《高層ビル テンプル》
テンプルは、この街では現在絶讚建設中の高層ビルで、完成形は実に二十四階建てになるそうだ。寺院(テンプル)の名も伊達ではなく、高さのみならず、敷地面積も非常に広く、蝦碑市では、最新最大のランドマークとなる予定だ。
そのテンプルの中にアーチャーが吹き飛ばされ、落下したセイバーもまた、この建物の中に逃げ込んでいた。
《テンプル一階、入口前広場》
「うっげぇ、広ぇなここぁ。なんでぃ、何が建つんだ、ここに。見ろこれ、なんつーでっけぇ広場だ」
「その通り。ここはどうやら、この街の新しいランドマークになるようだね」
「来てたのかよ手前」
「あぁ。エインスの命令なら、逃がすつもりはない」
「そうかい、けどよ、ライダー、物陰がねぇここぁ、手前にゃべらぼうにきっつい場所だぜ?」
セイバーがさっきの刀を再度取り出して、ライダーに向ける。
「構わない。来い、セイバー。───我が真名はシャルル・ドゥ・ダルタニアン。三銃士物語が英雄、三銃士の友にして最大の味方となる剣士だ!!」
対してライダー、ダルタニアンはレイピアの切っ先をセイバーに向けて高らかにその名を名乗る。そのときの表情も相変わらずの、爽やかな笑顔だった。
「いいぜ、ダルタニアン。俺の名を覚えておけ、俺は岡崎正宗、またの名を五郎入道。世界最高の刀鍛冶だ!!」
セイバーが走り出す。次いでライダーも駆け出す。
銀の針と金の刃。凪払われる2本の曲線。それと共に赤い外套と蒼い羽織が交差するその一瞬、歴史を越えた奇跡的瞬間が、この地球上に現れた。
一つ、両者にとって無念だったのが、そこにオーディエンスが1人も居なかったことだった。
《テンプル 6階》
「うぐ………なんだ、今のは………」
アーチャーが受けた攻撃の威力は、想像を絶するものだった。100メートル以上離れたビルに吹き飛ばされ、近代建築の窓を突き破ってしまった。トラックかキャリアカーか、コンボイか、なんであれ、そーいう車に跳ねられた方が圧倒的にマシといえるほどの衝撃だった。連続でジャブでも喰らえば死にかねない。
「一撃が重い、なんだあの化け物は………」
「よいしょ!」
アーチャーが突き破った窓を潜り抜けてエインス登場。倒れているアーチャーに歩み寄ってくる。そして当たり前のように鉄筋コンクリートを担いでいる。
「くっ………この、雌ゴリラめ………」
アーチャーは憎しげにエインスを睨み付ける。
「失礼ね~ゴリラはないでしょう」
エインスはこんなときでさえふわふわとしている。
「さぁ、貴女を片付けたら次はマスターたちよ。ついさっき気づいちゃったんだけど、メガネの女子高生とロングヘアの女子高生、それからメガネの青年がここら辺をうろついているらしいの。貴女のマスターかはしらないけど、だれかのマスターなのは間違いないから、見つけたら即座にこの鉄筋コンクリートで殴り殺す予定よ♪」
ここで、エインスは初めて、ミスを犯してしまう。
「──────貴様」
アーチャーの三文字程度しかない一言で、空気が一気に様変わりする。空気が揺れる。大気が凍りつく。時間が止まる。
「あら?」
流石のエインスも、嫌気を察知して、動物観察でもするようにアーチャーをじーっと見つめる。
アーチャーの表情は暗くて判らない。だが、間違いなく、彼女がいい思いをしているようには思えない。
───英霊には、どのような英霊であっても、触れてはならない一線というものがある。それを越えてしまうと、何が起こるか判らない。英霊にとって、触れてはならない部分に触れられることは、自身の英霊としての誇りに対する侵害であり、己に対する侮辱である。英霊の人間性次第では、そのような事例でマスターを殺害してしまうこともある。今回のように、その対象が敵となれば言語道断。
アーチャーにも、触れてはならない一線があった。それは、自分のマスターである麗花、大切な仲間である銀子、そして何より、自分が一番大切にしている存在である幹太。それを、エインスは「殺す」と吐き捨てた。アーチャーにとって、この一言は、これ以上ないほどの侮辱であり、聖杯戦争とはまた別の宣戦布告である。顔面に手袋だか靴だかを投げつけられたようなものだ。
「貴様────よくも、私の逆鱗に触れてくれたな─────!!!!!」
アーチャーが絶叫し、怒りを
