かつて自作した聖杯戦争   作:マジカル赤褐色

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この日起きた聖杯激闘は遂に閉幕を迎えた。結局、これだけの戦闘が起きても、戦死したマスターは一名も出ることはなく消滅したサーヴァントもいない。大怪我をした者は多かったが、いずれも命に別状はない。
一方的な敗北を期してしまったアンザス、エインス姉妹。だが、それは彼女らが本気を出していたわけではない。遂に、アンザス・マリオンの最終兵器が、彼女の手に届く。


第二十三章 アンザスDIY

 

《蝦碑市港》

 

蝦碑市は海に面している。そのため、貨物などが船を通してこの港に運ばれてくる。巨大な船が来ることも珍しくない。いくつか、近くの工場から製品を輸出する船も少なくない。

そんな忙しい蝦碑市港では、今日も貨物の運輸や荷降ろしが行われていた。

 

「おーい、そっちの船の荷物、頼んだぞ、小沢」

 

「へい、荷物の番号は?」

 

「49番だ。向こうの船のベルトから白い箱が流れて来るはずだ、それを受け取ってくれ」

 

「へい」

 

この港で働く一般人、小沢というまだまだ若い運輸職員が、目的の船の荷物を探して、停まっている船の中でもっとも大きい貨物船に向かう。

 

「えーと、49番、49番………」

 

いつものように、荷物を詮索していたその時。

 

「───ん、なんだ、向こうから女が……!?」

 

突如、工場などの建物が建ち並ぶ方向から、若いシスター服の女性がこちらに向かってくるのが見えた。

 

「しっつれーい!!荷物を受け取りに来ましたー!!!」

 

やってきたのはさっき死亡したばかりのアンザス・マリオン。

 

「え゛え゛ええぇぇぇぇぇ!?!?!?」

 

あり得ない高さを跳躍し、あり得ない速度でこちらに向かってくる女をみて小沢はあんぐり。

アンザスは小沢の目の前にくると、そこで停止し、小沢に向かって手を振った。

 

「すみませーん、49番の荷物ありませんかー?」

 

アンザスは小沢に大声で問いかけてくる。

 

「え……?に、荷物は、こちらに……」

 

「そうですか?あ、あった!あれだ!ありがとうございますー!あ、こちらお代です、ご苦労様でーす!!」

 

アンザスは小沢に向かって走ってきて、小沢の持っている受取証書に印鑑を押して、ポーイと10円玉200枚(お代2000円)の入った袋を投げ渡して、しっかりと49番の荷物、白い箱を持って、さっきと同じような動作で帰っていった。

 

「え、えぇ…………」

 

聖杯戦争に関係のない一般人、小沢にとって、これほどの職場の思い出は多分一生涯出遭うことはないだろう。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

《蝦碑市教会》

 

 

「ただいまー」

 

アンザスは謎の白い箱を持って、自分達の住まう教会に帰ってきた。

 

「お帰りー!アンザスー!」

 

真っ先に姉のエインスがお出迎え。

 

「おう、お帰り」

 

遅れてサーヴァントであるオレことアンザスライダーが二番目に出迎える。

 

「お帰り、アンザス」

 

エインスライダーもモップで床の掃除をしながら出迎える。

 

「アンザス、その荷物どうしたんだ」

 

「えっへっへー、直接受け取ってきました。だって待ちきれないんですもの」

 

「おう、すげぇ迷惑だね」

 

オレの呆れも聞き入れず、アンザスは夢中で箱をあける。

 

「これは………」

 

白い箱のサイズはゲーム機のハード一つは入りそうな大きめの箱。だが、中に入っていたのは、大量の緩衝材と、その中に入っていた、ごつい見た目の小瓶のようにも見え、USBのようにも見える機械だけだった。

 

「え、こんな、でかい箱に、これだけ?」

 

オレは不思議に思いながらひょいっと指で積まんで持ち上げる。

 

「あーん、だめですよ、勝手に触っちゃ。これ、強力な最強兵器なんですから」

 

「は……?このUSBみたいなちっこい機械が最強兵器………?」

 

「あら、アンザス、それは……」

 

興味を持ったエインスが親指程度の大きさの機械に近寄る。

アンザスは、「へっへーん」と誇らしげに奥の部屋へと消えていき、すぐに、ヒノキの箱をもって戻ってきた。

向こうでは相変わらずエインスライダーが床の掃除をしている。

 

「ついにやってきたぁ、最強の兵器~♪」

 

ヒノキの箱の蓋が開く。その中から、金色の鍵が出てきた。

 

「鍵……?にしては、でかくないかしら?」

 

エインスが訝しむ。それも、その鍵は、短剣ほどの大きさを誇っていた。無論、こんなもので(ぶき)になどなり得ないが。

鍵の持ち手にある小さな隙間。そこにアンザスは白い箱に入っていた小さな機械を嵌め込む。驚くことにぴったりだ。

 

