら通用しないのだから。しかし、その炎はおかしい。これは、熱現象ではなく……魔力として発現した発火でもなく、ただ、この世界にも無い、魂の宿る炎。

 

「オマエ……冥界から炎を引き出すとか、正気か…?」

 

「冥界ではモノの力は極端だ。熱を引き出せば、それが日炎に相当する熱であることは解るだろう、ライダー」

 

「冥界から神様がお出迎えってワケか。わざわざご苦労様だな……!」

 

ならばこちらも容赦はしない。既に離れている距離を、さらにバックステップで引き離す。そしてそのままビルから落下。

 

「来い!」

 

オレの呼び掛けと共に、大空から二頭の馬が引くチャリオットが舞い降りてきた。

すぐさまチャリオットに乗り込み、手綱を引き上げる。

 

「行くぞランサー!!」

 

戦車が宙を駆ける。そのままランサーに突っ込んで行く。

時速300キロを上回る戦車の猛突進に、ランサーは判断すら追い付かない。

戦車がランサーの真正面に到達する。ランサーは顔色を変えない。判断すら間に合わず、戦車はランサーに衝突するままの勢いに、ランサーは突発的に、

 

「──遅い」

 

「なっ……!?」

 

地面から黒い影が出現する。その中から現れるのは、白い、鋼鉄の長槍。ランサーはその手で柄を握りしめ、一気に引いて、

 

「宝具か……!?」

 

その槍の宝具を一気に突き放つ。

 

「────我、咆哮の魁偉為り(ヴァイデント)!」

 

オレの戦車に向けて、いや、その戦車に乗るオレに向けて放たれた槍。戦車は急停車など不能。今ブレーキをかけようと、余った勢いで槍にぶつかるのは避けられない。回避も間に合わない。ならば、こちらも宝具で防ぐのみ……!

 

「────極天織成す七つの円環(イリアース・アイアス)!!!」

 

オレの前に、七つの円環を成す花のような盾が生み出される。ランサーの槍を防ぐべく、普段の盾とは比べ物にならないサイズの大盾が現れる。

結果は見事な矛盾だけで終わった。

槍は弾かれ、ランサーは無傷ながら吹き飛ばされ、オレも盾で防いだことで、無傷ながら弾きとばされた。

この攻防は引き分け。ただ、お互いの手の内を明かしただけだった。

 

「やるな、冥府神。オレに手詰まりと来たか」

 

「見事だ、大英雄。アキレウスに次ぐ大英雄の力、見せてもらった。おれを惜しいところまで追い詰めるとは、流石だ。ご当主に伝えなければな。おれに槍を出させる(つわもの)がいたと」

 

ランサーが飛び退き、ビルから落ちる。

 

「─────!!待て!!」

 

オレもランサーを追ってビルから飛び降りるが、遅い。

ランサーが地面に槍を突き立てると、大音響を立てて、近くの地面が光り、亀裂が生じる。ランサーはその中に消えていき、亀裂はすぐに元通りに戻って、後は何事もなかったように、ただの道になってしまった。

 

「チッ……逃げられたか」

 

オレは諦めて、すぐにビルから撤退し、アンザスのところへと戻っていった。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

《蝦碑市南、人口林》

 

 

「そこだよ!」

 

「おっと」

 

教会の代行者とユグドミレニア最強の戦士の決闘は、実に熾烈を極めていた。

ユグドミレニア最強の戦士、ケイアス・ヨルムンガンド・ユグドミレニアは氷を使った魔術で、遠距離からの氷弾射出、地面からの氷柱攻撃で、広範囲かつ強力な攻撃で、代行者を追いたてる。

対する教会の鍵、アンザス・マリオンの武器は聖堂教会の代名詞たる武装、投擲特化の剣、黒鍵のみ。だが、単純な構造の脆い武装でありながら、アンザスは自由自在に振り回し、氷の魔術師に牙を剥く。

 

「うーん、強いですねー」

 

かれこれ百発ほど放たれた氷弾をすべて黒鍵で斬り伏せている。代行者の力たる現れだろうか。

 

「まぁ、その力も、質量を変えるだけでこの通り」

 

先程まで1メートル大だった氷塊が、一気に6メートル大の大きさに変貌する。あの落岩を長い割り箸で防げるだろうか?

