《蝦碑市街中》
「畜生、こいつ強ぇ……!」
「まだまだここからよ!!」
銀子がセイバーを探している最中も、街の中心にあるビルの屋上ではセイバーとエインスの激闘が続いていた。
セイバーは確実にエインスの攻撃を回避して、合間合間で針で糸を縫うように剣撃を浴びせていく。
エインスは圧倒的な破壊力を持ってして、街にあるあらゆる物体を用いてセイバーを攻撃していく。
現時点でも、実に17のビルが崩壊している。そのうちの17棟全てがエインスによって粉砕されたものだ。セイバーは現時点では全力を出していない。セイバーが全力を出せば、エインスを防戦一方の展開にまで追い詰めることは容易だが、その分周囲への影響が大きい。セイバーの宝具を使えば、たちまち建物は次々と崩壊していき、聖杯戦争に関係のない犠牲まで生むことになる。それはセイバー自身の「周りを巻き込みたくない」という意志、それから大聖杯によって決められた聖杯戦争の絶対ルール、「神秘の秘匿」によって制限されている。
「くそ………こうなったら、意地でも宝具級の刀を使うしかねぇのか……?」
エインスのハチャメチャ具合は度を増していき、先ほどから小石でも投げるかのように普通は投げれないモノまで投げつけていく。車やトラック、キャリアカーは当たり前、街灯や信号機、果ては建物の柱や工事中のクレーンまで、その目に映るもの全てを投擲物と見なし、己の武器と見なす。こんな言葉があるだろう、「使えるものは何でも使う」と。戦いの鉄則だ。だが、彼女のそれは人智の域を越えており、何も、人智を越えた存在、すなわちサーヴァントであるセイバーを震え上がらせるほどの領域にまで達している。
確かに彼女の筋力はサーヴァントを優に上回るもので、彼女は武器の扱いも魔術も何もできない代わりに、その、獣であれば全てが可能とする禁断の戦法、肉弾戦での枠においてはこの地球上に存在する生きとし生ける全ての生命の中でも頂点に位置する。エインスには、「対象となるあらゆる物体よりも強い筋力が出せる」というある種の「呪い」がかかっている。
この呪いを持った彼女は、その文字通り、あらゆる物体を素手で持ち上げることができるのだ。彼女の筋力は相対的に見れば一般人と同等。だが、この呪いによって、絶対の補正がかかっており、自身の筋力の数値に関係なく力を加える対象となる物体の質量に比例して筋力が自動的に上昇する。
呪いを
そして、状況はさらに悪化する。
「………!!」
セイバーの正面に、6つの円盤がやってくる。エインスがセイバーのもとへと投擲したのマンホールの蓋だ。
セイバーの反応は僅かに遅れてしまった。エインスの投擲の平均速度は時速200キロ。プロ選手が投げた野球ボールよりもさらに速い、初期の新幹線に匹敵する。そして、今回のマンホールの蓋は、その新幹線よりもさらにさらに速い、時速600キロ。現代の新幹線でようやく時速500キロを出せるぐらいだ。見てからの行動、投げられたマンホールの蓋を視認してからの回避では明らかに遅い。しかも、最悪なことに、今回はただでさえ回避困難なこの状況において、セイバーはさらに判断が遅れてしまったのだ。
この時点でセイバーの今から行うあらゆる行動、思考は無意味に終わることが決定している。回避、防御その他の行動全てが、時遅し。
セイバーの勝算は尽き、勝負が着いた。
────筈だった。
「!?」
「あら……?」
セイバーに飛来する時速600キロのマンホールの蓋6つが、全て撃ち落とされた。
セイバーはこうして無傷で済んだわけだが………
「どこからの射撃かしら。ちょっと今のは迷惑だったわね……」
エインスがセイバーに背を向けて、向こうを見る。
エインスが見つめるビルの陰から、飛び出すように人影が現れる。
「わたしに用かしら?お嬢さん」
エインスは人影に告げる。
「用ありだ、貴様が連れに手を出しているようでな、見逃す訳にはいかないんだ!」
そう言って、人影は左手に持った弓をエインスに向けて射る。
エインスは当然のように回避していく。
「やるじゃねぇかアーチャー!!見直したぜ、危うく惚れちまうところだった!!」
セイバーの歓喜が響く。それもそのはず、セイバーを窮地から救いだした人影は、アーチャーだったからだ。もちろん、麗花のアーチャーだ。
「安心するのは早いぞセイバー!貴様が相手したこやつを、意地でも
「おうよ、ありがてぇ。ちょうど、猫被りの手も借りてぇところだったんだよ」
アーチャーの顔が険しくなってくる。やはりこうして相性は地味にいいように見えて、やはりこの二人はどうあっても精神面で相容れないのだろう。
「困ったわね………」
そのムードとはまた別で、エインスがしっかりとそこにいる。流石のエインスも、サーヴァント二騎を相手することは不可能。そうと決まれば。
「ライダーくん、来てる?」
エインスもマスターとして、自身のサーヴァントを遣わせざるを得ない。
