《セイバー、アーチャー陣営》
「あー、気持ちいいわねー!!」
「この街中にこのような立派な温泉があったなんて………知りませんでした、マスター」
「まぁ……ここら辺って山ばっかりだから、必然的に温泉街なんだろうね~」
(この街にも良いとこらぁたっくさんあるもんだな)
さて、現在、私と麗花とアーチャーの三人で温泉に来たという状況である。共闘関係を結んで直ぐ様、麗花が、「女は裸で語る者!続きは温泉で!」と言い出したわけで、気乗りしないアーチャーを無理矢理連れてここまで来た。ちなみにセイバーも麗花のお兄さんも連れてきた。
初めはおどおどしていたアーチャーも、いざ湯船に浸かってみれば、ゆるーくなってしまった。
ちくしょー、なんだってこの二人はこんなに身体の成長が早いんだよぉぉぉ……………
(ナイムネは手前の弱ぇとこだったな、ギンコ)
セイバーが念話で話かけてくる。
(死ね)
精一杯の、心の底からの本音の返答をした。
「ふぁぁぁぁぁ…………よく寝たよく寝た……」
ばこぉん、と大きな音を立てて、あそこのサウナから青灰色と藍色の髪をした一人の女性が四冊ほど本を持ってやって来た。
「よく寝た」……?サウナで寝たの?あの人?ってか、あの人も身体つき良すぎない?敵だ、敵、私の敵だ。
てか、お風呂で本読むんだ、あの人。サウナから出て、水風呂にすら浸からず、床にうつ伏せになって、腰を左右にくねくねさせて蛇みたいに前進しながら私たちの入っている湯船に潜り込んだ。なんでそんな移動で自転車並みの速度が出せるのか不思議だけど。
温泉に浸かると、女性はおもいっきり本を読み始め、ニヤニヤしながら読んでいる。
(なんでい、とんだ色物な本だな。あれか?今じゃ流行りの枕絵ってやつかい?)
(いや、枕絵って……浮世絵じゃない。いつの時代よ……江戸時代ぐらいじゃないの)
ってか、薄い本を読む女性もヤバイけど、そもそも、人の読んでる本を覗き見するのがまずいと思う。あれ………?
「ってか、あんた、なんで女湯の状況が見えるのよ!!!!」
「は!?それ、覗き見ってやつ!?」
「見損なったぞ、セイバー……貴様、女湯を覗き見する趣味があったのか………!!」
(ちょ……違ぇ……まて、話をき)
「H!」
「変態!」
「elo!!」
「助平!!」
麗花とアーチャーが滅茶苦茶に責め立てる。
(おいだから聞けっての、手前ら)
「不潔!!」
「破廉恥!!」
「犯罪者!!」
「痴漢!!」
「強姦!!」
「ワイセツ!!」
「淫ら!!」
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!!一回黙れよ手前ら!!!」
「え……?」
念話とはまた別で、あそこの柱の近くからセイバーの声がした。
「え、そこにいるのセイバー?」
「ったりめぇだ、さっきからずっとここで霊体化してんだよ。つーか、今さらだけどよぉ、なんでそんなに騒ぐんだい、別に、これと言ってヘンなことじゃねぇだろう?」
「変よ!覗き見は愚か、中に入るとか、相当手慣れた犯罪者ね!!」
「こんな奴と私は共闘関係を結んだわけか」
呆れるが………まぁ、麗花とアーチャーが止まりそうにないので、少しセイバーに助け船でも出してやろうか。
「セイバー、あなたいつの時代の英霊なの?」
「おん?鎌倉だけど?」
