かつて自作した聖杯戦争   作:マジカル赤褐色

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【アーチャー】のマスター、千藤麗花と共闘関係を結んだ後、学校の上級生、晴燕寺に呼ばれた銀子は学校を訪れる。そこにはちゃんと電話の主、晴燕寺が待ち受けており、その隣にいたのは、弓兵の英霊、【アーチャー】だった。


第十二章 もう一人の弓兵

 

《ライダー陣営》

 

「いたっだきまっーす!!」

 

「リズムキモくないかオマエ………」

 

わたしとライダーは今日も当然のようにいつもの担々麺店を訪れていた。

朝ごはんは当然、担々麺である。

 

「令呪はどうなった、アンザス。やっぱり………?」

 

「ばっちり、ライダー用三画、自分用三十画全部補充できてます!!」

 

わたしの令呪は、実は毎日日付が変わるごとに全回復する。控えめに言ってチートである。だから、毎日どんなことに令呪を使おうが、明日の朝起きたら回復している。

 

「ヤバくないか、その令呪。回復するなんて、おかしいだろ。ズルくないか?」

 

「いえ、これはケイアスも同じ条件なので、問題ないです。まぁ、でも確かに、令呪で生き返るのはわたしだけでしょうけど」

 

「ランサーのマスターは、生き返れないのか?」

 

「ケイアスは令呪を上手く扱えないので、多分無理です。でもその代わり、ケイアスは、自身の令呪をサーヴァントにも行使できるんですよ」

 

「なんだそれ!?それじゃあ、ランサーは三十三回もオレたちから逃れられるってのか?」

 

「いえいえ、生き返れる方が圧倒的にべんりですよ、だって、あっちはケイアスを叩けば全て解決なんですから。まぁ、ケイアスが令呪三十画ぐらい使ってランサーに魔力の自給自足をさせたら話は別だと思いますけど」

 

もっとも、ケイアスはそんな使い方はしないし、することがないだろう。わたしはこうは言っているが、明らかにケイアスを先に叩きのめすのは不可能だ。どう考えてもランサーを先に倒した方が早い。

 

「まぁ、今はキャスターを倒すことが最優先事項です。お昼ごはん食べたら街に調査に行きますよ!いいですね?」

 

「おう─────────いや、昼まで何もしないのか?」

 

「借りた薄い本返さないといけませんので」

 

わたしたちは今朝も騒がしい朝だった。

 

 

◆ ◆ ◆

 

《琴女高校》

 

「ふう、着いた……っと」

 

とりあえず、私は学校に着いたので、晴燕寺先輩を探して校舎の中に入っていったが、

 

「おえ、気持ち悪い……なにここ……」

 

さっきから違和感が激しい。ここ最近思っていたんだ。最近学校の様子がおかしい。空気が汚れてる。汚れてはないか。いつもと違う。誰かに説明すれば解ってもらえるだろう。だってそうでしょう?自宅に帰ったら、いつもと違う家の空気をしているなんて、気持ち悪いでしょう?今、ちょうどそんな状態なのだ。毎日通う学校が、いつもと違う雰囲気をしているのだ。そりゃあ、違和感もするものだ。だが、今日は違う。いつも以上にヘンだ。様子がおかしすぎる。外を見ても、これといって変わっている部分はない。

 

「気のせい……?」

 

……だなんて言わせまい。それは無理だ。違和感とか、そんな次元じゃない。ここ自体、既に異空間だ。いつもの現実世界とは隔絶された、全く別の空間…………

 

「気のせいじゃない。これは、」

 

「気づいたかい?円堂」

 

「………!!」

 

背後から声がしたから振り向いた。

そこにいたのは、

 

「晴燕寺先輩……」

 

晴燕寺新嵐だった。

 

「こっちはもっと早くから気づいていたんだがね。しかし、驚きだ、君もマスターだったとは」

 

「こちらも同感です。先輩、魔術師だったんですか」

 

「そうとも、マキリって、知ってるかい?聖杯戦争では御三家に含まれる一大魔術師家系。晴燕寺は、その分家筋の中でも、とりわけマキリの血が濃い一族なんだ。マキリは衰退の一途を辿るその一方で、晴燕寺は徐々に力をつけた結果、とうとう、マキリが滅べば、俺たちが権威を握ると言われたまでに上り詰めた。君が、一般人として参加していたその一方で、俺たちのような魔術師たちは、次々と戦いを進めていたんだぞ?」

 

