かつて自作した聖杯戦争   作:マジカル赤褐色

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非正式セイバー、非正式アーチャー連合軍と非正式ライダー陣営による激突がついに閉幕を迎える。その一方で正式ライダー陣営と非正式バーサーカー陣営との激闘もまた終幕へと向かっていた最中、バーサーカーのマスター、アルケードを陰ながら見ている者がいた。


第二十二章 閉じる一夜

 

《蝦碑市ビル街》

 

 

「やぁぁぁぁぁ!!!」

 

「遅い」

 

「うわぁぁぁぁぁ!!!」

 

一方、アルケード率いるバーサーカー陣営とエインス率いるライダー陣営の戦いが繰り広げられていた。

 

「ふん、まだまだだな、どうしたエインス・マリオン。いつもの怪力はどうした。その程度では、いつまで経っても終わらないぞ」

 

「うぅ…………」

 

アルケードは心の底から勝利を確信していた。アルケードが勝利に浸るのも無理はない。近づかない限り闘えないエインスとライダーを前にして、「相手よりも高い性能を持つ」という特性を持つバーサーカーが自身のサーヴァントとして存在しており、運動エネルギーを操作する自身の魔術で近づいてきた相手を重力で吹き飛ばす。

エインス達は完全に詰んでいた。アルケードに近づくこともままならないのに、加えて自分たちよりも性能が高くなるバーサーカーに妨害されるために、まるで勝ち目がない。

 

「ふん、その程度が正式聖杯戦争の連中。たいしたことがないな、おれが想定していたレヴェルの水準を多く下回る。この駄目戦から帰ったら資料を訂正しておかないとな。正式聖杯戦争のマスターたちの戦闘能力の水準を下げておこう」

 

アルケードはいまだにそんなことを呟いている。だが、アルケードはまったく気づいていなかった。アルケードが確認しているのは、自分たち非正式バーサーカー陣営と非正式ライダー陣営、正式ライダー陣営、非正式アーチャー陣営、非正式セイバー陣営。

アルケードは情報戦では無類の強さを発揮する。だが、彼が確認できる情報はあくまでも、今の状況と過去の出来事のみ。先のことなど推測するしかない。

だから、今の奇襲にはアルケードも気づけなかった。

 

「───ぬ……っ!?」

 

音もなく、アルケードの脇腹を何かが貫いていった。

痛みに顔をしかめるアルケードが脇腹を見下ろすと、そこには傷口が。これはライダーの攻撃ではない。エインスの攻撃でもない。明らかに、【銃撃】による傷だ。

 

「馬………鹿な……!?」

 

「アルケード……!?」

 

バーサーカーが駆け寄る。

 

「なんだ………?新手の奇襲かな?九死に一生を得た……か」

 

「チャンスです、ライダーくん、今のうちに撤退しましょう!」

 

「わかったよ」

 

「ま…………待て…………」

 

アルケードは諦めずにライダー陣営に向き合うが、

 

「駄目よ、アルケード、ビルの上から狙われているわ。今日はおしまい、帰りましょう。貴方がここで殺られたらそれこそ大変だから……!」

 

バーサーカーがアルケードを抱き抱えて目を疑う速度で撤退していく。続いて飛んでくる銃弾を鮮やかによけて、街の外れの闇に消えていった。

バーサーカー陣営に続いて、エインスたちもライダーの出した馬に乗って、バーサーカー陣営とは反対方向、蝦碑市教会に撤退していった。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

(殺れたかね?)

 

ビルの上に一人の男が立っていた。学ランにも似たような服を着た中華風の男だ。年齢はかなりの高齢。50歳は越えているだろう。

 

「否、仕留めきれていない様だ。金髪の女と一緒に何処かへと撤退した」

 

(そうか、しかし、何故あの男を狙うのかね。君には目的があるというのか)

 

男は中国語で誰かと念話で会話している。

 

「応。アレが【彼女】が言った、非正式聖杯戦争を開いた男だ。あの女には始末を命令されている。あの男を殺すことが我が任務」

 

(成る程。では、撤退したとなれば、追跡すると?)