 

「───令呪解放、黒鍵強化」

 

それが、できるのだ。アンザスの黒鍵は、ケイアスの氷塊をことごとく粉砕した。黒鍵を強化した今、もはやあの氷塊はでかい的。小さく細かい氷塊のほうが、アンザスにとっては不利なものだ。何事も、大きいから強いとは限らない。そうでなければ人間はここまで成長しない。キリンかゾウかワニかクジラの世界になっていただろう。

 

「なるほど、上手い手だね」

 

ケイアスが杖の先端でアンザスを突き刺す。

その瞬間、

 

「───令呪解放、空間転移」

 

アンザスの姿が消え、ケイアスの背後に現れる。

 

「む───?」

 

「───令呪解放、黒鍵強化。令呪重複解放、黒鍵加速」

 

アンザスの令呪は30画もある。いまここで4画使ったところで何が損もない。

全力の黒鍵投擲。それを強化した上にさらに加速させた。

今度の一手は決まった。アンザスは勝利を確信していた。彼女が把握する限りでは、ケイアスはこれに対処する術がない。

もし、対処できたのなら、それは、

 

「───令呪解放、緊急回避」

 

「………そんな、令呪!?」

 

それはアンザスの認識が甘かったということだ。

ケイアスは右腕の令呪の輝きを一つ失うのと引き換えに、アンザスのこの一撃を躱してしまった。

 

「何故、令呪を……それも、30画!?」

 

「覚えているかい?アンザス。かつて、君を従えた司祭代行のネロア。彼は、全部で60画の自己令呪を保持していた。だが、彼はその令呪の数に力を奪われ、器が耐えきれず、僅か34という若さでこの世を去った。彼は自身のもつ60画の令呪を、彼の最期を看取った、二人の代行者に一人30画ずつに振り分け与えた。その二名の代行者は、彼が従える内で最強と呼ばれた者だった。その二人は、「教会の鍵」、そして、「教会の檻」。覚えているかい?」

 

「そう……ですね。司祭代行様はわたしたちに令呪を遺していった。それはたしかな事実です」

 

アンザスはケイアスの質問に答える。

 

「ユグドミレニアは、様々な理由で衰退の一途をたどっていた魔術家系を取り込むことで、一大家系として成長していった。その一角であるこの僕が、一体どういった経緯で、ユグドミレニアとなったか、教えてなかったね。僕は前任の職を引退して、魔術を学ぼうと時計塔を志した。そうしたら、追い出されたよ、入ることすらままならなかった。けれども、ダーニック様はそんな僕を引き取ってくれた。最強の戦士としてね。僕が時計塔に受け入れられなかった理由は簡単だ。僕はもともと、聖堂教会の代行者だったからだ。当時、代行者ケイアスに与えられた二つ名。それが、「教会の檻」だ」

 

「あなたが、わたしの同僚……?」

 

そうとも、とケイアスは頷く。今宵、二人の代行者が鉢合わせた。

 

その黒「鍵」の実力から、教会の「鍵」と呼ばれたアンザス・マリオン。

その氷「檻」の脅威から、教会の「檻」と謳われたケイアス・ヨルムンガンド。

 

鍵と檻が、聖杯戦争にて、敵同士として向かい合った。ここからは、代行者とユグドミレニアの闘いではない。

鍵と檻の、互いの堅(つよ)さを証明する、主に捧げる幕引き。主より生まれた生命を、天に掲げる。ここからの戦闘に彼らの正義や私心は存在しない。そこにあるのは無差別な暴力と無尽蔵な火雨。

代行者同士の決闘の火蓋が、切って落ちた。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

キャラ紹介【ランサー陣営-バトルスタイル】

 

ケイアス・ヨルムンガンド・ユグドミレニア

ランサーのマスター。

魔術を学ぼうと時計塔を志したが、受け入れられなかったところをユグドミレニア当主、ダーニック・プレストーン・ユグドミレニアに取り入れられたことでユグドミレニアの魔術師、ユグドミレニアの切り札たる最強の戦士となった元聖堂教会代行者。

教会時代ではその猛威と、自身の魔術として行使する、絶対零度と絶海凍土からなる氷檻から、「教会の檻」と呼ばれ、「教会の鍵」であるライダーのマスター、アンザス・マリオンとは長年の付き合いをもつ。

此度の聖杯戦争でも、当時振るった氷檻で、相手からその周辺まで見事に凍りつかせ、氷の皇子のように優雅に闘う。

 

 

ランサー

槍兵のサーヴァント。

とある騎士のような佇まいの男の身体を依代として現界した擬似サーヴァント。その正体は、ギリシャの神話に伝わる冥府神。

普段は、男の能力を活かした、大鉈による剣撃や、冥府の炎による遠距離からの攻撃を主軸に闘うが、追い詰められたとき、宝具である鋼鉄の長槍を使用する。ランサーとはいっても、槍を使った闘いを好むサーヴァントではないようだ。

闘いでの洞察力が非常に研鑽されており、相手のどんな策でも、相手のどのような動きでも、瞬時に把握、看破してしまう。此度の聖杯戦争随一の強力な神霊サーヴァント。




いつも見てくださっている方、ありがとうございます!マジカル赤褐色です。
さて、今回のメインとなるのはランサー陣営とライダー陣営です。作品の視点から見てみると、どちらかと言うと、ライダー側が主人公らしい方向性で物語が展開されるようになっています。ランサー側は悪役ではないけどぶっ飛んだ敵みたいな感じです。まぁ、皆さんおっしゃる通り、どうみてもこの二人はチートキャラです。まぁ、このチートっぷりが一番聖杯戦争らしいんですけどね……
それでは、次回もお楽しみに!
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