「そっか。じゃあ仕方ないね。日本は、江戸時代末にペリーが来航するまで、男女混浴だったんだってさ。それを知ったペリーが「日本人は恥知らず」とまとめたことから、今の日本人の性の恥の文化が生まれたんだってさ。それよりも前の時代に生きたセイバーには、わからなかったのよ。それに、セイバーは覗き見だなんて、そんな事しないでしょう?」
「感激だぜ、ギンコ。手前にも人の心ってのはあったんだな」
調子乗るな。折角助けてやったのに。
「それでも、現代常識のひとつやふたつ、身に付いているでしょう?サーヴァントなんだから」
「それがだよ、ウルカ。どういうわけか、俺にゃ、現代の知識が身に入らないスキルがくっついてやがるんだよ」
………?どゆこと?と思い、ひとまずセイバーを凝視してセイバーのステータスを確認する。
「なにこれ、
文字を見るに、明らかにセイバーには慢性的に時代遅れになってしまうスキルがついていた。そうか、だからテレビがなんの事か知らないし、学校もヘンな場所だと思っていたんだ。
「ほう、ならば仕方ない………なんて言うとでも思ったか!!今すぐ出ていけ!!!」
「なんでさ、俺は………」
「縁切るぞ貴様!!」
「いや、おい、そしたらアーチャー、手前、また俺に瞬殺されるぜ……?」
「貴様─────!!!!!!!!!!」
「ちょっとストップ二人とも!!!」
「一旦落ち着いて!!!」
◆ ◆ ◆
《ライダー陣営》
(騒がしいですね、向こう)
(あぁ、しかも、思いっきりセイバーだのアーチャーだの英霊だの言ってやがる。今日でオレたち何回他のサーヴァントに出くわした?アサシンと、ランサーと、セイバーと、アーチャー……?)
しかし驚いた。わたしたちが訪れた温泉に、他のマスターまでいたなんて。
わたしたちは現在、普通に休憩タイムだ。ライダーは念話で話かけてきてるが、多分もう既にお風呂からあがって、温泉施設内をうろうろしてるのだろう。わたしはサウナが気持ちよすぎて二時間ほど寝落ちしたようだ。
(ごめんなさいね。サウナで寝ちゃいました)
(いや、それ、一般人から見たら大事だぞ?…………それで、やるのか?)
(めんどくさいからやりません)
(オマエ酷いぞ今日)
(さて、そろそろアサシン陣営からの定期連絡がくるはず………あ、来た)
(定期連絡………?)
その時、
「あーあーあー、もしもしーー!umberの黄金ですー!」
黄金さんの声がした。
「同じく青緑です」
青緑さんの声も確認。無事通信は繋がったようだ。
(はーい!アンザスでーす、ほら、ライダーも挨拶して!)
(おう、ライダーだ。アサシンは?)
「それが………」
「少し、志貴さんから連絡が来なくなったんですよ」
(アサシンが………?)
(まさか、やられたのか?)
「いえ、志貴さまとはまだ令呪で繋がってはいますが………志貴さまからは一時間ほど、何の連絡も来ていません」
(あれあれ……おっかしいですねぇ。まぁ、どっかのサーヴァントに会ったか、吸血鬼を見つけたか、どっちかですかね~)
(…………どっちも、なんてことがないといいけどな……)
ライダーの心配事が現実のものになるのかは不安だった。
まぁ、お風呂中だし?助けませんけど。
(オマエ、仲間に対してクソ野郎だな、アンザス)
やはり、そう言われる気がした。
(でもアイツ、魔眼あるんだろう?ならば大丈夫じゃね?)
