かつて自作した聖杯戦争   作:マジカル赤褐色

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蝦碑市で突如開かれた聖杯戦争。その様子を見守るバーサーカーのマスター、アルケードは自身の聖杯戦争の裏で活動する謎の人物の存在を確認する。そして、アルケードのサーヴァント、バーサーカーの正体が明らかになる。


第十章 その裏で

 

 

《バーサーカー陣営工房》

 

 

「何だって、もうこんな、デタラメな」

 

これほどにまで早い段階から一度に六騎のサーヴァントによる戦闘が繰り広げられ、アンザス・マリオンとケイアス・ヨルムンガンド・ユグドミレニアの戦闘まで発生したというのか。これではおれの情報収集も追い付かない。おれの「記録視の魔眼」があるとはいえ、一度にこんなにいろいろと起きていては、視れるものも視れまい。

 

「ただいまー」

 

「バーサーカーか。死徒はどうなったんだ?」

 

「いなかったわ。それっぽいのを仕留めたけど、ただの人間だったわ」

 

「…………なんだそれは、人間が死徒に変えられることはあろうと、死徒が人間に戻る筈がないだろう」

 

「そうよ、わたしもそう思っているんだけど、ホントに、あれは人間だったわ」

 

はぁ………まぁ、吸血鬼のコイツがいうのなら、そうなんだろう。吸血鬼の話しはこんがらがる。後回しにしたほうが得策か。どうも、吸血鬼を追っている連中は多いらしい。おれたちがやる前に片付くだろう。問題は、吸血鬼がマスターであるということだが、吸血鬼を仕留めれば、そのサーヴァントも消える。あまり大したことない話だろう。

 

「それよりアルケード、」

 

「なんだ」

 

「山の麓にある学校、調べてくれない?」

 

学校………山の麓……琴女高校のことか。あんな平凡な学校がどうかしたか。

 

「どういう風の吹き回しだ。琴女に関連する人物はそこに通っているセイバーのマスターだけだ。しかもそいつは一般人。先ほどアーチャー陣営と共闘関係を結んだらしいが、大した脅威ではないと言った筈だ」

 

「いいから。あそこ、なんか変なの。今日のお昼散歩してたら、偶然あそこ通ったけど、結界が張られているの。その眼で視たら?あの学校で起きた事」

 

「馬鹿な、あんなど素人が、結界など張れるものか。視る分には視てやるが、収穫は期待するなよ」

 

おれは眼を閉じて、琴女高校で起きた出来事を視た。

 

すると、瞼の裏に、山の麓と、そこに立つ巨大な校舎が映し出された。

 

(ここか、琴女高校。ここに結界とは、馬鹿な者もいたものだ。セイバーのマスターが張った可能性はゼロだ。今日の時点では既に張られている。今朝の時には、発動こそしていないが、発動準備は万端といった所か)

 

映像を昨日の出来事にスキップする。

先ほど視た、今日の映像と同じ時間帯の同じ場所が映し出される。

 

(いや、これもだ。もう一日戻るとしよう)

 

さらにその前日。

 

(………結界が、無い?成程、この日に結界が張られたか)

 

映像を早送りにして視てみる。正午まで動きはなく、夕方にも何事も起こらない。そして、部活動をしていた生徒を含む全生徒と教員が帰宅し、学校がカラになったその時だった。

 

(………ここで張られたか。このタイミングを見計らっていたわけか。さて、場所は………)

 

監視カメラの映像のように、次々と場所を切り替える。すると、

 

(────なんだ、これは)

 

結界を張っている犯人の姿を捉えた。捉えたのだが………

 

(何故だ、何故だ、何故だ、何故だ、何故だ、何故だ!!!!何故、まったく関係の無い筈の一般人、琴女高校の生徒会長が、結界を張っているのだ…………!?)

