かつて自作した聖杯戦争   作:マジカル赤褐色

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ある目的のために蝦碑市を訪れた代行者、エインス・マリオン。その目的とは、最愛の妹、【ライダー】のマスターであるアンザス・マリオンに会うこと。可憐な容姿のために心の汚れた男たちに襲われかけたが、それを難なく追い払ってしまう。
そして、【ライダー】のマスター、アンザスの教会を目指すエインスの隣に現れたのは、エインスのサーヴァント、【ライダー】だった。


第十四章 代行姉妹

 

 

そうして、夜になった。

 

《蝦碑市街中》

 

わたしはお散歩がてら、街をうろうろお散歩していた。六年前に代行者となった妹を追って自身も代行者の身となって早三年。

まさか、聖杯戦争に参加する身になったとは。

 

「綺麗な街ね」

 

こういうところは初めてだ。今まで都会で代行活動をしてきたが、こんな極東の田舎も、ここまで素晴らしい街並みだったとは。田舎とはいえ、街に出ればそれなりに背の高いビルが並んでおり、電球や街灯で明るい世界が広がっている。

 

「おい」

 

「ちょっと待てよ、そこのねーちゃん」

 

背後から声が掛けられたので、声の方向へ振り返ってみたら、男7人組が群がって、わたしを取り囲み始めた。

 

「あら、こんばんは。ごめんなさいね、わたし、今、持ち合わせがないの。金銭目的なら、他を当たってちょうだい?」

 

残念なことに、ホントに今は所持金がゼロなのだ。いや、持って来なかったっていうのもあるんだけど。

 

「金なんかいらねぇよ、ちょっとこんな夜にそんな格好で歩き回って、調子ぶっこいてるなって思ってよ」

 

そんな格好といわれても。別に扇情的でもないし、ぶっ飛んだ個性的な仮装やコスプレでもあるまいし、ただの私服なのだからしょうがない。確かに、薄手のスカートと紺色のシャツ一枚に灰色のパーカーを羽織っただけでは少々この時季の寒さには心許ないけれど。

 

「いえいえ、寒さの心配は結構よ。わたし、寒さには強いから。では、わたしはこれで」

 

「待てよ、そんな簡単に帰ってもらっちゃ困んだよ。ちょっと付き合ってもらうぜ。ここんとこ、ろくな女がいなくて困ってたんだよ取りあえず、とっとと捕まえて、あとで手取り足取り付き合ってもらうぜ」

 

7人組が一斉に距離を詰めてくる。

 

「あの?わたし、あんまり一般人に手は出したくないんだけど……?」

 

「んだ?お前は黙ってろ。おい、お前ら、さっさと捕まえろよ」

 

治安悪い街だ。ヤクザがそこらじゅうこんな感じでうろついてるのだろうか。

 

「おう……けど、兄貴………オレ、できねぇ………よくわかんねぇけど、手ぇ出せねぇ……」

 

「オレも……なんか、神々しすぎて、オレたちで汚せねぇ………神々しいを通り越して、怖い……」

 

「兄貴、やめようぜ………?他の女にしねぇか……?」

 

不良たちは、おどおどしている。反応からして、普段は容赦なく女性を襲っているようだが、わたしに近づくと危険だと判断したからか、動こうとしない。

 

「はぁ?何言ってんだお前ら。女は女に変わりねぇ。印象とか関係ねぇよ、オラ貸せよ」

 

そう言って、頭領らしき人物が子分から金属バットを奪いとると、そのまま近づいてきた。

 

「お前も、あんまり抵抗するんなら、こいつでぶん殴るぞ」

 

「女性に暴力だなんて……!貧しい心持ちだこと。そんな危ないもの振り回したら、怪我人が出るじゃない」

 

そう言って、わたしは彼ににじり寄る。

 

「はぁ?何だよお前、舐めてんのか」

 

「まぁまぁ、そんなヤケにならないで、そんな危ないもの、捨てましょーよ。はい、ぽきっと」

 

金属バットを奪い取って、シャープペンシルの芯を折るように、ポッキリとそれを真っ二つに折った。

 

「は……?」

 

その様子を見て、ヤクザは唖然。今まで一方的に犯す筈だった相手がいきなり自分たちの武器である金属バットを素手で楽々と折ってしまったのだ、確かに、驚きもするだろう。

 