「私を始末するために、ここへ呼んだわけですね」

 

「そうとも」

 

「この学校に、結界を張ったのも、」

 

先輩はそうとも、と頷く。

その傍らに、一騎のサーヴァントが現れる。

兜を被っていて、着物………ではないけど、薄手の戦闘装束を来ている。裏に鉄板が仕込まれているであろう布鎧。長い髪から、黄色い瞳が覗いている。

 

「紹介するよ。彼女が、俺の「アーチャー」だ。相手してやってくれ、元薙刀部なんだろう?」

 

「アーチャーが、二騎!?」

 

「ふん、そんなわけないだろ?見間違いじゃないのか?ひとつの聖杯戦争に二騎のアーチャーが喚ばれやしないだろう?」

 

そう言って、先輩が私に向けて指差す。すると、それに応じるように、先輩のアーチャーが、私に駆け寄ってきた。

 

「くっ…………!!」

 

しまった、セイバーを置いてきた。そうだよね、言っておくべきだった、それだったら、彼は「なんでぃ、休みの日に呼ぶ馬鹿がいるかよ、俺も連いていってやらぁ」とでも言ってくれたかもしれない。私としたことが、失敗だ。これじゃあ、勝ち目なんかないじゃないか。

 

「とりあえず、逃げないと……!」

 

階段を駆け上がって、二階に上がる。近くに立て掛けてあった清掃用の箒と塵取りを拝借して、さらに逃げる。

 

「無駄だ、人間とサーヴァントの鬼ごっこ、魔術師含めて人間に勝ち目などないさ」

 

遠くから先輩の声が響く。真後ろから、強い衝撃を感じたら、私の身体は空中に舞い上がっていた。

 

「いった……………!!」

 

廊下に落下して今気づいた。もうアーチャーに追い付かれていた。

 

「この…………!」

 

まだ逃げる。サーヴァントに勝てやしない。勝算があるとしたら、マスターである先輩を叩くしかない。

箒と塵取りで魔術師を倒すとか、ちょっとおかしいけど、やるしかない。使えるものはなんでも使う。

背後から音がしたから、振り向いて箒で凪払う。

ガキィン、と音がして、矢が中に舞い上がった。麗花のアーチャーと違って、今度は本当に弓を使ってくるアーチャーだ。

もう一発、矢が放たれる。再び箒で弾き飛ばす。その後隙を狙った矢を塵取りで叩き落とす。

 

「馬鹿な、薙刀部とは思えない、どこでそんな戦闘スキルを身に付けた、円堂!?」

 

「………………」

 

確かに、なんで、私はサーヴァントをこんなに相手できているのか。持ってる武器も、サーヴァントを相手するには心許ないのに。これ、ただ薙刀学生日本一程度の力で出せる力じゃない………!?

気にしない。とにかく、何撃かは耐えられることがわかっ─────

 

「………………ハッ!」

 

「えぇぇ…………………!?」

 

アーチャーが抜刀した軍刀で箒をへし折ってきた。

 

「何よ、何が弓兵(アーチャー)よ………!どいつもこいつも………全然弓使わないじゃない!!」

 

「それについては俺に訊くな」

 

アーチャーが二撃目を繰り出してくる。

 

「しまっ………」

 

軍刀で脇腹を斬られた。

 

「ぐぅぅあぁぁあぁぁぁ!!!!」

 

激痛にのたうち回る。これ、キツイ、これは、かなり痛い………!!痛みに強い私だけど、これは、とても耐え難い……!昔、同級生にいじめられていたとき、サバイバルナイフで腕を斬られたとき以上に痛い。

なに、そんなこと思い出してる場合じゃないでしょうが!!!

倒れこんだ私にさらに一撃。

 

「ひぃっ……!!」

 

横に転がって回避する。間一髪か。飛び上がって立ち、逃走を再開する。走って逃げ回り、階段を駆け降りる。

 

「いっだぁぁあいいい!!!!」

 

さっき斬られた脇腹を弓で射られ、階段から落下。幸い、六段程だったので、踊り場に転がるだけで済んだ。その衝撃も、特別痛くはない。これよりかは、さっきのヤツの方が、ずっと…………

 

「うわっ!!」

 

アーチャーに捕まれ、踊り場から一階廊下に直接投げ捨てられる。階段は十段以上ある。受け身もできていないから、本来だったら骨折案件だが、奇跡的に激痛だけで済んだ。

 

「う…………ぅぅ………はぁ、はぁ、はぁ」

 