 

「否、奴が連れていた女の戦闘能力を把握するまで真っ向からの手出しはしない。逃げたのなら、深追いはせず、我々も撤収するべきだ。撤退するぞ、【アサシン】」

 

(了解した、【會云】)

 

會云と呼ばれた男のとなりには誰かが居るそうだ。だが、一向に姿を現さない。霊体化などしていない。どうやら体そのものがないようだ。いや、それとも、【カタチを持つことができない】のか。

會云はビルから飛び降りる。窓枠を伝って一階ずつ確実に降りていく。會云はあくまでも人間だ。サーヴァントのように、飛び降りるなどという横着をすれば死亡する。

ならば階段かエレベーターでも使えばいいという話だが、會云はそんなものとは比べ物にならない速度で降りていく。

窓枠から反対方向に跳躍して、隣のビルに掛かってある看板を掴み登り棒を滑り降りるように降りていき、看板の真下からまた反対方向に跳躍する。室外機の上に乗ってそこからまた反対方向へ。配水管を掴んで貯水タンクに飛び乗り、そこから地上に降り立つ。実に6秒もかからなかった素早い動作だった。

灯りもない暗い路地裏の真ん中に舞い降りた殺し屋は、まるで路地裏の死神のようだった。

正式聖杯戦争におけるアサシンのマスター、會云はそのまま何処かへと去っていった。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

「いててて…………」

 

「アンザス、大丈夫か」

 

「はい、わたしは元気100倍です。ライダーは?」

 

「この通り生きてはいるが、大ダメージは受けた。脇腹を弓矢で射られてな。しかも最悪なことに、毒矢だぞこれ。しばらく全力で闘うのは無理だな。っていうか、お前令呪減ってねぇか、まさか死んだのかオマエ?」

 

誰も彼もが居なくなった後、オレとアンザスが川の畔で合流した。

 

「ええ。認めたくないですけど、殺されましたよ、魔術師でもない一般人に」

 

「恥さらしめ、オマエ正気か?」

 

「たまたま調子悪かったんですよ、セイバー強すぎますし、あとライダーがヘマするからじゃないですか~」

 

「────む」

 

そういえばそうだった。アーチャーにオレの唯一の弱点である脇腹を射られた時、そのままオレはアーチャーに首を跳ねられる筈たった。だが、咄嗟にアンザスが令呪でオレを霊体化させたことで、オレは生き延びることができたんだった。オレを守ろうとしたせいで、こいつは隙を晒して、一回殺されるハメになったのか。

 

「………悪い。オレが、もっとちゃんとしていれば、」

 

こんなことにはならなかっただろう。オレたちが圧勝していた筈だ。

 

「いいんですよ、ライダーは頑張ったじゃないですか、それに、今は生きてることを喜びましょうよ。…………過去のことをいつまでも悔やんでいるよりも、今生きてることを楽しむほうがずっと幸せじゃないですか。」

 

「まぁ………それもそうなのか。あぁ。そうだな、オマエも生きているんだし、結果としては最悪の事態は免れた訳だし」

 

まったく。我ながらなんなんだ。あのアンザスの言葉が響くなんて。

 

「何を言っているんですか、お姉ちゃんがぼこぼこにされたんですよ!?見ましたかあの顔。腫れてたし、火傷まで……足を弓で射られて………!!あぁ…………お姉ちゃん………絶対に許さないですよあの連中……!!」

 

「そ、そうか、」

 

アンザスが珍しく燃えているので応援するしかない。

 

「そういや、さっきから思ってたんだがな、アンザス」

 

「はい?」

 

「オマエ、そんなに姉貴(エインス)が好きなのか?」

 

オレがこんなこと言うのもなんだが。

 

「決まってるじゃないですか。婚約者ですよ、いつかわたしたちは一緒に暮らして、暗い夜に同じベッドで…………ニヒヒヒヒ」

 

「───────」

 

シスコン百合…………!?!?!?どーいう趣味ですかアナタ!?姉貴好きなのは知ってるけど、そこまで!?最後の方とか明らかに未成年者立ち入り禁止の話だったろ?