「は、はは……すげぇな………おい………なぁ……ねーちゃん、なんか、その………やってたのか………?」

 

「いや?格闘技とかも別に?道路標識ぐらいなら抜けるかしら?」

 

「は……そんな馬鹿な冗談」

 

近くにちょうど止まれの自動車標識があったので、スポリとさつまいもを引っこ抜くように右手で引っこ抜いてみた。その様子にヤクザはあんぐり。

 

「ば、ば、化け物だァァァァァァァァァァァァァァァァァァぁ!!!!!!!」

 

7人組全員が逃げていく。

 

「ちょっと?いいの?逃がしちゃって」

 

ついでに道端に停まってた10トントラックを左手で持ち上げながら呼び掛ける。

 

「二度とお前には会わねぇからなァアァアァァアァァア!!!!」

 

帰っていってしまった。すごいあっさり。別に、なんかしたわけでもないのに。

 

「ライダーく~ん」

 

「どうかしたかい、エインス」

 

わたしの隣に赤銅色の衣を纏ったサーヴァントが現れる。

 

「場所は、あそこで正しいわよね?」

 

わたしは丘の上を指差して言う。

 

「地図の通りなら、あそこで間違いない。けれど、こんな田舎の辺境にある教会に、何の用だい?」

 

「あそこの教会に、(アンザス)がいるから。久しぶりに顔合わせでもしなくちゃ、姉としての面目がないもの」

 

「君、妹がいたのかい」

 

えぇ、と頷く。わたしことエインス・マリオンには妹のアンザス・マリオンという代行者がいる。

アンザスはわたしよりも二つ年下の22歳。だが、わたしよりも六年も早く代行者として活動を開始した。わたしたち姉妹が代行者となった経緯は特にない。強いて言えばお小遣い稼ぎだ。

わたしたちは小さい頃、住んでいた街が反社会武装勢力によるテロで焼き払われ、お父さんとお母さんが目の前で亡くなって、孤児だったところを修道院に引き取って貰い、そこで暮らし始めた。その時、わたしは10歳、アンザスは8歳だったか。それで、修道院への借りを返す、そしてお金を稼ぐ、この二つの目的を達成するために代行者となった。命に関わる危険なお仕事だから、皆反対したけど、他にわたしたちはなにもできることがなかったから、仕方がなかった。たまたま、力も喧嘩も強い姉妹だったので。なにせあのテロのとき、街を襲った反社会武装勢力約400人はわたしたち姉妹で全員素手で殺害したわけだ。父母の仇討ちというより、暇だったから街の皆のために取りあえず殺っといたって感じだったけど。確かにこれ程の経歴があればと、ネロア司祭代行様も認めてくれた。アンザスはネロア司祭代行様専属の異端狩人(エクスキューショナー)となって、一方でわたしはネロア司祭代行様が持つ直接代行チーム500名を率いるリーダーとなった。

「お前ら、絶世の美少女代行者だぞ!!」「私が必ずや、エインス団長をお守りする!!」だのなんだの、偶然の産物でしかない、大したことない美貌に男性の代行者は全員が狂ったように食らいつき、士気を爆上がりにするばかりか、結婚まで申し付けてきたり、死ぬほどデートに誘われたり。女性のからも、「あんな可愛い()が代行者なんて、信じられない……」「私たちの力で守って上げないとね」と、たまたま、若かったから、嫉妬することもなく、わたしに続いてきてくれた。

わたしは、多分、凄まじい生い立ちをしたけれど、それに伴うほど、幸せ者だった。周りにはいい人ばっかりだったし、誰も純粋なクリスチャンでもないわたしたちを嫌がることもなく、何より、すごく、何よりも大切な(かぞく)がいるということが、すごく幸せだ。

 

「どうかしたかい、エインス。すごく泣いてるけど」

 

「えぇ、幸せすぎて、なんだか、申し訳なくなってきているの」

 

「…………いいんだよ、君は一生幸せな人間でいいんだ。好きなだけ欲張っても、誰も怒ったりしない。謝ることはないんだよ、君が幸せなのが、妹にとっても、僕にとっても、修道院の皆にとっても、父さん母さんにとっても、幸せなことなんだよ」

 

「ありがとう、ライダーくん」

 

夜の街を二人共に歩く。向かい先は親愛なる妹の勤める教会。

まったく、楽しみったらありゃしない。彼女と面と向かって話すのは実に六年ぶりか。

今のわたしには、妹と会えることが本当に楽しみでしょうがなかった。

 