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

《セイバー、アーチャー陣営》

 

 

「良く聞け、セイバー、貴様がやっていることは我々からして赦しがたい行動だ。本来ならここで貴様の身体を粉砕することもできるのだが、やはりこの空気感を汚すのは、私にとって背徳感に苛まれるわけで、今回は見逃すことにする。貴様も現代常識が通用しないというのもあったのだろうからな。だが、もし、次同じ行動をするものなら、確信犯と見なして、その場で切り捨てるからな」

 

「許すんだ。お堅いアーチャーの嬢ちゃんにしちゃ珍しいな。ようやく、爺を想う孫娘の心ってのが骨身に沁みたか?」

 

さて、この状況なのだけど……………

 

「なんだ貴様、二度目を与えなくてもよいのだぞ?」

 

「あいよ、二度目くださいな」

 

アーチャーがセイバーに説教を垂れるという、なんかシュールなワンシーンが繰り広げられている。

 

「なんだ、貴様、本当に反省してるか?」

 

「ったりめぇだ。俺ぁ一回しくじったこたぁ二度としねぇって決めてんだよ。たださ、またこんなことが起こんじゃねぇのかって心配してんだよ。俺ぁまだこん時代のことあんま知らねぇからな」

 

「困ったときは銀子に訊け。貴様が一人で行動するとろくでもないことが起こる」

 

「まぁな。そりゃあ言えてるぜ。俺たちゃ放っときゃろくなことしねぇからな。お互いさ」

 

「私と貴様を一緒にするな」

 

「なぁんでい、手前だって、自分の男にデレデレしやがって、そういうの、なんだ、「猫被る」っていうのかい?今でいう、「ツンデレ」ってやつだろ、手前」

 

おぉ、セイバーがカタカナ語を使うの初めて聞いたかも。すごいよセイバー、召喚されて初めて口にしたカタカナ語が、「ツンデレ」だよ!どこで覚えてきたの、そんな言葉?

 

「貴様殺すぞ」

 

「あ、カンタじゃねぇか!」

 

セイバーがアーチャーの真後ろを指差す。

 

「セントー!?」

 

アーチャーが嬉しそうに振り向く。が、幹太さんなどどこにもいない。

 

「ほらよ」

 

「よし、貴様じっとしてろ」

 

アーチャーはぽかーんとこの状況を見ている私から空の牛乳瓶をひったくるとおもいっきりセイバーの後頭部に打ち下ろした。

 

「いって、仲間にも容赦ねぇな手前」

 

頭を押さえながらセイバーが呆れた顔をする。

 

「あれ、みんなここにいたんだ」

 

あ、幹太さんだ。今度は本人だ。

 

「セントー!!お帰りなさいませ」

 

「いい旦那にはいい嫁ってにゃホントのことでねぇか」

 

アーチャーが顔から火を噴く。

 

「さっき、変な人に出会ったんだ。なんか、青灰色の髪の毛で、所々に藍色のメッシュが入ったひとが、ごろごろ床を転がりながらすごい速度で出入口に突っ込んでいったよ。そこからなんか割と大柄な青年が、「どこ行くんだオマエ!」って言いながら追いかけてたね」

 

幹太さんは変人に会ったらしい。

 

「うーーん、誰のことかだいたいわかりますね」

 

麗花もアーチャーもセイバーも同調してうんうん、と頷く。

結局、あの女性……何者だったのだろう。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

《ライダー、アサシン陣営》

 

 

私たちは、再度通信で話し合っていた。

 

「はぁ!アサシン帰ってきたんですか!」

 

「結局、何があったんだよ……」

 

どうも、アサシンは無事に生還してきたらしい。

 

「心配かけてごめん、みんな。ちょっと、キャスターとお取り込み中だったんだ」

 

「な、アサシン、オマエ、キャスターに遭遇したのか!?」

 

「あぁ。けど、それ以上のビッグニュースがある。そのキャスターのマスターが、噂に名高い、うちで騒ぎを起こしてる吸血鬼だった」

 

「ふーむ、ターゲットが補捉できたのは最高ですね。しかも、どのみち相手にすべき相手。わたしたちは、真っ先にキャスター陣営に突入するのが得策ですね」

 

なんて好都合。一度にほしい情報が二つも手に入った。キャスターのマスターを倒せば、吸血鬼騒動も、キャスターも終わりにさせることができる。

 