「魔眼……?」
(あぁ、【死】を視る魔眼ですね)
◆ ◆ ◆
《蝦碑市北、山奥》
そこでは、アサシンとキャスター、そしてそのマスター、吸血鬼の蓋折杏莉による戦闘が繰り広げられていた。
「殺した………?」
「死は万物が発生と同時に内包する結果現象。どんなものにも死は転がっている。等しくある死の結果。そこにナイフを通しただけだ。たいしたことはしてない」
「ふふふ…………バカなのアンタ?生き物じゃないモノに死なんかあるわけないじゃない?なに、そこの動かない生きてない岩も死ぬっていうの?」
「あぁ。生と死にはなんの関係もない。背中合わせであるだけで、顔合わせの関係ではない。生きていないからって、死なないわけではない。試しに殺ってみるか」
蓋折に疾走する。ナイフを身体の前に構えて、蓋折に斬りかかる。
「邪魔よ!!カス!!!」
振り下ろされる紅い刀。それを、
「邪魔だ」
紅い刀に走る【線】をナイフで両断する。刀はたちまち、線上に真っ二つになる。
「嘘……!!そんな、バカな……!!なんなのよそれ!!」
「まったく、この身体も便利なもんだな。よりにもよって、こんな強力な異能が備わっていたなんてな」
「ふん、笑わせないでよね、その程度で調子乗っちゃって、バカみたい。キャスター、そいつをぶっ殺して!!」
キャスターが鎌を持って接近してくるのが見えたが、見えてない。俺には、あの吸血鬼しか見えない。
キャスターを無視して、蓋折に斬りかかる。
「は?なんなの、なんでこっちくんの?キモい!来ないで!!」
全力疾走で蓋折の首に肉薄して、肩口から左腕を勢いよく切り落とす。
「ぎ──ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
蓋折の苦悶が山に響き渡る。腕から吹き出る返り血は刃となって、俺に反撃してくるが、たちまち、俺によって殺される。
「キャスター!!!!」
続けざまにキャスターに遅いかかる。
キャスターの鎌を真っ二つにへし折る。
「隙だらけね」
キャスターが黒ずんだ手刀を俺に振り下ろそうとして、
「ガァァッ!!!」
キャスターはその脚を斬られる。
「一度しか動いていないのに二連撃!?」
十七分割。俺の宝具であり、俺の器となった少年の特性を全面に出した対人魔剣だ。
俺の真名は佐々木只三郎。坂本龍馬を暗殺した犯人と諸説言い伝えられる、日本最高の短刀使いだ。
だが、俺は、佐々木只三郎という、暗殺を生業とする英霊ではなく、「坂本龍馬を暗殺した、日本最高の短刀使い」という概念の具現。佐々木只三郎という一人の男の具現ではない。
この俺の特性、それは、坂本龍馬を暗殺した存在、という、まったくの歴史の闇を利用した、
この器となった、「少年が、坂本龍馬暗殺犯人となる日本最高の短刀使いだった」というイフが、俺を俺足らしめる唯一無二の要素。この魔眼も、この対人魔剣も、全て、この少年から引き継いだ異能だ。
この十七分割は、この少年がとある暗殺に使用した、暗殺法であり、十七度の斬撃で、相手を十七の肉片に解体するというものだ。十七度の斬撃ならば、十八の肉片に解体する筈が、十七の斬撃となっている。この矛盾が、この対人魔剣の真髄であり、即ち、普通必要とする斬撃よりも、一手多く攻撃を繰り出せる、一度の攻撃にもう一つの攻撃を内包する、いわゆる、時間的意味での条件反射。
二つの鏡を向かい合わせに置いてみたとしよう。そうすれば、鏡の中には、無限に鏡が鏡を反射する条件が続いている筈だ。それと同じで、これは、「一度の斬撃に含めたもう一つの斬撃」という条件を繰り返すことで発生する現象。だから、俺は、一度だけの攻撃を繰り出せば、そこから【同時に何撃でも繰り出せる】という禁じ手である。
これもその奇跡のほんの一部だ。一手の攻撃をキャスターの鎌に浴びせたことで、その攻撃に内包されたもう一つの攻撃が、キャスターの脚を引き裂く。そして、その、もう一つの斬撃に内包された、斬撃が、キャスターの身体を切り裂き、その攻撃に内包された無数の条件反射が、たちまち、キャスターを引き裂く。
この攻撃は、相手の線を限定して放たれる。一撃で、相手の全ての【死の線】を絶ち切ることができるのだ。
全ての死の線を切断されて、キャスターは瞬間的にこの世から消え去った。
「嘘!!!キャスター!!!!!」
まぁ、今倒したのは、キャスターの身代わりなのだろうが。明らかに線の走り方が不自然だ。とても、動くモノとは思えない。
それも、サーヴァントとして、当然の力か。
「クソが………!覚えてな!今回は見逃してやるから、次会った時は覚悟し………」
蓋折が逃げようとしたその後ろから……!!