一気に地面を蹴って後退し、セイバーとアーチャーから距離をとる。
「ちょうどお呼びかな、エインス!!」
戦場となったビルの隣にある、このビルよりもさらに高い別のビルの屋上から、赤銅色の装束に身を包んだ若々しい青年、ライダーのサーヴァントが飛び降りてくる。青年は、この聖杯戦争に参加しているサーヴァントとは思えないくらいに清々しい見た目で、凛々しさも兼ね備えた若者だった。
年齢は人間で言うところの17歳ほど。その割には身長は高く、170cmを優に上回る、ほどよい男前な身体から爆ぜるように突き出された右腕が、腰に吊るしたレイピアの柄に手を掛ける。そして、月光を背に、飛び魚が鮮やかに水面を跳ねるかのような秀麗な抜刀。月光に照らされた銀に輝くレイピアが、アーチャーの首筋を狙って今度は獲物を狙う隼のように、より細やかに言うなれば水面に飛び込む鰹鳥の如く矢を思わせる急降下。
「ちっ……!!」
アーチャーがこの攻撃に対処するのは厳しい。奇襲、かつ剣士の一閃。仮にも弓兵のクラスであるアーチャーには防ぎきれない、ないし防いでも大ダメージは避けられない。それを、
「おぉぉらぁぁぁ!!!」
横から弾き飛ばしたのがセイバー。銀の針を叩き返す金の刃。浅葱色の羽織が赤銅色の衣を吹き飛ばす。
だからと言って、簡単には崩れないのが英霊。
すぐに体勢を立て直し、体操選手のような空中での受け身と着地をこなし、銀のレイピアを構え直す。
「手前の相手はこっちでぃ!!!」
セイバーが高々と金の刀を掲げる。
「どうしようか、エインス」
サーヴァント、ライダーはエインスの方を見る。
「セイバーの方はライダーくんに任せます。わたしはこのアーチャーの方を」
「─────承知したよ」
ライダーはレイピアを持ったまま、凄まじい速度でセイバーの懐に突進してきた。
「速いなぁ、オイ!?」
セイバー、間一髪の防御。しかし、防いだとてセイバーへの衝撃は実に大きいものであって、セイバーはビルの上から吹き飛ばされて、落下する。
「セイバー!!」
あわててアーチャーが叫ぶが、もう遅く、セイバーは十二階建てのビルの屋上から転落した。
「どこ見てるのかしら?」
エインスが間髪入れず、アーチャーめがけて突進。
「しまっ…………ぐあっ!」
エインスの呪いを纏ったストレートがアーチャーを直撃する。アーチャーは隣のビルの窓を突き破って中に投げ出される。
「さて、」
エインスは屋上から跳躍、アーチャーが投げ出されたビルの窓に飛び込んでいく。ライダーもまた、落ちていったセイバーを追いかけてビルから飛び降りる。
セイバーとアーチャーの二人による、初めての共闘。二人の運命や如何に。
だが、決着こそついていないものの、サーヴァント二体で初めて闘いになる以上、どう考えてもエインスたちの勝利であった。
◇ ◇ ◇
キャラ紹介【正式ライダー陣営-バトルスタイル】
エインス・マリオン
正式ライダーのマスター。
「対象よりも強い力が出る」という呪いを持っており、どのような質量を持つものでも軽々と持ち上げ、どのような勢いで突進してくるものでも逆に弾き飛ばし、どれほど硬いものであっても、握り潰す、鬼のような筋力を持つ。この呪いは、対象が「物体」であった場合は何であれ等しくこの呪いが適用され、純粋なパワーだけではエインスに勝てなくなる。対象が魔術などの「概念」の場合は適用されない。この呪いの性質を活かして、サーヴァントを越える脅威的なパワーで相手を圧倒する立ち回りで闘い、サーヴァントを力負けさせる紛れもない大物。エインスに勝利するためには奇襲か、あるいは純粋な性能としてのパワーを考慮しない器量や魔術の使用が求められる。そのため、バランス重視のセイバー、アーチャー、ランサーの三騎士サーヴァントとバーサーカーには有利だが、一芸に特化したライダーやキャスター、アサシンには不利になる。
正式ライダー
騎兵のサーヴァント。
攻撃方法は単純にも、レイピアを使った剣術のみ。その他の武器や、圧倒的に強力な宝具を使うこともなく、純粋な剣術だけで闘う。その分、剣術とライダーさながらの機動力においては最高峰とされており、サーヴァントの中でも高い回避性能で相手の攻撃を回避しながら一気に間合いを詰めてレイピアで貫く、正統派の剣士サーヴァント。馬に騎乗することも可能で、馬上からの攻撃もまた強力。
いつも見てくださっている方、ありがとうございます!
前回は全く関係ない話をしてしまいました。個人的にですが、製作中、アーチャーが駆けつけてきたタイミングぐらいで一気に大興奮して、先の展開があれやこれと浮かんじゃいました。これだから小説書くのはやめられねぇんだ笑 現在のところ、予想されるだけでも、あと四話ぐらいはこの戦闘に使われると思います。質より量、これがマジカル赤褐色のスタイル。
それでは、次回もお楽しみに!