「けど、それとはまた別で、変な情報を手に入れたんだ。偶然、バーサーカーに出くわして、助けてもらったんだけど、そいつが自ら俺に真名を教えてきたんだ」

 

「は……?そんなことあるのか?バーサーカーとはいったって、真名教えるバーサーカーなんて聞いたこと無いぞ?」

 

「ちなみに、そのサーヴァントの真名とは?」

 

「────────────って名だ」

 

名前長いから良く聞こえなかったが、そのサーヴァント、どこかで聞いたことがあるような……ないような……吸血鬼の中でも天然の吸血鬼、真祖。その中でもさらに王族に位置するなんとか………だめだ、わたしちゃん、吸血鬼さんには詳しくないんだお。しょうがない、適当な代行者トモダチに訊いてみるとしよう。

 

「取りあえず友達に訊いてみますねー」

 

スマートフォンを構えて躊躇なくその相手の連絡先に繋ぐ。

コール音僅か3回で、プツ、と音がして、相手が電話を繋げてくれた。

 

「やっほーカレーちゃん、インドー!!!」

 

元気良く挨拶をしたが、言い終わる前に電話を切られた。なので、もう一度掛けてみる。

 

「インドー!!!どうしたの?そんなに暗くなって!相談乗るよ?」

 

ちょっと、長話になりそうなので、席を外すことにする。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

そして、一時間後、通信から一時的に撤退したライダーのマスターが戻ってきた。

 

「聞きました!!アルクェイド・ブリュンスタッドって、あれですよね!!あれ、すごい人!!」

 

「なるほど、オマエは人の話を真剣に聞けないんだな、アンザス」

 

ライダーがその様子をたしなめる。この女がアルクェイド・ブリュンスタッドという長い名前を暗唱できたのは最早、奇跡としか言いようがない。

 

「それで、アルクェイドがどうかしたのか」

 

「あれ、実在の吸血鬼ですよ?なんでサーヴァントになって召喚されたんですか?って話です」

 

確かに。今この世界に実在する存在が、そのままの姿時間でサーヴァントとして顕現するなんてこと、あり得るのだろうか。

 

「それを言うなら、俺はキャスターもヘンだと思う。あれこそ、出典がわからない」

 

「この聖杯戦争では、普通はあり得ないサーヴァントが召喚されやすいんだろうな。オレみたいな、真っ当な英霊は、少ないだろうな」

 

「アルクェイド…………ですか。あれがバーサーカー。マスターに一度会ってみたいですね………星の触覚だなんて、そんな大規模なサーヴァントを喚べる強者に会ってみたいものです」

 

「相手したほうがいいのか、アンザス」

 

「いえ、だめです、アレを相手したら、わたしたち三人でもイチコロです。アレは【地球】という領域では最強となる、唯一無二、この惑星(ほし)で完全な存在です。一人で相手するなんて、埋葬機関でも無理ですよ」

 

アルクェイド・ブリュンスタッド。それが相当恐ろしい存在なのは理解できる。だが、アイツが吸血鬼なら、人の血を吸っている犯人は、アイツなのではないだろうか…………?

いや、アイツに限ってそれはないか。俺は同居人にそう、言い聞かせていた。

無論、アルクェイドが今回の聖杯戦争に波乱を巻き起こす種となることは、十分に心得ていた。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

キャラ紹介【現在のサーヴァントの情報】

 

 

セイバー 鎌倉の銘刀鍛冶師

アーチャー 極東の竜殺し、神剣の使い手

ランサー 冥界の神、宝具「我、咆哮の魁偉為り(ヴァイデント)

ライダー アキレウスに並ぶ大英雄、宝具「極天織成す七つの円環(イーリアス・アイアス)

キャスター 妖精王オベロンと霊基を共有する妖精姫

アサシン 日本最高の短刀使い、真名「佐々木只三郎」

バーサーカー 真祖の姫君、真名「アルクェイド・ブリュンスタッド」




いつも見てくださっている方、ありがとうございます!マジカル赤褐色です!
今回は鯖の真名明かしましょう回になりました。現在アルクェイドと佐々木只三郎が明らかになっている状態ですが、これからの展開が気になってきますね。さて、それでは次回の方もお楽しみに!
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