「おっけー!!これで完成!!最強兵器ですー!!へんしーん!!」

 

「なんだ、その仮面ライダーみたいなのは───!?」

 

間髪入れず仮面なきライダーことオレのツッコミ。すると、アンザスの取り出した金の鍵は派手な機械音を立てて変形し、片手銃のような形に変形した。しかも、この銃、ピストルのような携帯ではない。どちらかと機動戦士が持つような、近代兵器じみたあからさまな超次元技術の塊。色はまさかの木のような茶色。

 

「この【鍵】こそ、教会より取り寄せた、教会の【鍵】、アンザス・マリオンの最終にして最強の兵器……その名も………」

 

アンザスは息を止めて、溜めに溜める。エインスと掃除しながら横目に見ていたエインスのライダーが息を呑む。

黒【鍵】の実力も、アンザスを教会の【鍵】たらしめた要素であることに間違いはないが、どちらかというと、本命はこちら。この鍵こそがアンザスの鍵としての本質。アンザスを教会の鍵とした、アンザスの鍵状の兵器、その名も、

 

「アンザスDIYです」

 

「名前だっせぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

なんでそんなカッコいい武器にそんな残念な名前つけるんだよ、名前つけるセンス皆無じゃねぇか!?「くらえっ!!アンザスDIY!」なんて言ったら敵爆笑間違いなしだぞ。なんで日曜大工だよ。アホじゃねぇの?DIYという語彙を持っておいてなんでもっとカッコいい名前つけれないの?

 

「あ………うん、すごいわね……」

 

エインスわかりやすい返事。

 

「個性的な名前だね……アンザスらしい最高の武器だと思う」

 

ライダーわかりやすい返事。

あのシスコン百合ネキことエインスすら引きやがる。そしてエインスのライダー、すごいぞお前、よく語彙力振り絞って褒めたな。

 

「そうでしょうそうでしょう?これね、ちょっとすごい武器を参考にして一から作った、アンザスちゃん自作の武器なんですぅー!!」

 

嘘だろコイツが一から作ったのかコレ!?

 

才能の出自がマジで意味不明ぞコヤツ。

 

「参考って……どんな武器………」

 

「しかも、みててくださいね!?一瞬ですからね!?そーれっ!!」

 

アンザスがアンザスDIYを振り回す。すると、銃の形をしていたはずのアンザスDIYが、なんと蛇腹状の大剣に変形したのだ。

 

「う────ん!?」

 

待ってくれ、いつからここは地球じゃなくなった?

 

「すごいでしょう?変形までできるんですよ~」

 

「すごいとかの次元じゃないね、一体どんな武器を参考にしたんだい?その様子とかだと、機動戦士系のアニメや漫画の影響かな?」

 

エインスのほうのライダーは床掃除しながらこの馬鹿にツッコミを一切せず、ずっと乗りっぱなし。ノリのライダーかコイツは。

 

「そうなんです~この武器、友達の代行者が使っている武器を参考にして作ったんです~!」

 

じゃあ違うじゃねぇか。「そうなんです」じゃないだろ……

 

「元々は、「第七聖典」っていう対吸血鬼用の武装だったんですけど、わたしの高度な改造技術によって、対サーヴァント用に改造したんですよ、見てくださいこの杭打ち機。この金属の刃でサーヴァントの霊核を打ち砕く……!」

 

アンザスは当然のように蛇腹剣を杭打ち機に変形させて、バチコーンって刃を打ち出す。確かに、その勢いと破壊力があれば、サーヴァントの霊核に命中すれば、即死も夢ではない。

 

「───んで、そんな第七聖典だっけ?の改造品が「アンザスDIY」か。マジでどんな名前のセンスしてやがる。だいたい、そんなすっげぇ武器持ってる本人は何者なんだよ」

 

「それは教会の秘密情報だから言えませーん。けど、わたしなんかよりも圧倒的に強い代行者であるということだけは言っておきましょう」

 

「ふーん、教会って広い組織だな。んで?その武器の名前はアンザスDIYで継続か?」

 

アンザスは「えぇ」とうなずく。ダメだこりゃ。

 

「あのさ……もっと、いい名前にしようぜ、流石にDIYは違うって……」

 

「えー、んじゃあ「第七聖典・アンザスバージョン」」

 

0.2秒で出せるような名前出すな。そんな様子を見ていたエインスが横から手を挙げる。

 

「あ!じゃあ「アンザスDIY・改」とかは?」

 

「はい、バカは帰れ」

 

「それじゃあ、アルティメットサヴウェイとか……」

 

「いや、「完全な地下鉄」ってなんだそりゃ。」

 