「逃がさないわよ」
「がぁぁっ……!?」
5本の爪が、蓋折の身体を貫いた。
「わたし、吸血鬼をやっつけるのがお仕事なの。悪いけど、ここで消え去りなさい」
そこにいたのは、ライダーのマスター、アンザス………ではない。
金髪で、白い服に身を纏った、ミニスカートの少女だった。
「おまえは…………」
少女は爪で貫いた蓋折をぽいっと投げ捨て、こちらに歩いてくる。目の前の惨劇に、目もくれていない。
「こんばんは、わたしは、バーサーカー。この街に居る吸血鬼を探していたのよ。ご協力ありがとう、どこかの眼鏡さん」
俺にはなかった体験だ。だが、俺の器は、この光景に、高ぶりを覚えており、歓喜に震えている。
それが何であるか、今の俺にはさっぱりわからなかった。
けど俺でも一つだけわかる。これは、アサシンの記憶ではなく、少年が見た、いつかの夢の再現であることぐらいは。
◇ ◇ ◇
キャラ紹介【キャスター陣営-バトルスタイル】
蓋折 理杏(ふたおり りあん)
キャスターのマスター。街の外れに住む一般人で、姉の杏莉とはひとつの身体を共有する双子の姉妹で、理杏は妹にあたる。本人の戦闘能力は皆無。
オベロン
魔術師のサーヴァント。妖精王。しかし、オベロン自体はキャスターではなく、なんの戦闘能力も備わっておらず、なんの役にも立たない。唯一、虫に乗ることによって、マスターを運ぶことはできるが、戦闘はできない。キャスターの代わりに日常活動やマスターの世話をしている。
蓋折 杏莉(ふたおり あんり)
キャスターのマスター。
街に出没した吸血鬼。理杏とは双子の姉妹で、杏莉は姉にあたる。吸血鬼のなかでは死徒に分類され、比較的高い戦闘能力を持つ。自身の血から生成される赫刀や、その特徴を利用した返り血による斬撃など、多彩な斬撃で相手を翻弄する。この姉妹が杏莉の時は吸血衝動が全面的に出るが、理杏の時は吸血衝動、及び殺意は存在しない。また、吸血鬼にのみ通用する攻撃によるダメージが全面的に無効化、無力化、あるいは軽減化される。
キャスター
魔術師のサーヴァント。
オベロンと同じ霊基を共有する妖精妃。この世には存在しないとある物語を読んだ人間が思い描いたイフの末に誕生した、何者でもない少女。
オベロンの代わりに戦闘を行い、残忍にも味方でないモノ全てを敵と見なし、襲いかかる。妖精妃とあるが、妖精王オベロンとはたいした関係性はなく、どちらかというと、その出典となった物語における、オベロンの使われていない部分を持たされた、奈落の呪いであり、その呪いが体現となった存在しない存在(モノ)。
虫を使役することで攻撃、偵察、援護を行い、自身は手にした呪鎌で相手を音もなく切り捨てる。キャスターの陣地作成能力を活かして戦う。彼女が使役した虫が活動できる範囲はキャスターの陣地の中のみなので、虫が攻撃などを行っている時点で、そこはキャスターの管轄区域内だということだ。
こうしてどうもマジカル赤褐色です。いつも見ていただいている方、ありがとうございます!
今回はもちろん、ネタ回と戦闘シーンの複合になっています。複雑な気分で読まれている方は多いはず笑笑
さて、今回アサシンの真名が明らかになりましたね。佐々木只三郎の設定はかなり序盤からあって、どうやってサーヴァントらしくしようかと思ったら、偶然にも、短刀使いといえばの人物を見つけちゃったんで擬似サーヴァントにしちゃいました。でも、この、英霊の概念、って言うのも聖杯戦争らしいなと思うんでいいんですよ笑笑
それでは、次回もお楽しみに!