怒りを抱く者、此単純なもの。怒り任せの疾走に意味などなく、
「危な……?」
エインスに軽々と弾き飛ばされる。壁に打ち付けられるが、すぐに立ち上がって再び走り出す。
怒りを抱く者、此単純なもの。だが、その怒りへの執着は人に忍耐を与えるも然り。
「単純な動作の連発………?」
アーチャーは再び吹き飛ばされる。今度はもっと強く、もっと遠くへ。床に転がって、もがき始める。
「貴様、このような侮辱をしておいて赦されるとでも思っているのか!!!!」
「侮辱……?わたし、なにか変なこと言ったかしら?」
エインスはきょとんとしている。相変わらず、その余裕は健在のようだ。
だが、エインスはすぐさま焦ることになる。
「─────解った…………ならば……………貴様を地獄の果てまで赦さんぞ!!!!」
アーチャーがかつてないほどの絶叫を見せる。それがまだいつもセイバーにちょっかいを掛けられてカチンと来るアーチャーのようなものであれば幾ら可愛い娘であったか。今回の怒りは尋常じゃない。その叫びは怪物の咆哮に等しい。アーチャーの絶叫による風圧で、辺りに散乱している窓ガラスの破片が舞い散り、エインスの服がたなびく。これは何の喩えでもない。今この場、現実で起きている事象だ。
アーチャーの黄色の瞳が金色に光る。そして、眼は憤怒のためか、血が滲んで赤くなっている。血眼とはまさにこのこと。
口からは白色とも黒色とも取れる息が荒々と吐き出されている。
アーチャーが顔を上げる。その表情は、もはや元の可憐な少女の姿はその片鱗すらもない。目の前の獲物に狂う猟犬、いや、野生の獣そのもの。
これは、アーチャーの宝具による力だ。アーチャーはこのように、憤死するまでに激昂することで、日本神話の暴れ者としての力、天照大御神おも恐れさせた、その鬼面が解き放たれる。
───宝具「
暴れ、粗暴を起こし、遂には神々との盃を交わすだろう行き場から追い出されたほどの、絶世の乱暴者、太古の荒くれ者の宝具である。
その英霊の名は、「
◇ ◇ ◇
キャラ紹介【サーヴァント-ライダー】
シャルル・ドゥ・ダルタニアン
正式聖杯戦争のライダー。
アレクサンドル・デュマ・ペール著の、「三銃士伝説(ダルタニアン物語)」の主人公。農民生まれだが、剣術を極めに極め抜いた結果、三銃士と肩を並べる実力者となった、世界中から愛され読まれた剣士。此度の聖杯戦争ではライダーとして顕現しているが、チャリオットは持っておらず、自身の乗る馬が乗り物となっている。馬術にも長けており、馬との相性は抜群。マスターであるエインスとの相性も良く、性格は誰にでも優しい、穏やかな青年。時系列の差が激しい三銃士伝説シリーズにおいて、彼は最初の物語、三銃士におけるダルタニアンとして顕現している。戦闘方法は1本のレイピアによる剣術のみ。純粋な剣術では此度の聖杯戦争ではかなりの上位勢に食らいつくサーヴァントで、サーヴァントの中でも類い希な機動力を持っており、相手の攻撃を確実に回避し、自分の絶対勝利の間合いを保ちながら闘い、ときには三銃士の絆を結束させた強力な刃を繰り出すことも。まさに、蝶のように空を舞い、蜂のように相手を刺すサーヴァント。
いつも見てくださっている方、ありがとうございます!
もうすぐ10万文字達成するんですが多分足りない笑笑
えーと、今回で二体ほど、サーヴァントの真名が明らかになりましたが、今回のあとがきで主役となるのはダルタニアンですね。ダルタニアンはホントはセイバーにする予定だったんですが、ダルタニアンのことをほとんど知らないので、セイバーというでかいクラスを担わせるのはきついなと。何せ私、祖母の家にあったけろけろけろっぴのアニメでしかダルタニアンのこと知らないもんですから笑 まぁ、ちょっと図書館行ってきてちょっと色々と調べてから書きましたが、まぁ、ボロボロなキャラになっちゃいました。奈須きのこ先生もどうやら昔小説書くとき、ググるなんてことはしなかったらしいので、それに乗っ取って私もググることはせずに、極力図書館で調べたりしたことだけで書くようにしています(それでも多分仕方なくググったときがあったかもしれない)。色々と抜けてるところもあるかもしれませんが、それも初心者の味だと思って暖かい眼で見守ってください。
それでは、次回もお楽しみに!