 

「お姉ちゃんのあの白い肌………笑顔……髪の毛………そして大きなおっぱい………わたしの性癖を全て兼ね備えており、なおかつみんなに優しい………」

 

まぁ、エインスが狂ってるだけで誰にでも優しいのは確かなんだが………どうやら手遅れだったようだ。今の社会、性的嗜好少数者について理解を深めるべき社会だ。そりゃあ、百合にもシスコンにもその二刀流にも文句はないが、仮にその対象が誰であったとしてもそれはあからさまな変態発言だ。決して戸外で大声ではしゃいでいい内容ではない。

 

「んで、どうする。帰るのか、もうちょい休むのか」

 

「荷物が届くので、ちょっと早く帰らないとまずいですね、ライダー、チャリオットを………」

 

「げ」

 

どうしましょうかねぇ、ぶっ壊された………バーサーカーに土台大破させられたのはまだいいが、アーチャーに馬殺されたのは痛い。新しい馬用意するのは無理なんだから、一度壊されたチャリオットは多分直らない。

 

「ないなぁ、壊されちまった」

 

「わかりました」

 

アンザスはすんなりと受け入れた。え?と思わずアンザスの顔を見たら、その横には令呪が。

 

「げ、オマエまさか………」

 

「ライダー、令呪を以て命じます!新しいチャリオットを出しなさい!」

 

嘘だろぉぉぉぉぉぉぉぉ!?結局こうなるのかよ?そんなのでチャリオット降ってくるならそんなに苦労はしないんだってーの───

 

「は?」

 

空からチャリオットがやってきた。オレのチャリオットじゃん!土台直ってる!馬生きてる!?

 

「んえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

令呪は奇跡を呼ぶってのは本当だったみたいだ。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

用語紹介 【アンザスの令呪】

 

アンザスが護衛をしていたかつての司祭代行、ネロア・リヒュテンシュタインが死の間際、アンザスともう一人の護衛に譲り渡した60画の令呪。アンザスともう一人の護衛の二人で半分ずつ。アンザスは30画の令呪を保有している。これはサーヴァントに使用する令呪とは異なり、自身の強化などに使用するためのもので、サーヴァントに対しては使えない。さらにこの令呪は特殊で、日付が変わると全回復する。つまり、合計30画というより、1日30画という解釈が正しい。また、自身の強化だけでなく、死亡した際に蘇生することも可能であり、6画の令呪を使用すれば、復活することも可能。また、令呪が回復するという特徴はサーヴァント用の令呪にも引き継がれており、サーヴァント用の令呪も1日3画、日付が変わる度に復活する。




いつも見てくださっている方、ありがとうございます!
マジカル赤褐色です。本文を見てくださった皆さんは多分、ヤツを忘れていたんじゃないかなと思います。相当最初の方にでてきましたからね。多分、三章か四章ぐらいかな?気になる方は戻って確認してみてください。(勝手に宣伝)もちろん、私も半分存在忘れてました笑笑 正式アサシンの設定はあったんですが、マスターを決めていなくて……丁度よく伏線も回収できそうなヤツがいたので、使うことになりました。アサシンの正体がわかったひとは多分少ないと思いますね。中学校でも習うようなすごいメジャーな偉人ですけど、まぁ、確かに形を持たないサーヴァントってあるあるですからね。【偶像化できない】サーヴァントっていうのはよくありますよね。偶像化できない偉人が何人いるのかって話ですけど。なんかヒント的な物与えちゃいましたね笑笑 どうしようこれで誰かわかっちゃったら。
それでは、次回もお楽しみに!
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