落ち着け、ピンチの時こそ、物を考えるべきだ。痛いってことは、体力はまだある。そんな、この怪我の程度では死ぬわけがないと言うことだ。

 

「!?」

 

階段の踊り場から、アーチャーが軍刀片手に飛び降りてきた。

立ち上がってすぐに回避行動に移るが、今度は失敗、出遅れた。見事に背中を斬り付けられた。

 

「うがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

これはキツイ。さっきよりもずっと痛い。今までの攻撃とは比にならない。想像を絶する痛みに、叫ばざるを得ない。

何か、手はないのか。武器が、塵取りしかない。無論、これで勝てるわけがない。

いや、【もうひとつ】切り札があるけど、あんまり意味がなさそうだ。目立った効果は期待されない。

く、何か、どうにかしてセイバーをここに連れてくることができれば、でも、ここは結界。内と外を分け隔てるものなら、セイバーどころか、誰も中には入ってこれないだろう。

だめだ、手が思い付かない。何かしら、方法があるのだろうけど、思い付かない。手の内を探って、何も思い付かない。あいつに効果的な作戦も武器も見当たらない。

左手に持った塵取りで何かできないかと見つめていたら、ふと、何かが、眼に映った。

 

「ここまでかな、円堂。死ぬけど、構わないかな?」

 

アーチャーの背後から、先輩がやってきた。よし、これしかない、これならきっとうまくいく。

 

「やれ、アーチャー」

 

アーチャーが私に肉薄し、軍刀を振り上げる。

私も同時に、左手を自分の胸の前に持っていき、精一杯叫ぶ。

 

「来て、セイバー!!!!」

 

左手の甲の令呪の輝きがひとつ薄れる。それと引き換えに、

 

「人使いが荒ぇよ!!」

 

セイバーが、廊下に姿を現す。その手には、まだ中途半端に完成している刀がある。

セイバーが全力で回し蹴りをアーチャーにぶつけて吹っ飛ばす。

学校の廊下の壁から砂煙が出る。

 

「ったくよぉ、折角人が刀打ってるときに。まぁ、そんな気はしたんだがね、おら、これやるよ!」

 

セイバーが完成していない刀を一直線にアーチャーに投擲する。

学校の壁に穴が空いて、爆発が起こる。

 

「そんな、馬鹿な、セイバーの空間転移、令呪を使ったか。いい手だ、だが、そんなことをしたところで…………」

 

「頼んだよ、セイバー」

 

「おうよ、さっさと逃げな」

 

セイバーを信じて逃亡する。中央階段、さっきと同じルートで二階に登る。

 

「よく逃げる女だ………くそ、アーチャー、ここは任せた。俺はあの女を追う」

 

晴燕寺先輩は西階段から二階へ。

作戦通り。後は……セイバーを信じるのみ!

私は二階へ上がって、同じく西階段から上ってきた先輩と合間みえる。

 

「…………チッ」

 

「ここからが勝負ですよ、先輩」

 

ブレザーの中から、仕込んでいたセイバー製の脇差しを取り出して、構える。

さぁ、私の聖杯戦争最初の殺し合いが始まる。

「最初の相手は貴方です、晴燕寺先輩」

 

 

◇ ◇ ◇

 

キャラ紹介【もう一人のアーチャー陣営】

 

晴燕寺 新嵐(せいえんじ あらし)

もう一人のアーチャーのマスター。

銀子の通う学校の生徒会長で、普段は冷酷ながらも仕事に尽くす。

その一方で、マキリ一門の分家筋、晴燕寺の末裔、魔術師としての裏の顔を持ち、自身のアーチャーと共に聖杯戦争に参加していた。

 

もう一人のアーチャー

弓兵のサーヴァント。

古びた矢尻を触媒に、新嵐によって召喚された、戦場育ちの女英霊。麗花のアーチャーとは対照的に、弓を使った戦いを主としており、ある程度、軍刀による白兵戦も得意としている。普段は無口で、マスターである新嵐にすら口を利かないことも少なからずある。マスターの判断に全てを委ねており、マスターである新嵐の意志が、彼女の行動となる。




いつも見ていただいている方、ありがとうございます!マジカル赤褐色です!
さて、サーヴァントとしてお見事、二体目のアーチャーが登場しました。こんな感じで、今後もさらに新しいサーヴァントを追加していく予定ですので、今後ともよろしくお願いいたします!それでは次回もお楽しみに!
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