マリオン姉妹は言語能力どころか、知能すらある一定の障害があるようだ。バカという名のある意味障害と呼べるモノ。

 

「そんなに言うんだったら、ライダーはないんですか、アンザスDIYに代わる名前の案が」

 

「はぁ!?」

 

ねーよ。あるわけねぇだろ急に言われて。

 

「いや、何でだよ、第七聖典……第七聖典アンザスバージョン……あぁ違うさっきバカが出したやつだ。第七聖典G……第七聖典改……あーもう!オレまで変なこと考えるようになっちまったじゃねぇか──!!」

 

その様子を見ていたエインスライダーが回りを一瞥。さっきからずっとやってる床の掃除を止めて、気まずそうに手を挙げる。

 

「あの、「新約第七聖典」とかどうかな……ちょっと聖典に引っ張られすぎかもしれないけど……」

 

「それだ………!!それよアンザス!!」

 

「そうですね!!よぅし!!今日からこの武器は新約第七聖典です~!!!」

 

「えええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!??!?」

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

用語紹介 【蝦碑教会】

 

物語の舞台、蝦碑市の山奥に、聖堂教会によって設置された小さな教会。礼拝堂のサイズこそ、礼拝堂に相応しいほどだが、貴族のお誕生日パーティーをするとなると狭いくらいの、本当に小さな教会。それもその筈、この建物は礼拝堂としてはほとんど機能しておらず、つまりは聖堂教会所属の調査機関の支局として、蝦碑市に設置された臨時の現場基地のような扱いとなっている。

調査の対象となるのはこの土地の霊脈。冬木市こそ宝に等しい霊脈を持っているが、蝦碑市も、ぶっ飛んだ霊脈を持っており、しかも魔術協会もほとんど発見していないため、この土地の貴重な霊脈を土地として確保するべくこの教会が設置され、調査が進行している。調査隊が派遣されるのも珍しくないが、全員この教会の主、すなわち調査隊指揮官となる人物に付き合えきれなくなり、任務を辞退する者も多かった。

そして、この教会を任されたのが、ライダーのマスターであるアンザス・マリオン。アンザスはこの教会を任されている。つまり、アンザスはこの霊脈の調査隊の指揮官も兼任しているということだ。アンザス自身は代行者であり、このような任務を苦手としているが、司祭代行ネロアの推薦によってこの始末。アンザスは任務を任された責任感よりも、「やったぁ、わたしのおうちですよ~タダでげっと~!」とはしゃいでおり、ネロアの期待を大幅に裏切り、数多くの調査隊員を呆れさせた。ネロアは既に衰弱により死亡しているが、司祭代行ということもあり、その命令の効果は続行。今もアンザスのマイホームとなって、山奥から街を見下ろし、その平和を眺めている。




いつも読んでくださっている方、ありがとうございます!マジカル赤褐色です。
今回のエピソードもネタ回です。なんで、分量はちょっと少なめになってしまったかもしれませんね。長かったアンザス、エインスの出番はこれにて一時終了します。多分暫くライダー陣営は誰も出てきませんね。ここから物語は吸血鬼騒動について本格的に動いていくことになるんですが………
アンザスたちは結構愛着のあるキャラだったので、かなりの頻度で出していたんですよ。今のところ毎日(物語の方の日付)ちゃんと登場してました。
実は、アンザスはこの作品を作る際、一番最初に設定を作ったキャラなんです。それも、そのはず、昔から私の創作にはこいつが出てきていて、Fate系の創作に関係ない作品や、完全オリジナル作品にも出てきていたんですよ。まぁ、その辺は駄文過ぎたので投稿は一切していないんですが笑笑 アンザスは個人的にはかなりお気に入りのキャラだったのもあって、なんか第二の主人公みたいになってましたね。まぁ、もちろんこれは銀子とセイバーを中心に描く物語なんですが、銀子のキャラが薄すぎるのと、セイバーが普通すぎたため、インパクトの強いライダー陣営が大きく目立ってしまうことがありました。それは私としても反省です。キャラバランスを調整するために銀子にYAMA育ちの設定を与えたり、元々永遠の時代遅れにする予定だったセイバーがちょくちょく現代に馴染むようになってくるという設定などを追加していましたが、どうも追い付けない笑笑 作者から言わせても、あいつらキャラ強すぎだろ笑笑 今回のエピソードを読んでいただいた方も、だいたいアンザスの役目終わったんだなぁって思った人も多いでしょう。オチが雑でしたが、まぁ、アンザスはもちろん次からは「ソレ」を持って参戦してくるワケで、次出てくるのはかなりの後半にする予定でいます。これまで私の持ちキャラ、アンザスを愛してくださってありがとうございました。
それでは、次回もお楽しみに!
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