「ライダーくん」

 

「うん?」

 

「アレは……」

 

奥から、三度笠をかぶって和服を着た男の人と、女子高生が歩いてきている。こちらには目も暮れていないみたいだ。

 

「チャンスね………」

 

男の人はサーヴァントに違いない。ここでやりあうのは少し気が引ける。しかもまだアンザスに会っていない。後で戦えるように仕向けよう。生憎、男の人を誘うのはこの上ないほど得意なので。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

《ライダー陣営》

 

────蝦碑市教会

 

──すやぴぃ………

───すやぁ…………

───すやすや………

 

「アンザス!!!」

 

ばこぉん、と、部屋の扉を開けてライダーが入ってきた。声からしていつになく取り乱しているようだ。

 

「うぅぅん……何ですか……乙女が安らかに眠っているところを………敵襲ですか?」

 

「そうじゃない、この教会、明らかに殺人鬼、もしくはバカが侵入してる!!」

 

「なんですって………それは大変むにゃむにゃ…………」

 

「寝惚けるなバカヤロー!!見てみろこれ!!オマエに頼まれた通り、オマエの着替えを取りに行くために洋服箪笥の引き出し開けたら、トラバサミが飛び出て来たぞ!?オレがボーッとしてたら死んでたぞ?他のマスターの罠じゃないのか?」

 

事実、ライダーの綺麗な赤毛に、見事にトラバサミが引っ掛かっている。反応が遅れて髪の毛が挟まれたのだろう。

 

「あぁ……それ、下着泥棒対策に仕掛けておいたやつですね、説明し忘れてました」

 

「全裸で街中うろつきかけたヤツの台詞じゃねぇ……しかも、オレが開けたのヘアアイロンが入ってたヤツなんですが!?」

 

ライダーが右手にヘアアイロンを握っていた。

 

「あれ、入れ間違えました?」

 

「それよりも、オマエの言う下着泥棒もなにも、そんな引き出しなかったぞ」

 

「バレました?」

 

「なんだオマエ、なんでもアリかよ」

 

すると、外で、美味しい匂いがしてきた。わたしは鼻が利くわけではないけど、この匂いなら、1キロ先でも捉えられる。ちょうどここから800メートル離れた場所に、居る。

 

「この匂い…………………まさか!!!!」

 

「どうした、何か匂うか?」

 

「お姉ちゃん!!!!!!!!!!!!」

 

「うわっ!ビックリした!急に叫ぶなよ………」

 

わたしはあんまりにも嬉しくなって、大急ぎで部屋を出ていった。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

キャラ紹介【もう一人のライダー陣営】

 

エインス・マリオン

もう一人のライダーのマスター。

聖堂教会の代行者で、ライダーのマスター、アンザス・マリオンの姉。青灰色の髪に瑠璃色のメッシュの入っているアンザスに対し、エインスは瑠璃色の髪に青灰色のメッシュが入っている。大好物は激辛エビチリで、性格やキャラこそアンザスと同じだが、話し方がですます調のアンザスに対し、こちらは容赦なくタメ口で話す。アンザスとは対照的な部分も多いが、最終的には全く同じような人物で、姉妹の仲は非常に良好。

 

もう一人のライダー

騎兵のサーヴァント。

赤銅色の衣に身を纏う剣士のような佇まいの心優しい青年。

天真爛漫なエインスを制止するべく、物腰柔らかくも、丸く制御する。サーヴァントとしては、エインスとの仲は良好で、そのチームワークは、他のマスターも見習うべきものがある。戦闘時は馬に騎乗して、戦場を駆り、得意の剣術で相手を切り伏せる、剣術に特化したライダークラスのサーヴァント。




いつも見てくださっている方、ありがとうございます!マジカル赤褐色です!
アンザスエインス姉妹のできた経緯についてですが、まぁ、どうせなら、アンザスをもっとカオスなキャラにしてやろうと姉の設定資料の製作に励み、エインスが誕生しました。しゃべり方とかいろいろ差分をつけていますが、最終的な性格はほぼ同じになるようにしています。エインスの怪力についてですが、これはあとでもっととんでもないことにする予定ですので、引き続き暖かい目で見守ってあげてください笑笑
それでは、次回もお楽しみに!
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