「うぅぅぅぅぅぅぅんんんんん~♡美味しいですぅぅぅぅぅ~♡」
「そ、そうかい……?なら何よりだな」
わたしはライダーのマスター、「アンザス・マリオン」。聖堂教会から派遣された代行者で、「聖杯戦争の埋葬者」の二つ名まで貰っている。こんな極東の片田舎でホントに聖杯戦争が開かれるなんて………思ってもいなかった。
「しっかしよぉ、アンザス。お祝いの飯を食うとは聞いたけど、こんな辛いもん食うとは聞いてねぇぞ?」
彼はわたしのサーヴァント、ライダー。見た目人畜無害な男だが、その正体は、ギリシャではお馴染みの大英雄のうちの一人だ。
「なんですか、辛いものが苦手なんですか?そもそも、これ、あんまり辛くないですよ?辛さ僅か70倍ですよ?」
「いや、その、どんな塵もんだろうが、70倍って数字は僅かとは言わないんだよ」
そう……なのだろう。
実はわたし、激辛担々麺が大好物で、毎食食べている。今夜もその延長とライダー顕現のお祝いを兼ねたが、どうやら、ライダーのデリケートなお口には合わなかったようだ。
このお店はわたしの行きつけで、店主の旦那さんとも仲良くなってしまった。毎食食べに来る客が法衣を着ているのだ。そりゃあ、覚えてもいるか。
「ご馳走さま~旦那さん、また明日!」
「あいよ!今日もありがとよ!じゃあな!」
旦那さんにひとまず挨拶だけして、帰路につこうとライダーと共に店を出た。
「ひやぁ、美味しかったです~!!」
「ご馳走になったぜ、アンザス。恩に着るよ」
「いえいえ、さて、今日は帰ろうかとも思いますが、まず、貴方の服装から、なんとかしないとですね」
「服装……?オレ、そんなに変な格好してるか?」
「だって、それ、鎧じゃないですか。そんなの着て街をうろうろされたら困りますよ~」
意外だ。こんな真面目そうなライダーが服装に一切目を向けないなんて。お洒落に気を配るわたしにとっては気になってしょうがない。勿論、鎧はライダーによく似合うのだが、TPOに合ってなさすぎる。ここは一つ、人間社会に溶け込みやすい、カジュアルな着こなしをさせるべきだ。
「というわけで、っと……ライダー、令呪を以て命じます!チャリオットを出しなさい!」
「はい!?おい、馬鹿馬鹿馬鹿!!なんでそんなことに令呪つかって………」
もう遅い。わたしの左手の甲にあった令呪の輝きは、一部が薄れた。
令呪で命令しただけあって、本当に、あっという間に空からライダーのチャリオットがやってきた。
「知らなかった、アンザス、オマエ、聖杯戦争初心者だったんだな。戦車ぐらい、いつでも出せるだろうが………だいたい、これと服がどう関係して……」
ライダーの言葉が終わるよりも早く、わたしはチャリオットに乗り込んだ。
そして、
「さて、重ねて命じます!このチャリオットでとなり街の駅から一番近いショッピングモールまでわたしを連れていきなさい!」
「オイ!?マジかよオマエ!!」
また一つ、令呪の輝きが薄れた。
そして、チャリオットは無事発進して、空を翔んでいった。
ライダーはなぜか呆れ果てた顔をしている。
「ダメだこりゃ、此度の聖杯戦争で勝てる保証がなくなったよ……」
「何言っているんですか。わたしたちが敗北するわけないですよ、それに、貴方、わたしの能力を忘れたのですか?」
「あー、いや、そうだけど、違うじゃん、それは……」
「やっほーう!これがチャリオットですかー!はやいはやい!」
わたしはもう、今の興奮を我慢しきれそうにないみたいだ。わたしはチャリオットに吹き付ける風を感じながら、聖杯戦争初日をお楽しみだけで終えることにしてしまった。
◆ ◆ ◆
オレとアンザスの契約が結ばれて1日足らず。アンザスは、早くも令呪を二画使った。なんつーか、馬鹿だよな。
しかも、オレの戦車で滅茶苦茶くつろいでるし。これ、英霊の宝具みたいなもんだからね?
「なにオレの戦車の上で漫画なんか読んでるんだ。なんだ?それは、流行りの漫画か?」
たまにはこんな世間話で盛り上がるのも悪くはなさそうと思って、話しかけてみた。アンザスは顔を向けることなく、目の前の本に顔を向けながら当たり前のことのように答えた。
「うぅん、薄い本です」
予想外だわ。なんでこの女はオレの思考の一手上のことをするのだろう。野蛮なマスターの中ですら崩壊寸前レベルだぞコレ。
「英霊のチャリオットの上でなんでそんなもん読んでるんだオマエは……!」
「おぉぅ………ここの展開はアツいですねぇ……!」
真面目に読むな。それ、バトルもんの漫画読んだときの反応だろーが。色物の漫画を読んで「アツい展開」とかいう言葉が出るのが凄い。
「野蛮だな……ホント……」
「ライダーも読みます?」
「読まねぇよ!!」
オレのチャリオットは、とんでもないマスターをのせて、夜に光る街へと飛び込んでいった。同時に、オレは此度の聖杯戦争で勝利する自信を失った。代わりに、楽しい日々を手に入れたとはいえるのだろうが、コイツと一緒にいたらオレもコイツみたいなろくでなしに堕ちる可能性が否めないのはもはや言うまでもなかった。
◇ ◇ ◇
キャラ紹介【ライダー陣営】
アンザス・マリオン
ライダーのマスター。
聖堂教会から派遣された代行者。激辛担々麺が大好物で、蝦碑市の町中にある担々麺店の常連客となっている。見た目麗しいだけの美人シスターにも見えるが、中身はとんでもない自由人で、ブッとんだ野蛮人。初っ端から令呪を二画、いつでも出来ることに使ってしまったり、ライダーのチャリオットの上で薄い本を読んだりと、とんでもない奇行を繰り返し、ライダーを振り回す。ただ、聖杯戦争のマスターとしては、教会でも最強といわれており、「聖杯戦争の埋葬者」とまで言われた程の、野蛮さにも等しい実力を秘めている。
ライダー
騎兵のサーヴァント。収拾のつかないアンザスの奇行を抑圧する、ツッコミ担当キャラで、それでも、思考の裏を突いていくアンザスに振り回される一方である。その一方で、英霊としての能力は一流で、此度の聖杯戦争随一の大英雄とされている。戦場をチャリオットで駆け回り、極めつけには、己の最大の宝具で、相手の攻撃を防ぎながら戦う、防御的な立ち回りを得意とするサーヴァント。
マジカル赤褐色です。今回から、ようやく、ついに、キャラ崩壊が発生しました。アンザス・マリオンという、ふざけたキャラをぶちこみました。読んでいただけた方は、相当トンデモキャラなのだと思いましたでしょうね笑笑マジカル赤褐色は、こーいうコメディキャラの描写が本道なので、申し訳ありませんが、アンザスのことも暖かい眼で見守ってあげてください。個人的にアンザスは設定を作ってる時点ではかなり好きなキャラです。今後の伏線……というか、重大な情報を握るような発言がありますが、すぐ回収されます笑
読んでいただけた方々、いつもありがとうございます……!!次回もお楽しみに!